熱中症の基礎知識と適切な処置・対策

スポーツウエルネス学部 安松 幹展教授

2026/10/07

研究活動と教授陣

OVERVIEW

「酷暑日 ※1」という新たな予報用語が制定されるほど、暑さが一段と厳しくなる昨今、注意したいのが熱中症のリスク。重症化すると命に関わるため対策が重要です。長年、熱中症予防研究に取り組むスポーツウエルネス学部の安松幹展教授に、熱中症に関する基礎知識や応急処置、予防策について伺いました。

※1 酷暑日:最高気温40℃以上の日の名称として、2026年4月に気象庁が制定。

熱中症の症状と対処方法

人間の身体は運動すると熱が生じますが、通常は発汗や皮膚の血管を拡張させることで熱を逃し、体温を37℃前後に保とうとします。しかし、暑い環境下の運動になると、筋肉から生じた熱だけではなく環境からの熱も体内に流入することになり、発汗や血管拡張だけでは十分な熱を外に逃すことができなくなります。熱中症は、その熱の収支バランスが崩れ、過度に体温が上昇したことにより起きる症状です。

熱中症はその重症度から3段階に分類されます。Ⅰ度は現場での応急処置で対応が可能な軽症で「熱失神」と「熱けいれん」です。熱失神とは、熱を逃すために体表に血流が集中することで脳への血流が不足し、めまいや立ちくらみが起こる状態。この場合は足元を高くして寝かせると通常は回復します。「熱けいれん」は大量の発汗で塩分などの電解質が失われ、筋肉がつってこむら返りのようになる状態。血液中の塩分濃度が薄まらないよう、スポーツドリンクや経口補水液を摂取することが望ましい対応です。

Ⅱ度は「熱疲労」と呼ばれるものです。水分不足が主な要因で、脱力感や倦怠けんたい感、めまい、頭痛、吐き気を催すのが特徴です。「ちょっとめまいがしたけど大丈夫」と動き続けるとⅢ度の「熱射病」に進行する危険があるため、そうした症状が出たら、無理をせず、活動を中断して休養を取ることが重要です。

Ⅲ度の「熱射病」は深部体温が40℃を超える重症で、意識障害が起き、問いかけに対して返答ができなかったり、普段とは違った言動が見られたりすることがあります。このような症状が見られる場合は、すぐに救急車を呼び、その間に強制的に身体を冷やすことが必要です。立教大学体育会サッカー部では、練習中、子ども用プールに水を張っておき、熱中症の疑いのある選手が出たら氷を入れて全身をすぐ冷やせるようにしています。意識がある場合は、「自分で水が飲めるか」が病院へ搬送する際の判断基準になります。熱中症は急変することがあるため一人にさせないことが大切。水が飲める状態でもその日の活動再開は避けるべきです。無理をして「熱射病」になると臓器が炎症を起こし、復帰まで数カ月を要することもあります。

日本スポーツ協会Webサイトを元に作成

熱中症の予防方法

体育会サッカー部(女子チーム)、試合中の給水タイム

具体的な方法は3つあります。1つ目は「水分補給」で、重要なのは水分を胃から腸へ移動させ、腸で血管に吸収させることです。そのためには、適度な糖質と塩分が含まれたスポーツドリンクのような飲料を20分ごとに250㎖程度摂取するのが理想的です。

2つ目は「身体冷却」で、送風することや、手のひら・足の裏にある効率的に熱を逃すことができる「動静脈吻合どうじょうみゃくふんごう」を冷水・保冷剤などで冷却すると効率よく体温を下げることができます。

3つ目は、「暑熱順化しょねつじゅんか」で、暑くなる前から1〜2週間、外を30分ほど散歩したり、40℃ぐらいのお風呂に入ったりして意図的に汗をかきやすい身体をつくるのも効果的です。気象情報アプリの熱中症アラートや暑さ指数(WBGT※2)も活用し、体調管理に気を配っていただきたいと思います。

※2 WBGT:Wet Bulb Globe Temperatureの略。湿度、日射・輻射など周辺の熱環境、気温の3つを取り入れた指標。

3つの視点

  1. 熱中症になったら度数や症状に応じて処置を判断
  2. 熱中症の疑いがあるときは決して無理しない
  3. 暑熱順化や水分補給、効果的な冷却方法で酷暑対策を

プロフィール

PROFILE

安松 幹展

スポーツウエルネス学部 教授

東京都立大学理学研究科修了。博士(理学)。2002年に立教大学に着任し、2023年より現職。研究キーワードはフットボールサイエンス、環境生理学、運動生理学など。日本フットボール学会理事。日本スポーツ協会「スポーツ活動中の熱中症予防に関する研究」研究班員。体育会サッカー部の副部長、女子チームのコーチを務める。

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