公開講演会 「蝶から見た人と自然との付き合い — 都市における生物多様性の恵みを考える —」

岩崎 美紗子(社会学部現代文化学科3年次)

2014/10/09

イベントレポート

OVERVIEW

ESD研究所主催 公開講演会

日時 2014年7月2日(水)18:30~20:45
会場 池袋キャンパス 太刀川記念館3階 多目的ホール
講演者 奥本 大三郎 氏(大阪芸術大学教授、埼玉大学名誉教授、NPO日本アンリ・ファーブル会理事長)
【略歴】
1944年、大阪市生まれ。フランス文学者、作家。東京大学仏文科卒業、同大学院修了。NPO日本アンリ・ファーブル会を設立。東京の自宅に、昆虫の標本やファーブルの資料を展示する「ファーブル昆虫館 虫の詩人の館」を開館。大阪芸術大学教授、埼玉大学名誉教授、NPO日本アンリ・ファーブル会理事長。
 

レポート

蝶といえば、皆さんにとって身近な昆虫の一つであると思います。見た目も色鮮やかにひらひらと舞う姿を目にすると、自然と癒される人が多いのではないでしょうか。このように多くの人から愛されている蝶を切り口に、自然と人との関わり方を考えてきた奥本大三郎氏の講演会「蝶から見た人と自然との付き合い — 都市における生物多様性の恵みを考える —」が池袋キャンパスで開催されました。
今回の講演会のきっかけは、主催者であるESD研究所所長の阿部先生が指導する3年次ゼミ(社会学部現代文化学科)が研究所と連携しながら行っている「蝶の道プロジェクト」です。「蝶の道プロジェクト」とは、蝶を切り口に都市住民に対して生物多様性を理解してもらい、さらに、人と自然、人と人をつなぎ、持続可能な地域づくりにつなげる活動です。阿部先生と親しい奥本氏が、アンリ・ファーブルの会などを通じて、蝶を含む昆虫と親しむ子どもたちを増やす活動や昆虫の保全活動を展開しているということで、今回の講演会が実現しました。
最初は、日本の都会の緑についてのお話しでした。都会は緑が少ないイメージがありますが、実は街路樹をはじめ墓地や公園、民家の庭、そして学校など小さな自然がたくさんあります。しかし、現代の日本ではこのような場所に植えられる植物は外来種ばかりだそうです。在来種は実がなり虫がつく木が多く、住民からの苦情の原因になってしまうからです。しかし、ミカンやカキが実ったら、近所の人で分け合って食べたり、その皮や葉はお風呂に入れるなどして活用することもできます。また、実を食べに鳥が飛んでくることもあり、木についた幼虫は蝶へと成長するかもしれません。このように、在来種の木にはたくさんの魅力があるにもかかわらず、人間にとって利便性を追い求めて外来種ばかりを選択することによって、昆虫の生息場所が減っているのが現状だそうです。また、現在の都会の自然は、子どもが親しみ、自然に対して尊敬の念を抱くような対象ではなくなっているともおっしゃっていました。
次に、現在奥本氏が行っている「東京アルマス計画」について話されました。「東京アルマス計画」とは、ある大学の荒れ放題になっていた一部の土地を整備することにより、そこに以前から生えていた桜の木を救い、また、蝶が好む木を新たに植えて、より自然豊かな土地へと変える活動です。シュロやアオキなどの植物を切る作業はとても大変で苦労が多かったそうです。しかし、学生の助けも借りながら活動を進めて、土を耕していくと、見違えるほどきれいな土地になり、現在では生えてくる草を定期的に抜いて管理しているそうです。この草抜きも、抜いても抜いても生えてくるので、相当な労力を必要とするなか皆さんで力を合わせて自然を守っています。このように、土地を少しでも手入れすることにより土が良い状態になり、自然がより豊かになっていくのです。
また、写真や標本を見ながら蝶の説明もありました。普段よく見かける蝶ですが、何を食べているのか、どこに生息しているのかなどあまり知ることがなかったことを教えていただきました。同じ種類の蝶でも、生息する場所によって模様がこんなにも違うものかと驚きもありました。また、蝶の種類や模様の数は人間の想像力をはるかに上回るほどの数があるということを聞き、自然の多様さに感動しました。
最後の奥本氏と阿部先生の対談では、昔から日本ではどのように自然とかかわってきたのか、また、自然の愛し方など今の日本の社会に欠けている概念や、自然と接することの大切さをお話されました。

今回、奥本先生の講演会に参加し、蝶のおもしろさや身近な自然を守ることの大切さなどたくさんのことを学びましたが、一番考えさせられたことは、今の日本人の心の中では自然保護と外観重視の考えが対極にあることです。多くの人は、自然を守ることは大切だと認識しているはずですが、この快適で便利な生活の一部を我慢してまでは、自然保護の意味を見いだすことができないのが現状であると思います。私はそこに問題があると思いました。まず、実がなる木や虫がつく木が近くにあることを苦痛と感じるのではなく、季節を感じ、鳥や虫などと触れ合える貴重な場と捉えられるようになれればすてきだと感じました。自然保護を心掛けることにより、今の生活がより豊かに変化していくという考えが全ての人たちの中に芽生える日がくれば、私たちのまわりは日本の在来種の木や植物、そして昆虫でいっぱいの社会になるのではないでしょうか。そしてそのような社会をつくっていくためにも、環境教育が果たしていく役割はこれからますます大きくなると感じました。子どもから大人までが自然とふれあい、自然を愛でる心を育くむことが、これから自然を守ってゆくために一番大切なのではないかと強く思いました。

※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご注意ください。

CATEGORY

このカテゴリの他の記事を見る

イベントレポート

2017/04/25

法学部主催「国際人に求められる素養と大学での学び~現場の経験...

関 匡史(法学部政治学科 2001年卒)