60年ぶりの新人戦ベスト8——抜群の相撲センスに裏打ちされた衝撃デビュー

相撲部

2023/08/29

アスリート&スポーツ

OVERVIEW

2023年春、立教大学相撲部に新星が現れた。5月14日、初の公式戦である第74回東日本学生相撲新人選手権大会。小宮山翔海(とあ)(現1)が打ち立てたベスト8の成績は、実に60年ぶりの快挙だった。力士の大型化が進む相撲の世界。身長173㎝、体重90㎏と小柄ながら活躍を見せる背景には、類いまれなる相撲センスがあった。

抜群の相撲センス

才能の片りんを見せたのは決勝トーナメント初戦。立ち合い、相手の出足を止め、もろ差し(二本差し)に成功すると、すぐさま頭を付け有利な体勢をつくる。しかし相手にまわしを取られ、強引な投げから土俵際まで寄り詰められた。それでも小宮山は土壇場で大技、居反りを決め逆転勝利。驚異的な身体能力を目の当たりにし、会場はどよめく。準々決勝で惜しくも敗れたものの、痩身そうしんから繰り出される巧みで力強い技は見る者をくぎ付けにした。

※居反り:相手が上にのしかかるようにしてきた時、両手で相手の膝の辺りを抱えるか、押し上げて後ろに反って相手を倒して勝つ、珍しい技。

拳を下ろす小宮山翔海

土俵際で居反りを決める様子

小宮山が本格的に相撲を始めたのは小学2年生の時だった。母親の勧めで出場した地元の大会。初心者とは思えない取り口で優勝すると、たちまちクラブチームから声がかかる。入門したのは葛飾白鳥相撲教室。学生横綱となり小結まで上った千代大龍(22年11月引退)や小兵力士・翔猿をも輩出した名門だ。すり足や突き押しなど相撲の基礎を徹底的にたたき込まれた日々。4年生からは同門の友人の誘いを受け、柔道クラブにも所属した。そこでは技をかけるタイミングや体の使い方を学ぶ。相撲に生かせる投げ技も教わり、柔道を通して自然と相撲センスが磨かれていった。中学、高校は地元の相撲強豪校に進学し、着実に実力を付けていく。高校3年の全国大会(インターハイ)では、団体戦3位の好成績でその名を全国にとどろかせた。華々しい経歴で多くの大学から誘いを受けていた小宮山。しかし、彼が門をたたいたのは選手わずか2人の立教大学相撲部だった。

古豪復活への決意

表彰式での小宮山

22年度、東日本学生相撲リーグ戦で2部復帰を果たしたばかりの立教大学。選手不足から団体戦はレスリング部や柔道部に助っ人を頼み出場している。また、主将は大学入学まで競技未経験とあり、強豪校には程遠い。それでも、小宮山は自分のペースでのびのびと稽古ができる環境を求め、進学を決意した。「大好きな相撲を結果にこだわり過ぎず純粋に楽しみたい」。競技を続ける中で形成された価値観が、自主性を重んじる立教大学へ導いた。

相撲部に所属する選手は3人。左から小宮山翔海(現1)、武井奏良(文2)、主将・山崎稜介(法3)

大学4年間の目標はおよそ半世紀ぶりの団体1部昇格。「助っ人を呼んでいるような大学が1部に所属していたら面白い」。高すぎる目標かもしれないが、小宮山は自らの手で歴史を塗り替える覚悟だ。そのためには、地道なトレーニングも決して怠らない。ベンチプレスやスクワットの回数をこなし、筋持久力の向上に取り組む。そして、これまで培ってきた技術や相撲のイロハを先輩部員に伝授し、少数精鋭のチームづくりに励んでいる。

新人戦ベスト8という衝撃デビューを飾り、次に控えるのは9月開催の東日本学生相撲リーグ戦。小兵ならではの多彩な技と持ち前のセンスで、団体1部昇格を目指す。
「立教スポーツ」編集部から
立教大学体育会の「いま」を特集するこのコーナーでは、普段「立教スポーツ」紙面ではあまり取り上げる機会のない各部の裏側や、選手個人に対するインタビューなどを記者が紹介していきます。「立教スポーツ」編集部のWebサイトでは、各部の戦評や選手・チームへの取材記事など、さまざまな情報を掲載しています。ぜひご覧ください。

writing/「立教スポーツ」編集部
経済学部経済学科3年次 岡田真阿

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