陸前高田での出会いから学ぶ
—2025年度陸前高田プロジェクト体験談

文学部文学科フランス文学専修2年次 藤田 奏さん

2025/11/18

RIKKYO GLOBAL

OVERVIEW

岩手県陸前高田市の方々と立教生・海外大学生(スタンフォード大等アメリカの複数の大学・香港大学・シンガポール国立大学)が共に考える正課プログラム「陸前高田プロジェクト」。
2025年度の参加者である藤田さんにお話をうかがいました。

グローバル教育センターが展開している全学共通科目「陸前高田プロジェクト」は、岩手県陸前高田市でのフィールドワークを通して、東日本大震災発生当時の状況や現在の様子を知り、地域が抱える課題について参加者と市民の方々が共に考えるプログラムです。2013年度からスタートし、2025年度で13回目を迎えました。

旧気仙中学校

東日本大震災津波伝承館

最終報告会

プログラムの大きな特徴は、多様なバックグラウンドを持つ学生によって参加者が構成されていることです。本学の学生のほかに、スタンフォード大学等をはじめとするアメリカの大学・香港大学・シンガポール国立大学から参加者を募り、英語でディスカッションや協働作業に取り組みます。今年は8月23日~29日に陸前高田市でのフィールドワークと立教大学内での事前研修・最終報告会を実施し、立教大学、アメリカのスタンフォード大学、カリフォルニアポリテクニック州立大学、モンクレア州立大学、および香港大学より合計23名の学生が参加しました。

プログラムテーマは「陸前高田市の歩みから持続可能な都市について学び、地方都市が持続可能な都市となるために自分たちにできることを考えよう — SDGs Goal 11『住み続けられるまちづくりを』の視点から—」。このテーマに対して、「包摂性(inclusive)」「安全性(safe)」「強靭さ(resilient)」「環境の持続可能性(environmentally sustainable)」という4つの観点を足がかりとしながら、フィールドワークで得た学びと自らの住むまちを比較し考察を深めました。

学生インタビュー

藤田 奏 (Fujita Kanade)さん(文学部文学科フランス文学専修2年次)

——プログラム参加のきっかけは何ですか。また、参加にあたってどのような目標を立てていましたか。

立教大学陸前高田サテライトでの聴講の様子

昨年、大学のチャペルが主催している奥中山ワークキャンプで岩手県を訪れ、今年も何かのプログラムに参加してみたいと考えていたことがきっかけです。英語を勉強していたので、実際に英語を使う機会を得たいという気持ちに加えて、実家が静岡県で、南海トラフ巨大地震による大きな被害が予想されている地域であるため、地震の被害と復興について関心があって応募しました。

参加にあたっては、東日本大震災と現在の復興について知ることを中心として、ほかにもいくつか目標を持っていました。私が個人的に関心を持っていたのは、香港やアメリカから参加する学生は、どうして岩手県の陸前高田市を訪れて直接お話を伺うこのプログラムに参加しようと思ったのかということでした。また、震災から現在まで陸前高田の方々が取り組んでこられた復興について深く知り、自分の地元の防災や非常時の対策につながる学びを得たいと思っていました。
——プログラム中に特に印象に残ったことを教えてください。

高田松原津波復興祈念公園

東日本大震災を陸前高田市で経験された方々の多くが、ご自身のことを語るうえで「生かされた」という言葉を使われていたことが非常に印象的でした。その感覚が、震災後を生きるうえでその方々の原動力になっていることが、お話を聴いてよく伝わってきました。その一方で私には、以前テレビ番組で見た、震災でご家族を亡くされた方の「どうして私の家族でなければならなかったのか」という言葉も思い出されました。震災のお話をしてくださったある方が、東日本大震災は昼間に起きた災害であったために「どうして」という思いがたくさんの方のなかで渦巻く震災だったとおっしゃっていました。そうした震災から現在までを過ごされてきた方々は、それぞれの「どうして」という思いに対する道を探して奮闘されているように感じました。私にとっては、震災というものの範囲を超えて、生死について真剣に考えるきっかけとなったと同時に、同じ時間、場所で震災を経験していない者として、触れることができない領域があることを感じた出来事でした。

——プログラムへ参加してみて、考えたことを教えてください。

聴講の様子

震災を経験したときの年齢も、現在のまちづくりへの関わり方も異なる方々のお話を通して、東日本大震災の経験との向き合い方はそれぞれに異なっているという当たり前のことに気付かされました。また、津波伝承館を訪れた際も、地震と津波に関する様々な情報を目にし、あらゆる側面に、まだ議論されるべき点があるということを知りました。これらの体験から、東日本大震災の被害と復興から自分は何を知ろうとしているのか、考えようとしていることは何なのかを探さなくてはいけないと感じました。プログラム中、私にとってはその方法が陸前高田の方々のお話をより深く聴くことであり、お話の中に自分なりの様々な気付きがありました。

——陸前高田プロジェクトは国際交流×地域交流のプログラムです。このプログラムならではの学びや達成できたこと、身に付いた力を教えてください。

陸前高田の復興とまちづくりの取り組みについて、単に知るだけでなく、その構造を考察したり、それぞれが住む地域に活かすにはどうしたら良いかを考えたりすることで、陸前高田についても、参加者それぞれの住む地域についても、より深く学ぶことができました。また、参加当初に抱いていた関心について、海外からの学生の参加理由は人によって様々でしたが、日本からの学生を含め、ほとんどの参加者がプログラム以前には陸前高田についてあまり詳しく知らなかったこと、震災と陸前高田の現在について真剣に知ろうとしていたことが共通していて、どこから参加していても意外と同じようなスタートラインだったことに気付きました。

長洞元気村

ホームビジット(民家訪問)を受け入れてくださったご夫妻と

——陸前高田プロジェクトでの学びや得たものを今後どのように活かしていきたいと思いますか。

このプログラムで得たものの中で、一番自分にとって大きかったのは新たな人とのつながりでした。参加者や、お話を聴かせていただいた方々のほかにも、自分から関わりにいかなければ出会わなかったような人まで、様々な出会いがあり、それぞれから日常生活や今後に活かしていければと思う学びがありました。

また、グループワークなどを通じて、自分の強みや足りない部分についても知ることができました。就活など間近なもの以外にも、様々な場面で活かしていけたらと思います。

最終報告会

地域の若手の方々との交流会

——陸前高田プロジェクトへの参加を考えている学生に向けて、メッセージをお願いします。

いろいろな人と関わって、様々な経験が得られるとても良い機会だと思います。

テーマや言語など、不安に思うことがあったとしても、不安があればあるなりに、自分だけの貴重な体験が得られると思います。ぜひ参加してみてください。

奇跡の一本松

後書き
※記事の内容は取材時点(学年は参加時)のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。

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