“異例”のチームが育んだ絆——主将とエース、補い合った不安と自信

テニス部女子

2021/01/29

アスリート&スポーツ

OVERVIEW

部活動はいつだって団体戦。主将だけが部を背負う必要もなければ、エースが勝敗の責任を負う必要もない——。2019年秋のリーグ戦(関東大学テニスリーグ)で、2人の部員に目が留まった。当時3年次だった相川貴子(社4)と倉島愛(観4)。ひときわ大きな声で仲間を鼓舞する姿、常に勝ちにこだわる姿勢に大器の片鱗を見た。

1年次、ダブルスでペアを組んだ相川(右)と倉島(左)

テニス部女子では例年エースが主将を務めることが多いが、2人の代は違った。同期皆で何度も話し合いを重ね、主将は相川に。「プレーは愛(倉島)が引っ張るから、自分は他の部分で貢献したい」。

部員にもらった勇気

2019年夏、関東大会で奮闘する相川。急成長を遂げ、秋のリーグ戦にも出場した

高校時代は副将で、実力も二番手だった相川。人生初の主将を担う不安を拭い切れず、当初は自信のなさが発言や行動に表れた。変化のきっかけは、「もっと自信を持ってください」という後輩の一言。「自分らしさを大切にしよう」。そう心が決まった。

取りえは真っすぐで、誰に対しても壁をつくらない社交的な性格。だが、コロナ禍という前例のない事態においては、部員との関係づくりすら難しい。「直接会えなくても、部の絆を深めたい」。そこで、オンライン会議システムZoomを活用し、学年ごとに出し物を行う企画を発案。これまで以上に学年を超えた交流の機会を設け、部の一体感を保ち続けた。

気配りは部全体だけでなく、部員一人一人にも。4年間の集大成となる秋のリーグ戦が中止になったことから、同期に気持ちのばらつきがあると感じ、「最後までみんなで心を一つにして引退したい」とストレートな思いをぶつけた。仲間を激励する様子は19年秋のリーグ戦の姿と重なり、かつての自信のなさはどこかへ消えていた。常に部のことを考え悩みながら、部員にもしっかりと目を向ける、彼女にしかつくれない「主将」の姿がそこにあった。

エースの「恩返し」

満面の笑みでガッツポーズをする倉島。試合中は誰よりも表情豊かだ

「人をまとめるのは得意な方じゃない」。同期の中で唯一、1年次からリーグ戦に出場しているエースの倉島。その実力から主将という選択肢もあったが、副将を選んだ。自分のテニスに集中したい一方、部に貢献したい気持ちも強かったがゆえの決断だった。

そんな倉島にも、勝てない時期はあった。サポートしてくれる仲間に対し、自分の不甲斐なさを感じる日々。しかし、「申し訳ない」気持ちは、次第に「恩返しをしたい」という強い思いに変わる。勝ちにこだわり続け、実力で部を牽引。テニス部の活動自粛中も、こまめに後輩に声をかけ、オンライントレーニングを行うなど、副将として、エースとして存在感を発揮し続けた。

——功を奏した異例の体制。主将とエース、それぞれが不安を補い合い、長所を十分に生かしたことが部としての強さになった。コロナ禍で思うような活動はできなかったが、倉島は「たーこ(相川)のおかげで、明るくて意見の言いやすいチームになった」と振り返る。対して、「一人で引っ張ってきたつもりはない」と相川。2人を中心に同期皆でつくり上げた104代テニス部女子チームは幕を閉じた。「来年は本当に頑張ってほしい、みんな強いから」。そう主将が太鼓判を押す後輩たちへ、長年の夢である「一部昇格」は託された。
「立教スポーツ」編集部から
立教大学体育会の「いま」を特集するこのコーナーでは、普段「立教スポーツ」紙面ではあまり取り上げる機会のない各部の裏側や、選手個人に対するインタビューなどを記者が紹介していきます。「立教スポーツ」編集部のWebサイトでは、各部の戦評や選手・チームへの取材記事など、さまざまな情報を掲載しています。ぜひご覧ください。

writing /「立教スポーツ」編集部
文学部文学科文芸・思想専修3年次 藤部千花

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