AI活用時代の学び~探究の学習とリーダーシップ~
——立教大学×佐賀西高等学校
立教大学特別授業
2026/02/20
研究活動と教授陣
OVERVIEW
「AI活用時代の学び~探究の学習とリーダーシップ~」をテーマに、立教大学の特別授業が2025年11月28日、佐賀県佐賀市の佐賀県立佐賀西高等学校で行われました。同校出身で立教大学経営学部の山口和範教授が、1年生約280人を対象にAI(人工知能)が普及した現代で、今後人に求められる探究力、データ活用力、リーダーシップなどについて講義しました。
経営学部
山口 和範 教授
佐賀市富士町出身。佐賀西高校から九州大学理学部へ進み、同大学院を修了、理学博士。立教大学社会学部を経て2006年から同大経営学部教授。同学部長や副総長を歴任。29年開学予定の佐賀県立大初代学長に就任予定。専門は統計学、データサイエンスで、関連著書多数。
山口 和範 教授
佐賀市富士町出身。佐賀西高校から九州大学理学部へ進み、同大学院を修了、理学博士。立教大学社会学部を経て2006年から同大経営学部教授。同学部長や副総長を歴任。29年開学予定の佐賀県立大初代学長に就任予定。専門は統計学、データサイエンスで、関連著書多数。
一生懸命取り組めば将来につながる
約280人が参加した特別授業の様子
私の出身は、佐賀市富士町の北山ダムの近くです。北山東部小から北山中(当時)を経て、佐賀西高に進学、佐賀市内に下宿して通いました。1981年3月の卒業生です。高校1年の担任が数学の先生で、学問の本質を教えてくれた先生の影響を受け、九州大学理学部数学科に進学しました。先生や友達とたくさん議論をし、充実した高校3年間を過ごしました。伝統あるこの学校で学べることを誇りに、一生懸命何かに取り組めば、必ず将来役に立つという信念を持って皆さんには頑張ってもらいたいです。
納得感と共感を得ることが大事
ここからは、探究について話します。文部科学省が定める探究とは「自己の在り方、生き方を考えながら、よりよく課題を発見し、解決していく」とあります。生きていくとは、どういう形で他者(社会)に貢献していくかということです。与えるものがなかったら得るものはありません。自分が他の人や社会に対して何を与えることができるかということを考えながら探究活動をすることが、今後のキャリアを考える上で大切です。
探究には正解がありません。学校で教科の勉強をする時とは異なる困難さだと思います。正解は誰も知らないし、先生に聞いてもよく分からない。一般的な教科でも今は正しいとされることも、何年か後には正しいとは限らないことに変わることはたくさんあります。今まで常識だと思っていたことが常識ではなくなるかもしれないということを知った上で、正解がない中、何をやるべきかしっかり考えることが大切です。
探究で課題解決をするときのサイクルは、まず現状を知り、いろんな人と話をします。チームでやるときは議論もしますが、最後は必ず結論を出さないといけません。その中で重要なことは、「納得感」と「共感」をどのようにして他の人に与えるかを考えることです。「納得感」とは、頭で考えて「なるほど」と思うことで、「共感」は「一緒にやってみたい」と思うことです。
課題解決の過程でAIなどのツールを使った場合でも、納得感や共感をきちんと共有できるかが、求められるスキルです。それができたら、「グループのリーダー」ではなくても、組織を動かしたり、チームや社会を変えることができます。そのために必要なものがリーダーシップスキルです。
リーダーシップスキルは、チームのメンバー全員がそれぞれの強みを発揮できないといけません。トップが言ったからこうするとか、じゃんけんで勝ったからこの人の提案を採用しようということではありません。なるほどとみんなが納得するまで徹底的に議論することが大事です。気を付けたいのは、相手を論破しないことです。論破してしまったら共感は得られません。納得感、共感というキーワードを頭に入れながら、自分の考えを主張するだけでなく、人の話をきちんと聞くことも必要です。
探究には正解がありません。学校で教科の勉強をする時とは異なる困難さだと思います。正解は誰も知らないし、先生に聞いてもよく分からない。一般的な教科でも今は正しいとされることも、何年か後には正しいとは限らないことに変わることはたくさんあります。今まで常識だと思っていたことが常識ではなくなるかもしれないということを知った上で、正解がない中、何をやるべきかしっかり考えることが大切です。
探究で課題解決をするときのサイクルは、まず現状を知り、いろんな人と話をします。チームでやるときは議論もしますが、最後は必ず結論を出さないといけません。その中で重要なことは、「納得感」と「共感」をどのようにして他の人に与えるかを考えることです。「納得感」とは、頭で考えて「なるほど」と思うことで、「共感」は「一緒にやってみたい」と思うことです。
課題解決の過程でAIなどのツールを使った場合でも、納得感や共感をきちんと共有できるかが、求められるスキルです。それができたら、「グループのリーダー」ではなくても、組織を動かしたり、チームや社会を変えることができます。そのために必要なものがリーダーシップスキルです。
リーダーシップスキルは、チームのメンバー全員がそれぞれの強みを発揮できないといけません。トップが言ったからこうするとか、じゃんけんで勝ったからこの人の提案を採用しようということではありません。なるほどとみんなが納得するまで徹底的に議論することが大事です。気を付けたいのは、相手を論破しないことです。論破してしまったら共感は得られません。納得感、共感というキーワードを頭に入れながら、自分の考えを主張するだけでなく、人の話をきちんと聞くことも必要です。
データの活用で課題解決につなげる
統計の授業でよく使っている例を紹介します。近代看護を確立したフローレンス・ナイチンゲールは、実は統計の使い手としてすごく有名な人です。クリミア戦争でイギリス軍に従軍したとき、兵士の死んでいる状況が変だと気付きました。まず、亡くなった原因を、鉄砲や大砲に撃たれたのではなく、衛生面の問題によるものと仮説を立て、データを集めてグラフ化して戦場の衛生環境の改善を政府に訴えました。その際、エビデンスに基づいて改善点を提案した結果、政府が動き、課題解決につながりました。
今はビッグデータ、AIの時代です。AI時代に人がやるべきことは、10年ぐらい前から、「人がやるべき重要なことが、リーダーシップを発揮すること」だと言われてきました。先ほど、納得感、共感という話をしましたが、議論をする時に、相手を納得させて一緒にやろうと思ってもらいたいときに、データの活用は大切です。
課題解決のためには、今何が起きてどんな現象が起きているかを知るために、いろんな人にインタビューをしたり調査をすることもあります。そのためにデータを使うことは大切です。
データを使う場合、信頼性の高いデータを基にすることが重要です。総務省統計局が運営している「e-Stat 」は、さまざまな信頼性の高い統計に触れることができます。いろんな問題を考えるときに、情報をきちんと使うことは有効な手段なので、ぜひ活用してください。
今はビッグデータ、AIの時代です。AI時代に人がやるべきことは、10年ぐらい前から、「人がやるべき重要なことが、リーダーシップを発揮すること」だと言われてきました。先ほど、納得感、共感という話をしましたが、議論をする時に、相手を納得させて一緒にやろうと思ってもらいたいときに、データの活用は大切です。
課題解決のためには、今何が起きてどんな現象が起きているかを知るために、いろんな人にインタビューをしたり調査をすることもあります。そのためにデータを使うことは大切です。
データを使う場合、信頼性の高いデータを基にすることが重要です。総務省統計局が運営している「
幅広い学びが仮説を立てる力に
課題に向き合った時、これまでの学びやエビデンスを使いながら仮説を立てることが大事です。探究は、AIとも相談しながら仮説を立てられます。その際、すべてのことに疑問を持ち、「本当にそうなの?」と常に自分自身に問いかけてください。仮説を立てる力は、正解のある問題を解く訓練だけでは身につけることができません。では普通の科目はやらなくてよいかというと、そうではありません。仮説を立てるためには、正解のある問題をきちんと解けるようになっておくことが大前提です。一般的な科目もきちんと網羅しておかないと正解のない問題にチャレンジすることはできません。受験に必要な科目は限られていますが、それ以外の勉強、例えば芸術や体育なども一生懸命やってください。幅広い学びが仮説を立てる力にもつながると思います。
高校生の声
- 1年生女子
リーダーシップについての話が印象的でした。私は探究活動の中でリーダーを務めていて、これまで「自分が引っ張っていかねば」と思って、とてもプレッシャーがかかっていました。しかし、全員で力を合わせてそれぞれの力を発揮することがリーダーシップだと聞き、なんだか肩の荷が下りたような前向きな気持ちになれました。
- 1年生男子
西高出身の先輩にこんなすごい人がいるのだ、と誇らしい思いで聞きました。リーダーシップの話はとても共感できました。自分のクラスでも一つのことを決めるときに、みんなで話し合っているので、とても響きました。自分も理系に進みたいと思っているので、統計学のことにも興味が持てました。
- 1年生女子
探究でチームリーダーを務めているのでとても有意義な時間でした。昨年7月、2年生の探究の発表を聞いて「こんなに詳しく調べてすごい。自分たちにできるだろうか」と不安でしたが、物事を多面的に見て仮説を立てるという過程はとても参考になりました。自分たちは世界の戦争について調べているので、データも活用しながらもう少し掘り下げていこうと思います。
- 1年生男子
最も印象に残ったのは、「人生で3回大学に行ってほしい」という言葉でした。大学を卒業しても学びは続き、人生にとっては、むしろそこからが大切だということです。「(他者や社会に)与えるものがなければ、得るものもない」という言葉も心に響きました。探究で得られる経験を今後に生かしていきたいです。
- 1年生男子
自分も「何のために勉強しているのだろう」と考えることがあります。今回の講義で「人が自由になるため」という明確な言葉に納得しました。自由とは自分で物事を決められることであり、その責任を負うために深い学びが必要となる—。高1のこの時期に、学ぶ意味を深く考えられたのはすごく有益でした。
- 1年生男子
探究活動に限らずチームで動く時、意見を出すことばかりに一生懸命になっていた自身の姿勢を改めたいと思いました。人前で発言するのが苦手な人もいます。例えば考えを紙に書いてもらうなど、やりかたを工夫すれば声を上げられるかもしれない。みんなで議論して納得を得ること、共感をつくることをより大切にします。
- 1年生男子
将来は数学の研究を志しています。これまでリーダーシップはリーダーだけが発揮するものと考えていました。自分のグループでもリーダーに頼りきりにしていた面があります。自分は数字やデータを扱うのが得意なので、その強みをチームに貢献できる。メンバーの一人一人がいいところを発揮し合うことを意識して、研究の質を高めたいです。
※本記事は『佐賀新聞』(2026年1月17日掲載)をもとに再構成したものです。
※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご注意ください。
※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご注意ください。
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