創刊のことば

 われわれはアメリカを正しく知り多くを学ばなければならない。
 アメリカは高い文明をもつすぐれた民主々義国家であり、世界の最も指導的な力である、日本が平和的な民主々義国家となる上に最も影響力をもつ国である。祖国を今日にみちぴいたあやまったアメリカ観は、今こそ、正しい科学的なものに是正されなくてはならない。
 正しいアメリカのすがたをつたえること、これが「アメリカ文化」の第一の使命である。
 民主々義は人民のものである、正しい知識をやさしいことばで、これが「アメリカ文化」の第二の使命である。
 われわれは本誌を通じてアメリカ研究所を読者諸君に開放し、これらの使命をまっとうしたい。
 これがわれわれの念願である。

 

 アメリカ研究所紹介

 アメリカ研究所ほ昭和十五年、米州諸国の総合的研究を目的として、立教大学内に設立された。米国から着々として図書が到着して二万冊近くの蔵書もでき、研究もやうやく緒につかうとした時、不幸にも太平洋戦争がおこつた。従って吾々の活動も所期の目的を充分に達することができなかった。
 しかるに戦後アメリカ研究の重要性がますにつれて、研究所の活動も活発になつてきた。
 まづ研究所の機構を説明しよう。研究所は総務都、研究部、図書部、出版部よりなる。研究部は研究所の主体で、政治外交班、経済班、文化班の三班に分れてゐる。各班にはそれぞれ専任の研究員があつて、相亙に連絡をとりながら科学的な研究に従事してゐる。図書部は図書資料の蒐集整備保存にあたる。出版部は本研究析の研究成果を世に問ふべき季刊「アメリカ研究」(研進社刊)の編集、及び一般にアメリカに関する知識の普及をはかる月刊「ァメリカ文化」の編集と刊行にあたる。その他アメリカに関する書籍の出版を行ふ予定である。
 アメリカ研究所は日本における唯一のアメリカ研究機関である。本誌はこの研究所の各部門の専門家によつて編集され、夫々の責任ある研究に裏付けられてゐる。研究所ほ本誌を通じて読者との結付きを欲する。質問応答、講演調査等の依頼、図書閲覧にも出来るだけ応ずる積りである。

 

 あとがき

  長い間の懸案であつた研究所の雑誌発行されることになつた。この「アメリカ文化」は「創刊のことば」にあるとおり、かたいいわゆる専問的な学術雑誌ではない。専門的な知識にうらづけられた啓蒙雑誌である。
 本誌の「あり方」についてはこの一号だけでなく、ニ号三号とみてもらえばはつきりすると思うが、基本伯なことについて明かにしておきたい。アメリカについての正しい知識、高い理論をできるだけわかりやすい言葉でつたえたい、これがわれわれの念願である。不正確な知識がどんなに日本人を害したかは今更ゆうまでもない。正碓な知識とは沢山の事実にもとづいた資料を正しい立場から批枇判してえられるのである。従来の日本ではとかく批判がおろそかにされた。日本は昔から「ことあげ」せぬ国として「あげつろはぬ」ことを美しい習慣としていわれてきた。それは確にある場合には美風ともいえよう。けれども、体裁のよい妥協であり、無用の譲歩であつたことが多い。官僚軍閥から与えられたものは、無理にでもうのみにするくせがついてしまつた。批判は一切禁物であった。上意下達とか一億一心とか今から考えると妙なことばが、たいしてあやしまれもせずにはやつたが、上下の関係一本槍の封建的日本の最もよい例であろう。
 ところで、前にもどつて批判とゆうことであるが、現在のわれわれは連合軍の占領下にある。従つて、批判の自由は当然制限されている。しかし、このことはアメリカの文化を充分に批判検討して、日本のつくりかえのために役に立つものを吸収するとゆうわれわれの編集方針にさしつかえるものではない。アメリカから何を学ぶかとゆう観点にたつて今後も編集してゆく積りで、盲目的な無批判なアメリカの讃美はしない。宮川實氏の論説は戦後の経済ひいては世界がどうなるかとゆう、アメリカばかりでない世界共通の、しかも現在解決をせまられている問題に付て論ぜられている。
 「民主々義の伝記」は、今日の民主々義的なアメリカをつくりあげるのに、力をつくしたアメリカの各方面の民主々義者を紹介しなて楽しい読物としたい。『アメリカ教室』はわれわれがふだんみききすることばやアメリカを知るうえにどうしても知つておかなくてはならない事柄を解説する予定である。「研究と読書」では、アメリカを勉強したい人たちえの手引を主として手に入りやすい新刊書の批判とをおして、やる積りである、「アメリカと日本」は両方の対照がはつきりしている問題をとりあげて、アメリカのすぐれている点を一目で分るようにしたいと思つている。
 編集員がみんなズプのしろうとのために技術的にもまづいところが多いと思ぅ。「創刊のことば」にある意図も充分もりこむことができなかつた。自己批判の必要が大いにあるけれどもなにょり読者諸君の批判をききたい。(編集部)