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立教大学アメリカ研究所主催公開シンポジウム

 

2010/11/11
アメリカの民主主義を支える非営利セクターと制度

 

 

 

ポスター
日時:
2010年11月11日(木)18:30-20:30
場所:
立教大学池袋キャンパス8号館8202教室
 
パネリスト:
渡辺 靖 (慶應義塾大学環境情報学部教授)
黒田 かをり (CSOネットワーク 共同事業責任者)
渡辺 元 (立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科教授、公益財団法人トヨタ財団プログラム・ディレクター)
 
コーディネーター:
長 有紀枝 (立教大学社会学部教授、21世紀社会デザイン研究科教授)
 
対象:
学生・教職員・一般
協力:
立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科
予約不要・入場無料
   

 

 

 

 
報告

 立教大学アメリカ研究所は、2010年11月に「アメリカの民主主義を支える非営利セクターと制度」と題した公開シンポジウムを開催した。最初に登壇した渡辺靖氏は、建国の父達がトップダウンで国の設計図を書き、合衆国憲法に盛り込んだことと対比させ、アメリカ社会の特質をボトムアップで描き出したトクヴィルが民主主義を支える存在の一つとして自発的結社の重要性を挙げたことに注意を喚起した。また「ゲーテッド・コミュニティ」や「メガチャーチ」といった地域に根差した共同体をご自身の経験をもとに紹介し、アメリカにおける結社の重要性、強さの例を示した。そしてアメリカでは結社や市民の政治参加といった政治風土を支える「心の習慣」が市民に根付いていると指摘し、そのような政治風土の有効性を認めつつも、大統領選などでは政治献金の多くが富裕層から拠出されていることを挙げ、市民参加や献金を批判的に見る目の必要性を説いた。最後に非営利組織が高学歴化、高度専門化、巨大化していくに従い、現場から乖離した存在になりつつあるという危惧を示し、トランスナショナルに活動を展開している非営利組織の今後の問題を指摘した。
 続いて登壇した渡辺元氏は、アメリカの非営利セクター全体に関する情報を提供し、税制などに見られる法的な制度や仕組みについて講演を行った。渡辺元氏も渡辺靖氏と同様に、トクヴィルによるアメリカの結社に対する称賛の言葉を例に出し、アメリカの歴史に脈々と流れる非営利セクターの伝統に注目した。そしてレスター・サラモンによる非営利組織の定義や存在意義を紹介し、どのように非営利セクターがアメリカの民主主義を支えているかを明らかにした。またアメリカにおける非営利組織の数の推移や規模、分野を概説し、従業者数や財政規模などから非営利セクターがアメリカ経済において非常に大きな存在となっていることを詳らかにした。続いてその収入源の一つである寄付について額の推移や種類について概観し、アメリカでは個人からの寄付が多いのに対して、日本では企業からの寄付が圧倒的に多いという違いを指摘した。またアメリカのNPOに関する法的な制度や仕組みについては、税制優遇措置を得られるか否かの重要性に言及し、内国歳入法(IRC)で規定されている501(c)(3)と 501(c)(4)について検討を加えた。最後に渡辺氏はジョン・キーンによる「21世紀は市民社会の時代である」との言葉を引用し、日米欧における非営利セクターの今後の動向に注目していると述べ、この分野が将来的に担う役割の大きさを示唆した。
 「米国の民間開発支援(PDA)とNGO」と題して講演を行った黒田氏は、はじめに先進国から途上国への資金の流れについて公的資金と民間資金を比較して推移を分析し、民間資金が占める割合の大きさを明らかにした。続いてアメリカから途上国へ流れる資金やPDAについてグラフを用いて概観し、組織の中ではNGOが中心となっていることを示した。またそのNGOを資金面で支える重要な存在としてアメリカの民間財団を挙げ、アメリカのNGOの活動分野と活動地域を紹介した。そしてNGOが抱える課題の一つとしてアカウンタビリティを挙げ、1990年代から民間非営利セクターの巨大化が進み、それに従い多様なステークホルダーに対するアカウンタビリティや透明性の確保が求められるようになったが、最近はそのような課題に対応するためのツールやプログラムが導入されていることが紹介された。もう一つの課題として、NGOは自発的に集まり活動を行っているため、正当性(legitimacy)を確立する必要性があることを訴え、そのための方途が示された。最後には2008年以降の経済危機が及ぼした影響と対応について検討を加え、講演を締めくくった。  3氏の講演後に行われた質疑応答ではコーディネーターの長有紀枝氏を加え、NGOのプロ化や日米の市民意識の違いなどについて意見が交換された。

(文責:奥村理央)

 

 

講師紹介

◆渡辺 靖(慶應義塾大学環境情報学部教授)

1967年生まれ。ハーバード大学大学院博士課程修了(Ph.D. 社会人類学)。オクスフォード大学シニア・アソシエート、ケンブリッジ大学フェローなどを経て、現在、慶應義塾大学SFC教授。アメリカ学会常務理事。専門はアメリカ研究、文化政策論。日本学士院学術奨励賞受賞。 単著に『アフター・アメリカ』(慶應義塾大学出版会、サントリー学芸賞、アメリカ学会清水博賞)、『アメリカン・コミュニティ』(新潮社)、『アメリカン・センター』(岩波書店)、『アメリカン・デモクラシーの逆説』(岩波新書)、The American Family (Pluto Press & University of Michigan Press & Pluto Press)など。 編著にSoft Power Superpowers (M.E. Sharpe)、『現代アメリカ』(有斐閣、近刊)など。

◆黒田 かをり(CSOネットワーク 共同事業責任者)

成蹊大学卒、ハーバード大学教育大学院修士課程修了。三菱重工業株式会社に勤務後、米国コロンビア大学ビジネススクール日本経済経営研究所、アジア財団(現アジア・ファンデーション)を経て、2003年から国際協力・開発分野での市民社会組織のグローバルなネットワークを進める「CSO連絡会(現CSOネットワーク)」に勤務。 2010年4月より事業提携により(特活)アジア・ファンデーションのジャパン・ディレクターも兼任。現在、ISO26000(社会的責任規格)策定の日本のNGOエキスパート、「社会的責任に関する円卓会議」運営委員(内閣府)などを務める。 国際NGO、市民社会、社会的責任に関する講演、執筆が多数ある。共著に“Soft Power of NGOs: Growing Influence beyond National Boundaries." in Watanabe & McConnell (eds.) Soft Power Superpowers: Cultural and National Assets of Japan and the United States. (M.E.Sharpe, 2008)など。

◆渡辺 元(立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科教授、公益財団法人トヨタ財団プログラム・ディレクター)

公益財団法人トヨタ財団プログラム・ディレクター。上智大学外国語学部卒業後、同財団プログラム・オフィサーとして研究助成、市民活動助成の企画・開発・運営に従事した後、シニア・フェローを経て現職。特定非営利活動法人市民社会創造ファンド副運営委員長、特定非営利活動法人シーズ・市民活動を支える制度をつくる会理事、公益財団法人公 益法人協会客員研究員も務める。共著に『日本のNPO/2000』(日本評論社)、『パブ リックリソースハンドブック』(ぎょうせい)、『NPO 実践講座 3』(ぎょうせい)、『ボランティア・NPO用語事典』(中央法規出版)、『市民社会創造の10年』(ぎょうせい)。編著として『知っておきたいNPOのこと2 資金編』(日本NPOセンター/まちづくり情報センターかながわ)。他、論文等多数。

 

 


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