株主が支える株式会社を法律の視点で見る
——立教大学×三島北高等学校
立教大学特別授業
2026/02/04
研究活動と教授陣
OVERVIEW
大学での学びの多様さや面白さを伝える「立教大学特別授業」が11月19日、静岡県三島市の県立三島北高等学校で開かれました。講義を受けたのは2年生42人。法学部法学科の河村賢治教授が株式会社の仕組みや法律を学ぶ意味について話しました。
法学部法学科
河村 賢治教授
市場経済システムによる環境問題・社会問題解決に取り組む。立教大学ESD研究所長も務める。
河村 賢治教授
市場経済システムによる環境問題・社会問題解決に取り組む。立教大学ESD研究所長も務める。
専門分野
商法研究テーマ
会社法・金融商品取引法テーマ「株主と法」〜法律は社会デザインのツール〜
多く出資した株主が多くの議決権を持つ
株式会社は、多くの人から資金を集め、その資金で事業を運営する仕組みです。原点は東インド会社で、17世紀当時アジアからヨーロッパに香辛料を持ち帰るための莫大な資金をたくさんの人に出してもらうために考え出されました。
株主は応援したい企業に出資し、その企業が利益を出せば、株主は出資した金額に応じて配当金を受け取ります。組織のトップは社長であるとイメージするかもしれませんが、実は最上位にある機関は株主総会。株主は株主総会で取締役を選ぶことができるため、コーポレート・ガバナンスにおいては株主が大きな力を持っています。
株主は応援したい企業に出資し、その企業が利益を出せば、株主は出資した金額に応じて配当金を受け取ります。組織のトップは社長であるとイメージするかもしれませんが、実は最上位にある機関は株主総会。株主は株主総会で取締役を選ぶことができるため、コーポレート・ガバナンスにおいては株主が大きな力を持っています。
会社法第105条第1項には「株主は、その有する株式につき次に掲げる権利その他この法律の規定により認められた権利を有する」とあり、その3号に「株主総会における議決権」が定められています。株主は一人一票ではなく一株一議決権が原則、要するにたくさん出資した人が多くの議決権を持ちます。いわば、その会社の経営をコントロールできるのです。そして企業側は株主にリターンが出せるような経営を目指すという仕組みです。消費者からは、株式会社は物やサービスを提供する面が見えますが、株の世界から見れば株主が会社の経営を支える仕組みが分かると思います。
経済社会の大発明 法律が定める「有限責任」
特別授業の様子
もちろんリスクもあります。会社が倒産すれば、当然株価は下がり、利益が出なければ配当金も出ません。そこで重要なのが会社法第104条です。「株主の責任は、その有する株式の引受価額を限度とする」。シンプルな条文ですが、経済社会における人類史上もっとも大きな発明と言っていいと考えています。例えば、皆さんがある会社に100万円投資したとします。しかしその会社が多額の負債を抱えて倒産してしまい、投資した皆さんも責任を負わなければいけない——。そんなリスクがあるなら、おそらく誰も出資しようとしないでしょう。だから法律で、投資した以上の責任は負わなくてもいいですよと定めています。これを「有限責任」といいます。株式会社という仕組みが広まったのは、こうした工夫があったことが大きいと思っています。
学生の起業が上場企業へ「社会の役に立ちたい」
皆さんもご存じのスキマバイトサービスを提供する「タイミー」は立教大学の学生が在学中に立ち上げた会社です。経営学部で学ぶかたわら起業し、2017年の創業以来、そのサービスが受け入れられ、今では従業員約1600人を抱えるまでに成長しています。
2024年には東京証券取引所グロース市場に上場しました。上場とは、証券取引所で取引できるようになることを意味します。それによって今まで以上にたくさんの人が株を買えるようになり、多くのお金を集めることができるようになります。上場には厳しい基準がありますが、社長は27歳という若さで上場を果たしました。日経ビジネス電子版2024年8月2日付のインタビュー記事によると、その力の源は「日本をよくしたい」という強い思いだったそうです。「失われた30年といわれている中で、これから日本をつくっていく世代が頑張らないといけない」、「起業家として、日本経済の成長に寄与したい」と語っています。皆さんの中にも将来、社会の役に立つことをやってみたいという思いを持つ人がいるかもしれません。それなら、起業するという選択肢もある、そう思わせてくれる一例です。
時代の流れに合わせて法律をデザインし直す
法学部にどんなイメージを持っていますか。六法全書があって条文がたくさん書いてあって、それを一生懸命覚えるのが法学部の授業。そう考えているなら、それはちょっと違うと思ってほしい。私は法律を「社会デザインのツール」、法学部の学生は社会デザイナーだと考えていて、この社会をどうやってデザインすれば、みんながより幸せに暮らせるかを研究しています。
授業後、生徒の質問に答える河村教授
今の法律は昔から試行錯誤しながら条文を作っては改正し、新しい問題が起きればその都度改正をくり返してきたもので、必ずしも完成形ではありません。今後もデザインし直していく作業が必要になってきますし、そのためには「それって本当に正しいのか」という視点があっていい。例えば、「株主は確かにお金を出しているけれど、会社の商品やサービスを作り、担う従業員が一番大切なのでは?」。そんな疑問を持つ人もいるかもしれない。そういった観点がとても重要なのです。環境問題や社会問題を解決するために問題意識を持ち、会社法の仕組みをリデザインする。法学部でそういう学びをしてもらえるとうれしいです。
授業に参加した三島北高校生に聞きました
- 男子2年
大学生が起業・上場した話が心に残っています。若い世代から社会を変えていこうという気持ちが原動力なら、自分も何か大きなことができるかもしれない。そのために大学で学んでいきたいです。
- 女子2年
今まであまり意識していなかった株式会社の、さまざまな実例を聞いて身近に感じることができました。目指す学部や将来の夢は決まっていませんが、こういう学びがあることを前提に、進路を考えていきたいです。
- 男子2年
株式と法学、どういう関係があるんだろうと思っていたけれど、僕たちの生活を豊かにするために大事だと知ることができました。大学は経営関係に進みたいと思っていますが、今後の進路にも深く関わる話でした。
- 女子2年
法学部って難しそうなイメージがありましたが、大学で判例をどんなふうに読み進めていくのか直接先生に質問できました。会社の株に関することが、社会の仕組みに密接に結びついていることが興味深かったです。
- 女子2年
法学部を志望しています。今までは株式関連のニュースはあまり記憶に残らず、どちらかというと経済学部に関係あるのかと思っていました。今回の授業で、法律がいろんな方面とつながっていくことをイメージできました。
- 男子2年
小中学校で学んだ株式会社について、深く知ることができました。法学部か経済学部か迷っていますが、将来はできれば企業の法務課などで働けたらいいなと考えているので、今日の話を進路選択に活かしていきたいです。
※本記事は『静岡新聞』(2026年1月17日掲載)をもとに再構成したものです。
※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご注意ください。
※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご注意ください。
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