「人生100年時代」を豊かに生きるための食と健康

スポーツウエルネス学科教授 杉浦 克己

2018/08/15

研究活動と教授陣

OVERVIEW

日本では超高齢化社会が到来して「人生100年時代」が現実のものになると言われています。かつてない長寿社会を迎える中で、一生を通して健康に、豊かに暮らすにはどのような意識や態度が求められるのでしょうか。心掛けるべき生活習慣や食との向き合い方について、コミュニティ福祉学部の杉浦克己教授に伺いました。

健康を取り巻く環境は どのように変化していますか。

厚生労働省・農林水産省が発表している「食事バランスガイド」は、1日に「何を」「どのくらい」食べたら良いのか、コマの形と料理のイラストで示したものです。コマは5つの料理グループごとに分けられ、それぞれ目安となる料理とその分量が示されています。

平均寿命が延び続けている現代において、健康で自立した生活を送れる期間、いわゆる「健康寿命」を延ばすことが課題となっています。しかし、一口に健康と言っても、そこにはさまざまな要因が関わっています。厚生労働省が国民の健康増進を目的に2000年に策定した「健康日本21」という施策では、健康を支える大きな柱として、「食事」「運動」「睡眠・休養」の3つが示されました。

日本では戦後の貧困の中で、悪化していた栄養状態を改善すべく、まず食事の重要性が認識されました。その後、車社会の発展とともに運動不足が顕在化したことから、運動やスポーツを促進する動きが生まれ、スポーツ基本法の制定、スポーツ庁の設置などが進められました。そして最近では、過労やうつ病などの問題から、睡眠・休養の必要性が見直され始めています。

このように、社会の変化に伴い健康の指標も時代とともに変遷してきましたが、現代においては、3つの柱である「食事」「運動」「睡眠・休養」の全てをバランス良く心掛けていくことが求められています。さまざまな情報が容易に入手できるいま、年代を問わず個々人が食と健康について積極的に学び、生活習慣を見直していくことが必要なのです。

下記URLの「『食事バランスガイド』で実践 毎日の食生活チェックブック」では、性別、年齢、活動量別に一日に必要な摂取目安を示しており、毎日の食事内容を簡単にチェックできます。
【Web】http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/pdf/check_book.pdf
出典:農林水産省実践食育ナビ

健康を支える柱の一つ、食に対してどう向き合うべきでしょうか。

食には3つの機能があると言われています。1次機能は「必要な栄養素を取り込み生命を維持する」こと、2次機能は「おいしさ・楽しさなどの精神的満足をもたらす」こと。そして3次機能は、「食品中の特定の栄養素を摂取し、体のバランスを整える」ことです。

飽食の時代と言われ、過剰摂取による肥満や高血圧などが増加している現代は、この3次機能を意識すべき段階に来ています。そのために登場したのが各種のサプリメントです。日本ではサプリメントの行政的な定義はありませんが、青汁などの健康食品やエネルギー補給食品なども含め、特定の栄養素を摂取する食品の総称とされています。

私は食品メーカーで長年スポーツサプリメントの研究・開発に携わってきましたが、サプリメントを上手に活用すれば、体の機能を改善しパフォーマンスを向上させることができます。もちろん前提として栄養バランスのとれた食生活を心掛ける必要はありますが、その上で補うべき栄養素があれば、補助としてサプリメントを取り入れると良いでしょう。まずは農林水産省のWebサイトにある「食事バランスガイド」などを参考に、毎日の栄養摂取状況を確認してみると良いでしょう。

注意すべき点は、サプリメントの良さとともに限界も理解すること、安易に流行の製品に手を出さないことです。また、輸入品には安全面が十分確認できていない場合があるため、国内メーカーの製品をお勧めします。

これからの時代における食と健康の課題は何でしょうか。

今後必要だと感じているのは、大学生に対する食育です。子どもに向けた食育は以前から広く実践されていますが、そうした教育を受けたはずの学生でも、食生活に関する知識や食の重要性の認識が十分でないように見受けられます。

大学生の時間の使い方は、高校生までと大きく異なり、自分の裁量に委ねられることになり、いつ何を食べるかも同様です。ですから、自己管理環境に移行する大学時代は、いま一度、食の知識や大切さを伝える良い機会だと言えます。社会に出る前に正しい食習慣を身に付けておくことで、将来の生活習慣病のリスクを減らすことができるはずです。

一方では、各方面でAIの実用化が進んでいますが、今後は健康に関わる分野でも、より身近な形でAIを活用できるようになります。すでに食事の写真を撮るだけでカロリーを計算してくれるアプリや、運動量や睡眠時間を「見える化」するアプリも登場しています。それらをうまく活用しながら、生活全体を意識的にマネジメントしていくことで、一生を通して健康で豊かな暮らしを送ることができるでしょう。

杉浦教授の3つの視点

  1. 「食事」「運動」「睡眠・休養」の3つの柱が健康を支える
  2. 普段の食事の補助として、サプリメントの上手な活用を
  3. 生活スタイルが変わる大学生にこそ食育が必要

プロフィール

profile

杉浦 克己

1985年、静岡大学大学院理学研究科生物学専攻修士課程を修了。食品メーカー入社後、健康事業部門にてスポーツ食品の開発およびアスリートの栄養指導に従事する。1998年、東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻博士課程を修了。2008年より現職。
専門はスポーツ栄養学。食育や高齢者の体づくり、サプリメントの活用法など幅広いテーマで講演活動を行っている。2002日韓ワールドカップサッカー日本代表の栄養アドバイザー。主な著書は『勝つカラダをつくる!プロテインBOOK』(2005年、スキージャーナル)、『選手を食事で強くする本』(2007年、中経の文庫)など。

CATEGORY

このカテゴリの他の記事を見る

研究活動と教授陣

2022/09/20

睡眠やメンタルヘルスに深く関わる「生体リズム」

コミュニティ福祉学部 石渡 貴之教授

お使いのブラウザ「Internet Explorer」は閲覧推奨環境ではありません。
ウェブサイトが正しく表示されない、動作しない等の現象が起こる場合がありますのであらかじめご了承ください。
ChromeまたはEdgeブラウザのご利用をおすすめいたします。