理系でも広い視点でキャリアを考えられた環境に感謝

小路 礼圭さん 旭化成株式会社 ヘルスケア領域 医療事業 企画営業部(2013年 理学部生命理学科卒業、2015年 理学研究科生命理学専攻修了)

2019/01/08

立教卒業生のWork & Life

OVERVIEW

理学研究科生命理学専攻を修了し、医療分野で活躍する小路 礼圭さんにお話を伺いました。

理学研究科生命理学専攻ではどのような研究をされていたのですか?

「細胞移動におけるprotein tyrosine phosphatase -PESTの機能解析」というテーマで立教大学4年次生から研究を行っていました。私たちが生きる上で、DNAやタンパク質等がどのような役割を持っているかの理解を深められる研究であったと感じています。

3年次生までは自分の力で研究が進められるよう、基礎的な生物学や、化学、物理学について学んでいました。

なぜその研究をしようと思われたのですか?

立教大学で挑戦できる研究分野は、分子細胞生物学、細胞生化学、分子発生学、行動生態学等多岐に渡りました。私が選択したのは細胞生化学で、細胞機能制御のシステムの解明によって、より短期的かつ直接的に人の健康に貢献できる可能性を感じていました。
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得られた知見や成果はどのようなものだったのですか?

大学4年次生から3年間、同じテーマに一貫して取り組み、各年次において研究成果を学会で発表する機会にも恵まれました。

研究内容と結果を簡単に説明するのは非常に難しいですが(笑)、細胞種の中には自らが持つ(細胞内に含まれる)タンパク質等を制御することで移動する仕組みを持つものが存在します。細胞移動による生命現象の例を挙げると、傷ができた時に傷口を埋めて治すのも細胞移動が一端を担っています。一方で癌の転移も細胞移動による部分があり、細胞の移動は人にとって良い影響と悪い影響の両側面を持っていると言えます。つまり絶妙なコントロールが必要なのです。ただし、その制御方法は解明途上です。多種のタンパク質が存在する中で私の研究室では、あるタンパク質に目星をつけ、解析を行っていました。研究の結果として、実際に目星をつけたタンパク質が細胞移動の制御に関与するという結果が得られました。

すごいですね。そのまま研究を進めていく道は考えなかったのですか?

研究を通して、分からないことを解明していく力を育むことができました。鍛えてきた考える力を、実社会で役立てたいと思い、就職を選択しました。

大学入学以前から理系を志していたのでしょうか? そしてなぜ立教大学を選ばれたのですか?

いろいろなことに答えを求めたがる性格や、明確な裏付けのある結論を出したがる性格だったので、理系を選択しました。

私は愛知県の出身なので、親元を離れて自分の力で生活したいとも思っていました。多くの大学があり、たくさんの人と出会える可能性を考えて東京を目指しました。

理系と文系のキャンパスが離れている総合大学が多いなか、立教大学は理系と文系が同じキャンパスにあるので、一緒に学生生活が送れることも魅力的でした。
また、多くの私立大学は理系というと理工学部です。高校生の私なりに学問について調べ、考えた結果として、工学は分かっていることを社会に役立てることがより重要となる一方で、理学は工学と比較して更に根本の分からないことを探索する学問であると思いました。誰も分からないことに答えを見つけていく理学に挑戦してみたいと思い、立教大学の理学部を選びました。

サークル活動で、「ジャーナリズム研究会」に所属されていたそうですね。

大学1~4年次生の間、所属していました。高校の時から理系だったので、自然と出会う人は理系の人が多かったように思います。大学入学直後も同じだったため、総合大学に入学したのにもったいないと思い、ジャーナリズム研究会なら理学部の学生はいないだろうと入会を決めました(笑)。そもそも、政治や経済について無知だという自覚があったので、教えてもらいたいという期待もありました。

参加して本当に良かったと思いますね。ここでも、分からないことを解明していく一つの取り組みになりましたし、学生生活の大切な思い出になっています。いろいろなことに興味、関心を持っている人たち、様々な専門の人たちとの交流によって、「この分野を知らなくていいや」とならずに、まずは知りたいなという広い好奇心が育まれたと思います。

留学経験はありますか?

ありません。語学力を伸ばすための留学をしたいと考えたことはありましたが、国内でもできることはあると思ったため、国内で語学力を伸ばせるように私なりに勉強を続けました。

私が研究室に在籍した期間、イギリス人の先生が研究室の中にいらっしゃいました。その先生とは研究テーマが似ていたので、ディスカッションや情報交換を通じて専門分野の英語を学ぶことができました。研究のことだけでなく、日常生活のこと、日本とイギリスの学生の違い等も話題になり、とても良い経験をさせていただきました。

就職活動について教えてください。どのように活動されましたか?

修士1年次生の秋ごろ、製薬企業のインターンシップに参加し、企業と大学の“研究”のとらえ方の違いを知りました。企業では利益を出さなければならず、研究も自分の興味でできるものばかりではないということ。そして有効性はもちろんのこと安全性の試験にも何年もかける世界でした。製薬業界は基本的に健康状態が悪くなった人を支える、治療することが目的の業界。健康状態が悪くなった人だけでなく、悪くならないようにサポートできる仕事もしたいと考え、製薬業界(医療)から視野を広げました。

また、専門が一つの企業よりも、複数の分野の専門家が集まっている企業の方が、働いた時に幅広い提案ができるのではないかと考え、事業を多角化している企業を探していました。そして最終的に旭化成に入社を決めました。

立教のキャリア教育についてどう思われますか?

キャリアセンターには本当にお世話になりました。テーマごとに社会人の先輩の仕事の話を聞くプログラムでは、「社会人ってこんなにビッグな挑戦ができるんだ!」と刺激を受けましたし、自分が意識していた業界・職種から離れていても、キャリア形成の上では印象に残っています。様々な業界の人の話を聞くことで、自分の興味があることもより明確になった気がします。

また、キャリア形成の面でとても手厚い大学であると感じます。社会人になったら、人の話を聞くためには、自分で個別にアポイントを取るのが普通ですし、無条件に自身の仕事内容を開示してくださる人は少なくなると思います。立教大学は幅広い業界や業種で働く先輩の話を聞くチャンスを多く提供してくれました。恵まれていたと思います。

理学部には、大学1年次生の時に「理学とキャリア」という授業がありました。理学部を卒業した先輩が毎週登壇して、学生時代や社会人生活についてお話ししてくださいました。1年次生から就職や自分の将来を考えて過ごす環境が整っていました。

立教大学は学生生活の中に、キャリアを考える機会があるので、それらを通して思慮を深めることができたら、納得感を持って学生生活を送れると思いますし、就職しても大学で学んだことを糧に頑張れると思います。

現在の具体的なお仕事内容を教えてください。

アフェレシス治療をご存知ですか。大まかに言うと、血液を体外に出し、不要な物質≒病気の原因となる物質を分離・除去して必要な血液のみを体内に戻すという治療法です。

薬による治療は、患者さんにプラス(投与)して病気の原因となるものと闘うイメージ。一方で、アフェレシス治療は患者さんからマイナス(除去)する、不要な物質のみ取り除くという治療で、薬の治療とはメカニズムが異なります。薬剤(生体にとって異物)をプラス(投与)しないことから、副作用が少ないことが特徴と言えるかと思います。

このアフェレシス療法は、更なる有効性と安全性の確立(エビデンス)が待たれています。私の業務は、弊社製品を通じてアフェレシス療法の有効性と安全性を”あるべき姿”に近づけることです。具体的には、未だ世界にない画期的製品を市場に出すこと、現状の製品をより良い製品へと改良すること、アフェレシス療法を必要とする患者様に適切なタイミングで治療を届ける環境づくりです。この仕事に国境はありませんから、市場は世界全体です。

グローバルな展開をしているのですね。

そうですね。ただし各国で医療への考え方が異なるのはもちろんのこと、保険制度が異なるため、国に合わせた柔軟な発想や提案が必要となります。

海外赴任するチャンスも自ら創出したいです。現地に行かないと把握できないこと、提案できないことが多くあると感じています。一方で、国内での知見は必ず海外でも生きると確信していますので、身近な市場から固めていくことは広い視野を持つこと同等に重要であると思っています。

大学で学んだことが生かされていると感じますか?

大学での研究内容が直接使えるかというと、そうではないかもしれないのですが、仕事の中で仮説を立て、検証していく過程は大学での研究と同じです。研究とは離れた分野だと思っていた営業活動も、研究と同様の過程を踏むのだと仕事をし始めて強く感じています。
売上目標到達に向け、仮説検証を何度も繰り返していくわけですから。

今後の夢や展望を教えてください。

現在はアフェレシス療法という治療を中心とした「健康」への貢献ですが、予防等の側面からも世界の「健康」に貢献したいです。旭化成に入社した意味を振り返ると、他の事業とのシナジーをリードできる存在でありたいとも考えています。医療分野で培った力を武器に、他の化学製品を医療分野に転用できないか、逆に医療分野で培ってきたものを他の分野に生かせないか等、様々な事業をつなぐポジションに立って仕事をしたいと思っています。
※本記事は小路礼圭さんへの取材に基づくもので個人的見解を含みます。
※本記事は「朝日新聞デジタル」掲載広告(2018年2月5日公開)をもとに再構成したものです。記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご注意ください。

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