公開講演会 「“ふつう”の大学生に原発問題をつたえる方法~女子大ゼミの取り組みから~」

須藤 清之助(社会学部現代文化学科3年次)

2015/01/16

イベントレポート

OVERVIEW

立教大学ESD研究所、立教SFR重点領域プロジェクト研究「課題解決型シミュレーションによるESDプログラムの研究開発」主催

日時 2014年12月3日(水)18:30~20:30
会場 池袋キャンパス 太刀川記念館3階 多目的ホール
講演者 石川 康宏 氏(神戸女学院大学教授)
1957年、北海道札幌市生まれ。立命館大学経済学部II部卒業。京都大学大学院経済学研究科修了。1995年、神戸女学院大学赴任。2004年より教授。
 

レポート

今から3年半ほど前、東北地方を襲った大地震により福島第一原発事故が起こりました。この事故は世界中から注目され、日本の将来が注視されました。ところが、ESD(持続可能な開発のための教育)を提唱している日本が歩んでいる道は、原発ゼロの道ではなく、再生可能エネルギーの世界最先端を切り開いてゆく道でもありません。それどころか、原発問題への関心すら希薄化してきている現実があります。この原発問題という、日本では触れづらい問題と向き合うためには、どのような方法があるのでしょうか。今回は、原発問題をゼミ活動の中心に据えている神戸女学院大学の石川康宏教授による、ゼミでの実践や教育の方法についての講演が行われました。

前半は、石川ゼミの大まかな特徴とこれまでの流れについての話がありました。石川ゼミには、大学の外に出てフィールドワークを行うことと、その活動を本にして出版するという特徴があります。
2011年までは慰安婦問題をゼミのテーマにしていましたが、東日本大震災の発生により、石川先生の中での気持ちが大きく変化しました。原発事故の情報が神戸女学院大学のある関西まではなかなか伝わってこず、福島の方々が今どのような状況なのか分からなかったそうです。目の前の学生たちにも考えてほしいが情報がない。しかし、原発の問題については大学の中で誰かが取り組まないといけない。石川先生は、こうした葛藤を経て2012年よりゼミのテーマを原発問題に変更しました。初年度は福井県へフィールドワークに行ったそうです。その理由として、福井にある大飯原発でもし福島レベルの事故が起きれば、風向き次第では学生たちが神戸女学院大学へ通えなくなる位置にあり、学生たちからは「福島を知ると同時に自らの足下も知りたい」という強い要望があったためだそうです。学生たちは福井に行き、大飯原発で発電されたエネルギーが自分たちの住んでいる兵庫や京都に届けられているという事実を知って驚いたそうです。
後半は、その後福島へ赴いた学生たちが何を見て、何を感じたかについてのお話がありました。福島に行くことでリアルな状況を肌で感じ、報道で伝えられていることとのギャップを知ることが多かったそうです。例えば、ニュースではマスクをしている福島の人々をよく見かけますが、実際足を運んでみると、マスクをしている人は少なかったそうです。また、目に見えない放射線の強さによって立ち入り禁止のエリアとそうではないエリアに区切られていることを目の当たりにし、学校でも安全であると教えられていた原発が、実は安全なものではなかったという現実を身をもって知ることになりました。また、ある時に訪れた小学校の黒板には「3月11日、明日の宿題」と書かれており、時間が2011年3月11日で止まっていることを、改めて実感したそうです。石川先生は、何も言わなくとも学生たちは福島で各々リアルな情報を浴びて考えることができたとおっしゃっていました。フィールドワークに行く前は、メディアで見聞きすることが事実であると思い込んでいた学生たちが、現実を体験することで、情報を選ぶこと、入手することの大切さを痛感するようです。

石川先生からの大きな問いかけは、「大学生は大人予備軍である。それは、これから社会の支え手になっていくということ。では、社会の支え手予備軍としてこの問題をどう考えるか、これからどのような社会を作ろうとするのか」ということでした。今の若者に求められていることが、福島の問題に鮮明に現れていると感じました。
この講演会で、机上の知識だけでは問題解決にはならないことをよく理解できました。石川ゼミで座学の時点では、原発賛成派と反対派に意見が割れるものの、フィールドワークで現場を訪れると、原発反対派の方向に統一されるそうです。テレビでは伝えきれない放射線の存在。それは、重くて厚い防護服を身につけること、そして放射線計測器の警告音を聞くことで初めて実感できるのではないでしょうか。私たち東京の人たちが前を向くことができても、福島では2011.3.11で時間が止まったままの方も大勢います。東京で生活し、これまで原発の恩恵を受けていた人が、東日本大震災後に原発反対と声を上げることの違和感も抱きました。原発に対する認知度の高まりは事故が起きたからではないでしょうか。
原発問題に限らず、現代の若者は今生きている日本社会への疑いのまなざしが少ないと私は感じています。今既にある流れに疑問を持っていても、楽だからその流れに乗る、そんな若者が多いのではないでしょうか。今の社会を生きているのは私たち自身であり、これからの日本社会を担ってゆく存在であるのも私たち自身です。今の日本の抱える問題から目を背けず、向き合って行く姿勢が大切であると感じました。

※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご注意ください。

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