1999年度立教大学アメリカ研究所主催
研究所設立60周年記念連続公開講座「「アメリカ」と映像のポリティクス」
日米開戦前夜の反日プロパガンダ
ハリウッドと立花事件
ユウジ・イチオカ

日時: 2000年1月29日(土)14:00-16:30
場所: 立教大学池袋キャンパス
太刀川記念館3階多目的ホール
講演者:
ユウジ・イチオカ
(カリフォルニア大学ロスアンジェルス校・歴史学教授)
司会: 阿部珠理(研究所所長・本学教授)
*座席数は約60です
 
*イチオカ氏の講義(15:00頃開始予定)前に、講義に関連する関連する日本未公開映画『リトル・トーキョー U.S.A.』 (1942) のヴィデオ上映(約60分)があります。

 

報告
(連続講座「「アメリカ」と映像のポリティクス」全体について)

 1999年度、立教大学アメリカ研究所は、98年度の村上由見子氏を迎えての講演「多文化主義と映像──ハリウッド映画の中のアジア人」におけるアメリカの文化表象をめぐる議論を引き継ぎ、「「アメリカ」と映像のポリティクス」というシリーズ・タイトルのもと、映像という表現媒体のポリティクスに焦点を当て、3回の連続講座を行った。
 第1回「ヒッチコックとアメリカ──多文化主義的読みの有効性をめぐって」では、斎藤綾子氏による講義「アメリカの分析家としてのヒッチコック」、関連する研究発表(飯岡詩朗「『救命艇』試論──ヒッチコックによる黒人表象とアメリカの「縮図」」)、質疑応答を行った。アメリカの映画研究家エラ・ショハットは「関係としての民族性」と題する論文の中で、アメリカ映画の多文化主義的な読解の実践として、人種や民族性といった問題を直接扱っている作品ばかりでなく、一見したところ人種や民族性といった問題と関わりがないような作品、つまりありとあらゆる作品を人種や民族性といった観点から読み直す必要性を提起している。こうしたショハットによる提起への応答として、斉藤氏は、映画学(映画理論)の立場から、一見人種や民族性と最も関わりないように見えるヒッチコックの作品群をテクストに、実際の映像を見ながら、映画への多文化主義的なアプローチの有効性をめぐる検証を行った。
 第2回「
日米開戦前夜の反日プロパガンダ──ハリウッドと立花事件」では、日本未公開の反日プロパガンダ映画『リトル・トーキョー U.S.A.』(1942)のヴィデオ上映(約60分)とユージ・イチオカ氏による講義と質議応答を行った。『リトル・トーキョー U.S.A.』は、20世紀フォックス製作のB級プロパガンダ映画にすぎないが当時、日本のためにスパイ活動を行う日系人の姿を描いたその内容が、事実に反するだけでなく人種差別的でアメリカ合州国の戦争遂行にとっても好ましくない映画だとして戦時情報局OWI(Office of War Information)から批判されたという、いわくつきの作品でもある(詳しい経緯については、村上氏の『イエロー・フェイス』(朝日新聞社)の第3章などを参照されたい)。イチオカ氏は歴史学の立場から、自身が発掘した資料をもとに、この映画が描いたような日系人スパイは存在しなかったという定説を突き崩す検証を行った。
 第3回「『ピクチャーブライド』のポリティクス」では、矢口祐人氏の講義と質議応答を行った。日系を含むアジア系アメリカ人女性たちがインディペンデントで製作しアメリカ国内で高い評価を得た『ピクチャーブライド』は、「写真花嫁」として海を渡り遠いハワイへ嫁いだ日系移民女性たちの姿を描いた多文化主義の時代にふさわしい「アメリカ」映画である。矢口氏は、実際の映像を見ながら、この映画の中の日系移民女性像をおさえたうえで、映画の物語が設定されている1918年当時の日系新聞に掲載されていた日系移民女性の結婚の顛末をあつかった連載小説、日系移民女性の結婚にまつわる実際の記事を参照しながら、映画には描かれていない「別の」日系移民女性像を浮かび上がらせ、映画という「ナラティヴ」形式のもつポリティクスについて検証を行った。
 各回とも規模は小さいものの、学内外の学生、研究者、教員、一般などから熱心な参加者を得て、講義後は活発に質疑応答が行われた。

飯岡詩朗
立教大学アメリカ研究所

『立教アメリカン・スタディーズ』第22号(87-88頁)より転載

 


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