一歩踏み出したその先に。国連ユースボランティアで広がった私の可能性

法学部政治学科3年次 野水 綾さん

2025/06/13

RIKKYO GLOBAL

OVERVIEW

2024年度に「国連ユースボランティア」参加者としてトルコのUN Womenで活動した野水さん(法学部)にお話をうかがいます。

野水 綾さん/NOMIZU AYA

  • 学部・学科:法学部政治学科
  • 派遣年度・派遣時年次:2024年度派遣(3年次)
  • 派遣先国/地域:トルコ(イスタンブール)
  • 派遣先機関:UN Women
  • 現地活動期間:2024年10月~2025年2月

◇参加のきっかけ、目標を教えてください

私がこのプログラムに応募した理由は、国際協力・国際開発の分野に強い関心があり、現場での実践的な経験を通して、自分なりの貢献のかたちを模索したいと考えたからです。将来的にこの分野でキャリアを築いていく上で、その第一歩となる経験になると感じました。

国際協力への関心が芽生えたきっかけは、家族とともに訪れたフィリピンでの経験です。裕福な地域のすぐ隣にスラム街が広がるという光景を目にし、同じ国の中でもこれほどまでに生活水準に差があるという現実に強い衝撃を受けました。この体験を通じて、貧困や格差といった問題に対して、自分も何か行動を起こしたいという思いが生まれました。

数ある国際協力のアプローチの中でも、私は特に国連の活動に魅力を感じていました。国連は、各国政府やNGO、民間セクターと連携しながら、複雑な国際課題に対して包括的かつ持続可能な解決策を提示している組織です。そうした多様なステークホルダーの調整や現場での業務を経験することは、自分の視野を広げ、将来この分野で果たすべき役割を具体的に描くために非常に有意義だと考えました。

このプログラムを通して、必要とされるスキルや資質を理解し、自分自身の関心と能力を照らし合わせながら、将来のキャリアビジョンを明確にしていきたいと考えました。

◇派遣された機関について、また今回携わった業務について教えてください

Istanbul Development Dialogueでのディスカッションの様子

UN Womenは、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのために活動する国連機関です。私が派遣された、UN Womenヨーロッパ・中央アジア地域事務所(Europe and Central Asia Regional Office:ECARO)は各国事務所に支援と監督を提供します。私は主に「災害に対する女性の回復力(Women’s Resilience to Disasters)」に関する業務に携わりました。具体的には、①「Beijing+30」や早期警報システムに関するブリーフ・コンセプトノートの作成、②「水の行動の10年」に関連する戦略文書のレビューや政策情報の整理、③国際会議への参加、④会議運営補助や出張調整などの業務に取り組みました。

特に印象的だったのは、国際会議で出会った同世代の活動家との交流です。女性の権利拡大に取り組む彼女の姿勢に強く刺激を受け、将来に向けたモチベーションが一層高まりました。

◇印象に残っている活動を教えてください

特に印象に残っているのは、「水の国際行動の10年」に関連し、UN Women ECARO支援国の水政策(防災、水資源の越境管理、気候変動)に関する調査を担当したことです。英語での情報が乏しい国も多く、英語での公的資料を探すのに苦労しましたが、同僚の助言でカントリーオフィスへ直接問い合わせることで、新たな情報収集の手法を学びました。また、調査を進める中で、水問題が人間の安全保障と深く結びついていること、そしてUNDRR(国連防災機関)やUNRCCA(国連中央アジア予防外交センター)といった他の国際機関が果たす役割についても理解を深めることができました。各国の政策の現状と課題を分析し、上司から専門的なフィードバックを受けながら業務に取り組めたのは、このプログラムだからこそ得られた貴重な経験でした。

◇参加にあたりどのような準備をしましたか

このプログラムに挑戦する大きな自信を与えてくれたのは、一年間のアメリカ留学の経験でした。語学力の向上はもちろんのこと、さまざまな国籍や価値観を持つ人々との対話を通じて、自分自身を深く見つめ直す機会となりました。自分が何を大切にしているのか、どのようなことに強みがあるのか、あるいはどんな課題があるのかといった点について、改めて考えるきっかけになったと思います。

また、異なる文化背景を持つ人々と長時間を共に過ごすことで、異文化に適応する生活スキルや、状況に応じた柔軟なコミュニケーション能力が自然と養われました。特に、文化的背景が異なる相手とのやりとりを通して、多様性を受け入れる姿勢と、自分の意見を明確に伝える力の双方が向上したと感じています。

さらに、留学中には多くのエッセイやレポートを英語で作成する機会があり、その過程で英語のライティングスキルや論理的な構成力も高まりました。限られた時間の中で課題に取り組む中で、効率的な情報収集や要点を整理する力も鍛えられました。

これらの経験は、国際的な環境で、さまざまなバックグラウンドを持つ人々と協働するうえでの重要な土台となりました。国連という多様性に富んだ組織で活動するにあたって、自らの意見をしっかりと持ち、他者と協力しながら行動する力を磨いてきたこの留学経験は、大きな準備の一つであったと考えています。

◇活動中苦労したことがあれば、どのように乗り越えたかと合わせて教えてください

仙台防災枠組ジェンダー行動計画(GAP)のオンライン会議に向けてのミーティング

私が活動中に直面した課題の一つは、派遣先である地域オフィスが担当する国の多さと、それらの国々に関する知識の不足でした。10カ国以上について情報収集とリサーチを行う必要があり、当初は各国の位置、首都、民族構成といった基本的なデータの整理からはじめました。

リサーチを進めるにつれて、各国がそれぞれ独自の地理的、歴史的、文化的、宗教的、そして経済的背景を持っていることに気付きました。この発見は非常に興味深く、単なる情報収集にとどまらず、それぞれの国について深く学びたいという意欲が高まりました。調査を通じて各国への理解が徐々に深まり、政策に対する視野が広がっていくのを実感しました。

また、業務を進める中では、上司から定期的にフィードバックを受けることで、自身の取り組みが適切な方向に向かっているか、期待される成果に沿っているかを確認することができました。同時に、同僚には積極的に質問を行い、自分が理解できていない部分や課題に感じている点について助言を求めました。彼らの経験や多様な視点から多くを学ぶことで、業務の質を高めることができたと感じています。

知識の不足という課題に直面しながらも、自ら調査を重ね、周囲の支援を受けながら着実に知識と経験を積み重ねることで、成長につながる実りある経験を得ることができました。

◇自身の考え方やスキルに関して成長や変化があれば教えてください

上司や同僚との日常的な会話に加え、日本人国連職員や他国の若手職員との交流を通じて、国際機関におけるキャリア形成への理解が深まりました。明確な一本道が存在するわけではなく、それぞれが自身の関心や経験を活かして道を切り拓いていることを知り、今の自分にできることに真摯に向き合う姿勢の大切さを実感しました。また、日々の業務の中でコミュニケーションの重要性も痛感しました。多国籍の同僚と協働するには、言語や文化の違いを尊重しながら、信頼関係を築くことが欠かせません。オフィスでは、トルコ語や英語での挨拶や気遣いの言葉が飛び交い、温かい職場の雰囲気が印象的でした。こうした環境で働く中で、信頼が業務の質を高めることを学びました。今後のキャリアにおいても、主体的な姿勢と良好な人間関係の構築を大切にしていきたいです。

研修旅行にて

研修旅行での集合写真

◇活動を通して、特に国際協力に関して、どんな学び・知見を得ましたか

左)共和国記念日のタクシム通りの様子、右)ジェンダーに基づく暴力撤廃の16日間の告知

国際協力と聞くと、私は「困っている人への直接的な支援」をまずイメージしていました。しかし、UN Women地域オフィスでの経験を通じて、国際協力は単なる短期的な救援にとどまらず、長期的な構造改革に取り組むことが重要だと学びました。

UN Womenは、ジェンダー平等を政策や制度の中心に据えることを目指し、各国政府への政策提言や法整備支援、行政機関の能力強化、多国間連携の促進などを通じて、制度改革と持続可能な変化を後押ししています。また、ジェンダー関連データの活用により、SDGsやCEDAW(女子差別撤廃条約)と整合性のある政策立案も支援しています。

この経験を通して、私は国際協力とは支援することにとどまらず、制度、意識、文化といった社会の根幹にアプローチする長期的な取り組みでもあるのだと、実感をもって理解することができました。

◇これまでの経験や大学生活で得た学びを活かせた場面があれば教えてください

左)アヤソフィアの外観、右)イスケンダル・ケバブ

これまで培ってきたコミュニケーション能力や異文化適応力が、現地で多国籍スタッフと共に活動する中で大いに役立ったと実感しています。仕事を進める上で最も重要な要素の一つは、円滑なコミュニケーションであると強く感じました。多い日には一日に何十件ものメールやチャットのやり取りがあり、対面での会話も欠かせません。特に異なる言語や文化背景を持つ同僚と協働する環境では、相手の意図を正確に理解し、信頼関係を築くことが円滑な業務遂行に不可欠でした。

オフィスはフレンドリーで温かい雰囲気に包まれており、いつも和やかな談笑が絶えませんでした。毎朝オフィスに到着すると「Günaydın(トルコ語でおはよう)」や「Good morning」と挨拶を交わし、その後に「Nasılsın?(トルコ語で調子はどう?)」や「How are you?」とスモールトークが始まります。こうした日常のやり取りが職場の一体感を生み出していました。

また、業務の進捗だけでなく、困難や喜びも共有できる環境が整っており、信頼関係こそが仕事の質や効率を高める大切な要素だと学びました。

◇国連ユースボランティアでの経験を今後どのように活かしていきたいと思いますか

今後は、現場での実務経験をさらに積むことを目指しています。国連の活動をより深く理解するためには、政策レベルの知識だけでなく、実際の現場で何が起こっているのかを把握することが不可欠だと感じています。そのため、まずは大学院で専門性を高め、理論的な基盤を築いた上で、国際NGOや地域の団体でのフィールドワークに携わり、現地の課題や人々のニーズを直接学びたいと考えています。

UNYVでの経験は、単なる学びにとどまらず、今後のキャリアや人生の方向性を見つめ直す大きな転機となりました。この貴重な経験を通じて培った国際感覚や実践的な視点を今後も大切にしながら、地に足のついたかたちで国際協力に携わっていきたいと考えています。そして、一歩ずつ着実に、自分にできる貢献のかたちを広げていきたいと思います。

◇参加を考えている方へメッセージをお願いします

国連に興味がある方、国際協力や開発に関心がある方、どんなきっかけであれ「少しでも参加してみたい」という思いがあるなら、ぜひその気持ちを大切にして、一歩踏み出してみてください。私自身も最初は「自分にできるのだろうか」と不安でしたが、実際に参加してみて、本当に良かったと心から感じています。もっと経験を積んでからと思っているうちに、貴重なチャンスを逃してしまうかもしれません。実際に挑戦する中でこそ学べることがあり、成長は必ず実感できます。私もこの5か月間で、机上では得られない実践的な経験を積むことができ、国連という組織や国際協力の現場に対する理解を深めることができました。

また、コミュニケーション能力や多様な価値観を尊重する姿勢など、多くのスキルが自然と身につきました。そして何より、様々なバックグラウンドを持つ人々との出会いが、私にとってかけがえのない財産となりました。経験豊富な国連職員、同世代の国際協力に携わる仲間、現地のNGOスタッフなど、多様な立場の人々と直接関わり、その考え方や姿勢から多くを学ぶことができました。

こうした経験を通じて、これまで漠然としていた将来のキャリアの方向性が明確になり、自分がどの道を目指すべきかを具体的に考えられるようになりました。また、日々のやり取りを通じて、自分自身や日本をより客観的に捉える視点も得ることができ、自分の強みや課題に改めて気付く貴重な機会にもなりました。

将来の目標や関心は人それぞれですが、このプログラムに参加することで、必ず新たな学びや気づきを得られるはずです。大学生活の中で、自分自身の可能性を広げ、深く成長できる機会として、ぜひ挑戦してみてください。

ジェンダーに基づく暴力撤廃の16日間キャンペーンのチーム写真

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