AIとの向き合い方、求められるリテラシー

人工知能科学研究科 村上 祐子教授

2026/04/10

研究活動と教授陣

OVERVIEW

ChatGPTやGeminiといった「生成AI」が急速な発展を遂げ、人々の仕事や生活に浸透しつつある今日。さまざまな場面で利便性が向上する一方、リスクや懸念も指摘されています。進化を続けるAIと向き合う上で、私たちに必要な心構えやリテラシーとは。大学院人工知能科学研究科の村上祐子教授に伺いました。

AIを「道具」として割り切る

1950年代に誕生した人工知能(AI)は進化を続け、現在では情報収集や会議の要約など、学びや仕事で日常的に利用している人も多いのではないでしょうか。現状では100%正確な答えを出すことはできないものの、その精度は実用に足るレベルまで上がっています。

最近では「フィジカルAI」と呼ばれる、AIでロボットを制御する技術が登場しています。飲食店などでロボットが料理を運ぶ光景はよく見られるようになりましたが、すでに海外の工場ではより汎用的な機能を持つ人型ロボットが配備されています。これまで人間が行っていた仕事の多くが今後、フィジカルAIの作業に置き換えられていく可能性があるでしょう。

そうした中で、私たちが持つべき第一のリテラシーは、AIを「道具」として割り切ることです。動物型のロボットや流暢りゅうちょうな言葉を話すAIを前にすると、つい感情移入してしまいがちですが、そこに「意志」や「心」は伴っていません。AIが発する言葉は「機械音」と同じと捉えるのが健全です。そうした姿勢を持たなければ、AIに依存しすぎて自分を見失う危険性があるでしょう。

道具である以上、やってはいけないことは以前と変わりません。包丁を使って人を傷つけてはいけないように、AIを使って犯罪に手を染めたり、他人の信頼を損なうことがあってはいけません。また、AIに入力した情報は流出する可能性があるため、機密性の高い情報を入力しないという慎重な姿勢も不可欠です。

あまり知られていないのが、AIの「環境負荷」についてです。ユーザー側では実感がありませんが、AIを動かしているデータセンターでは膨大な電力が消費されていて、世界のエネルギー消費量を押し上げています。有効活用するのは良いことですが、ささいな調べものにまでAIを使うのは、ジェット機で近所に出かけるようなもの。今後、AIの「使いどころ」を見極めることも、求められるリテラシーになりそうです。

AIの回答を待つだけの「消費者」にならないために

提供:Alamy/アフロ

AIによって人間の思考力や創造性が損なわれるのではないかという懸念がありますが、二極化すると私は考えています。AIを使ってさらに創造力を増す人がいれば、AIが出す答えに簡単に満足し、思考を停止させてしまう人もいるでしょう。提示されるAIの回答を待つだけの「消費者」になってはいけません。大切なのは、自分の専門領域や得意分野において、良し悪しを判断できる能力を持ち続けることです。AIに頼る場面は避けられないかもしれませんが、1カ所だけでもよいので、自分が「生産者」や「提供者」として頑張れる場所を守ってください。それが人間の尊厳であり、AIという強力な道具を使いこなしながら、これからの社会で生きていくための鍵となるでしょう。

村上教授の3つの視点

  1. 「意志」や「心」を伴わないAIに感情移入しない
  2. AIがもたらす「環境負荷」も見過ごしてはならない
  3. 思考停止にならず「生産者」「提供者」となれる強みを守ることが大切

プロフィール

PROFILE

村上 祐子

大学院人工知能科学研究科 教授

東京大学大学院総合文化研究科博士課程後期課程単位取得退学、アメリカ・インディアナ大学哲学部門にてPh.D.を取得。国立情報学研究所特任准教授、東北大学准教授などを経て、2018年立教大学に着任。2020年より現職。1980~90年代の第二次AIブームの時代からAI研究に携わり、現在は情報哲学・AI倫理・情報教育などを専門としている。

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