2026年4月環境学部開設 環境学部の挑戦とリベラルアーツの深化

立教大学

2026/07/16

トピックス

OVERVIEW

2026年4月、池袋キャンパスでは18年ぶりとなる新学部「環境学部」を開設しました。さまざまな環境危機が叫ばれる現代において、「環境正義」を理念としつつ、環境問題の解決と持続可能な社会への変革を担う「環境リーダー」を育成する環境学部とはどのような学部なのか。学部開設に尽力した4人の教員による座談会を通じて新学部の特徴に迫ります。

環境学部開設記念座談会

左から、石川淳副総長、二ノ宮リムさち学科長、小林潤司学部長、西原廉太総長

立教のリベラルアーツ教育を象徴する文理融合の新学部

石川 まずは西原総長から新学部設置の背景についてお聞かせください。

西原 2021年に私が総長に就任した際、新学部の構想にあたって、「建学の精神を反映した学部」「進化し続ける学部」「グローバル化に対応する学部」などの前提条件を掲げていました。これに基づいて検討を重ねた結果、2023年に「環境学部」を開設する方向性が定まったのです。一方で、2024年に創立150周年を迎えた立教大学は、これまで培ってきたリベラルアーツ教育をさらに深化させた〈Global Liberal Arts & Sciences〉を究める大学を目指しています。文理融合の環境学部は、まさにこれを象徴する存在であり、本学の知を結集した研究・教育に期待しています。
石川 「環境学部」というストレートな名称も含めて、本学の創立200周年を越えて長く続く普遍性の高い学部ではないでしょうか。環境学部の理念や学びの特徴については開設に尽力された小林学部長からお聞かせください。

小林 学部の開設準備に着手する際には、西原総長と石川副総長から、二ノ宮リム教授と自由に理念を作ってほしいと言われました。「リベラルアーツに基づいた環境学を実現しよう」という思いがあり、文系と理系分野、横断した分野など多様な専門性を持つ人が協働する学部を目指しています。

二ノ宮リム 私が環境学部の構想に共感したのは、「環境正義」の理念を最初に掲げていた点です。これは環境問題の解決と公正な社会の実現を両立させる考え方であり、特に現代のさまざまな格差や差別を解消していくことを重視しています。その点において、キリスト教に基づき、人間の尊厳を尊重する教育に取り組んできた本学は、「環境正義」を真正面からうたうにふさわしい大学ではないでしょうか。また、環境問題への取り組みには「現場」とのつながりが必要になりますが、環境学部では「フィールドスタディ」を必修としている点が大きな特徴です。

石川 本学が積み重ねてきたリーダーシップ教育の知見を環境分野に適用した「環境リーダーシッププログラム(ELP)」も大きな特色ですね。複雑に問題が絡み合い、多様なステークホルダーが関わる環境分野だからこそ、チーム全員がそれぞれの強みを生かし合う「シェアド・リーダーシップ」が重要になるのではないでしょうか。

二ノ宮リム さまざまな立場、価値観を持った人たちと協働して課題を解決していくには、「対話」が欠かせません。その対話と協働に導くのが「シェアド・リーダーシップ」なのだと思います。

小林 もう一つ特徴的なのが「卒業プロジェクト」です。これは通常の卒業論文と異なり、学生に環境問題の解決を目指したアクションを実際に起こしてもらうものです。計画立案から実践、振り返りまで1年を通して取り組み、社会を変えていく実体験をしてほしいと考えています。環境学部では、卒業論文と卒業プロジェクトのどちらかを選択できる仕組みとなっています。

環境学部の学びがもたらすもの

石川 環境学部の開設や特色ある学びが、大学全体や他学部、学生たちにどのような効果をもたらすと思われますか?

西原 環境学部は文理の枠を超えて多様な専門性を身に付けられる画期的な学部です。新しい教育手法や取り組みを一つのモデルとして、他学部に好影響をもたらし、全学的な教育水準を押し上げていくことを期待しています。

二ノ宮リム 環境学部は、これまで本学が積み重ねてきた研究成果や知見の上に成り立っています。例えば、立教サービスラーニングセンターやESD研究所、共生社会研究センターといった組織は環境学部と関わりが深く、それらの組織が持つ貴重な資料や、地域連携のつながりを環境学部の教育に活用していく予定です。環境学部を開設したことで、さらなる相乗効果を生み出せたらと考えています。

石川 確かに環境学部は本学のこれまでの蓄積の上に設置された学部ですので、学生には立教の伝統の中で自信と誇り、期待を持って学んでほしいと思っています。また、その中で身に付けた対話力や協働する力、リーダーシップは、社会に出てどのような仕事に就いても役立つことでしょう。

小林 環境学部のカリキュラムは、基礎的な科目をどの年次でも履修でき、学び直しもできる自由度の高いものになっています。そして、年次の終わりに毎回、自分の現在地点と将来的に目指すところを自己分析してもらいます。中期的、長期的な目標をしっかり立てて動ける能力を育みたいと考えています。

二ノ宮リム 今の時代、環境問題と無関係の人はいませんし、全く関わらない組織もありません。ですから、環境に特化した仕事に就かなくても、環境問題について深めた学びは人生を通じて役立ち、求められていくと認識しています。

石川 新たな歴史の一歩を踏み出した環境学部。次代を担う「環境リーダー」というキーワードを見据えて、学生、教職員が一体となって学部のカルチャーを築いてゆくと期待しています。そのことは、他学部の学生にとっても新たな学びに出合う機会の提供につながります。環境学部の開設を通して、立教大学の研究・教育がより豊かなものになると確信しています。

小林 潤司

環境学部長。1996年、東京大学理学部卒業。2000年、同大学大学院博士課程修了。博士(理学)。国際基督教大学教養学部准教授などを経て、24年より立教大学環境学部設置(25年より開設)準備室教授。26年より現職。専門は環境化学、有機化学。

二ノ宮リム さち

環境学科長。1998年、国際基督教大学教養学部卒業。2014年、東京農工大学大学院連合農学研究科博士課程修了。博士(農学)。24年より立教大学環境学部設置(25年より開設)準備室教授。26年より現職。専門は環境教育学、ESD(持続可能な開発のための教育)論。

石川 淳

立教大学副総長(統括・学生支援担当)。2001年、慶應義塾大学大学院経営管理研究科博士課程修了。博士(経営学)。09年、経営学部教授。環境学部開設準備室長を務め、26年より環境学部教授に。リーダーシップと多様性について研究。

西原 廉太

立教大学総長。1987年、京都大学工学部金属工学科卒業。2013年、関西学院大学神学研究科にて、博士(神学)取得。2007年、立教大学文学部キリスト教学科教授に就任。2021年より現職。専門はアングリカニズム、エキュメニズム、組織神学、現代神学。

TOPICS 環境学部の教育・研究拠点「19号館」竣工

木造3階建ての19号館は、高度な省エネ性能と太陽光発電による創エネを組み合わせることで、一次エネルギー消費量を実質75%以上削減する「Nearly ZEB」を達成。都内で木造の大学施設がNearly ZEB認証を取得したのは、この建物が初の事例となります。環境教育の「生きた教材」となるよう、ひさしや木格子による日射制御、太陽光パネルによる発電効果の「見える化」など、学生が日常的に環境技術の効果に触れられるパッシブデザインを随所に採用しています。

※Nearly ZEB(ニアリー・ゼブ):ZEB(Net Zero Energy Building)の4分類のうちの一つ。省エネと創エネにより、従来の建物で必要なエネルギー消費量を75%以上削減した建物のこと。

19号館の南東外観

屋上の太陽光パネル

木材が使われる通路の天井

TOPICS 「環境」に関連する学内の研究・教育機関

立教サービスラーニングセンター
立教サービスラーニング(RSL)は、「世界・社会・隣人」と実際に交わりながら、社会の現場も「教室」として捉える正課科目群。2016年に同センターを開設し、全学共通科目の総合系科目にてRSL科目を展開。カーボンニュートラルやSDGsに関する実践系科目も提供しています。
ESD研究所
「環境教育」と「開発教育」を切り口に、人文・社会・自然科学的視点から研究を推進。国内外のネットワーク強化により、ESD(Education for Sustainable Development:持続可能な開発のための教育)分野の「ハブ」として、2007年に設立。
共生社会研究センター
国内外の多様な市民の社会活動に関する資料を収集・公開し、実証研究を通じて持続可能な共生社会の実現に資することを目的として、2010年に設立。草の根の経験が生み出す膨大な「知」を市民社会の形成に生かします。

「次世代環境リーダー」の育成

Report 立教大学環境学部開設記念 立教大学×酪農学園大学 連携協定締結記念シンポジウム

3月14日、立教大学環境学部開設ならびに立教大学と酪農学園大学との連携協定締結を記念したシンポジウム「『次世代環境リーダー』の育成—豊かな環境と公正な社会を導く—」を開催しました。

登壇者の集合写真

石川淳副総長のあいさつで幕を開け、西原廉太総長が「環境学部開設にあたっての立教大学の教育理念」を語りました。続いて岩野英知酪農学園大学学長から「酪農学園大学新学類開設と両大学連携の狙い」というテーマで講演がありました。

ゲスト講演者による話題提供では、一般社団法人Climate Integrateの平田仁子代表理事(現・環境学部客員教授)、新渡戸文化中学校・高等学校の山藤旅聞副校長(一般社団法人旅する学校代表)、東京大学未来ビジョン研究センターの江守正多副センター長、株式会社UPDATER[みんな電力]の真野秀太上席執行役員、小山市総合政策部ゼロカーボン・ネイチャーポジティブ推進課の小久保智史課長補佐、酪農学園大学の佐藤喜和教授からそれぞれ環境問題、教育、ビジネス、地域、クマ問題といった多彩なテーマでプレゼンテーションが行われました。

シンポジウム後半では、酪農学園大学の小糸健太郎農食環境学群長から、4月に開設した同大学の「農環境情報学類」について解説がありました。パネルディスカッション第1部では森朋子環境学部准教授の進行により、小糸酪農学園大学教授、江守氏、山藤氏、真野氏、二ノ宮リムさち環境学科長が「環境リーダーを育成するための学問的基盤の重要性」をテーマに、語り合いました。

パネルディスカッション第2部では大久保奈弥環境学部教授の進行により、国立環境研究所の宮﨑紗矢香氏、小久保氏、佐藤酪農学園大学教授、平田氏が「地域の将来を支える環境リーダーの育成」をテーマに議論。最後に小林潤司環境学部長による閉会のあいさつで幕を閉じました。

※当時の所属は環境学部開設準備室。

パネルディスカッションの様子

パネルディスカッションの様子

全学部に展開する「環境」関連科目

全ての学部生が履修できる「全学共通科目」の「環境」関連科目がさらに拡充。その一部をご紹介します。

科学と環境

気候変動、生物多様性、社会的包摂、健康・福祉といった社会課題への応答として、都市空間を人と自然中心につくり変えようとする現代都市の潮流を学ぶ。近代都市計画における都市と自然の関係を概観し、国内外で進められている「再自然化」、法制度、実践を取り上げる。

環境学への招待

環境問題に関する基礎的な知識や、気候変動・脱炭素への取り組み、エネルギー問題、生物多様性などについて学ぶ。また、環境問題の構造、歴史的背景、対策の現状を踏まえ、環境問題と人間社会の関係、環境の価値、具体的な環境問題への対策などに触れる。

人間と環境

人間文化と環境共生をグローバルに探究する。また、経済学の基本的な考え方を用いて環境と経済の関係性について学んだり、気候変動や生物多様性の損失といった地球規模の課題に「グローバルなルール形成」と「ローカルな実践」からアプローチする。

立教ゼミナール5

「生物と多様性それにまつわる環境問題を理解する」
生物学の基礎的知識を始めに身に付け、陸上から海洋までのさまざまな生態系について学ぶ。その上で具体的な環境破壊の事例を取り上げ、その背景について議論、発表を行う。自分自身の生活環境や身近な生態系に目を向け、どのように保全していくべきか考察する。

SDGs×AI×経済×法

各テーマの最先端で活躍するゲストスピーカーによる講義を通して、SDGsについて、ファクトを踏まえて現状を理解する。ゴールを達成するためにどのような取り組みがなされているのかを学び、自分に何ができるのかを考え、行動する力を育む。

カーボンニュートラル人材育成講座

地球環境の現状をファクトに基づき理解した上で、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルについて深く学ぶ。カーボンニュートラルを実現するための施策を提案・実行できる人材の育成を目指す。

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