陸前高田で学ぶ。共に生きる。

立教大学

2026/03/04

トピックス

OVERVIEW

2003年から交流を始め、さまざまな形で連携を深めてきた岩手県陸前高田市と立教大学。これまで多くの学生がこの地で貴重な学びを得てきました。2025年7月、新たな交流活動拠点となる「立教大学陸前高田サテライト」を開設し、陸前高田での学びは新たなステージへ。立教学院の教育目標にある「共に生きる」を体現してきた陸前高田と立教の関係に迫ります。

立教大学と陸前高田市の交流の軌跡

原点となった林業体験プログラム

立教大学と陸前高田市の深く長いつながりの原点となったのは、2003年に陸前高田市矢作町で始まった「林業体験陸前高田の森に学ぶ」です。このプログラムは、学生たちが生出おいで地区にある「ホロタイの郷『炭の家』」に宿泊して共同自炊生活をしながら地元の林業従事者のご指導を得て、実際に林業を体験するというもの。日本の林野環境について森を始点として考える、林業というサイクルの長い作業の一部を体験して生きることの意味を考える、共同生活を通じて他者理解と自己を再発見する——この思いが込められ、今年20回目を迎えた林業体験は長きにわたって続けられ、両者の友好関係の礎を築きました。

東日本大震災、そして息の長いつながりへ

陸前高田支援ボランティア(2011年8月~2015年8月)

11年3月、東日本大震災により、特に東北地方は甚大な被害を受けました。立教大学は「共に生きる」を理念に掲げ、復興支援本部を中心に全学的な連携・協力体制を構築し、被災地支援に着手。同年6月、林業体験を通じて友好関係を深めていた陸前高田市を「重点支援地域」と定め、長期にわたる支援を決定しました。

こうした中で、本学の学生・教職員は、がれき処理などの災害ボランティア、子どもの学習支援、図書館の再生支援、スポーツ交流プログラム、スタディツアー、大学内での交流展など、多岐にわたる活動に取り組んできました。また、復興支援活動への積極的な参加を促すため、「災害ボランティア援助金制度」を制定。各学部や研究科、部局が行うボランティア活動に経済的な支援を行うことで、息の長い、多彩な活動を継続しています。

交流活動拠点「陸前高田グローバルキャンパス」

陸前高田グローバルキャンパス(2017年4月~2025年3月)

大きな転換点となったのは、陸前高田市、岩手大学、立教大学の三者連携協定に基づいて17年4月に「陸前高田グローバルキャンパス」が開設されたことです。目指したのは「大学生が絶え間なく訪れる交流のまち」と「防災・減災を深く学べるまち」の創出。立教大学と岩手大学の学生・教職員だけでなく、全国の大学関係者が陸前高田で活動を行う際の拠点として広く活用されました。

長年にわたり陸前高田市に関する取り組みに携わってきた、総長室社会連携教育課の三浦圭介さんは、この拠点の意義を次のように語ります。

「首都圏の私立大学が距離の離れた東北で、大学や自治体と連携して拠点を構えられたことは、全国的に見てもまれなケースです。過疎化が進む陸前高田市にとっても、交流人口や関係人口の拡大は重要な政策課題であり、また、廃校になった中学校の空き校舎を有効活用したいというニーズもありました。こうした課題にも応える形で新たな拠点を構えることができ、極めてユニークな事例になったと感じます」

そして、陸前高田グローバルキャンパス内には「立教大学陸前高田サテライト」を設置。「陸前高田市の皆さんと、立教大学の学生・教職員が、共に考え、学ぶことを通じて、復興の道を歩む希望を一緒に見いだしつつ、育っていくための場」と位置付け、教育・研究・社会貢献の三方向からこれまで以上に多彩な取り組みを展開してきました。海外の大学生と協働して地域課題に取り組む「陸前高田プロジェクト」をはじめ多数の正課・正課外プログラムが行われ、多くの学生が現地で学びを深めました。さらに、市民向け講座「立教たかたコミュニティ大学」を17年から19年にかけて合計10回開催するなど、陸前高田の皆さんが豊かな人生を送るための機会の提供にも注力。全体として70あまりのプロジェクトが実施され、ゼミナールやサークルの合宿も数多く行われました。

立教野球教室(2012年7月~)

立教バレーボール教室(2013年8月~)

新サテライトを拠点に次なるステージへ

立教大学と陸前高田市主な支援・交流活動

25年3月、「陸前高田グローバルキャンパス」はその役割を終え、惜しまれながらも閉所となりました。本学の新たな拠点を模索する中で、陸前高田市内の陸前高田高等職業訓練校内に新たな「立教大学陸前高田サテライト」を設置することが決定。新拠点の開所に際し、西原廉太総長は次のように語っています。

「本学には池袋と新座の二つのキャンパスがありますが、立教大学陸前高田サテライトは第三のキャンパスだと考えています。利便性の高い市内の中心地に設置させていただいたこのサテライトを拠点に、学生たちがさまざまな体験を通して学びを深めることを願っています」

7月に開所した立教大学陸前高田サテライト

新サテライトでは、これまでの取り組みを継続するとともに、25年度から岩手大学と合同で実施する正課科目「RSL-ローカル(陸前高田)」を開始しました。また、26年4月に開設する環境学部や、立教学院の一貫連携教育のフィールドとして活用することも検討が進んでいます。

陸前高田グローバルキャンパス機構長を務め、研究活動でも陸前高田と深く関わってきた立教大学陸前高田サテライト長の松山真特別専任教授は、新サテライトへの思いを次のように語ります。

「信頼関係や絆というものは目に見えませんが、その象徴として目に見えるサテライトを開設することができ、うれしさでいっぱいです。ここを訪れる学生たちは、人生の中でも非常に大きな経験をすることになるでしょう。それがいつ、どのような形で花開くかは分かりませんが、今後の仕事や人生において、陸前高田で得た経験をどこかで生かしてもらえることを期待しています」
社会連携教育課の三浦さんは、陸前高田での学びが学生にもたらす変化について次のように話します。

「プログラムに参加する学生を見ていると、最初は陸前高田での震災の被害などを漠然と捉えていますが、実際に地元住民の方の話を聞いたり、津波の高さを疑似体験したりする中で、それが『自分ごと』になっていきます。また、防災意識が高まるだけでなく、自分は何のために生きるのか、どんな目的で働くのか、といったことを考えるきっかけになり、それを自分の言葉で話せるようになります。最初の一歩を踏み出すまでは難しいかもしれませんが、サポート体制も充実しているので、とにかく一度現地に行ってみてほしいですね」

新サテライト開所を機に、立教大学と陸前高田市の絆、そして陸前高田での学びはさらに深化していきます。

※西原廉太総長、松山真サテライト長のコメントは、7月13日に行われた「立教大学陸前高田サテライト」開所式・開所記念シンポジウムでの発言です。

西原 廉太

総長

文学部キリスト教学科教授。2010年4月から15年3月まで務めた立教大学副総長時代に立教大学復興支援本部長として、陸前高田市の復興支援活動に注力。

松山 真

立教大学陸前高田サテライト長

コミュニティ福祉学部特別専任教授。社会福祉学、ソーシャルワークを専門として陸前高田市での研究活動や復興支援に長年関わる。

三浦 圭介

総長室社会連携教育課

2017年から陸前高田グローバルキャンパスおよび立教大学陸前高田サテライトの運営に携わる。学生が参加する陸前高田関連のプログラムにも多数同行。

卒業生として、地元住民として、そして新聞記者として。多角的に見た、立教と陸前高田の絆

鈴木 英里さん
株式会社東海新報社代表取締役・記者
2002年文学部日本文学科卒業

立教大学卒業後、東京の出版社勤務を経て故郷に戻り、地方紙の記者として立教と陸前高田の歩みを見てきました。両者の関係は林業体験から始まりましたが、東日本大震災を経て私たちは支援を受ける立場となりました。ありがたさの一方で、与えてもらうばかりでは心苦しさも伴います。そうした中、立教生が林業や民泊など陸前高田での体験に感動を抱いてくれることは、地元住民に「与える喜び」を実感させてくれます。こうした関係性はまさに「共に生きる」を体現しているのではないでしょうか。そこには支援者と被支援者という関係ではなく、お互いがお互いを思い合う「友情」があります。強い絆が今後も続いていくことを願っています。

学生の体験談

陸前高田でのプログラムに参加した学生の声をご紹介します。
※7月13日に行われた「立教大学陸前高田サテライト」開所記念シンポジウムでの発表内容の抜粋です。

人とのつながり、行動することの重要性を学んだ

林業体験に参加
鈴木 麻友さん
社会学部メディア社会学科3年次

このプログラムでは現地の林業従事者や市職員の方々のご指導の下、実際に林業体験をさせていただき、自然との関わり方を学びました。他の参加学生と自炊共同生活を送りつつ、地元住民の方々との交流の機会にも恵まれました。強く心に残ったのは、東日本大震災で被害を受けた醤油会社を再建された河野和義さんのお話です。廃業を覚悟する中すぐに再建に向けて動き始めた息子さん、自分たちの活動を記事にしてくれた記者の方、その記事を見て支援をしてくれた方々など多くの人の支えがあったからこそ再建ができたと伺いました。そこから実感したのは「人とのつながりは財産である」「とにかく行動してみることが重要」ということ。東京に戻ってからも、林業体験で知り合った仲間とボランティア活動に取り組むなど、人とのつながりを大切にしながら、積極的に行動することを意識しています。

現場での体験を通して震災を「自分ごと」として捉えられるように

陸前高田交流ツアーに参加
澤田 悠輝さん
現代心理学部心理学科4年次

能登半島地震の被災地支援プロジェクトへの参加がきっかけで、もっと体系的に被災地復興について学びたいと考え、陸前高田交流ツアーに参加しました。2泊3日のプログラムの中で、「東日本大震災津波伝承館」の見学や仮設住宅での宿泊体験、防災食体験、地元住民の方々の講話など多くの貴重な経験を得ました。特に震災遺構である米沢商会ビルの煙突に登り、そこで感じた風や眺めから震災の爪痕と復興の歩みを肌で実感できたことは強く印象に残っています。現場に立ち体験することで、震災を単なる知識としてではなく「自分ごと」として捉えられるようになりました。ツアーを通じて陸前高田市とは「過去の記憶を守りながら、未来の命を守ろうとするまち」であると思いました。自分も被災者の方々の声を受け取った一人としてそれを語り継ぐ責任を感じながら、できることに取り組んでいきたいです。

※米沢商会ビル:震災発生時、店主の米沢祐一さんが屋上の煙突に登り津波から逃れたビル。津波の恐ろしさを伝えるための民間震災遺構として保存・維持されている。

陸前高田に関連するプログラム・取り組み

立教大学が実施している陸前高田関連のプログラムや取り組みをご紹介します。

陸前高田交流ツアー【正課外】

2泊3日で陸前高田市内の各所を訪問しながら体験的に学ぶプログラム。2024年度春季のツアーでは「東日本大震災津波伝承館」や震災遺構である奇跡の一本松などを見学。また、当時の市長・戸羽太さんから震災時の対応や復興の現状等について講話をいただきました。さらに、語り部の米沢祐一さんが実際に難を逃れた米沢商会ビルの屋上まで登らせていただき、津波の恐ろしさを追体験。「3.11仮設住宅体験館」での宿泊や各家庭での民泊も、貴重な学びの機会となりました。

RSL-ローカル(陸前高田)【正課】

立教サービスラーニングの実践系科目の1つであり、岩手大学と合同で実施します。「陸前高田市の生活の変化や地域課題を住民とともに考える」をテーマとして、事前学習・現地実習・事後学習の3段階で構成。震災前後からコロナ禍に至る陸前高田市の人々の生活変化に焦点を当て、地域住民の方々へのヒアリングなどを通じて課題を把握。学生がチームを組んで解決策を検討・提案し、社会福祉協議会における地域づくりの活動に寄与することを目指します。

立教野球教室in陸前高田、立教バレーボール教室in陸前高田【正課外】

2012年から野球部による野球教室を、2013年からバレーボール部・女子バレーボール部によるバレーボール教室を実施。野球教室は例年、高田第一中学校と高田東中学校の野球部を対象に行ってきましたが、2025年度は大船渡市での大規模林野火災を受け、本学野球部員の「大船渡市の中学生を元気づけたい」との思いから、大船渡市内の中学生も招待しました。

林業体験陸前高田の森に学ぶ【正課外】

4泊5日で生出地区にある「ホロタイの郷『炭の家』」に宿泊し、共同自炊生活をしながら林業従事者や市職員の方々のご指導の下、林業について学びます。森林の中にある「立教の森」「立教の森Ⅱ」というエリアで実際に枝を切り落とす林業体験を行います。地元住民の方々との交流や「東日本大震災津波伝承館」の見学の機会もあります。今年20回目を迎えました。

陸前高田市立高田第一中学校との交流プログラム【正課外】

立教野球教室やイングリッシュ・キャンプなどで交流のある陸前高田市立高田第一中学校の生徒を池袋キャンパスに迎えて、「キャンパスツアー」「大学生とのグループセッション」などを行います。プログラムを締めくくる「お礼の会」では、生徒による合唱が披露され、池袋チャペルに歌声が響きます。

陸前高田プロジェクト【正課】

被災地の現状を知り、復興における課題を市民の方々と考え、共有することを目的としたプログラム。アメリカ・スタンフォード大学など海外大学の学生と協働で実施し、プログラムは全て英語で行われます。グループワークでまとめた考えを国内外へ発信します。

陸前高田イタルトコロ大学

「陸前高田グローバルキャンパス」によって運営されてきた、陸前高田における課題・ニーズと学生団体・ゼミ・研究室をマッチングする取り組み。現在は陸前高田市の事業として運営。立教生も参加しています。

SDGsフィールドワーク【正課】

文学部が開講する、岩手県立高田高校との高大連携科目。陸前高田市の自然、歴史、文化、産業、東日本大震災の被害などについて理解し、グローバルな視点から課題を掘り起こし、この地域の持続可能な社会づくりのための提案を行います。

新入職員研修in陸前高田

入職2年目の職員が「共に生きる」について学ぶとともに、現地の方の仕事への向き合い方や生き方に触れ、働くことを考えます。震災直後から行っていた「職員ボランティア」の後継プログラムとして、2013年度から実施しています。

サービスラーニングC(イングリッシュ・キャンプ)【正課】

異文化コミュニケーション学部で開講。陸前高田市内の中学生の英語コミュニケーション能力の向上を支援し、育成する方法を学びながら、自己のコミュニケーション能力を高め、理論と実践を結び付けます。

立教大学陸前高田サテライト援助金

本学の学部生・大学院生が陸前高田市で積極的に研究・教育・社会貢献に関する活動に取り組めるよう、交通費や宿泊費を援助する制度。

MSDAフィールドトリップ【正課外】

大学院社会デザイン研究科公共・社会デザイン学コース(MSDAコース)の1年次生を対象に実施。陸前高田市へのフィールドトリップを通して、災害リスク、レジリエンス(回復力)、復興などについて学びます。

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