建学時の図書館に思いをはせる ~図書館の窓~

立教大学図書館館長、学校・社会教育講座(司書課程)教授 中村 百合子

2019/04/05

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OVERVIEW

全学で池袋キャンパス100周年をお祝いする中、池袋図書館では、立教大学池袋キャンパス・図書館百周年記念展示として、「スパックマン・オーヴァトン文書・武藤重勝史料・図書館旧事務用品史料」の展示を行っています。

本学では、1918(大正7)年、図書館(現メーザーライブラリー記念館(旧館))が竣工しました。その初代館長はH・C・スパックマン教授で、第二代図書館長がD・W・オーヴァトン教授でした。武藤重勝氏は、初代図書館長のころから長く、副館長を務めた職員です。この3人が残した文書群に加えて、図書館が、コンピュータの普及と共に情報管理の仕組みを大きく変更してきたことを受け、20世紀の本学図書館の事務用品で残っていたものの一部を展示しています。ぜひ地下1階の展示コーナーを訪れてご覧になってください。

日本における図書館の誕生

記念展示の反対側には、初代から第八代までの立教大学図書館長の肖像が飾られている

日本の大学の歴史は明治時代にさかのぼります。欧米諸国と同水準の高等教育機関の設置は明治初期から取り組まれましたが、それに図書館が付設されるべきことは当時から認識されていました。日本の近代的な図書館の歴史もこのころにさかのぼります。明治初期にはそれは「書籍館」(しょじゃくかん)と称され、のち、「図書館」(ずしょかん、としょかん)という呼び方が広まっていきました。それは、欧米のbibliothek/bibliothèqueやlibraryが紹介されるなどして、江戸以前の藩校や神社等に設置された「文庫」(ぶんこ)、つまり「ふみのくら」などとは異なる、より開かれた存在として、認識されていくようになりました。

日本で「大学」の名称を最も早く付与された東京大学は、1877(明治10)年の創立のときから、東京大学図書館という組織を置いていたそうで、これが「ライブラリーに当るものをわが国で初めて図書館と称した」と言われています(岩猿敏生『日本図書館史概説』日外アソシエーツ、2007、p.151)。ただし、独立した建物が置かれたのは、15年後の1892年だということです。

立教での図書館の歴史

池袋キャンパス・図書館百周年記念展示「スパックマン・オーヴァトン文書・武藤重勝史料・図書館旧事務用品史料」の様子。池袋図書館にて、2018年度内展示(終了日未定)

本学の場合はどうだったでしょうか。アメリカ聖公会のC・M・ウィリアムズ主教が、築地に私塾・立教学校を開いたのは1874(明治7)年のこと、そして1877年には東京三一神学校(現聖公会神学院)を開校しました。1894年に着工された、立教学校の新しい建築群の中心にあった六角塔の2階が図書室であったことは、その平面図や写真からも明らかです(立教学院百二十五年史編纂委員会編『BRICKS AND IVY:立教学院百二十五年史図録』立教学院、2000、p.16、35)。また、立教大学へ移管された古い洋書に貼られた蔵書票の存在からは、神学校にも図書館(室)があったらしいことが推測されます。長老派等による東京一致神学校も同じ1877年に築地に開校していますが、この神学校にルーツをもつ明治学院大学は、開校の年に東京一致神学校図書室が開設されていたとしています。

本の表紙裏に貼り付けられていた「蔵書票」

「東京三一神学校」の蔵書印。戦前まで蔵書はアメリカ聖公会からの寄贈図書が大半を占めていた

宣教師であるウィリアムズ主教らが育ったアメリカ合衆国で、どのような教育、どのような図書館を経験していたのか、それが私塾や神学校の開校にあたり、どのような判断と行動につながったのかを知りたいという思いに駆られます。実はこのあたりの研究は、図書館史研究においてもほとんど取り組まれていません。ただ、今回この原稿を書くにあたって調査をしている間に私は、1860(万延元)年6月30日に、当時、長崎にいらしたウィリアムズ主教が、デニソン(S. D. Denison)という司祭─アメリカ聖公会内外伝道協会の外国委員会主事総代だった方とのこと─に宛てて送った手紙の末尾に次のような記述があるのを見つけました(立教学院百二十五年史編纂委員会編『立教学院百二十五年史:資料編第4巻(ウィリアムズ主教書簡集Ⅰ)』立教学院、2000、p.5)。

Can you kindly send, for our Mission Library, copies of the Spirit of Missions,(中略)If you have any [enough] quantity on hand, I would be obliged to you for a set for myself.

つまり、図書館にSpirit of Missions (伝道協会の機関紙)を送ってほしい、もし十分な数が手元にあるなら、私の分も送ってくれたら感謝する、と。図書館、つまりみなと共有(share)する行為が優先されていて、印象的です。ウィリアムズ主教がおそらくそう考えていたように、立教大学図書館がいつまでも、私たちが学びを共有する場であるようにと願います。

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