2022/09/21 (WED)

立教大学共生社会研究センター・オンラインミートアップ
「『オー プンでフリー』の使い心地ーーArchivesSpaceを導入して』 を開催しました(2022年9月17日)!

平野 泉(立教大学共生社会研究センター・アーキビスト)

台風14号がじわじわと接近中の2022年9月17日(土)14-16時。またまたオンラインでのミートアップを開催いたしました。
これまでセンターでは、国際アーカイブズ評議会(International Council on Archives)の肝いりで開発された「オープンでフリー」のアプリケーションであるAtoMに関するミートアップを複数回開催してきました。しかし、同様のオープンソースのアプリケーションは他にもあります。北米のアーカイブズ機関でよく用いられているArchivesSpaceや、同じく北米のミュージアムに利用例が多いCollective Accessなどが知られています。

そこで今回は、日本のアーカイブズ機関として初めてArchivesSpaceを導入された大阪中之島美術館・アーカイブズ情報室の松山ひとみさんに、システム選定の際に検討したこと、導入までの経緯や、導入してからの苦労などをお話していただきました。また、松山さんの同僚でIT担当の石谷舞さん、そしてArchivesSpaceのインストールや日本語対応といった初期構築を、そして現在は保守・監視などを担当されている株式会社・メタインフォの井村邦博さんも、それぞれのかかわりとお仕事についてお話しくださいました。
松山さんのお話「ArchivesSpace導入と利用」では、整備計画の中でもアーカイブズを主要事業に位置づけてきた大阪中之島美術館が、専任の学芸員をしっかり採用し、美術館が収蔵する「作品」以外のものを「情報資源」としたうえで、主として学芸員が研究のために使用する図書以外の情報資源をすべて「アーカイブズ情報室」の管理対象としていることをお示しいただきました。そこには、受贈した書籍や貴重書類、作家文書などのアーカイブズ資料、そして美術館自体の業務文書が含まれます。とくに収集したアーカイブズ資料と美術館の業務文書については、収蔵資料の全体像を見渡せる仕組みがなかったことから、アーカイブズ管理専用システムの導入の検討を開始されたとのことでした。しかしオープンソースのシステムにはメリットもあればデメリットもあります。そこで有識者会議での検討や、アメリカの美術館視察などを経て、ニューヨーク近代美術館やArchives of American Art、ゲッティ研究所などでも使われているArchivesSpaceに絞り込んでいったそうです。ArchivesSpaceにはメンバーシップ制度があり、それがユーザーを支えるコミュニティを形成していることも、判断にあたってはプラス要因となったとのことでした。

株式会社メタ・インフォの井村邦博さんからは、「ArchivesSpaceのサービスについて」ということで、気になる価格設定も含めた具体的なお話を伺うことができました。お値段については、ぜひ直接お問い合わせください!そして、もう一つ誰もが気になる日本語対応に関しては、ArchivesSpaceもある程度手間をかけて「日本語化」する必要があるとのことで、日本語形態素解析、異体字や標記の揺れなどに関するチューニングを井村さんが実施されたとのことでした。

そのようにしてめでたく導入されたArchivesSpaceですが、使ってみると課題がないわけではありません。日常的にそうした課題解決に取り組んでいる石谷舞さんからは「ArchivesSpace運用上の課題と改善」というタイトルでお話しいただきました。

課題としては:

①日本語での表示順:例えば資料群のリストをタイトル50音順に並べることができない(Unicodeの順になってしまう)。
②検索結果等をPDFでの出力が、日本語の場合のみうまくいかない。
③エクセルなどで作成した目録を、csvなどの形式でまとめてインポートすることができない。

①については、英語を併記してそちらがABC順に並ぶようにすることでとりあえず対応し、②についてはスタッフ用画面については解決したものの、利用者向け画面では未解決、とのことでした。③については今のところ館内的にそれほど需要がなく、大きな問題とはなっていないが...とのことでした。

また、様々なトラブルや課題については、保守を担当している井村さんに解決してもらう部分と、ArchivesSpaceのコミュニティに頼る部分とで切り分けているそうです。後者がどの程度役に立つのか?は気になるところですが、問い合わせに対する対応(もちろん全部英語ですが)もは概ね迅速(だいたい翌日回答)かつ的確だとのことでした。

この間、チャットにはどんどん質問が入力され、その内容も基本的なタームの確認から、ArchivesSpaceがアメリカの記述標準DACS準拠であることで、日本のアーキビストが比較的慣れているISAD(G)との違いを感じるか、美術館の「作品」に関する情報とのリンクをどのようにしているか、やはりcsvでのインポートができないのは不便ではないのか(私もここは興味津々でした)…など多岐に渡るものでした。
参加者はZoomの参加者カウントが最大になった時点で27名、常時接続25名程度だったことと思いますが、たいへん幅広く、活発な意見交換ができたように思います。

お話くださった松山さん、石谷さん、井村さん、そして土曜日の午後にご参加くださったみなさまに、この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました!

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