創部初の大学日本一
——涙を流し続けた主将が最後に流した“うれし涙”

剣道部

2020/08/04

アスリート&スポーツ

OVERVIEW

〝日本一〞の瞬間、歓喜の渦の中心で涙を流していたのは主将・松原真子(文4)だった。

2019年11月10日、体育会剣道部創部92年目にして初の「全日本女子学生剣道優勝大会」制覇。それまでのベスト16という最高成績を塗り替えながら決勝戦まで勝ち上がった。決勝戦の後、試合会場の隅で松原は泣き崩れた。

涙からのスタート

松原は小学生で剣道の実力をメキメキと伸ばし頭角を現すと、中学・高校は神奈川県の強豪校に進学。自他ともに認める大の〝剣道好き〞だったが、中高時代に日本一の称号を手にすることはできなかった。立教大学に進学し、主将に就任したのは、18年の全日本団体ベスト32という結果に悔し涙を流し終えた後。目標を尋ねると「日本一」と言い切った。

主将として、チームをまとめる際に意識したのはコミュニケーション。会話を通して個性を見抜き、その特性を部員と共有しながら「互いの強みをチームのために生かしてほしい」と伝えてきた。目指すは、全員が日本一を見据え、部に貢献したいと一人一人が思えるチーム。ひたむきに部と向き合い、「家でも常に部活のことを考えていました。本当はもっとバイトしてほしいのに……と母親に呆れられるほど」だったという。剣士・松原真子として大好きな剣道に向き合う一方、主将・松原真子として部のことも考え続けた。

どん底からの晴れ舞台

6月の全日本個人選手権で3位入賞を果たした同期の河嶋。スランプ時に松原から掛けられた言葉に「励まされた。感謝しています」

しかし試合で結果は出なかった。春に行われた個人の関東予選では、河嶋香菜子(文4)、鈴木樺映(法4)らが全日本出場を決める中、4年次生で松原だけが全日本を逃した。インタビューには涙を流しながらも「サポートを頑張ります」と、個人としての悔しさではなく、主将としての思いを吐露。気丈に振る舞う松原だったが、勝負の世界の試練が容赦なく彼女を襲う。厳しい練習に打ち込んでも、結果が出ない。「本当に嫌になっちゃって。剣道をやるのも見るのも嫌になっちゃった」。

心が折れかけた松原を救ったのは、部員たちだった。主将として部を率いる松原と一緒に部を盛り上げてサポートする。そんな部員たちの行動に、「周りの人たちに恩返しをしたい。笑顔にしたい」という思いが松原を駆り立てた。夏の猛稽古を乗り越え、臨んだ関東予選ではベスト8。目標の優勝には届かなかったが「試合内容は上々の出来」と振り返った。

決勝後、部員に囲まれながら顔を覆い、うれし涙を流す松原

そして迎えた全日本。勝っても負けてもこれが松原の学生剣道最後の大会となる。順調に勝ち進み、決勝の相手は日本代表が複数在籍する強豪・明治大学。白熱した試合が繰り広げられ、先鋒、次鋒、中堅、副将と引き分けが続いた。会場全体に緊張感が漂う中、大将戦が始まった。試合開始序盤で松原の引きメンが決まる。その後、相手の猛攻撃を抑え試合終了。審判の試合終了を告げる合図とともに、悲鳴に近い歓声と割れんばかりの拍手が巻き起こった。驚きと祝福に満ちた会場のざわめきの中で、松原は大学剣道で初めてのうれし涙を流し続けた。そして涙をぬぐいながら最後のインタビューにこう答えた。

「みんなのおかげで、剣道が大好きです」

決勝の大将戦。松原は課題としていた鍔迫り合いで見事な引きメンを放ち、これが決勝打となった

表彰式後の集合写真。松原(前列中央)は満面の笑みで1位を示すポーズをとる

「立教スポーツ」編集部から
立教大学体育会の「いま」を特集するこのコーナーでは、普段「立教スポーツ」紙面ではあまり取り上げる機会のない各部の裏側や、選手個人に対するインタビューなどを記者が紹介していきます。「立教スポーツ」編集部のWebサイトでは、各部の戦評や選手・チームへの取材記事など、さまざまな情報を掲載しています。ぜひご覧ください。

writing/「立教スポーツ」編集部
コミュニティ福祉学部スポーツウエルネス学科3年次 金子千尋

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