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立教大学アメリカ研究所設立70周年記念シンポジウム

 立教大学アメリカ研究所の設立70周年を記念して、日本のアメリカ研究をテーマに公開シンポジウムを開催します。
 第一部では長年立教大学アメリカ研究所の所長を務めた富田虎男氏(立教大学名誉教授)とアメリカ学会会長の有賀夏紀氏(埼玉大学教授)が対談形式で日本におけるアメリカ研究ならびに立教大学アメリカ研究所の歴史を振り返ります。
 第二部では日本におけるアメリカ研究の現状、そして未来についてアメリカ史、アメリカ政治、アメリカ文学といった各研究分野の第一人者が30分ずつ報告し、その後質疑応答を含めたパネル・ディスカッションを行います。
 多数の方々のご参加をお待ちしております。

 

2009/11/14
1939/2009―アメリカ研究の軌跡と展望

 

 

 

ポスター
日時:
2009年11月14日(土)13:00-16:30
場所:
立教大学池袋キャンパス14号館D301教室
内容:
第一部:対談「アメリカ研究の軌跡」
◆富田虎男 (立教大学名誉教授・立教大学アメリカ研究所元所長)
◆有賀夏紀 (埼玉大学教授・アメリカ学会会長)
第二部:パネル・ディスカッション「アメリカ研究の展望」
◆中野 聡 (一橋大学教授)
◆大津留(北川)智恵子 (関西大学教授)
◆巽 孝之 (慶應義塾大学教授)
司会:
阿部珠理 (立教大学教授・立教大学アメリカ研究所所長)
対象:
学生・教職員・一般
予約不要・入場無料
 

 

 

 

 
報告

 第一部では1981年から1993年にかけて12年間所長を務めた富田虎男氏と現在アメリカ学会会長を務める有賀夏紀氏が対談を行い、前半は1939年の設立から現在に至るまでの立教大学アメリカ研究所の軌跡を検証した。はじめに富田氏は立教大学アメリカ研究所の歴史を「設立期(1939-1943年)」「激動期(1943-1947年)」「復活期(1947-1976年)」「活動期(1981年-現在)」と時代区分し、時系列順に振り返った。そして1939年に「立教大学アメリカ研究所」としてアメリカへの理解と親善という目的のもとに設立されると、アメリカの政府刊行物の寄贈指定図書館に選ばれ、約1万冊にのぼる図書を収集するなど、研究活動は活況を呈したことを紹介した。だが1943年に陸軍参謀本部第6課アメリカ班の傘下に入って「立教大学」の肩書が削られ「アメリカ研究所」へと改組されると、次第に「国家のための」研究所への変質を余儀なくされた歴史を詳らかにした。ただその改組によって多額の補助金がついたため、専任研究員が増加するなど研究が活性化したことは皮肉である。戦後は日本初のアメリカ研究誌『アメリカ文化』を1946年に創刊するが、翌年4月に財政的な理由から研究所が一時閉鎖され、同年11月からは「立教大学アメリカ研究所」として再出発した。富田氏はこの「復活期」にはいくつかのアメリカ研究図書の翻訳、編集が行われたことを早足で振り返り、ご自身が所員を務めていた1976年に現在の『立教アメリカン・スタディーズ』の前身となる『アメリカ研究シリーズ』が刊行されたことを「活動期」の前触れとして述懐した。
 第一部の後半では、富田氏の研究の軌跡を有賀氏が引き出す形で対談が進んだ。まずは1956年の日本西洋史学会の大会で初めてアメリカ史が部会として成立したことを司会の中屋健一氏が述べていた様子を挙げ、1950年代のアメリカ史研究は二級市民で、市民権獲得運動をしたような心意気で研究していたと回想した。1960年代には清水博代表の科研費で開催された研究会で有賀貞、本間長世、井出義光、清水知久、斎藤眞、野村達朗、安武秀岳ら諸氏と議論を交わし、それが『アメリカ史研究入門』(山川出版社、1974年)の共同執筆につながったことを明らかにした。

 第二部ではアメリカ史、アメリカ政治、アメリカ文学の第一人者が30分ずつ各研究分野の現状分析と今後の展望を報告し、その後質疑応答を含めたパネル・ディスカッションを行った。最初に発表した一橋大学の中野聡氏は、日本におけるアメリカ史研究は、日本国内では縦軸の研究者養成システムが完結せず、アメリカの大学院によって補完・代替されているため変化の風に晒されやすく、日本「独自の視点」の解体につながっていると問題提起した。さらに日本の地域研究者がその関心の対象地域で学位を取得していくことは望ましいことだとしながらも、アメリカ研究の場合は現地の大学院がアカデミックな市場において質量両面において圧倒的な優位性をもっていることが日本のアメリカ史研究に多様で深刻な影響を与えていると警鐘を鳴らした。一方アメリカではアメリカ史研究の国際化・トランスナショナル化の動きが強まっており、そこで見られる海外研究者によるアメリカ史研究への介入を好ましい傾向として紹介した。しかしその傾向は、アメリカのアカデミズムへの海外研究者の包摂という側面と表裏一体であることを指摘し、この動きの両面性を明らかにした。そしてアメリカ史研究者の若手は、アメリカ史研究者である以前に歴史学研究者であるというアイデンティティを構築し、意識的に歴史学の他分野、地域研究の他分野を学ぶことが必要ではないかと訴えた。
 続いて関西大学の大津留(北川)智恵子氏が、アメリカの市民権をもたない日本人がアメリカ政治を研究することの意義の検討を通して、アメリカ政治研究の現状と課題について報告を行った。大津留(北川)氏は、かつての日本におけるアメリカ政治研究は日米開戦回避のための尽力や戦後の民主化の過程でのアメリカ理解の手助けといった役割をもっており、「上からの」研究であったと概説した。だが比較的言葉の壁が低くなり、グローバリゼーションなどの影響であまりにも多元的な情報が大量に入手できるようになった現在は、情報の選別や理解の補助という「下からの」研究でアメリカ政治研究者の果たせる役割が残っているという考えを示した。続いて「アメリカ政治」という語彙が現在扱うフィールドを日米の研究書の章立てから読み解き、日本におけるアメリカ政治研究を①歴史的研究、②現状分析(現在のアメリカ政治の研究)、③理論的研究、の3分野に分類し、それぞれの研究領域を概観した。そして日本の研究者がアメリカの政治を研究する意義について、アメリカの自国政治研究は最先端の研究を行っているとの自負があるために自己完結的であるという側面を指摘し、それを外からの視点で相対化できるという利点を挙げた。
 最後に登壇した慶應義塾大学の巽孝之氏は、はじめにアメリカ文学研究をめぐる理論的な激動が1980年代から2000年代にかけて続いたことをご自身の体験を交えて紹介し、当時の方法論的な革命に促されるように各大学版のアメリカ文学史が編纂されたことを論じた。特にそれまでピューリタン文学の研究者が覇権を握っていたアメリカ文学史の編纂において、非白人系民族文学・文化の専門家であるワーナー・ソラーズが2009年に編纂した『ハーヴァード大学版アメリカ文学史』が編年体方式で一貫されたことは、文学研究だけでなく文化研究にとっても画期的であったと評した。また近年顕著なトランスナショナルなアメリカ研究の例として、アメリカ国内では年次大会を開かない国際アメリカ学会(International American Studies Association)や、アメリカ以外の視点によるアメリカ研究を発信するオンライン・ジャーナルJournal of Transnational American Studiesを挙げた。巽氏はこの流れをアメリカ文学研究の新たな方向性と捉え、そのキーワードとしてガヤトリ・スピヴァクが提唱する「惑星思考」(planetarity)という比較文学理論に言及し、この理論に準ずるものとして半球思考や間大陸思考といった理論を提示した。そしてこのような従来のアメリカを根本としたアメリカ研究が脱中心化されようとしている動きと、環大西洋的にして環太平洋的でもあるオバマ大統領の誕生が関連付けられるとの見解を示し、講演を締めくくった。

 三氏の講演に引き続きフロアを交えて行われた質疑応答では、アメリカ研究の学際性(interdisciplinary)について議論が交わされ、基礎となる特定の学問分野(discipline)におけるトレーニングが必要との見解が各パネリストから提示された。一方、有賀氏からはアメリカ研究を新たなdisciplineとして確立していく必要性が訴えられ、その過程で新たなアメリカ研究の在り方・捉え方を模索することがアメリカ研究者の課題として挙げられた。 またアメリカ研究のトランスナショナル化という潮流や、アメリカ研究をする上でいかに日本を意識化するかといった質問が相次ぎ、パネリストからはそれぞれの視点に立った意見が交換され、大変実り多きシンポジウムとなった。

(文責 奥村理央)

 

 

講師紹介

◆富田虎男(立教大学名誉教授・立教大学アメリカ研究所元所長)

立教大学名誉教授。1981年から1992年まで立教大学アメリカ研究所所長を務める。専門はアメリカ・インディアン史、アメリカ独立革命史。主な著作に『ジェファソン―アメリカ独立革命』(誠文堂新光社、1961年)、『アメリカ・インディアンの歴史』(雄山閣、1997年)など。

◆有賀夏紀(埼玉大学教授・アメリカ学会会長)

埼玉大学教養学部教授。専門はアメリカ社会史、現代史。単著に『アメリカ・フェミニズムの社会史』(勁草書房、1988年、第8回山川菊栄賞受賞)、『アメリカの20世紀(上・下)』(中央公論新社、2002年) など。1989年日米友好基金賞受賞。アメリカ学会会長(2008~)。

◆中野聡(一橋大学教授)

一橋大学社会学研究科教授。専門は環太平洋国際史、米比関係史、日比関係史。単著に『フィリピン独立問題史』(龍渓書舎、1997年、アメリカ学会清水博賞受賞)、『歴史経験としてのアメリカ帝国―米比関係史の群像』(岩波書店、2007年、第24回・大平正芳記念賞受賞)など。

◆大津留(北川)智恵子(関西大学教授)

関西大学法学部教授。専門は国際政治学、アメリカ政治、外交。共著に『戦後アメリカ外交史』(有斐閣、2002年)、『アメリカが語る民主主義―その普遍性、特異性、相互浸透性』(ミネルヴァ書房、2000年)、『アメリカの多民族体制―「民族」の創出』(東京大学出版会、2000年)など。

◆巽孝之(慶應義塾大学教授)

慶應義塾大学文学部教授。専門はアメリカ文学、批評理論。単著に『サイバーパンク・アメリカ』(勁草書房、1988年、同年度日米友好基金アメリカ研究図書賞文学部門受賞)、『ニュー・アメリカニズム―米文学思想史の物語学』(青土社、1995年、同年度福沢賞受賞)、Full Metal Apache(Duke UP, 2006)など。

 

 


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