2021/11/24 (WED)

オンライン・ミートアップ
「古いデータを新しいシステムに——アーカイブズの編成・記述・メタデータ」を開催しました(2021年11月20日)

アーカイブスと言えば段ボールと古い資料、というイメージを持たれる方も多いかもしれませんが、アーキビストは日々、データやシステムとも格闘しております。

というわけで、アーカイブス資料情報のためのオープンでフリーのシステムに関する情報交換の場として継続的に開催してきた「オンラインミートアップ」の3回目を、11月20日(土)午後2時~4時に開催いたしました。

今回は、京都大学大学文書館の橋本陽さんと、東京大学文書館の元ナミさんをお招きして、長年蓄積してきたデータを搭載した検索システムの更新の際に生じる課題などについてお話していただきました。

橋本陽さんのご報告のテーマは「和風・オーストラリア・(シリーズ)・システム:原則と現実」。

アーカイブズ資料のまとまりの中で、「シリーズ」は最もつかみにくい概念かもしれません。「請求書」や「〇〇申請書」など、同じ機能を果たす同じ形式の記録は時系列にファイルされることが多いと思いますが、そのようにまとめられる一連の(a series of)記録のまとまりがシリーズと考えれば、シリーズが生まれるのは記録を生み出す仕事の現場です。一方、混沌とした状態の資料群を整理するアーキビストが、バラバラの記録をその機能や形態でひとくくりにすることがありますが、そうしたまとまりにも「シリーズ」の語が用いられます。さらにオーストラリアで生まれた「シリーズ・システム」という言葉もあって、アーキビストの間でも「シリーズ」という語の理解にばらつきが生じることがあります。しかし今回、橋本さんはアーカイブス学の基本に立ち返ってそのあたりをすっきり整理し、日本の組織文書の移管を受けるアーカイブスでは、本来的なシリーズを用いて資料を編成・記述するのはなかなか難しいということを指摘。そのうえで、京都大学大学文書館 所蔵資料検索システムに搭載されているデータを用いて、AtoMでほんのり和風の「シリーズ・システム」を可視化してみるとしたらどうなるか?というアイディアを示してくださいました。

続く元ナミさんのご報告のテーマは「その目録、いつまで使える?—記述データを見直す—」。

東京大学文書館デジタル・アーカイブは、AtoM同様オープンでフリーの、OMEKAを用いて2018年に本公開されました。しかしOMEKAはもともとアイテムごとの管理に向いた仕組みなので、アーカイブズ資料の構造を示して利用者の検索を助けるための階層表示(樹状図)などを盛り込むために様々なカスタマイズをした結果、現行の「クールでナイス」(元さん談)なシステムになりました。とはいえ、システムには更新の時がやってくるのも世の常です。そこで元さんは、現行のデータをカスタマイズなしのOMEKAとAtoMの両方に載せてみたらどのくらい見え方が違うのかを実際に見せてくださいました。また、個性豊かなアーカイブズ資料を整理する個性豊かなアーキビストが作り出す個性豊かなデータがもたらす様々な課題についても指摘してくださいました。やはり大切なのは、統一ルールに基づく、正確で機械にやさしいデータづくり!—共生社会研究センターのデータもけっこうバラバラなので、元さんのご指摘、耳が痛かったです。

ディスカッションでは「資料構造を樹状図で見せるのはそもそも有効なのか?」、「ICAの新しい記述標準、Records in Contexts(RiC)ではどんなことができるようになるのだろう?」などが話題にのぼりました。

アーキビストの仕事は(どんな仕事でもそうでしょうが)、先の世代の苦労の上に成り立っています。先輩たちの苦労と成果を受け継ぐとともに、次の世代のアーキビストの苦労を少しでも軽くするために、今、何をすべきなのか。お二人のご報告からは、それを考えるためのヒントをいただいたように思います。

ご報告のお二人、そしてご参加くださったみなさま、お休みの日にお時間をさいていただきほんとうにありがとうございました。
アンケートをもとにまた企画を検討いたしますので、ぜひ次回もご参加くださいませ。

お使いのブラウザ「Internet Explorer」は閲覧推奨環境ではありません。
ウェブサイトが正しく表示されない、動作しない等の現象が起こる場合がありますのであらかじめご了承ください。
ChromeまたはEdgeブラウザのご利用をおすすめいたします。