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立教大学アメリカ研究所設立70周年記念レクチャーシリーズ

 未曾有の金融・経済危機の中で、アメリカにオバマ政権が成立してから約8か月経ちました。経済の先行きには多少明るい兆しが出ているものの、前途は必ずしも楽観を許しません。景気動向より重要なのはオバマ政権が進めようとしているアメリカ経済の構造改革ですが、オバマ政権が目指す、低炭素社会に向けてのエネルギー投資と全国民の健康保険加入を目標とする医療改革について、アメリカ国内で政策論争と政争が起きています。米国内での政策論争の帰趨は世界経済と日米関係にも大きな影響を及ぼすと思われます。
  立教大学アメリカ研究所は10月3日(土)に3名の専門家をお招きし、オバマ政権の経済政策に関するシンポジウムを開催します。3人はそれぞれ、アメリカの経済政策、政治・外交政策、証券投資に関する一流の論客として知られた方々です。
  シンポジウムでは皆様に有益な視点や重要な情報がきっと得られるでしょう。多数の方々のご参加をお待ちしております。

 

2009/10/3
オバマの経済政策をどう見るか

 

 

 

ポスター
日時:
2009年10月3日(土)14:00-17:00
場所:
立教大学池袋キャンパス14号館D201教室
講演:
◆福島清彦 (立教大学教授・立教大学アメリカ研究所所員)
「オバマがつくる福祉資本主義」
◆五十嵐武士 (桜美林大学大学院教授・東京大学名誉教授)
「三つの危機とオバマ政権」
◆芳賀沼千里 (野村證券金融経済研究所ストラテジスト)
「株式市場から見たアメリカ経済」
司会:
林 倬史 (立教大学教授)
対象:
学生・教職員・一般
予約不要・入場無料

 

 

 

 
報告

  最初に「オバマがつくる福祉資本主義」というタイトルで講演を行った福島氏は、オバマ大統領は「エネルギー」「医療」「教育」の3分野に巨額の投資をして、人間の能力を高めることが経済を成長させるという考え方に立ち、新しいアメリカ経済を作りだそうとしていると解説した。さらに元来アメリカは福祉国家をつくる伝統があり、このオバマ政権の経済政策は40年間ほど中断していたその伝統を再興しようとするものであると指摘した。そして主要国の福祉支出の比較やアメリカの全要素生産性の上昇予測の図表を提示して、この政策の合理性を評価した。またオバマ大統領が力を傾注した医療改革にも触れ、アメリカで医療費が高い理由などについて紹介した。最後に福島氏は「展望をもった中道主義」(Visionary Centrism)と評されたオバマ大統領のプラグマティズムを挙げ、現実的な妥協で優れた手腕を発揮するだろうとの見解を示した。
 続いて登壇した野村證券金融経済研究所の芳賀沼千里氏は、豊富なデータを駆使して「株式市場から見た米国経済」と題した講演を行った。芳賀沼氏は、金融市場は往々にして時代を先取りすることがあるとして、「100年に1度の津波」と表現されるこの1、2年の金融市場の混乱・変化が、アメリカ経済の今後にどのような示唆を与えているか、3つの転機という視点から検討を加えた。1つ目として、今までのようなレバレッジを利用した金融機関の収益拡大が臨界点に達したことを挙げた。2つ目として芳賀沼氏が指摘した転機は、世界経済のグローバル化であった。2000年を境に、それまで差が見られなかった先進国と新興国の経済成長率に差が出始め、2009年はともに厳しい景気後退に直面したものの、今後は両者の経済成長率の格差は残り続けるだろうと分析した。そして3つ目として今回の金融危機を経て、年金の仕組みがかなり変化していく可能性に言及した。また最後にアメリカの政治循環と株式市場の循環がほぼ同じサイクルで動いているという説を紹介し、現在の経済状況の位置づけを読み解く一つの視点を提供した。
 続いて東京大学名誉教授で桜美林大学大学院教授の五十嵐武士氏が「三つの危機とオバマ政権」と題して国際的な政治経済の視点から報告を行った。五十嵐氏ははじめにオバマ政権誕生の背景にはイラク戦争、アフガン戦争、そして経済危機という三つの危機があったと読み解いた。そしてこれらの危機がアメリカの安全保障面や経済面における主導権に国際的な不信を生じさせたことを指摘し、グローバル化した世界経済の中でアメリカの地位が転機を迎えているとの認識を示した。その文脈の中で捉えられるオバマ政権の経済政策については、多分野にわたり意欲的な政策革新を目指しているため、「Too Much, Too Fast」とも揶揄されていることを挙げ、その実効性が疑問視されているとして、「志半ばの背水の陣」と評した。
 講演に引き続いて行われた質疑応答では、東アジア共同体構想へのアメリカの反応やオバマ政権のエネルギー政策の財源などについて質問が相次ぎ、200名近い来場者を交えて活発な意見交換が行われた。

(文責 奥村理央)

 

 

講師紹介

◆福島清彦(立教大学教授)

㈱野村総合研究所主任研究員、同ワシントン事務所長、米国プリンストン大学客員研究員、ブルッキングス研究所客員研究員、野村総合研究所ヨーロッパ社長、主席エコノミストを経て、2005年より立教大学経済学部教授。

◆五十嵐武士(桜美林大学大学院教授・東京大学名誉教授)

1969年東京大学卒業後、同大学助手、助教授を経て、1985年より東京大学教授。日本比較政治学会会長、アメリカ学会会長を歴任。専門はアメリカ政治史、日米関係史で、著書『覇権国アメリカの再編』(東京大学出版会、2001年)や編著『アメリカ外交と21世紀の世界』(昭和堂、2006年)など著作多数。現在、桜美林大学大学院教授、東京大学名誉教授。

◆芳賀沼千里(野村證券金融経済研究所ストラテジスト)

1982年東京大学卒業後、野村證券入社。ロンドン大学経済学修士。投資情報部配属。日本株のストラテジーを担当。野村総合研究所投資調査部長を経て2007年より現職。著名経済誌でアナリストランキング・日本株ストラテジスト部門で首位獲得多数。

 

 


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