平和・コミュニティ研究機構Rikkyo Institute for Peace and Community Studies

さまざまな角度から平和構築にかかわる研究活動を行うとともに、大学院科目も提供しています。また、研究書の刊行、継続的な講演会の開催など、学内外に向けた研究と教育への貢献をめざしています。

研究機構からのお知らせ

2018.12.21 公開講演会「韓国と日本をつなぐ仕事4 日韓通訳・翻訳の経験から」
講師
矢野 百合子 氏

日時
2018年12月21日(金)18:30~20:30

会場
池袋キャンパス 7号館1階 7101教室

対象
本学学生、教職員、校友、一般

参加費
無料

事前申込
不要

主催
平和・コミュニティ研究機構


内容
本学兼任講師として長年朝鮮語の授業をご担当くださっている矢野百合子先生は、会議・放送通訳者として長年仕事をされ、NHK海外放送の通訳など第一線の日韓通訳として働いてこられた。最近では訳書として韓国の文在寅大統領の自伝『運命 文在寅自伝』を刊行されている。かつて日韓通訳の人材が少なかった時代から始まって、これまでお仕事をされてきた経験をもとに、通訳者や翻訳家をめざす若い世代や本学の卒業生、在学生にアドバイスや励ましをいただく。後半では、日韓通訳や翻訳の仕事をしている本学卒業生とのトークも行ないたい。

【講師略歴】
矢野 百合子 氏
1954年生まれ。会議・放送通訳、本学兼任講師(朝鮮語)。国際基督教大学大学院比較文化研究科博士後期課程満期退学。韓国の明知大学日語日文学科専任講師を経て日本に戻り、NHK放送通訳、会議通訳のかたわら、本学をはじめ東京女子大学などで兼任講師。共著に『言葉の中の日韓関係』(2013、明石書店)、訳書に文在寅運命 文在寅自伝』(2018、岩波書店)など。

当研究機構について

ご挨拶

教育・研究両面での平和学展開を目指して

立教大学異文化コミュニケーション学部
立教大学平和・コミュニティ研究機構代表
石坂浩一
                                                                     
立教大学平和・コミュニティ研究機構(平コミ)は2004年3月に学部・研究科横断的な研究・教育組織として発足しました。平和という課題が今日ほど必要とされる時代はないでしょう。その平和を、社会に根付いたしっかりしたものとして共有、確立させていくために、国際関係はもちろんのこと、地域のあり方、メディアなどの社会のあり方、市民の活動の多様性まで含めて研究して行くことをめざすのが、平コミの役割です。グローバル化、あるいは国際化が語られる中、研究は多様化しているように見えますが、日本社会ではヘイトスピーチなどの排外主義や憎悪感情が高められていることを見逃すことができません。今日的課題に対応することを、研究者も大学も、そして地域も迫られていると思います。そうした対応のためにも、広く国内外の研究者と意見を交わし、その成果を公表していきたいと考えます。また、そうした活動を広く共有していくため、さまざまな公開講演会、映画上映会、研究会、ニュース・レターや紀要の発行などを行なっています。
同時に、その成果を教育において生かしていくため、大学院および学士課程の全学共通総合科目に科目を提供してきています。大学院では、平和学という世界的に認められている分野が、日本で十分に成立していないことを踏まえ、平コミ提供科目を履修することで平和学に触れる機会を提供しています。また、学士課程においては、平和構築のための基本的認識を身に着ける授業とともに、ロシアやパレスチナ、アフリカなど日本で十分に知られていない国際的課題や事情についても、科目を提供しています。
2016年度には、世界的な人の移動のあり方の意義を解明しようとする共同研究の「流動する移民社会」の公開シンポジウム、教室があふれるほどの方がたが来てくださった公開講演会「韓国と日本をつなぐ仕事2-言葉からつながる」など、活発な活動を行なってきました。東北アジアと日本社会の現実を直視しつつ、平コミは一層の活動に邁進していく所存です。
趣旨
<平和>とはつねに人類の希求してやまない課題ですが、半世紀にわたる冷戦の終焉がいわれる現在も、世界は平和への新たな挑戦に直面しており、その認識と対応が緊急の課題となっています。こうしたなか立教大学平和・コミュニティ研究機構は、平和の実現の条件を根本的に捉え、独自の視点から研究すべく、2004年3月開設されました。
私たちは身近な地域レベルから地球的レベルにいたるまで多層的に形成された<コミュニティ>において活動し生活しています。これらのコミュニティには伝統的・閉鎖的なものありますが、市民社会を支える共生的、開放的な諸コミュニティも存在し、それらは相互に影響を及ぼし合い、そのダイナミズムがしばしば世界を動かしています。その重要性を踏まえ、より平等、公正、かつ開かれた多層コミュニティを形成していくことが、持続的な真の平和の構築につながるのではないでしょうか。
これら多層的コミュニティは、政治、安全保障、経済、社会、福祉、歴史、文化などの諸レベルを有し、それらの充足の実現と相互的作用が、平和の条件をなしていると私たちは考えます。コミュニティのそのような構造とダイナミズムを分析、理解し、平和の条件を探求するために、本研究機構は立教大学の全学的な協力の下、また学外、海外の研究者との連係の下、学際的な共同研究を展開します。そして平和実現のための政策を探り、提言することをめざすものです。研究課題の重点としては、世界を見据えつつ、これまで立教大学として実績のあるアジア社会の研究の基づきながら、「アジアにおけるトランスナショナル・コミュニティの形成と平和の構築」を当面追究しています。
また研究とともに、大学院教育をも担い、平和・コミュニティ研究における若手研究者の育成、支援にもあたります。立教大学の建学の理念である「平和の叡智」を磨き、その成果を生み出すためにも、本機構はこの研究・教育に全力をあげて取り組んでいきます。
2018年度メンバー

代表

石坂 浩一(本学異文化コミュニケーション学部)

運営委員

田島 夏与(事務局長)(本学経済学研究科)
栗田 和明(本学文学研究科)
林 みどり(本学文学研究科)
市川 誠(本学文学研究科)
郭 洋春(本学経済学研究科)
デウィット・アンドリュー(本学経済学研究科)
水上 徹男(本学社会学研究科)
野呂 芳明(本学社会学研究科)
黄 盛彬(本学社会学研究科)
西山 志保(本学社会学研究科)
小川 有美(本学法学研究科)
竹中 千春(本学法学研究科)
カプリオ・マーク(本学異文化コミュニケーション学部)
李 香鎮(本学異文化コミュニケーション学部)
大橋 健一(本学観光学研究科)
杜 国慶(本学観光学研究科)
小長井 賀與(本学コミュニティ福祉学研究科)
萩原 なつ子(本学21世紀社会デザイン研究科)
五十嵐 暁郎(本学名誉教授)
庄司 洋子(本学名誉教授)
勝俣 誠(明治学院大学国際平和研究所)
木村 自(本学社会学研究科)

所員

松本 康(本学社会学研究科)
伊藤 道雄(元本学21世紀社会デザイン研究科)
李 鍾元(早稲田大学大学院)
佐久間 孝正(東京女子大学)
佐々木 寛(新潟国際情報大学)
高原 明生(東京大学大学院)
田中 治彦(上智大学)
林 倬史(国士舘大学)
藤林 泰(大阪経済法科大学、アジア太平洋研究センター)
浪岡 新太郎(明治学院大学)

外部評価委員

上村 英明(恵泉女学園大学)
吉原 和男(元慶應義塾大学)

特任研究員

段 躍中(日本僑報社)
石川 晃弘(中央大学名誉教授)
佐々木 正道(元中央大学、兵庫教育大学名誉教授)
畑山 要介(日本学術振興会PD)

研究員

金 兌恩(本学兼任講師)
加藤 恵美(本学兼任講師)
前川 志津(茨城大学兼任講師)

RA

研究成果

出版物

『東アジア安全保障の新展開』

平和・コミュニティ叢書 第1巻

五十嵐暁郎・佐々木寛・高原明生編著
(明石書店、 2005年)
ISBN:9784750321028
2,500円+税

『平和とコミュニティ-平和研究のフロンティア』

平和・コミュニティ叢書 第2巻

宮島喬・五十嵐暁郎編著
(明石書店、 2007年)
ISBN:9784750326115
2,500円+税

『移動するアジア-経済・開発・文化・ジェンダー』

平和・コミュニティ叢書 第3巻

佐久間孝正・林倬史・郭洋春編著
(明石書店、 2007年)
ISBN:9784750326276
2,800円+税

『地方自治体の安全保障』

平和・コミュニティ叢書 第4巻

五十嵐暁郎・佐々木寛・福山清蔵編著
(明石書店、 2010年)
ISBN:9784750332529
2,400円+税

『平和の再構築は可能なのか?』

平和・コミュニティ研究 No.1

(唯学書房、2005年)
ISBN:9784902225174
2,500円+税

『新たなコミュニティ形成に向けて—アジアとヨーロッパの事例に学ぶ』

平和・コミュニティ研究 No.2

(明石書店、 2007年)
ISBN:9784750326115
2,500円+税

『共生社会への課題——人の移動と参加型開発』

平和・コミュニティ研究 No.3

(唯学書房、2007年)
ISBN:9784902225365
2,300円+税

「村神を巡る信仰実践から見る民衆ヒンドゥー教の実相-北インド、U.P.州ワーラーナシー県の事例より」

RIPCS Working Paper Series No.1

小松原秀信
(2009年)
100円

「観光事業と地域開発の展開と諸問題-復帰後沖縄の振興開発と海洋博に関する政策史的吟味」

RIPCS Working Paper Series No.2

上間創一郎
(2009年)
100円

「現代中国における都市開発と住民運動-2007年アモイ市の住民運動を事例に」

RIPCS Working Paper Series No.3

武玉江
(2010年)
100円

『日本政治論(岩波テキストブックス)』

関連書籍

五十嵐暁郎著
(岩波書店、2010年)
ISBN: 978-4000289054
2,800円+税

『アジアで出会ったアフリカ人-タンザニア人交易人の移動とコミュニティ』

関連書籍

栗田和明著
(昭和堂、2011年)
ISBN: 978-4812210680
2,400円+税

『ドイツは脱原発を選んだ (岩波ブックレット)』

関連書籍

ミランダ・A・シュラーズ著
(岩波書店、2011年)
ISBN: 978-4002708188
500円+税

『女性が政治を変えるとき——議員・市長・知事の経験』

関連書籍

五十嵐 暁郎 (著), ミランダ・A・シュラーズ (著)
(岩波書店、2012/7/24)
ISBN: 978-4000258388
3,675円+税
ニュースレター

平和・コミュニティ研究機構提供科目

2018年度 大学院提供科目一覧
2018年度 学部提供科目一覧
2017年度 大学院提供科目一覧
2017年度 学部提供科目一覧

イベント・講演会

2018.11.22 出版記念講演会『祖国が棄てた人びと』—在日韓国人政治犯を記憶するために
講師
キム・ヒョスン 氏

日時
2018年11月22日(木)18:30~20:30

会場
池袋キャンパス 8号館3階 8303教室

対象
本学学生、教職員、校友、一般

参加費
無料

事前申込
不要

主催
平和・コミュニティ研究機構

協力
明石書店

内容
かつて1970年代から80年代にかけて、韓国で多くの在日韓国人が「北朝鮮のスパイ」にでっち上げられ投獄され、死刑を含む極刑、重刑判決を宣告された。しかし、こうした事件をきっかけに韓国の現実を知り、民主化運動を知り、在日韓国人の生きざまを考えることになった日本人もまた、生まれて来た。韓国内では民主化以前は言及することも難しかった在日韓国人政治犯について、近年韓国でも関心が生まれている。韓国の日刊新聞『ハンギョレ』の主筆を務めたキム・ヒョスン氏は、在日韓国人政治犯に関心を持ち、これまで取材した成果を『祖国が棄てた人びと』(監訳:石坂浩一、明石書店から10月刊行予定)にまとめられた。その本の出版を記念し、キム・ヒョスン氏をお呼びして講演会を行なう。

【講師略歴】
キム・ヒョスン 氏
1988年のハンギョレ新聞創立に参加。東京特派員、国際部長、社会部長などを経て2005年から日本の主筆に当たる編集人を務めた。
2012年に退任したが、その後も大記者という肩書で今日まで健筆を振るっている。『祖国が棄てた人びと』(2015)は第3回李泳禧賞(2015)を受賞した。韓国の近現代史に関する深い関心から著作も多く、『歴史家に問う——屈折した韓日現代史のルーツを求めて』(2011)、『間島特設隊』(2014)、『李泳禧をともに読む』(2017、共著、創批)が刊行されている。
2018.11.14 公開講演会「移民の社会統合 − 西欧の経験から学ぶ多文化共生社会構築の課題と可能性」
講師
Dr. Marion Pluskota 氏

日時
2018 年 11 月 10 日(土)14:30~18:00

会場
池袋キャンパス 9 号館 9000 教室

対象
本学学生、教職員、校友、一般

参加費
無料

事前申込
不要

主催
立教大学コミュニティ福祉学部

後援
立教大学平和・コミュニティ機構、日本犯罪社会学会

内容
 法務省によると 2017 年末現在における在留外国人数は 256 万人を超え、過去最高となった。さらに政府は、2018 年 6 月に、人手不足が深刻な業種を対象に外国人労働者の受け入れ拡大を表明した。このような趨勢の中で、日本は実質的に多民族国家に突入しつつあると言える。
 しかし、高度人材を除く外国人労働者の労働条件や生活保障、さらにその子弟の教育など種々の局面で深刻な問題が生じている。これは外国人受け入れに必要な社会経済的制度が整備されていないことや、地域社会に外国人と共生していく態勢ができていないことによると言える。現在、外国人や異文化背景を持つ若者の社会的排除に起因する種々の社会問題が生じており、外国人の社会統合と多文化共生に向けての条件整備は日本社会にとって喫緊の課題である。
 今年度、コミュニティ福祉学部を受入組織として欧州における移民研究の拠点の一つであるライデン大学社会史研究所から新進気鋭の研究者を招聘することとした。この機会を活用し、
同者による西欧の移民政策の変遷について講演会を企画した。さらに、日本における移民研究を長年先導してこられた社会学者の宮島喬氏およびオランダの移民政策を学ぶ若手研究者である小山友氏を指定討論者として招聘し、移民の統合に関する西欧の経験から学びつつ、今後いかにして日本型多文化共生社会を築いていくべきか、公開研究会を開催して参加者と共に考察していきたい。

【講師略歴】
Dr. Marion Pluskota 氏
ライデン大学社会研究所講師。歴史学者。2012 年から 2016 年までライデン大学社会史研究所プロジェクト研究員、2017 年度からは同大学院で移民の社会統合史、移民の犯罪者化、学部では論文作成法等の教鞭を取っている。「犯罪とジェンダー」史を研究。

宮島 喬 氏
お茶の水女子大学名誉教授。社会学者。フランスの社会学者 E. デュルケムや P. ブルデュー研究のほか、日本 における移民研究を先導してきた。編著『ヨーロッパ・デモクラシー 危機と転換』(岩波書店、2018)、単著『フランスを問う − 国民、市民、移民』(人文書院、2017)等著作多数。

小山 友 氏
千葉大学博士後期課程学生、人文公共学専攻。オランダにおける排外主義を研究。口頭発表「国家形成とエスニック・マイノリティ-現代オランダ社会にみるイスラム系移民の相克」(科研費新学術領域研究「グローバル関係学」若手研究者報告会、早大、2018)。
2018.10.05 - 06 International Workshop on Trust
Date
5– 6 October, 2018

Location
Institute for Peace and Community, Rikkyo University, Tokyo

No one denies the importance of trust in social relationships. Many scholars view trust as extraordinarily important because of its influence on interpersonal and group relationships. Our economic system is in many ways entirely dependent upon trust because if there were no trust there would be no economic transactions. Thus trust has profound implications for interpersonal and social cooperation. As we all know, social systems are becoming increasingly complex and confounded, meaning that trust plays an ever-increasingly important role. Trust becomes a coping mechanism for societal complexity as it helps to overcome the accompanying uncertainty characteristic of a mushrooming globalized social system. Thus, trust has profound implications across contexts for inter-organizational, interpersonal and social cooperation and as a topic of research across academic disciplines.
To connect with and address such global issues, the Institute for Peace and Community Studies at Rikkyo University (Tokyo) is hosting an International Workshop on Trust on the 5th and 6th of October, 2018.The purpose of the Workshop is to offer a collegial atmosphere in which to present current research results, and to discuss and exchange ideas by meeting together in one place during October (the most pleasant of Japan’s seasons).
This International Workshop on Trust will consist of a morning keynote speech on the first day and afternoon sessions for both days, all highlighting current trust research.

Submission and format
Although the number of participants is limited to 40, we invite all researchers on trust to indicate their interest in joining this International Workshop by submitting an Abstract (maximum 250 words, excluding references, tables, diagrams, etc.). All abstracts will be peer reviewed. Successful submissions will be notified around mid-August 2017.

Submission deadline for Abstracts
31st July 2017

Registration fees
5,000 yen, which includes a welcome buffet dinner


Please submit abstracts and any inquiries about participating in this Workshop to the organizer and host, Emeritus Professor Masamichi Sasaki, PhD.
Email: masasaki@tamacc.chuo-u.ac.jp

We look forward to welcoming you to Tokyo!
2018.06.21 豊島区日本中国友好協会設立 30周年記念、日中平和友好条約締結40周年記念、豊島区2019年東アジア文化都市開催地決定記念講演会「池袋とエスニック・コミュニティ」
日時
2018年6月21日(木)18:20~19:50(18:00開場・受付開始)

会場
池袋キャンパス 太刀川記念館3階 カンファレンス・ルーム

対象
本学学生、教職員、校友、一般

参加費
無料

主催
豊島区日中友好協会

共催
社会学部、平和・コミュニティ研究機構、グローバル都市研究所

後援
豊島区

内容
豊島区日中友好協会は 1988年2月に設立され今年30周年を迎えた。区内の中国人住民との交流、ビジネス情報交換、留学生支援など、年間を通して様々な友好・交流行事を企画運営してきた。一方、立教大学は都市型大学として、個々の学部や教員のレベルでも地元・豊島区と多様な協力関係にある。本講演会では、とりわけ中国からの住民が増加している池袋地区の状況について、エスニック・コミュニティの形成、その社会的背景などを説明して、池袋に関わってきた方々がコメントをする。

司会進行:木村 自(本学社会学部准教授)
(1) 開会の挨拶:尾崎隆信氏(豊島区日中友好協会会長)
(2) 来賓紹介
(3) 講師:水上徹男(本学社会学部教授、グローバル都市研究所所長)
(4) コメンテーター:段躍中氏(日本僑報社編集長、ジャーナリスト)、野呂芳明(本学社会学部教授、社会福祉研究所所長)
(5) 閉会挨拶:松本 康(本学社会学部長)
2018.05.25 公開講演会「欧州における外国人家族の保護と日本の在留特別許可比較」
講師
児玉 晃一 氏

日時
2018年5月25日(金)18:20~19:50

会場
池袋キャンパス 14号館5階 D501

対象
本学学生、教職員、校友、一般

参加費
無料

主催
平和・コミュニティ研究機構

共催
APFS(Asian People’s Friendship Society)

内容
-在留特別許可に係る市民懇談会による公開報告および基調講演-
日本では外国人住民の在留特別許可を限定的にしか認めないため、家族の一部が在留を認められても一部は国外退去を強いられるという不条理な対応が続いている。これに対し、ヨーロッパでは移住者の家族の結びつきを認める対応がとられるようになってきている。外国人住民の支援をしてきた弁護士が、ヨーロッパ人権裁判所における事例などを紹介する。

【講師略歴】
児玉 晃一 氏
東京弁護士会、外国人の権利に関する委員会委員(2008年度委員長)、関東弁護士会連合会、外国人人権救済の権利に関する委員会委員(2006~2007年度委員長)、移民政策学会事務局長(元共同代表)、全件収容主義と闘う弁護士の会、ハマースミスの誓い代表
(主要著作)
・『在留特別許可と日本の移民政策——「移民選別」時代の到来』(共著・明石書店2007年)
・『非正規滞在者と在留特別許可』(共著・日本評論社2010年)
・『市民が提案するこれからの移民政策』(共著・現代人文社2015年)
・『移民政策のフロンティア』(共著・明石書店2018年)他
2018.01.18 日中国交正常化45周年記念事業基調講演:公開講演会「日中間の民間交流と北京日本学研究センター」
講師
笠原 清志

日時
2018年1月18日(木)18:30~20:00

会場
池袋キャンパス 太刀川記念館3階 多目的ホール

対象
本学学生、教職員、校友、一般

参加費
無料(※事前申し込みの必要はありません。学内・学外問わず参加可能です。)

主催
平和・コミュニティ研究機構

共催
豊島区日中友好協会

国家レベルの交流では難しいことが、民間での交流によって展開されることがある。大平学校からスタートし、35年の歴史を刻んだ北京日本学研究センターの歴史を取り上げ日中の民間交流のあり方を考える。

【講師略歴】
笠原 清志
本学名誉教授、跡見学園女子大学教授、北京日本学研究センター主任教授
【学位】社会学博士(慶應義塾大学)
【著書】『ユーゴスラビアにおける自主管理制度の変遷と社会的統合』(博士論文、時潮社)、『産業化と社会的統合』(駿河台出版)、『参加的組織の機能と構造』(監訳、時潮社)、『企業戦略と倫理の探求』(監訳、文眞堂)、『貧困からの自由』(監訳、明石書店)、『社会主義と個人』(集英社新書)等
2017.12.07 公開講演会「韓国と日本をつなぐ仕事3 新大久保で韓国と日本をつなぐ」
講師
金 根煕 氏(キム・クンヒ)

日時
2017年12月7日(木)18:30~20:30

会場
池袋キャンパス 10号館2階 X204教室

対象
本学学生、教職員、校友、一般

参加費
無料(※事前申し込みの必要はありません。学内・学外問わず参加可能です。)

主催
平和・コミュニティ研究機構

新宿区新大久保のコリアンタウンは、いまや海外からの観光客も訪ねてくるほどの有名な街になりました。韓国料理店やグッズの店が軒を連ね、ハングルの看板が当たり前の街。でも、1980年代には新大久保がこのように変貌するとは誰にも想像ができませんでした。南北朝鮮や韓日の和解の道を探るために1980年代に日本に留学した金根煕さんは、韓日共生を身をもって実践すべく「韓国広場」を創業し、東京に暮らす人びとにとって韓国の食べ物をぐっと身近にしました。そうして今日まで、新大久保に根付いて事業を広げてきました。その夢あり、喜びあり、また辛さもあった日々を振り返っていただくとともに、韓国と日本をつなぐ仕事をめざす人びとにヒントや励ましをいただければと思います。是非ご来場ください。

【講師略歴】
株式会社韓国広場代表取締役社長
金 根煕 氏(キム・クンヒ)
韓国出身。1985年に日本に留学、一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。1993年に新大久保で韓国食品スーパー「韓国広場」を創業。次いで97年にコリアプラザ、2000年に韓国料理「高麗」、03年に韓国伝統工芸品「仁寺洞」を開業し、新大久保でのコリアンタウン形成の草分けとなる。「日韓友情に貢献する企業」を企業理念に掲げる。

研究・研究者紹介/書評

『祖国が棄てた人びと』出版記念講演会へのご参加、ご協力に感謝いたします(平和・コミュニティ研究機構 石坂浩一)

『祖国が棄てた人びと』出版記念講演会への ご参加、ご協力に感謝いたします

 11月22日、立教大学池袋キャンパス8号館8303教室において、在日韓国人政治犯の現代史を描いた韓国の書籍『祖国が棄てた人びと』日本語版の出版記念講演会が開催されました。
 
 本の著者でハンギョレ新聞の元編集人(主筆)の金孝淳(キム・ヒョスン)さんの講演は、本に書けなかったエピソードを含め、とても印象深いものでした。金さんがソウル大学在学当時、在日韓国人で母国に留学した京都出身の青年と出会い、韓国社会が意識することのない在日韓国人の生きづらさに気づいたことが、その後、東京特派員を務め在日韓国人政治犯に関心を持っていくきっかけになったことを明かされました。
 
 講演に先立ち、立教大学兼任講師の李昤京(イ・リョンギョン)先生が、在日韓国人政治犯の再審請求状況、そして事件のでっち上げられた時期と韓国の情報機関や支配機構との関連について、鋭い報告をしてくださいました。
 
 当日は150名と多くの方に参加していただくことができました。在日韓国人政治犯の再審支援に当たった弁護士や市民団体の皆さん、そして原著を出版した出版社・西海文集のカン・ヨンソンさんら、韓国から駆けつけてくださった皆様と会をともにすることができたのは、嬉しいことでした。また、獄中で苦労した元政治犯として金元重(キム・ウォンジュン:千葉商科大学教授、経済学)さん、関西から駆けつけた李哲(イ・チョル)さんら5人の方々、また元救援会として金元重さんの会や姜宇奎(カン・ウギュ)さんの会の皆様をはじめたくさんの方々がお越しくださいました。日本のマスコミ、韓国のハンギョレ新聞など、マスコミ関係の皆様もお越しくださいました。
 
 その後、『ハンギョレ』が11月26日付で立教での講演会を報じ、日本語の電子版サイトでも紹介されました。
http://japan.hani.co.kr/arti/culture/32204.html なお、原文はこちらです。http://www.hani.co.kr/arti/culture/book/871735.html

 その後、週末の24日には大阪でも同様の講演会が開催されました。日本でのこうした動きをまとめ、『ハンギョレ』12月1日付は「無罪判決で堂々と生きることができるようになったが、大韓民国の謝罪が欲しい」との記事を、1面全てを使って報道しました。
 
 日本語はありませんが、記事は以下で見ることができます。http://www.hani.co.kr/arti/society/rights/872619.html
 
 皆様のご協力でこのように出版記念講演会を盛会で終えることができました。ご参集、ご協力くださった皆様、ありがとうございます。講演してくださった金孝淳先生、準備に頑張ってくださった金元重先生、あらためて感謝いたします。
また、本をお読みになっていらっしゃらない方は、ぜひご一読ください。明石書店に直接注文されると比較的早く届くはずですが、出版を準備した関係者にお問い合わせくださっても構いません。
 
 在日韓国人政治犯救援運動は、日本政府の韓国軍事政権に対する支援、在日コリアンに対する抑圧政策や差別をただしていこうとするものでした。それは、日本社会は正しく、韓国の政治は独裁で悪だといった見方とは正反対の、日本のあり方を直視してこそ、在日コリアンや韓国民主化運動にアプローチできるという志によるものだったと思います。日本の社会運動の成果と課題を跡付ける作業はまだ始まったばかりで、日本の研究者も今後一層考察を深めていかなくてはと、思いを新たにする講演会でした。

立教大学 平和・コミュニティ研究機構代表
『祖国が棄てた人びと』監訳者
石坂浩一

言葉の力を信じて—同人誌『いのちの籠』と韓国の詩に思う(異文化コミュニケーション学部 石坂浩一)

言葉の力を信じて—同人誌『いのちの籠』と韓国の詩に思う

 その人は
 アメリカに押し付けられたいじましいみっともない人となじ
 られていた
 なじる人はアメリカに自衛隊を差し出し
 自衛隊をその人に明記しようとしていた

 アメリカ兵と自衛隊が同じ軍服を着て
 American-army, Japanese-army と肩を並べてみたら
 やっとアメリカと対等になれるだろうと

 南スーダンから帰還した Japanese-armyは
 何を見ただろうか
 その痛みや恐怖のことは
 誰も語らなかった

 中村純さんの詩「その人」の冒頭部分である。もちろん、読者は「その人」がだれであるか、お分かりだろう。この詩は「戦争と平和を考える詩の会」が発行する同人誌『いのちの籠』38号に掲載されたものである。『いのちの籠』は奥付に書かれているように「戦争に反対し、憲法9条を守る詩の雑誌」であり「掲載されている諸作品は、反戦集会などのいろいろな集まりで、朗読その他に、自由にお使いください」とその姿勢が表明されている。年3回の刊行というから、すでに10年以上続いていることになる。
 ここで登場する詩は、憲法9条はもちろん、脱原発、沖縄、#Me too、朝鮮半島など多岐にわたるテーマをうたっている。日本では文学は政治に支配されるべきではないという命題が強調されるあまり、政治に関わるようなことを書く行為自体を避けるような傾向が強いようだ。しかし、目の前に差し迫っていることをやむにやまれず表現しようとすれば、感じ語らずにはいられないことをだれかに伝えようとすれば、言葉は生まれてくるのではないかという気がする。

 とるものもとりあえず
 子ヤギを運ぶときの麻袋に
 赤ん坊を包んで
 ただそれだけを胸に抱いてきた

 テントの 三つ目の夜
 眠らない子の耳に
 草摘みのうた 歌い
 砂の降るおはなしを ささやいていると

 おさないいのちのほかは
 何もかも残してきた故郷から
 ことば だけは
 持ってくることができたのだ と気づく
 荷物検査所でも まさぐられなかった 
 わたしの持ち物

この詩は草野信子さんの「持ちもの」の前半部分である。『いのちの籠』39号に掲載された。場所は特定されていないが、故郷を追われテントに暮らさざるをえない親子が、あちこちの紛争地域に生きているだろう。持っているものは何もないが、「ことば」だけは奪われなかったという、そのひとことに胸を衝かれる。日本に暮らしている私たちは、悪意の言葉にどれほど囲まれていることか。川崎や大久保で声高に叫ばれるヘイトスピーチは、その典型だ。聞きたくなくとも耳に入ってくる、人を傷つける言葉に、むしろ無力感を感じることが多いかもしれない。しかし、何もかも奪われた人びとが、穏やかに語る言葉、強く叫ぶ言葉、必ず他者に届く言葉があったはずではないか。
個人的な話になるが、私が詩というものの存在を喜ばしく感じたのは茨木のり子『詩のこころを読む』(岩波ジュニア新書)を読んでからだった。その後、木島始訳の『ラングストン・ヒューズ詩集』を読んで、こんなふうに翻訳ができたらいいな、とあこがれた。その後、かつて私が関わっていた在日韓国人政治犯救援運動において、縁あって法政大学で教壇に立っておられた木島先生にあれこれと助けていただくことになり、ときおり大学にお邪魔しては政治犯の話、アジアの詩や絵画の話など伺うことができた。こうして出会った詩は、韓国で民主主義や人間をうたった詩と違和感なく通じるものがあった。木島先生も亡くなられたが、私が言葉の力を信じることができるのは、こうした出会いや教えがあったからだと思う。
日本の詩人たちはさまざまな形で韓国の詩人たちと交流を続けている。日本社会、特に政治の世界やインターネットでは、韓国人をおとしめ悪罵を投げつける声が、歴史問題などをきっかけにこのところますます高まっている。だが、出会ってみる、言葉を通じて理解しようと努める、そうした営みがあれば今日のような状況にはならなかったのではないだろうかと感じないではいられない。小説ももちろん力があるが、詩は人びとの心により直接的に訴えかけてくる力があるのではないだろうか。対立するのではなく、語り合い、何かをともにうたってみるということを、わたしたちはしなくていいのだろうか。
韓国の詩人との交流や、単なるイベントにとどまらず着実に翻訳や出版に尽力しているのは、詩人の佐川亜紀さんである。佐川さんが訳したり出版をプロデュースした作品は数えきれない。佐川さんが編集に関わる雑誌『詩と思想』2018年7月号は「韓国詩—平和と民衆運動」を特集した。古くから活躍する李時英(イ・シヨン)、社会運動でも活躍している宋竟東(ソン・ギョンドン)、童話が日本でも翻訳された安度眩(アン・ドヒョン)などが紹介されている。この特集では申鉉林(シン・ヒョルリム)がとても印象深かった。

人のようにキスする山鳩を見て
人生が不思議でもっと知りたくなって自殺しなかった

申鉉林の「私は自殺しなかった 一」という詩の一節である。言葉の力を信じて、平和を願って、何かを語り続けようとするすべての皆さんに、こうした詩人たちから励ましを得ることができるように願ってやまない。
なお、『いのちの籠』は書店では販売していないが、143-0016 大田区大森北1-23-11 甲田四郎様宛に申し込めば購読することができる。

本学異文化コミュニケーション学部教員 石坂浩一
書評:文在寅著・矢野百合子訳『運命 文在寅自伝』岩波書店2018(評者:異文化コミュニケーション学部 石坂浩一)

隣人としてのその人を見よ『運命 文在寅自伝』2018年10月 岩波書店

 2017年5月に韓国の国民はムン・ジェイン(文在寅)という人物を大統領に選んだ。ムン・ジェイン大統領が誕生した時、おそらく韓国の市民たちはある感動を感じたのではないかと思う。
 1998年にキム・デジュン(金大中)大統領、2003年にノ・ムヒョン(盧武鉉)大統領が誕生したことで、多くの韓国人も、また韓国に関心を持ってきた日本の市民も、韓国の民主主義はもはや後退することはないだろうと思った。2008年にはイ・ミョンバク(李明博)政権が誕生したが、民主主義の根幹を揺るがすことはなかろうと楽観していた。ところが、歴史は反共保守政治を再現してしまった。あらゆる社会運動は弾圧され、人権のさまざまな基準も後退した。民主化の10年を担った大統領は2009年に二人とも亡くなった。勝ち取った民主主義がこれほどもろくも崩されるものとは、思ってもいなかっただろう。
たくさんの人びとが、2008年以降の保守政権の9年間に抗議の声を上げた。最初に女子高校生たちが声を上げた米国産BSE牛肉輸入反対運動しかり、300人あまりの人々の命を奪いながら当日の政府の対応さえ公開できなかったセウォル号事件に対する真相究明、抗議運動しかり。だが、道のりは遠かった。マスコミで自由な報道のために体を張っていた記者たちは多数職場を追われ、労働者は無慈悲に職場を解雇された。公教育の教員たちの労働組合は、教員の団結権を認めないという政府の方針により、非合法化された。いわゆる先進国では例を見ない事態だった。韓国の市民、そしてそれに心を寄せる世界の市民は暗い時代を過ごした。けれども、あきらめることはなかった。その市民の意志の力がどれほど社会を動かすかを、2016年から17年にかけて韓国で展開されたロウソクデモは雄弁に教えてくれた。不義の政権を引きずり降ろして誕生した大統領ムン・ジェインは、その象徴である。
 本書は2011年に初版が出版され、韓国でベストセラーとなった『ムン・ジェインの運命』の翻訳である。訳者は本学で長年兼任講師を務め朝鮮語を教えてくださっている矢野百合子先生で、年譜は私が担当した。解説は一橋大学のクォン・ヨンソク(権容奭)先生が執筆された。
 ノ・ムヒョン大統領は自分の著書に『運命だ』というタイトルを付けた(日本では未刊行)。キム・デジュンは何度も大統領に挑戦し、ようやくその座について、誰もできなかった業績を成し遂げた人物である。そのあとを受けて、キム・デジュン大統領の派閥とは縁がないノ・ムヒョンが大統領になったのは、まさに時代が求めた人物だったからだ。だから、それが「運命」だった。任期終了後、保守勢力が猛然と反撃し、ノ・ムヒョンを攻撃して窮地に追い込んだのも、運命だったかもしれない。ムン・ジェイン政権になって、不法で非道徳的な民主主義の後退は、調査、検討され、ゆがんだ道が正されようとしている。
 ムン・ジェインは韓国の慶尚南道で生まれたが、両親は北朝鮮の咸鏡南道興南出身だ。韓国映画〈国際市場で逢いましょう〉を見ると、冒頭に朝鮮戦争のさなか、興南から人びとが米軍の船で南に避難する、いわゆる興南撤収の場面が出てくる。ムン・ジェイン大統領の両親もそのようにして南に来た。統一されたら北に行き、街弁をしてみたいというムン・ジェインの言葉にはそうした背景がある。
 学生時代は学生運動をして逮捕された。1980年のソウルの春で復学、卒業はできたが、時代はすぐには変わらなかった。裁判官を志望したが学生運動の前歴のために果たせず、弁護士となる過程でノ・ムヒョンと出会う。多くの労働運動関連の弁護をして、民主化運動側の人となった。そして、ノ・ムヒョン政権で大統領秘書室長などの要職を歴任するのである。こうした波乱の人生が活劇のように本書にはまとめられている。
ムン・ジェインは2012年12月の大統領選挙に出馬し、この時はパク・クネ(朴槿恵)候補に敗れた。このチャレンジを前にして本書は書かれているので、その後のことは書かれていない。解説に大統領になるまでの、12年以降の歴史が簡単に書かれているので参考になる。いずれにしろ、ノ・ムヒョンと出会い、その盟友として民主主義を生き返らせようとするのがムン・ジェインの運命であったようだ。
ムン・ジェインは本書で、自分にとってノ・ムヒョンという存在が何なのか、まだわからないが、彼が残した宿題があるというのに「その時代に果たすべき役割から逃れられる者がいるだろうか」(365ページ)と自問自答する。その役割をささやかであっても引き受けようとする点で、彼は私たちと同じであり、良き隣人である。
ノ・ムヒョン政権が終わってから韓国の民主主義が後退を強いられた見逃せない要因は、南北対立の状況下での権威主義的政治手法の復活であった。北朝鮮が南を狙っている、国を守るには北朝鮮を圧迫しあわよくば崩壊させるべきで、それを批判するのは北に味方することだ。そんな論理がまかり通り、当たり前の人権や言論の自由、平和の要求も、抑え込まれた。その裏で政権に近い人々は私腹を肥やしていた。保守政権への批判を韓国国民は支持した。だから、「北の脅威」を二度と、民主主義の抑圧や私利私欲の道具にしないために、今ムン・ジェインは南北関係を平和に導き、平和定着によって民主主義の根幹を安定させようとしている。
残念ながら、日本ではムン・ジェイン政権の政策を「親北」「反日」というフレームでしか見ようとしない人びとが少なくない。だが、笑い話がある。大統領選挙当時、パク・クネが「親日」、ムン・ジェインが「反日」と、日本のメディアは言っていたではないか。ところが、日本のメディアはやがて、パク・クネを「反日おばさん」などと女性蔑視まで合わせて語るようになった。こうした恥ずかしいありようを、日本のメディアは反省することから、始めなくてはいけないのではないだろうか。
隣の国の大統領の歩みをこの本を通じて、ぜひ知ってほしい。少なくとも私は、隣国の隣人にムン・ジェインがいることをとてもうれしく思う。その人を、韓国の多くの人びとの生きざまと重ね合わせて、理解しようとすれば、韓国の現代史はよりよくわかるようになり、また隣人への敬意を抱くことができるだろう。ぜひ、本書を紐解き、日本で広く知らせてほしい。
論文紹介:清水謙著「Swedish Diplomacy in the Asia-Pacific Region」
書評:宮島喬・木畑洋一・小川有美編『ヨーロッパ・デモクラシー 危機と転換』(評者:立教大学法学研究科政治学専修博士後期課程 小林祐介)

宮島喬・木畑洋一・小川有美編『ヨーロッパ・デモクラシー 危機と転換』2018年4月 岩波書店

はじめに
2010年に起きたギリシャの財政問題に端を発するソブリン危機は、ヨーロッパの政治や社会に大きな変化をもたらしている。本書は、2010年代に入り、「危機」という言葉と共にそんな変化が顕著になり始めたヨーロッパ政治を、9カ国1をモデルに、様々な角度からそれぞれの研究者が筆を振るった1冊である。なお、ここで用いられる「ヨーロッパ」とは何かという問題であるが、本書では28カ国という広い範囲を包括するEUそのものと、その加盟諸国に関する議論をもって、一先ずヨーロッパの議論とし、その意味合いでEUと重なる言葉として用いられている。

第1節 本書の構成と内容
本書は、大きく3つのテーマにまとめられており、序章を含め全12章の論文で構成されている。本節において、各章の内容を手短に紹介していきたい。
まず序章「ヨーロッパ・デモクラシーの『危機』?」では、編者の1人である宮島喬氏がヨーロッパ全体を俯瞰し、本書のタイトルでもある「ヨーロッパ・デモクラシー」に生じた危機と、それに伴う転換について、移民・難民問題やブレグジット、ポピュリズム政治の伸長など、いくつかの具体例を題材にしながら論じられている。最後はEUの課題について触れて締め、この後に続く各章へと繋げている。

Ⅰ.ヨーロッパ・デモクラシーの展開と課題
第1章「難民危機後のドイツ・デモクラシー」では、連邦憲法裁判所がドイツのデモクラシーに果たす役割の変容、その判例理論のヨーロッパにおける影響力について論じている。
第2章「『普通の人』の政治と疎外」では、ロンドン一極集中というイギリス経済の状況下で、既存政治による関心外に置かれていたと感じている「普通の人」にスポットを当て、イギリス政治の特徴について検討されている。
第3章「〈共和国的統合〉とフランス」では、共和国の名の下に移民やイスラームを排除しようとするということがどういうことなのか、これはFN2の言説がFN固有の現象なのかそうでないのかについて答えつつ、デモクラシーにとってどのような意味をもつのかについて検討されている。
第4章「東中欧における『デモクラシーの後退』」では、ポピュリスト政権との不名誉な視点から大きな注目を集めて(しまって)いるハンガリーとポーランド、2カ国の政権を取り上げ、体制転換3後の両国における政治の展開と現政権の検討、それに対するEUの対応から、「デモクラシーの後退」について論じている。同時に、両国の事例が「デモクラシーの後退」といえるのかどうか、その理由付けの難しさについても言及されている。


1 ドイツ、イギリス、フランス、ハンガリー、ポーランド、オランダ、スウェーデン、デンマーク、スペイン。
2 Front National 、国民戦線(本書刊行時)。2018年6月に政党名を変更し、現在は国民連合(Rassemblement National : RN)となっている。
3 1989年から1990年にかけての、いわゆる東欧革命。


Ⅱ.移民・難民受け入れの政治と排外ポピュリズム
ここから続く4つの章は、節題に従って移民・難民問題をテーマとし、国家の政策や社会に与える影響についてまとめられている。
第5章「ドイツの移民・難民政策」では、ドイツの難民受け入れ政策の背景と展開について振り返りつつ、また昨今台頭してきたAfD4についても触れ、人の移動がドイツ政治・社会に対して持つ含意について検討されている。
第6章「多文化主義と福祉排外主義の間」では、オランダ、スウェーデン、デンマークという多文化主義的政策を模索してきた福祉国家をモデルに、様々な理論的・実証的研究に依拠し、2000年代以降のヨーロッパにおいてバックラッシュといわれる変化がどのようにして起こったのか、また、今後のヨーロッパ・デモクラシーがどこへ向かうのかについて考察されている。
第7章「排外主義とメディア」では、ブレグジット国民投票を題材に、メディアが国民投票に与えた影響力を考察し、メディアへの批判と期待とを綴っている。
第8章「政治的行為としての『暴動』」では、パリ郊外の移民集住地域というローカル空間に焦点を定め、そこで展開されてきた政治的行為と社会、公権力との関係性について考察されている。

Ⅲ.開かれたヨーロッパ・デモクラシーへ
第9章「ヨーロッパ統合の進展と危機の展開」では、ヨーロッパにおいて多発している危機が何に由来するのか、統合の進展と不十分さが危機の原因であるという問題意識に立ち、スペイン政治における危機の事例を取り上げて、その発生の背景を明らかにしている。さらに、統合の進展がヨーロッパ社会をどのように変容させ、危機の発生に繋がったかを検討している。
第10章「信仰の自由とアイデンティティの保持に向かって」では、宗教的多元主義の尊重とムスリムへの警戒という欧州共通の傾向の中において、国家の非宗教性原則にもかかわらずイスラームを警戒し、差別的な対応を行うフランス行政について、教育分野、ムスリム側の視点から論じられている。
第11章「ヨーロッパのなかのイギリス」では、第7章同様ブレグジット国民投票結果を題材としつつ、イギリスという連合王国の形成から変容、ブレグジット国民投票への道、連合王国の行方について論じている。

第2節 本書の課題
前節において概観した通り、本書では単に各国の政治を検討するにとどまらず、憲法裁判所という日本には馴染みのない機関、さらにメディアやローカル空間といった、比較的取り上げられることの少ないようなテーマにもスポットが当てられている。
しかしながら一方で、これもまた本書の構成を見れば分かる通り、扱われている国家に着目してみると、序章を除く全11章のうち、ドイツに2章分(第1、5章)、フランスに3章分(第2、7、11章)、イギリスに3章分(第3、8、10章)と、この3カ国だけに合計8章分が割かれていることには、些か構成の偏りを感じざるを得ない。殊に、EU加盟国の中にあって「民主主義の後退」が特に叫ばれるハンガリーとポーランドに関しては、2カ国併せて1章分(第4章)が割り当てられてはいるものの、それ以外の旧東側共産圏諸国(現在EUへ加盟する国に絞ると9カ国5が該当)に関しては残念ながら触れられていない。2004年以降、旧東側共産圏諸国が続々とEUに加盟6して大幅な東方拡大と深化を成し遂げつつあるが、一方ではその進展故に加盟国間の経済格差が広がるなど、ヨーロッパ・デモクラシーに大きな歪みをもたらす事態も年々深刻化していると言わざるを得ない。ハンガリーやポーランドに限って見ても、ある種現在の政治状況は、2010年代に起こった危機が引き起こしたものではあるが、さながらそうした歪みの中で生まれてきたという要素もないわけではない。それを踏まえれば、ここで取り上げられていない国にもスポットライトを当て、今後よりヨーロッパの東西を広範に網羅していくよう本書の構成を拡大していくことができれば、なお良いであろう。そのような期待も込めつつ、敢えて本書の課題として構成の偏りを指摘するものである。


4 Alternative für Deutschland 、ドイツのための選択肢。
5 チェコ、スロヴァキア、スロヴェニア、エストニア、ラトヴィア、リトアニア、ブルガリア、ルーマニア、クロアチア。
6 2018年現在EU加盟国は28カ国。2004および2007年の第5次拡大ではハンガリー、ポーランド、マルタ、キプロスなど12カ国が加盟し、2013年の第6次拡大ではクロアチアが加盟。全加盟国の実に半数近くを占める13カ国がこの時加盟している。


おわりに-未来へ向けて
第2節において本書の課題と題し、構成におけるテーマとしての国家の偏りを挙げたが、それは拙生が奇しくもハンガリー政治を大きなテーマとした研究に従事する身であり、ややもすると、その視点からヨーロッパを眺めがちであるが故だということをご承知おきいただきたい。EUにおいて不名誉な存在として大きな注目を集めてしまっているハンガリーだが、一方でハンガリーの側からヨーロッパを眺めると、また異なった景色が見えてくるのである。それを前提とした上で、改めて本書を評価して本評を締めくくりたい。
本書はすべて様々な角度から示唆に富む論文で構成されており、現在なお変容を続けるヨーロッパ・デモクラシーについて、初学者を始め、読者にとって大きな知見を得ることが期待できる1冊となっている。加えて、例えばイギリス政治に興味を持って本書を手に取ったのだとしても、その他の章も合わせて読むことで、理解を深めるきっかけになることもあるだろう。新たな興味も生まれるかもしれない。そんな可能性を持っている。
今、ヨーロッパに限らず世界全体は、先行きの不透明さが増すばかりであるが、その中にあって、今後を見通していく上で本書が助けとなるのではないかと考える次第である。
書評:栗田和明編『移動と移民 — 複数社会を結ぶ人びとの動態』(評者:立教大学観光学部 豊田由貴夫)

書評:栗田和明編『移動と移民 — 複数社会を結ぶ人びとの動態』昭和堂2018

本書は、人の移動を研究するに際して、新たな視点を提供しようとするものである。これまで人の移動すなわち移民や移住の研究では、ある特定の地域を視点としてそこに移入してくる人々やそこから移出していく人々を研究対象とすることが多かった。このような視点に対して本書は、移動する人たち自体に着目する視点を重要視するものである。これは世界的に人の移動が量的に飛躍的に増加し、移動が多様化したこと、さらには移動した地域で生活を確立している人々ばかりでなく、頻繁に移動を繰り返す人々が増加している現状に対応するものである。
現在、国境を越えて移動する人々の数は毎年12億人を超えると言われ、人の移動はいまや常態化しつつある。そして規模の増大にともなって、そのあり方も多様化している。これまでは職を求めて世界の「中心」とされる地域への移住が多かったが、現在では労働の可能性が広がり、移住の原因も職を求めるだけではなくなってきている。様々な原因で人が大規模に移動し続けているのが現在の社会となっているのである。
古典的な移民研究では、国家の枠組みが明確であったことから、その国にやってくる人たちがどのようなコミュニティを形成するのか、彼らのアイデンティティはどのように維持されるのか、また変化するのかという問題を主として取り扱ってきた。これは国家にしてみれば、移民をいかに包摂するかが重要であったことから、ある程度は当然の帰結であった。国家にとって移民は新たな定住者であり、それをどう扱うかが問題だったのである。
本書では以上のようなこれまでの研究に対して、人の移動を、より常態化したものとしてとらえようとする。このために人の移動を研究する際に、「移民(emigrantあるいはimmigrant)」という概念よりも「移動者(traveler)」という概念を提案している。これは現代社会においては移動することが頻繁になり、移動を終えた人とされる「移民」よりも、絶えず移動を続けている「移動者」という概念の方が適切であろうという考え方に基づいている。
そして頻繁に移動する人々と緩慢な移動をする人々をそれぞれFrequent Travelers、Slow Travelersと位置づけ、特にこのFrequent Travelersに着目しているのが本書の特徴である。Frequent Travelersとしては、地域と商品を限定して小規模の取引を繰り返す交易人(第1章、第9章)や、短期の海外労働を繰り返す人々(第6章、第8章)などが典型的な例にあたり、観光客(第3章)にも適用が可能とされている。Slow Travelersとは、従来「長期滞在者」と呼ばれてきた人たちにほぼ重なるが、長期滞在者も実は潜在的に移動を繰り返す人々と考えられることから「緩慢な(Slow)移動者」という概念を使っている。以上のような概念をゆるやかな共通の枠組みとして本書全体が構成されている。
本書の内容は以下のようになる。第Ⅰ部は移動の普遍性ということで、本書の枠組みとなる概念が見られる中国広州におけるアフリカ人の事例(第1章)と、やはり頻繁な移動者が集う南アフリカのグローバル特区の場合(第2章)、典型的な短期の移動者である観光者(第3章)、そして語学学校に集う宗教者(第4章)を取り扱っている。第Ⅱ部では移動の出発点である故地と移動先での生活の関連が描かれる。社会主義時代の関係からロシアに出来たベトナム人向けの施設とベトナムで増加するロシア人観光客に見られる「複数の移動の方向性」と「移動の暫定性」いう問題(第5章)、韓国の二つの地域におけるアフリカ人滞留者の生活動態(第6章)、ベトナムから韓国へ職を求めて移動した人々の人間関係のあり方(第7章)、中国からまさに労働のためだけに海外へ移動する(させられる)人々の姿(第8章)が問題となっている。第Ⅲ部では、移動先で生活を確立していく人々の姿が描かれる。アフリカ系アメリカ人の文化(ヒップホップ文化)に関連する商売にアフリカ人が関わる様子(第9章)、東京とミラノにおける中国系ニューカマーズと地域社会とのかかわり(第10章)、また海外駐在員を中心とする日本人コミュニティの実態が描かれている(第11章)。
全体の構成は以下のようになる。
第Ⅰ部 移動の広がり
 第1章 人の移動の普遍性—定住者の視点を離れて
 第2章 南アフリカのグローバル特区と移動者
      —市民/非市民の分断と部分的つながり
 第3章 訪日外国人旅行者の訪問先の分布
      —スマートフォンGPSデータの解析より
 第4章 カトリック聖職者のフィリピン訪問
      —養成中の修道者が通う語学学校をてがかりに
第Ⅱ部 移動先と故地
 第5章 「ソーシャリスト・モビリティーズ」の現代的展開
      —ベトナムとソ連・ロシアとの関係を中心に
 第6章 韓国滞留アフリカ人の移動と集合
      —首都ソウルのイテウォンと郊外アンサンの比較から
 第7章 ベトナムから韓国への労働移動
      —ベトナム流コミュニティの形成と改変
 第8章 中国から東アジア諸国への労働「移植」
      —人材募集会社による移住管理システム
第Ⅲ部 移動する者の生活戦略
 第9章 在日アフリカ人と東アジア交易
      —ヒップホップ文化をめぐる人とモノの移動
 第10章 中国系ニューカマーズがもたらす地域社会の変容
      —東京豊島区池袋地区とミラノ市サルピ地区の比較から
 第11章  シンガポールの日本人社会
      ——海外駐在家庭を中心としたエクスパトリエイト・コミュニティ
最初に述べたように、人の移動は現在、その規模が飛躍的に増大し、それと同時にそのあり方はますます多様性を増している。本書の内容を見ても、人の移動にかかわる研究は、今後も多様な広がりを持つ可能性があるのがわかるだろう。今後の人の移動の研究においては、このような多様化する事例の研究とともに、それらを普遍的に扱う理論が求められる。その際に、本書で示されたFrequent Travelers、Slow Travelersの概念が有効になるであろう。

豊田由貴夫

李美淑著『「日韓連帯運動」の時代 1970-80年代のトランスナショナルな公共圏とメディア』(評者:立教大学異文化コミュニケーション学部 石坂浩一)

李美淑著『「日韓連帯運動」の時代 1970-80年代のトランスナショナルな公共圏とメディア』2018年2月、東京大学出版会

第二次世界大戦以前、日本は朝鮮半島を植民地支配して、その地の人びとに人間的関心を抱くことがなかった。日本の敗戦で朝鮮は独立したが、不幸にして東西冷戦のもと、南北に分断され、朝鮮戦争を経てそれは固定化された。2018年に入ってからの劇的展開を見るにつれ、南北双方の政権が誕生してから70年の歳月が何であったのか、考えさせられるが、そのことは今はおこう。
 戦後、1965年に日韓が国交を正常化してからも、日本社会は韓国に関心を持たなかった。しかし、韓国の民主化運動がその状態を掘り崩す重大なきっかけを作ってくれた。それが1970年代以降に展開された日本における「日韓連帯運動」であったと思う。
 著者の李美淑(イミスク)は東京大学大学院学際情報学府博士課程を修了し社会情報学博士を取得した若手研究者である。これまでも本学で朝鮮語や英語の兼任講師として勤務されたが、2018年度から立教大学グローバル・リベラルアーツ・プログラム運営センター助教として勤務されている。
 本書は、1970年代から80年代にかけて展開された韓国の民主化運動とそれに呼応した日韓連帯運動についての初めてのまとまった本格的研究である。これまで日韓連帯運動に関する研究は、柳相栄・和田春樹・伊藤成彦編『金大中と日韓関係』(2013、延世大学金大中図書館)がほぼ唯一のものであるが、これは当事者によるまとめの性格が強い。拙稿「金芝河と日韓連帯運動を担ったひとびと」(杉田敦編『ひとびとの精神史 第6巻 日本列島改造—1970年代』(2016、岩波書店)は日韓連帯運動の始まりと公害輸出反対運動について記録している。このほか、吉松繁『在日韓国人「政治犯」と私』(1987、連合出版)、鄭在俊『金大中救出運動小史』(2006、現代人文社)など当事者による記録や在日韓国人政治犯であった康宗憲『死刑台から教壇へ—私が体験した韓国現代史』(2010、角川学芸出版)の手記がある。だが、これらを受け止めて研究として取り組んだものは見られなかった。
 その意味で、この本が韓国出身の研究者によって書かれたことはとても意味のあることである。本書は、日韓連帯運動がトランスナショナルな活動家たちのネットワークという公共圏の形成であることを論証しようとしている。日韓連帯運動が連帯として成立し公共圏といいうるのは、一方的な情報の流れや支援-被支援ではなく、問題提起-認識の共有-応答というコミュニカティブなプロセスが存在していたからだと指摘する。いいかえれば、韓国の困っている人びとを助けるといった同情とか、韓国の独裁政権はひどいといった高所からの批判とは異なる、他者と自己との関係に対する自覚、解釈、認識の中で具体的な行動を通じて自己のあり方を変革していく再帰的な民主化への過程とみなしうるということである。著者はこのことを、韓国民主化運動の情報発信における日本の活動家、特にキリスト者たちの関わり、そして月刊誌『世界』における連帯の言説を見ることで検討した。また、日韓連帯運動を代表する「日韓連帯連絡会議」がまず掲げたのが、「日本の対韓政策をただす」ことだった事実の重要性を確認している。
 実は私はこの本でも何か所か登場するし、連帯運動の当事者でもあるので、客観的批評という意味ではふさわしくないかもしれない。だが、当事者がこれまで重要なことを記録したり語ったりしきれていない状態であることを踏まえ、私見を述べさせていただきたい。
 著者が情報やネットワーク研究を専攻していることもあるが、日韓連帯運動において情報というのは非常に重要なポイントであった。著者が述べているように、1970年代の日本の社会運動においては、狭山差別裁判反対闘争、成田空港建設反対闘争(三里塚闘争)、そして日韓連帯運動が3大闘争と位置付けられていた。このうち、狭山と三里塚は文字通り状況が日本で公然と進行する中での大衆闘争になっていた。だが、日韓だけは韓国から情報が届き、それをもとに方針を提起できる者が運動を制するという独自の側面を持っていた。今日であれば韓国の情報をすぐ理解できる日本社会の構成員は少なくないが、70年代といえば朝鮮語を理解する人々は、むしろ奇特な存在と見られていたのである。韓国民主化運動は歴史的にいって民衆に寄り添うものであったが、それが世界的に注目されるようになったのも、世界への情報発信が一因だった。ドイツ人記者の光州闘争取材という本書とはやや異なる側面ではあるが、昨年韓国で公開され広く共感を呼んだ映画〈タクシー運転手〉もそうした一端を物語っている。私は韓国の聖公会大学における研究会で2004年に日韓連帯運動についての簡単な報告をし、それが조효제,박은홍엮음『한국, 아시아 시민사회를 말하다』 (2005、아르케 )に掲載されているが、そこでも情報の重要性について指摘したことがある。
 『世界』はTK生「韓国からの通信」を連載して、韓国の状況をいち早く伝達した。また、さまざまな韓国のアピール文、報告を訳出し、日本の状況についても合わせて報告する「ドキュメント 金大中拉致事件」を連載していった。日本の知識人に親しまれた『世界』がこうした作業に多くの力を割いたことの重要性、そして戦前の日本に韓国をたとえる機械的対比のような見方が、誌面において様々な意見を通じて克服されていく経過を本書は跡付けた。植民地支配をとらえ直し、韓国との関係で日本社会のあり方を省みる姿勢を『世界』や日韓連帯運動は日本社会に提起したことが、わかるだろう。もちろん、日韓連帯運動が日韓関係のすべてに取り組み、状況を改善できたわけではないが、時代を画する動きであったことは間違いない。全体として、日韓連帯運動を相互関係の中で発展し、変革を試みようと公共圏を形成していったという論旨は、説得力を持っていると見ることができる。『世界』は日本の進歩勢力のすべてではないが、この時代を象徴する存在として、分析対象にしたことが成功していると思われる。論壇という存在がまだ一定の力を持っていた時代ならではのことである。 
 末尾に、いくつか気が付いたことも指摘しておきたい。和田春樹の著作にはそうした趣旨が出ているが、当時の日韓連帯運動の中で日本人が抱いた韓国民主化運動への共感は、並々ならぬものがあった。「金芝河と日韓連帯運動を担ったひとびと」でも述べたことだが、特にキム・ジハの3・1アピールは大きな衝撃だった。日本の議論には「同情」のレベルのものもあったろうが、ともに自らを解放しようというキム・ジハのアピールを受けて、真剣に韓国を知ろうとした者たちもいて、そこから日本の近代史上初めて、朝鮮語を学ぼうということが社会運動として提起された。この点の重要性は強調してもよかったように感じた。
 本書は「キーセン観光」に反対する女性たちの運動を重要なものとして叙述している。この点は『金大中と日韓関係』で十分触れられなかった課題であった。このほかにも、日韓連帯運動の様々な展開や広がりがあったのであり、その実態や社会的意味も今後、検討してくれればと思う。また、よくいわれる「本国志向」と「在日志向」という二つの流れについては本書で対比的に記述されているが、日韓関係の中での運動的分岐の発生や、二つの課題を統一的にとらえようとした梶村秀樹の問題提起(『朝鮮研究』との議論)も視野にいれることが今後の研究で必要とされるであろう。
 お詫びしなくてはいけない点がある。私自身が証言したことが本書の1ページに出てくるが、刊行後の著者とのやり取りで私が韓国に運んだ映画のタイトルが〈自由光州〉なのに、誤って〈しばられた手の祈り〉と語っていることに気が付いた。大変申し訳なく、著者や読者にお詫びする次第である。〈しばられた手の祈り〉はスライドで、わたしはこの時にスライドも持ち込んでいるので、錯覚したのである。
 本書の143ページの注22で中井毬栄が『朝日新聞』の連載企画「65万人」の担当者であるように記述されているが、これは夫君の故宮田浩人の誤りである。宮田浩人は『世界』で編集部の名前で掲載された「ドキュメント 金大中拉致事件」の筆者でもある。
ハンギョレ新聞の主筆などを務めたキム・ヒョスンは韓国で在日韓国人政治犯とその支援運動をテーマにした『祖国が捨てた人びと』という本を刊行した。遅くなってしまったが、秋にはこの本を刊行する予定で、私たち平和・コミュニティ研究機構では出版に合わせてシンポジウムを行なう予定である。
 日本の連帯運動の当事者が忙しさにかまけているうちに、韓国の研究者がしっかりした仕事をしてくれたことに、改めて感謝を表したい。本書は貴重な研究成果であり、日本でも多くの人々に読まれることを願ってやまない。関連資料の整理や記録作成に、私自身も一層尽力したいと思う。

石坂浩一
(立教大学 平和・コミュニティ研究機構代表)
「グローバル社会での平和構築」講義担当:清水謙先生
みなさん、はじめまして。平和・コミュニティ研究機構で「グローバル社会での平和構築」の講義を担当いたします清水謙です。どうぞよろしくお願いします。

私は、スウェーデンの政治外交史を中心に国際政治学を研究しています。私がスウェーデンを研究するようになったきっかけは、高校時代に偶然紹介された交換留学プログラムでストックホルムのダンデリュード高校に一年間留学したことでした。ダンデリュード高校では社会科学と自然科学の両方を履修するクラスに入り、スウェーデン語を学びながら、歴史や地理、国際経済学や環境学の授業で世界のことに触れて国際関係に大きな興味を持つようになりました。
帰国してからはさらにスウェーデン語と国際関係を学びたいと考え、大阪外国語大学外国語学部(現:大阪大学外国語学部)のスウェーデン語専攻に進みました。スウェーデン語はマイナーな言語と思われるかもしれませんが、隣のフィンランドでも公用語となっていて、1000万人以上の人がスウェーデン語を母語としている北欧最大の言語といえます。ちなみに日本でも人気のあるムーミンの原作者トーベ・ヤーンソンさんはフィンランド人ですが、母語がスウェーデン語なのでスウェーデン語で原作が書かれています。スウェーデン語の運用能力を身に付ければ、同族のノルド語であるノルウェー語、デンマーク語の理解も可能となります。そうすると、スカンディナヴィア全体でスウェーデン語理解してくれる人は約2000万人にものぼります。
学部時代には、専攻のスウェーデン語のほかに、副専攻語のフランス語からロシア語やサンスクリット語までいろいろな言語の授業にも出ていました。たくさんの言語に触れることでさまざまな国・地域の歴史、文化を知ること、国際的な相互理解がいかに大切かを実感しました。大学ではスウェーデンに2回留学をしました。3年生のときにスウェーデン政府奨学金を受けてヴィスカダーレン国民大学校に語学留学をし、4年のときにJASSO派遣留学生としてユーテボリ大学で国際紛争解決学を学びました。この授業ではアクティヴラーニングなども取り入れられていて、そのときの経験を授業でも活かしていこうと考えています。留学時代は旧ユーゴスラヴィア紛争にも大きな関心を持ち、たとえば大量虐殺のあったスレブレニツァに訪れるなど、積極的に現地に足を運んで調査することも行いました。外大時代は北欧史と国際法と2つのゼミを選択しました。北欧史のゼミでは歴史学の方法論を、国際法ゼミでは国際関係と法学の方法論を学びました。この2つのゼミを履修することで、スウェーデンを研究対象とした国際関係を研究したいと考えるようになり、国際関係の方法論をより専門的に学ぶために東京大学大学院総合文化研究科(国際関係論コース)に進学し、それ以来一貫してスウェーデン政治外交史を研究しています。
私がまず興味を持ったのは、「積極的外交政策」と呼ばれる人権、平和、軍縮などに重点を置いたスウェーデンの外交政策についてでした。スウェーデンがこのような外交政策を推進するようになった背景には、アルジェリア独立戦争(1954-62年)においてアルジェリアの人権状況を憂慮したスウェーデンが外交政策の柱に人権を盛り込んだことが挙げられます。また、スウェーデンが「パルメ委員会」で知られるように軍縮の分野を牽引するようになったのにはスウェーデンの核開発計画が大きく影響しています。核開発は世論の反対で断念しますが、核に関して蓄積した知識を核軍縮問題に活かすことで、スウェーデンは軍縮問題の旗手となっていきました。

スウェーデン外務省本館(2010年撮影)

このスウェーデンの「積極的外交政策」は移民/難民の積極的な受け入れとも軌を一にしています。スウェーデンはもともと第二次世界大戦までは優生学思想に基づいて排外的な外国人政策を採っていましたが、戦後はその反省から外国人労働者や難民を積極的に受け入れています。スウェーデンにも移民をめぐる問題はありますし、近年では極右も台頭してきていますが、「積極的外交政策」の一環としてスウェーデンは移民/難民に寛容な国として知られています。では、なぜ移民/難民は移住先にスウェーデンを選ぶのでしょうか。2014年から2017年まで文部科学省科学研究費補助金を受けて、スウェーデン、ヨルダン、レバノンなどで調査を行ったところ、中東でもスウェーデンの積極的な難民の受け入れと人道的な外交政策のことは非常によく知られていて、スウェーデンであれば人道的に手厚い保護が受けられると考えてスウェーデンを移住先に選択していることがわかりました。つまり、経済的な理由もあるでしょうが、最も重要視しているのは人間の尊厳を大切にしてくれそうだという意識であることが明らかとなりました。
現在の私の研究テーマですが、近年の研究においては、スウェーデンが「中立」を標榜しつつも、冷戦期にはスウェーデンが実際には秘密裏に西側諸国と密接な軍事協力関係を構築してきたことが明らかになってきています。先行研究ではそうした西側との軍事協力の運用実態の解明に重点が置かれていますが、なぜ西側との軍事協力を構築し始めるに至り、そして非加盟国でありながらNATOのバルト海戦略を補完していく重要なアクターとなっていったのかという新たな問題を解明することが私の目下の研究領域です。
こうした研究成果を活かして、授業では現地調査での経験を基にした知見を取り入れながら、できるだけ多くの国・地域の政治や歴史、文化などをできるだけ多く紹介することを心がけています。また、学生さんたちの関心や興味に沿ったテーマを広く柔軟に拾い上げて、複眼的な視野に立って学術的好奇心をより広げていけるトピックを提供したいと思っています。みなさんと授業でお会いできるのを楽しみにしております。

【経歴】
2001年3月 大阪外国語大学外国語学部地域文化学科中・北欧専攻スウェーデン専攻入学
2003年8月 ヴィスカダーレン国民大学校留学(スウェーデン政府奨学金)
2005年8月 国立ユーテボリ大学留学(JASSO 派遣留学生)
2007年3月 大阪外国語大学外国語学部地域文化学科中・北欧専攻スウェーデン専攻卒業
2009年3月 東京大学大学院総合文化研究科(国際関係論コース)修士課程 修了
2009年4月 日本学術振興会特別研究員(DC1)受入研究機関:東京大学(2012年3月まで)
2017年3月 東京大学大学院総合文化研究科(国際関係論コース)博士課程単位取得満期退学
2016年4月より本学兼任講師

【主要業績】
「冷戦期のスウェーデンの外交および安全保障政策-これからの研究の礎-」、『北欧市研究』24号、2007年、109-127頁。
「スウェーデンの外交政策-積極的外交政策の系譜」、村井誠人『スウェーデンを知るための60章』明石書店、2009年、218-224頁。
「第二次世界大戦後のスウェーデンの移民政策の原点と変遷-「人種生物学」への反省と「積極的外交政策」の形成過程から-」、『北欧史研究』26号、2009年、30-54頁。
「スウェーデンの2006年議会選挙再考-スウェーデン民主党の躍進と2010年議会選挙分析への指標-」『ヨーロッパ研究』10号、2011年、7-27頁。
「スウェーデンにおける「移民の安全保障化」-非伝統的安全保障における脅威認識形成-」『国際政治』172号、2013年、87-99頁。
「スウェーデンにおける国籍不明の潜水艦による領海侵犯事件についての分析-「中立」と西側軍事協力と武力行使基準に着目して-」『IDUN-北欧研究-』21号、2015年、337-368頁。
「スウェーデン-移民/難民をめぐる政治外交史」、岡部みどり編『人の国際移動とEU地域統合は「国境」をどのように変えるのか?』法律文化社、2016年、118-131頁。

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