あとがき

★「アメリカ文化」第三号は文学に焦悠点を置いてみた。ちようど翻訳権の問題も一応解決の緒についたのでアメリカの文学作品が問もなくせきを切つたように流れこむ事になるだろう。しかし今までわが国に輸入された外国文学のうちで、よかれ、あしかれアメリカ文学ほど不当な評価を受けているものはない。その原因の大部分は、無責任な、その場かぎりの、はとんど片手間仕事でやつつけて来た翻訳者の責任である。のだから今までべスト・セラーズだけが競つて出版された。本当にアメリカの文学作品に心ひかれ、それに迫つて何物かをたしかめようと努めた人はほとんど指を数えるほどしかなかつたのである。われわれはこのような悪伝家を今度こそはゆるさないように監視しなければならない。
 本号で試みたのは、アメリカ文学をひもとくための心構えといつたものである。富田彬氏の「ソーロー」はアメリカの作家のはげしい作家精神に触れようとしたもの、細入藤太郎氏の「概観」はアメリカ文学を読むための手引として新しい動きを述べたもの、藤崎健一氏の「南部文学」は南部文学の特質を理解することによつて、アメリカ文学の本質的な性捉えようとしたものである。風月鶏介氏「資料」は、今までのわが国に於けるアメリカ文学理解のしかたについて資料的に説明しあらかじめ読者に反省と哨示を与えようとしたものである。
★頭で考えていることを実際に生かしてゆくことはむづかしいものではあるが「アメリカ文化」も仲々思うような出来映えにならないので苦しんでいる。高く正しい理論で貫かれ、そして仝体が楽しさで溢れるような雑誌にしたい。できるだけ多勢の読者と一緒になつて、この雑誌を発展させてゆきたいと思う。

(編集部)