先輩から後輩へ受け継がれるチーム力——大学サッカーで得たもの

サッカー部

2021/09/30

アスリート&スポーツ

OVERVIEW

プレーの不調とけがの悪化。チームを離脱し、サッカーと向き合えなくなった。そんな彼を支えたのは先輩ゴールキーパーの周りを見渡す力であった——。

ゴールキーパーとして常にチームに目を配る村田

村田耀(済3)は大宮アルディージャ(Jリーグに加盟するプロサッカークラブ)の下部組織に所属した後、アスリート選抜入試で立教大学に進学。入学直後の関東大学サッカーリーグ戦開幕時からゴールキーパーとしてベンチ入りを果たし、スタメンにも抜擢される期待の新人だった。1年次前半はプレーの調子も良く、大学サッカー人生を謳歌おうかしていた。

スランプを救った先輩の行動

左から林、村田、瀬尾

新しい環境へも慣れてきた1年次の8月上旬。関東学院大学戦を機に、プレーの不調とけがの悪化というスランプが襲いかかる。長所であった攻撃参加型のプレーはなぜかうまくいかず、高校時代に負った腰のヘルニアも再発。何もかもが悪い方向へ進んでいった。村田は次第にサッカーから逃げるようになってしまう。

「うまくいかない自分にすぐに気付き声をかけてくれた」。練習でも不調が続き、精神的にも苦しんでいた村田に手を差し伸べたのは、先輩ゴールキーパーの林健太(元副将・21年3月コ卒)と瀬尾光宏(21年3月社卒)であった。2人はムードメーカーで、誰よりも周囲に気を配り、部を盛り上げる存在。サッカーと向き合うのが辛い村田をご飯へ連れ出し、「今だからできることがある」と自身の経験を交えて、言葉を選びながら励ましてくれた。チームのメンバーを第一に考えたこの行動には「本当に救われた。今まで自分のことしか考えられていなかったが、こんなにも周囲を気遣い、声をかけることができる人がいるのだと、純粋に尊敬の念を抱いた」と村田は語る。チームのために行動する大切さを実感した経験だった。

変化するふるまい方

高校までのサッカーチームは同じ環境下で育った背丈の揃う選手で構成され、チームの型も確立していた。対する大学サッカー部はさまざまなレベルの選手が在籍し、育ってきたサッカー環境も違う。そんな多様な学生たちが主体となり、チームとして高いレベルで成り立つことを理想として掲げる大学サッカー部では、進む方向性のすり合わせや、雰囲気づくりから取り組まなくてはならない。「リアクションではなくアクション。意識して取り組むようにしている」。

試合中、一人一人に声を掛け激励する村田(中央)

ゴール前シーンの指導をする村田(右)。チームメンバーの表情は真剣そのものだ

3年次になり、練習を回す立場になった村田。相手の気持ちをくみ取った声掛け、さまざまなキーパーシーンを想定した練習でチームへの貢献を目指す。どうすれば伝わるのか、相手に合わせて言葉や声量を変える。試合を想定した練習を行うため、SNSや動画を活用してゴール前のシチュエーションのパターンを確認。対戦相手の研究も欠かさない。チームの中にけがや不調を抱えている選手はいないか常に周りを見渡し、仲間に合わせた練習を作るようにもなったという。村田の部内での行動は、先輩としてチームを引っ張る主体的なものへ移り変わっていった。

現在、関東大学サッカーリーグ2部に所属する立教大学は、半世紀ぶりの同リーグ1部復帰を目標に掲げる。「個々の技量では相手に劣っても、チームで勝利をつかみ取りに行く」。立教大学サッカー部の哲学の一つだ。先輩から後輩へ受け継がれるチーム力を武器に、部員200人が一丸となって戦う。

「立教スポーツ」編集部から
立教大学体育会の「いま」を特集するこのコーナーでは、普段「立教スポーツ」紙面ではあまり取り上げる機会のない各部の裏側や、選手個人に対するインタビューなどを記者が紹介していきます。「立教スポーツ」編集部のWebサイトでは、各部の戦評や選手・チームへの取材記事など、さまざまな情報を掲載しています。ぜひご覧ください。

writing /「立教スポーツ」編集部
経済学部会計ファイナンス学科3年次 山﨑吏恩

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