新たな発想で、次の社会をデザインする——
SDGsを含む、21世紀社会の課題解決を目指して

社会デザイン研究所長 21世紀社会デザイン研究科・法学部 中村 陽一教授

2020/12/15

研究活動と教授陣

OVERVIEW

2015年に国連で採択されたSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)をはじめ、現代社会が抱える諸問題を抜本的に解決するために——。既存の枠組みを越え社会をダイナミックに革新する研究と実践に、中村陽一教授は取り組んでいる。

社会の仕組みを変える「知」と「実践」

環境問題や地域紛争といった前世紀からの宿題に加え、新たな形の貧困や社会的排除など、21世紀社会は多くの課題に直面している。この現状に終止符を打ち、持続可能な社会を実現するために生まれたのがSDGsであり、2030年までに達成を目指す17の目標(ゴール)と169の具体的な目標(ターゲット)が掲げられている。

世界中でSDGsに関する取り組みが活発化しているが、SDGsが掲げられる前より、こうした分野横断的な課題に向き合い社会を革新する試みに挑んできたのが、中村陽一教授が専門とする社会デザインの分野だ。

「産業中心の社会に限界が訪れている中で、新たな社会の在りようを考えるには、従来の枠組みを越えた発想やアプローチが必要です。常識にとらわれず、社会の仕組みや人々の参画方法を変革していく思考と実践が社会デザインであり、SDGsが目指すものをもともと内包した学問領域なのです」

SDGsを含む現代社会の課題は多様化・複雑化し、既存の知や手法がもはや通用しない。それらを解決に導くための仕組みを設計し、あるいはすでにあるものを大胆に組み替え、新たな社会をデザインする——。それは、「いまここではないどこかとなにものかを求め続ける一連のプロセスでもある」と中村教授は話す。

その研究対象は、環境、福祉、教育、人権、まちづくり、AIなどあらゆる分野に及び、ローカルからグローバルまで幅広く網羅する。2002年に開設した立教大学21世紀社会デザイン研究科では、中村教授をはじめ多様な分野の専門家が集い、学際的な研究を進めている。

「最大の特色は、国内外のネットワークを駆使してさまざまな組織や人々をつなぎ、実践的なプロジェクト研究を推進している点です。大学院学生の研究テーマは多様すぎるくらい多様ですが、我々は言わばコーディネートのスペシャリスト。長年の蓄積を生かして多岐にわたる研究・実践をアレンジし、現場と往復しながら、社会デザインの担い手となるソーシャルデザイナーを育成しています」

ソーシャルビジネスを次の段階へ——社会デザイン・ビジネスラボの開設

中村教授自身は、80年代半ばより、市民活動・NPO/NGOの実践的研究や基盤整備、政策提言などに取り組んできた。特に近年は、ビジネスを通じて社会課題の解決を図る、ソーシャルビジネスの推進に力を入れている。

「ビジネスの領域にウイングを広げ、注力していく必要があると思い始めたのは90年代終わり頃。当時まだ日本でソーシャルビジネスという言葉は一般的ではありませんでしたが、2000年代から広く推進の機運が高まり、経済産業省や民間企業と連携して普及・発展に取り組んできました」

2019年12月、社会デザイン・ビジネスラボの設立説明会にて行われた有識者によるパネルディスカッション(左端・中村教授)

これらの活動を通して、企業との結び付きを深めてきた中村教授。2008年に開設され、2010年から所長を務める社会デザイン研究所でも、築いたネットワークを生かして連携を積極的に進めてきた。しかし、同時にソーシャルビジネスを取り巻く問題点も見えてきたという。

「企業にとって社会貢献活動は、どうしても副次的な位置付けになりがちです。しかし、今後は社会デザインの発想をビジネスの中心に据えないと、企業自身も社会も持続可能性を保てない。特に昨今はSDGsや、環境・社会・ガバナンスに配慮している企業を対象とするESG投資の拡大もあり、企業にとって社会課題への取り組みは生き残りに不可欠な要素になってきています」

そこで、2019年12月、社会デザイン研究所と株式会社JSOLが共同で設立したのが「社会デザイン・ビジネスラボ」だ。

「100社超の企業と協働し、社会課題の解決に直結する新規ビジネスの創出を目指します。企業連携は他大学でも盛んに行われていますが、これだけの数の企業と共に、社会課題と結び付いたビジネスを開発する試みは例がない。これまで実施したワークショップから、すでに複数のプランが走り始めています」

「当初、参加するのは20~30社だろうと思っていた」という中村教授の予想を上回る数の企業が集まったのは、関心の高さの表れに他ならない。社会デザインを軸とした大学と企業の新たな化学反応に、大きな期待が寄せられている。

ウィズコロナ、アフターコロナ下の新たな課題に挑む

中村教授が目指すビジョン ©中村陽一,2020

コロナ禍により従来の社会問題がさらに顕在化し、また新たな課題も登場している現在、「まさに社会デザインの出番が来ている」と中村教授は強調する。

「例えばリモートワーク一つとっても、ワーク/ライフスタイル、コミュニケーションのデザインが大きく変わりますし、より深刻な問題で言えば社会格差が一層拡大しています。小さな改善を続けるだけではなく、抜本的・構造的に社会を変える必要があると明らかになり、いままで以上にスピードを上げ、現実的な解決策を提示していかねばなりません」

すでにさまざまなアプローチを検討しているが、その一つが加速する「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」に社会デザインの考え方を取り入れた「DSX(デジタル&ソーシャル・トランスフォーメーション)」だ。

「DX、つまりデジタル技術による業務・ビジネスの変革が進んでいますが、現状は既存の成長経済の枠の中にとどまっています。そこに社会デザインの発想を盛り込み、例えばフードロスを減らすためにAIやビッグデータを活用するなど、よりサステナブルなビジネスにデジタルを活用していく必要があると考えています」

SDGsの達成も含め、社会をダイナミックに変えていくために。中村教授はこれからも大胆な発想と手腕で、具体的なソリューションを探究し、実践し続ける。

プロフィール

PROFILE

中村 陽一

1980年一橋大学社会学部卒業。編集者などを経て、1989年に消費社会研究センターを設立、代表を務める。東京大学社会情報研究所客員助教授などを経て、2002年より立教大学21世紀社会デザイン研究科・法学部教授、2010年より社会デザイン研究所長。専門は、社会デザイン、ソーシャルビジネス、NPO/NGO、市民活動、コミュニティデザイン等。ニッポン放送『おしゃべりラボ~しあわせSocial Design』パーソナリティ、演劇プロデュースなど幅広い活動も手掛ける。

■書籍情報
『ビルディングタイプ学 入門—新しい空間と社会のデザインがわかる』(誠文堂新光社・2020年5月)、ほか

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