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立教大学アメリカ研究所主催研究会

本研究会では、ミシガン大学のScott Kurashige氏を講師に迎え、アメリカにおける人種イデオロギーについて、日系アメリカ人の歴史を中心に検討をしていきます。60分ほどの講演に引き続き、質疑応答やディスカッションの時間も設けます。
開催日時、場所などの詳細は以下のとおりです。予約不要・入場無料ですので、奮ってご参加ください。

 

2010/6/12
From “Yellow Peril” to “Model Minority”:
Japanese Americans and Racial Ideology in U.S. History

 

 

 

ポスター
日時:
2010年6月12日(土)15:00-16:30
場所:
立教大学池袋キャンパス14号館D302教室
 
講師:
Dr. Scott Kurashige
(ミシガン大学准教授)
   
司会:
阿部珠理(立教大学社会学部教授・アメリカ研究所所長)
言語:
英語(通訳なし)
 
予約:
不要
入場:
無料

 

 

 

 
報告

 立教大学アメリカ研究所は2010年6月にミシガン大学のスコット・クラシゲ氏を招き、20世紀に「黄禍」から「モデル・マイノリティ」へと急激なイメージの変化を経験した日系アメリカ人の歴史をめぐる研究会を開催した。クラシゲ氏は、まず「黄禍」の例として1920年代にロサンゼルス(LA)郊外へと移り住んだ日系一世が近隣の白人家主達から「侵入(invasion)」と見做され迫害を受けていたことを、いくつかの写真を用いて紹介した。その後、この「黄禍」イメージは真珠湾攻撃後に最高潮に達し、日系人の強制収容は「常識」としてLAの指導者らによって積極的に推し進められたが、この動きに対する批判は日系人以外からも上がり、特にノーベル文学賞受賞者であるパール・バックの議論が詳しく論じられた。また反日論者は長い間カリフォルニアが日系人に侵略されると警告してきたが、実際には200万人ものアメリカ軍が戦後7年近くに渡り日本を占領した。またその占領期にアメリカ型の生活様式に適応した日本の姿が、アメリカ国内の日系人の環境にも大きな影響を与えたことが示された。またアメリカの外交政策がアジアの国々を「good」と「bad」に峻別し、日本を反共「自由世界」に属する盟友と位置付け、戦後のニュース報道が日米の主従関係を伝えたことで、日系人への敵意が消え失せたことも一因となり、急激に日系人のイメージは「黄禍」から「モデル・マイノリティ」へと変化を遂げたことを概説した。そして戦後のアメリカでは戦場で軍功を上げた日系二世の活躍も取り上げられ、日系人の他に類を見ないサクセス・ストーリーが称えられることとなるが、この「成功」はアメリカ例外主義や自由な個人主義といったアメリカ特有のイデオロギーを正当化する目的のもとに喧伝されており、実質的にはアメリカを機会の地、人種差別に打ち勝つ国という公式な物語を強化することになったと指摘した。
 続いてクラシゲ氏は1960年代後半に進んだアジア系アメリカ人研究の分野では「モデル・マイノリティ」神話が激しく非難されたことを紹介した。例えば日系アメリカ人の「成功」というイメージが流布したことで、他の有色人種のコミュニティの過小評価や意図的な歪曲、誇張につながったとの批判を挙げた。そして日系アメリカ人の「モデル・マイノリティ」イメージは、戦後期の3つの前提の上に構築されていたとの見解を示した。その第一の前提として、アメリカは冷戦構造下における世界的な覇権争いの只中におり、反共論の観点から日本をアジアにおける「自由の防波堤」にする必要があったことを挙げた。第二に「モデル・マイノリティ」イメージは過去の植民、奴隷制の歴史を覆い隠し、非白人の白人主流派への同化・統合の手段として用いられていたことを解説した。そして第三にアメリカにおける経済成長が白人中流層の急激な拡大を引き起こし、郊外に多くの職や住居が作られるに従い、日系人は他の黒人やラティーノといった有色人種よりも許容できる存在として受け入れられ、その代わり白人は憎しみの対象を黒人へとシフトしたことを指摘した。
 クラシゲ氏は最後にアメリカの現状を概観し、アメリカの覇権が弱体化したことや白人がすでに絶対的な多数派ではなくなったこと、そしてアメリカ経済が縮小しつつあることなどを挙げ、かつての前提の崩壊を明らかにした。そして現在アメリカで目にできるのは白人中流層からの反動であると指摘し、ティーパーティー運動に見られる動きに警鐘を鳴らした。
 講演後には質疑応答も行われ、発表内容に対してフロアから多くの質問やコメントが寄せられた。

(文責:奥村理央)

 

講師紹介
Dr. Scott Kurashige

◆Scott Kurashige(University of Michigan)

Scott Kurashige is an associate professor of American culture and history and the incoming director of the Asian/Pacific Islander American Studies Program at the University of Michigan. He is the author of The Shifting Grounds of Race: Black and Japanese Americans in the Making of Multiethnic Los Angeles (Princeton University Press, 2008) and co-author (with Grace Lee Boggs) of The Next American Revolution (University of California Press, forthcoming 2011). He received his M.A. in Asian American studies (1996) and Ph.D. (2000) in history from UCLA.

 

 


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