埼玉県知事とコミュニティ福祉学部の学生が意見交換。
「防災」と「男性の育休」をテーマに政策提言

埼玉県知事と立教大生の意見交換会

2023/12/19

トピックス

OVERVIEW

2023年11月22日、大野元裕埼玉県知事とコミュニティ福祉学部コミュニティ政策学科の学生による意見交換会を、立教大学新座キャンパスで開催しました。この取り組みは埼玉県と立教大学との包括連携協定に基づく連携推進の一環として、若者の感性を県政に生かしつつ、学生に生きた学習の場を提供することを目的としており、埼玉県内の私立大学では初の試みです。今回は「防災」と「男性の育休」をテーマに、同学科の原田峻ゼミと濵田江里子ゼミの学生が政策提言を行い、知事との意見交換に臨みました。

あいさつ

冒頭で西原廉太総長は「埼玉県にキャンパスを構える大学として、地域社会の一翼を担っていきたい。学生たちの提言を何らかの形で県政に生かしていただけるとうれしい」と語りました。続いて、大野元裕知事は「埼玉県が抱える『防災』と『超少子高齢化』という歴史的課題に対して提言をいただけるということで大変うれしく思っている。ぜひ率直なご意見をぶつけていただきたい」と学生たちに呼びかけました。

西原廉太総長

大野元裕埼玉県知事

学生による政策提言

コミュニティ福祉学部コミュニティ政策学科
原田ゼミ1班
タイトル:「あったか、ホっCAMP!~防災×アウトドア×大学~」
原田峻准教授のゼミナールからは「若い人たちに防災への興味を持ってもらうには」というテーマで2つの班がプレゼンテーションを行いました。1班は、若者の防災意識の低さ、これまでの防災に関する施策が若者を引きつけられていない現状に対し、「ワクワク要素」を含んだ体験が必要だと提案。昨今のキャンプブームに鑑み、アウトドアやキャンプと絡めた防災イベント「あったか、ホっCAMP!」を提言しました。

原田ゼミ1班

実施場所については、第1回目は立教大学新座キャンパスで試験的に実施し、徐々に埼玉県内の他の大学に広げていく構想を発表。また、従来の防災キャンプはファミリー層が多く、若者の参加を促進できていない点を指摘し、ターゲットを「アウトドアやキャンプに興味がある若者」に絞りました。

具体的な実施内容として、次のようなプログラムを提案。「立ちかまど」を組み立てた野外炊飯。非常用発熱剤を使った調理。テント・寝袋・ランタン等の試用。キャンプ用品の展示会や参加者同士のフリーマーケット。ビンゴ大会や星空鑑賞。映像による防災学習。段ボールベッドの作成・使用。これらの案をタイムスケジュールと合わせて紹介しました。加えて、運営組織図や各関係者が得られるメリット、想定費用などの説明がありました。

以上のような防災イベントが、個人の防災意識改革と、防災に対する強固な基盤作りにつながると強調した1班。「埼玉を防災意識改革のパイオニアに~埼玉から全国へ!~」というメッセージで提言を締めくくりました。

原田ゼミ2班

原田ゼミ2班
タイトル:「LINEでミヂカ防災~ポイ活で防災を知る第一歩に~」
2班は、さまざまな調査結果から、防災施設や防災イベントに興味を持つ若者が少ないこと、若者が防災に触れるハードルが高いことを課題として提示。そして、多くの若者になじみ深いコミュニケーションアプリ「LINE」を活用して防災意識を高める施策を提言しました。

そのスキームは、埼玉県LINE公式アカウントと連携したポイント制度を構築し、防災クイズや、防災施設・防災イベントへの訪問を通してポイントが貯まり、各種景品と交換できるというもの。他の自治体での先行事例も紹介しつつ、詳細をガイドブックや防災ポイントの画面などを交えて解説しました。

また、ツールとして「LINE」を採用した理由、クイズ形式を取り入れた理由などについて調査結果をもとに説明。景品にはアイスクリームの「LINEギフト」や、埼玉県にちなんだスポーツやアニメとコラボしたグッズを採用するアイデアを提案。さらに、3カ月周期という実施期間や、資金の調達にガバメントクラウドファンディング(政府や自治体が行う寄付制度)を活用するといった案を披露しました。

「防災を身近に感じてもらうためのきっかけは何でもいい。できることから一つずつ取り組んでほしい」というメッセージとともに発表を終えました。

濱田ゼミ

コミュニティ福祉学部コミュニティ政策学科
濵田ゼミ
タイトル:「埼玉県の中小企業から始まる男性の育児休業取得促進」
濵田江里子准教授のゼミナールは「男性の育休」をテーマとして取り上げました。まず、法律で定められた制度であり、労働者の権利であるにもかかわらず、低い取得率に留まっている男性育休の実態を説明。そして、埼玉県内の企業の99.8%が中小企業であり、そのうち半数程度の企業が人手不足に陥っている現状から、中小企業に特化した男性育休推進の施策を提言しました。

男性育休取得における課題として「人手不足/業務引継ぎ」「知識不足」「社内の雰囲気」の3つを提示。それを解決するために提案したのが「地域業務委託システム」です。

濱田ゼミ

人手不足については、これまで派遣会社などから人員を補うことが解決方法だと考えられていました。しかし、派遣された人に業務引継ぎや人間関係構築などの負担があり、「業務委託」という形をとることでデメリットを最小限にしようというのが、この施策の狙いだといいます。

システム上では、「業種」「所有している機械」「受託可能な業務」といった条件で企業の検索が可能。ただし、委託するとなると、自社で仕事をこなしていた時よりも利益が減少します。そこで、業務委託に対する助成金の申請をシステム上で簡略化する仕組みを提案しました。

育休への知識不足に対しては「育休パパコミュニティ」を設置し、経験者から有益な情報を得られる仕組みを整備。また、「社内ポータルサイト」を設け、社員の育休取得率、育休に対する意識などを共有し、育休を取得しづらい雰囲気の改善を図ります。「これらのツールの相乗効果で、男性育休取得に関する課題を解決したい」として、提言を締めくくりました。

各グループのプレゼンテーション後は、大野知事と西原総長、学生による質疑応答があり、活発な意見交換が展開されました。

意見交換会を終えて

大野 元裕 埼玉県知事
時間をかけて政策を作り込んでいただいた様子が見え、感心しました。提言の中身は、目からうろこが落ちるようなもの、将来につなげていくことが可能なものがあり、我々としても大変ありがたかったです。

西原 廉太 総長
埼玉県にキャンパスを構える私立大学で初めて県への政策提言の場を設けていただき、大変光栄に感じています。新座キャンパスには4つの学部がありますので、このような機会を他の学部にも広げていけるとうれしく思います。
屋田 章吾さん(原田ゼミ1班)
学生ならではの政策提言ができたという手応えはありました。質疑応答では発言に少し矛盾が生じてしまい、自分たちの主張をうまく伝えることができなかったので、その反省を今後に生かしたいです。
静間 優花さん(原田ゼミ1班)
防災について調べ、政策を考える中で、私自身も防災に対する意識が高まりました。知事の前で発表するのは緊張しましたし、主張を時間内に収めるのは大変でしたが、自分たちの考えをしっかりと伝えることができたと思います。
庄司 歩さん(原田ゼミ2班)
半年前くらいから週2~3回のペースで集まり準備を進めてきました。「こんな提言をしても大丈夫かな……」という不安はありましたが、知事に自分たちの気持ちを受け止めていただき、ホッとしています。
小堂 佳波さん(濵田ゼミ)
知事に政策提言を行うのはとても緊張しました。貴重な機会をいただき、光栄に思います。今回の経験を通して、目的意識を持って学習に取り組むことができ、チームの結束力や集中力が高まったと感じています。
李 佳俊さん(濵田ゼミ)
自分たちが政治に影響を及ぼすことができる機会はなかなかないので、参加できてうれしく思います。人前で自分たちの考えを伝える難しさを実感しましたが、今は充実感でいっぱいです。
※学生は、いずれもコミュニティ福祉学部コミュニティ政策学科3年次。

原田ゼミ

濱田ゼミ

※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。

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