キャリアシンポジウム「問われる異文化コミュニケーションの力—国際協力×通訳・翻訳—」開催レポート

異文化コミュニケーション学部2年次 莊司 聖釈さん、1年次 古源 菜歩さん、飯田 楓さん、杉脇 来美さん、内山 千里さん

2023/02/21

キャリアの立教

OVERVIEW

2022年10月29日(土)、異文化コミュニケーション学部主催「第5回キャリアシンポジウム」を開催しました。イベントの様子を在学生が報告します。

2022年10月29日(土)、「問われる異文化コミュニケーションの力—国際協力×通訳・翻訳—」というタイトルのもと、異文化コミュニケーション学部主催のキャリアシンポジウムが開催されました。2020年度は新型コロナウイルスの影響により中止、昨年度はオンラインでの開催となり、対面での実施が2019年度以来となった本年度は、本学学生や教職員の他、高校生や企業・団体の方など、60名近くの方々に参加していただきました。

今回のシンポジウムでは、3つのパートに分かれてプログラムが進行されました。はじめに、通訳翻訳をご専門とされる本学部教授の山田優先生と国際協力がご専門の日下部尚徳准教授による対談が行われ、その後、本学部卒業生と在学生によって、二つの領域をテーマにパネルディスカッションが行われました。プログラムの後半では、ポスター発表の場として、在学生による地域・社会連携活動や学生団体について様々な活動が紹介されました。(古源)

基調対談

基調対談では、山田教授、日下部准教授、ファシリテーターとして師岡淳也教授に登壇していただき、山田先生と日下部先生が考える領域横断的な繋がりの強みや異文化コミュニケーション力とは何かについて意見が交わされました。

はじめに、「大学で国際協力や通訳翻訳を教えることでどのような人材を育てたいか」についてお話していただきました。山田先生は「通訳の観点では、多様性の中に共通点を見つけることができる人材、機械翻訳の観点では、AIが発展する現代において過去に人間がしてきたこと、これからすべきことを考えることができる人材を生み出したい」と他の分野に通じうる能力を身につけてもらうことを望まれていました。一方で日下部先生は、「開発を進めるときだけでなく、最終的には現地の人々と共に新しい価値を創造していくことが成功のカギになる。答えのない問いに向き合う勇気と途上国の人々をリスペクトする姿勢を持った人材を育てたい」と話し、国際協力には学問以外の要素が必要であることを強調されていました。

次に、「今後の未来において自身の研究がどのような役割を果たせるのか」について意見が交わされました。日下部先生は「紛争と極度の貧困の撲滅が最優先である。このような状況下にいる多くは、子どもたちであり、彼らの持つ潜在能力が全く発揮できていない。また、人々の不満や不安は社会全体の不安定化につながるため、これらを解決することが課題である」と意見を述べられました。山田先生は「AI翻訳の利点を活かしつつ、欠点である誤訳を減らせるように人間とAIが協業しバランスをとることが通訳翻訳の未来を考えることにつながる。現在不完全なテクノロジーをどのように最適なものにしていくかを考えなくてはならない」と現在の機械翻訳の問題点と人間が考えるべき点を分析されていました。

最後に、「国際協力と通訳翻訳研究の領域横断的なつながりの強み」について、山田先生は、「マクロな視点で見ると、コミュニケーション論など他領域も考慮し、様々な場面を想像しなくてはならないので、そこに領域横断の大切さや強みを感じる」とおっしゃっていました。また、日下部先生は「日本にはすでに多くの外国籍の方が暮らしている。日本が内なる国際化を進め共生社会をつくりあげていくためや、日本が世界へ進出し、アジア・アフリカの成長に乗るためには、四領域が重要である。」と日本の未来を見据えた考えをお話になりました。また、異文化コミュニケーション力については、山田先生は「多様性の中に共通性を見つけることであり、通訳翻訳の分野においては翻訳力と同等のものである」とおっしゃっていました。一方、日下部先生は「コンフォートゾーンの外へ出て、答えのない問いに向き合う勇気を持つことである」と述べられていました。

日下部先生と師岡先生も、山田先生がおっしゃった「共通性」という言葉に共感され、自身の研究領域にも置き換えて考えられることから、「異なる研究領域の中にも共通項があることがわかる」と述べられていました。加えて、師岡先生は、「本学部の名称でもある異文化コミュニケーションは「異」が強調されがちだが、コミュニケーションの「コミュ」には「共通の」という意味があり、多様なものと共通なものとの折り合いが大切である」との見解を示されていました。

この対談を通して、私は、異文化コミュニケーション力と領域横断的な考え方がこれからの時代に求められる資質や能力であるという学びを得ました。ある学問を学んだり何かの問題に向き合う際には、一見関わりの無いものであっても今までに習った知識や経験との繋がりがないかを常に考え、新たな可能性を見つけられるような学びをし続けていこうと思いました。(飯田)

パネルディスカッション

パネルディスカッションでは、本学部卒業生で現在、LINE株式会社勤務の渡部美樹氏(2017年卒)、神田外語大学職員の下嵜哲也氏(2019年卒)、本学部4年次の貴元莉夕さん、3年次のリュウイオギさんが登壇し、それぞれの立場から意見が交わされました。

まず、ファシリテーターの師岡先生から卒業生に「異文化コミュニケーション学部に興味を持った理由」について聞かれると、渡部氏からは、「英語をコミュニケーションのツールとして学ぶことができる点、第二言語の習得に力を入れているという点」が挙がり、下嵜氏からは、第二言語習得に加えて、留学が挙げられました。次に、「大学での学びがどのように今の職業に活かされるか」について問われると、渡部氏からは、「多様なバックグラウンドを持つ人との交流で異文化への抵抗がないこと」が挙げられ、下嵜氏からは、留学生支援の業務に携わっていることから、「日本語教育、通訳翻訳、英語教育などのソフトスキルに加えて、自分の殻を破り自信を持つことや、困難な場面に対応するレジリエンスなどのハードスキルが活かされている」と話がありました。

それに関連して、貴元さんから「異文化に抵抗がある人が周りにいたとき、その人たちにいい影響を与えるにはどうすればいいか」という問いがあがりました。これに対して、下嵜氏は、「相手に直接的な指摘をするのではなく、このような方法もあるのではないかと提案すること」と述べ、渡部氏からは、「通訳者として、日本語話者と英語話者の違いを配慮しながら交通整理をするように心掛けている」との回答がありました。

次に、在学生の二人に対して、学部のプログラムの中で印象深い活動について質問がありました。リュウさんは、「「多文化共生概論」という授業の中で、日本に住む外国人が抱える問題を学んだ。その経験から、留学生として出来ることを考えるようになり、豊島区NPO団体での無料学習支援会や外国ルーツの子どもたちへの日本語支援の活動に参加した」というエピソードを語りました。一方で、貴元さんは、今回のポスター発表で紹介されているプログラムには、ほとんど参加したという経験をもとに、「教室で理論を学び、実践に生かすことができることがこの学部のいいところ。モチベーションはいつも「好奇心を持つこと」から来ている。異なる領域の分野のことを学んだとしても最終的に一つに繋がっている。」と話されていました。

また、「異文化コミュニケーションに対する理解がどのように高まったのか、変化していったのか」という問いに対して、渡部氏は「学生時代は、自分対他の文化背景を持つ人に焦点を当てていたのに対し、社会に出てからは、日本人同士でも異文化コミュニケーションが起こることを知った」と述べ、貴元さんも「異文化コミュニケーション学は果てしない学問であるが、身近に感じることができる。当たり前を疑う姿勢を持つことを大事にしている」との考えが示され、「異文化コミュニケーション」に対する共通の認識が見られました。

最後に、今後のキャリアについて登壇者の考えが話されました。貴元さんは、「学部で学んだことを活かして、グローバル人材として人と人をつなぐようなことをしたい」との目標が語られ、リュウさんは、「異なる文化に対して尊重することを大事にしながら、国際協力の知識を活かしたキャリアを歩みたい」と話されていました。また、卒業生の今後の目標としては、渡部氏は「社内通訳として多くの経験を積んで、いずれは自分の専門分野を見つけていきたい」と述べ、下嵜氏は「教育業界に携わる者として、学生が自ら育つように「種をまくこと」を大事にしたい」と話されていました。

最後に師岡先生から、パネルディスカッションと基調対談の中で出てきた共通点とし、「異文化コミュニケーションとは、当たり前を共有していないことへの気づきから始まり、多様な中でも共通性を見出していくこと」という指摘がありました。

私は、これまで授業を受ける中で、多文化共生に向けて異文化をどう理解するかなどの学びを、今後、どのように応用し、キャリアに繋げるか想像しづらかったのですが、今回のパネルディスカッションを通して、この学部での学びが社会に出ても活用できるというより明瞭なイメージを持つことができました。(杉脇)

ポスター発表

ポスター発表では、本学部の在学生による地域社会連携活動の発表の場として、海外・国内フィールドスタディ、インターンシップ、English Camp、立教日本語教室、立教コミュニティ翻訳通訳RiCoLaS、学部公認学生団体LINKCIC等、計14団体・プログラムの活動報告を行いました。今回は対面でのポスター発表であったため、各活動報告はシンポジウムに参加されたゲストの方が、活動内容のポスターを自由に訪問できる形態で実施されました。

ポスター発表は、聞きに来てくださったゲストの方と積極的にコミュニケーションを取りながら進め、頂いた質問や疑問点などに臨機応変に対応しながら行いました。活動内容の詳細がより伝わるよう、実際に使用した資料の共有なども適宜行いながら発表を進めました。ゲストは高校生、立教生、教授、企業の方など様々な方が参加されていましたが、ゲストによって興味を持ってくださる部分が全く異なり、ゲストに合わせて話す内容を絞ったり、増やしたりと調整が難しい場面もありました。しかしながら、ゲストの方の経験や活動に興味を持ったきっかけを質問することで、ゲストに合わせた情報を提供することができました。

私は、留学生のレポート添削、悩み相談、異文化交流など幅広い活動をする留学生のサポート活動について発表を行い、翻訳や留学生との交流に興味を抱いてくださった企業の方や教職員、そして学生が聞きに来てくださいました。シンポジウムが終わった後も、参加された企業の方が日中の文化交流について、私と中国人留学生の友達がコミュニケーションする中で感じた違和感や発見を聞きたいとのことだったので、Zoomでの交流の機会を頂いてより詳しい話をお伝えしました。また、企業の方からは海外赴任で感じた異文化理解の難しさや真のグローバル人材についての考え方などを話していただきました。真のグローバル人材とは、自分とは異なる考え方を持つ相手と利害が対立しても相手と相手の文化に対する探究心と敬意を忘れず、同じ目的・方向性を見出し、共有し、忍耐強く共に歩める人であるという新たな視点を持つことができました。プログラムの準備から本番、そしてプログラムが終わった後も、有意義な時間を過ごすことができ、参加してよかったと実感しています。(莊司)

シンポジウム全体を通して

今回登壇いただいた山田先生、日下部先生、師岡先生や学部の卒業生、在学生の方々は、それぞれ異なる領域を専門とされていました。そのため、本学部ならではの領域を横断した議論を聞かせていただき、様々な学びを得ることができました。

パネルディスカッションでは、学生だからこそ挑戦できることを学生の間に経験することの大切さを実感しました。先輩方は、フィールドスタディやインターンシップなどに積極的に参加しており、自分も限りある大学生活を最大限に有意義なものにしたいと感じました。また、ご来場いただいた皆さまには、登壇者の方々に向けて様々な角度からの質問をしていただき、より深いお話を引き出していただきました。

在学生によるポスター発表では、様々な地域・社会連携活動についての情報を得たことで、これからの大学生活での活動の視野を広げることができました。中には、一年次から海外フィールドスタディやインターンシップなどに挑戦している学生も多く、一年生である私も刺激を受けました。そのような活動を通して、自分の将来や興味のある研究分野について深く考えていきたいと感じました。

本シンポジウムに登壇者・発表者として参加してくださった皆様、並びにご来場いただいた皆様に、心よりお礼申し上げます。(内山)

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