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2008年度立教大学アメリカ研究所主催公開シンポジウム

オバマ上院議員が黒人として初めて主要政党の大統領候補に確定した。混迷するイラク、アフガニスタン情勢、国内経済の変調も相まって、アメリカの有権者の秋の選択は大きな国際的関心を呼んでいる。このシンポジウムでは、オバマ指名獲得の政治的背景とその意味合い、大統領選挙と日米関係、今回の選挙が映すアメリカの変容をテーマに講演をおこない、「変化」するアメリカについて理解を深めると共に、今後の動向について考察したい。
開催日時、場所などの詳細は以下のとおりです。予約不要・入場無料です。奮ってご参加ください。

 

2008/10/3
2008年アメリカ大統領選挙――「変化」するアメリカ

 

 

 

ポスター
日時:
2008年10月3日(金)17:00-19:30
場所:
立教大学池袋キャンパス8号館8202教室
講演:
◆中山俊宏 (津田塾大学准教授)
「オバマ現象の意味―そのエネルギーと動員力」
◆西村陽一 (朝日新聞編集局長補佐兼ネットディレクター)
「大統領選挙と日米関係」
◆佐々木卓也 (立教大学法学部教授)
「大統領選挙が映すアメリカの変容」
司会:
李鍾元(立教大学法学部教授)
対象:
学生・教職員・一般
予約不要・入場無料

 

 

 

 
報告
シンポジウム風景

中山俊宏

中山俊宏
(津田塾大学准教授)

「オバマ現象の意味―そのエネルギーと動員力」 

 まず中山氏は今回の選挙の決め手として「本来アメリカが進むべき道から逸脱している」という現状認識が民主党、共和党の区別なく共有されていることを挙げた。そしてこの本来進むべき道、方向へと軌道修正をしてくれる指導者を選ぼうという力学が働いていて、そのような状況の中でオバマが台頭してきたのだと論じた。ただオバマ陣営が一番オバマらしかったのは2008年1月から2月の間、まだ「挑戦者」の立場だった頃であり、3月以降にオバマ氏が勝つ可能性が見えてきてからは、ある種オバマらしさを失っていったと指摘した。そして中山氏は2008年2月のスーパーチューズデーの演説の映像を流し、「一番オバマらしかった頃」の集会がある種の社会運動的熱気を放っていた様子を紹介した。

 また共和党のマケイン候補のライフストーリーが愛国心、自己犠牲、忠誠心、勇気などといったアメリカ国民が指導者に求める資質を表す言葉で容易に組み立てられるのに対し、オバマのライフストーリーは普通のアメリカ人からするとなかなか同一化できないことを指摘した。だが、彼に自らの異邦人性を意識させていた人生の多彩さが、逆に誰でも彼に部分的に同一化できる要因ともなっていると論じた。そしてオバマの「自分探し」は文化的にも人種的にも宗教的にも雑多なアメリカの大統領になることによって完結し、それはオバマ自身の物語の完結であると同時にアメリカという物語の完成でもあるとの認識を示した。また2008年8月の民主党大会における指名受諾演説の際に流されたバイオ・フィルムを分析し、その映像がオバマの浮動するアイデンティティを象徴していると読み解き、そのような人物が大統領になるということが歴史的な出来事であると言及した。

 中山氏は最後にこの選挙結果からオバマ氏が勝ったからアメリカが変化を選んだというのは単純過ぎると釘をさし、この選挙ですでにアメリカは変わっているとの認識を示した。

西村陽一

西村陽一
(朝日新聞編集局長補佐
兼ネットディレクター)

「大統領選挙と日米関係」 

 西村氏は大統領候補のディベートや有力シンクタンク主催のシンポジウム等において、日本や日米関係がほとんど議論されなかったことを紹介し、その「Jワード」(日本)不在の理由として以下の5つの見解を述べた。まず政治や経済の世界における日本の存在感の低下があり、続いてブッシュ時代にイラクを最優先課題としていたため、アジアにおけるアメリカのリーダーシップが低下したことを挙げた。そしてこの選挙の最大テーマが金融危機になったことや、中国の存在感が上昇していることを指摘し、最後に両候補者のどちらが大統領になっても対日政策の選択肢が限られていることを理由として並べた。

  続いて西村氏は両候補者が大統領になった際にどのような人材が対日政策について担当するかを概説した。まずオバマ陣営にはモンデール元駐日大使やフォーリー元駐日大使がおり、他にもジェフリー・ベーダー、リチャード・ブッシュ、カート・キャンベルらを筆頭に、30名ほどのブレイン・チームがいると明らかにした。一方マケイン陣営はアーミテージ元国務副長官、マイケル・グリーン、ランドール・シュラウバーの3名が中心であると紹介した。ただ民主党のオバマが大統領になったからといって一夜にして日米関係が変わるということはなく、彼の陣営の対日政策のキーワードは「continuity(継続性)」だとも言及した。しかし日本のアフガン政策はアメリカの不満を買い、アメリカの北朝鮮政策は日本の不満を募らせる可能性があることを挙げ、大きな日米関係の変化はなくても日本の政治漂流、政治混乱が続くようだと日米関係が空洞化するリスクがあるとの危惧を示した。

  そして最後に両候補者の外交路線の違いについて説明を加えた。マケインの外交路線は「league of democracies(民主主義国の連合)」をキーワードにしており、国連で答えが出ないときには民主主義国のリーグが行動を起こすという彼のスタンスを説明した。これに対してオバマの外交路線は「敵であろうとも対話する」姿勢を基本としており、さらにテロや核拡散などの脅威に対応するためには民主主義国でなくても様々な協力を結ぶとして、その違いを明確に示した。またアジア政策においてはFTAを推進するマケインに対し、オバマはアメリカの労働者の利益にならないFTAは修正する立場をとっていることにも注目し、講演を締めくくった。

佐々木卓也

佐々木卓也
(立教大学教授)

「大統領選挙が映すアメリカの変容」 

 佐々木氏はまず歴史的・統計的データを基にこの大統領選の特徴を概説した。第一に大統領が引退した後に現職の副大統領が出馬しない選挙は1928年以来のことであり、また二大政党の候補者が二人とも上院議員というのは史上初だと指摘した。そして統計的に一番大統領に近い公職である州知事が、今回の選挙では久しぶりに党指名を受けなかったことを挙げた。その関連でカーター以降の大統領は南部か西海岸を政治的基盤としていることから「南部の政治的興隆」という趨勢を明らかにし、その背景には1960年以降のアメリカの産業構造の変化と人口動態の変化があると分析した。そして両候補者の政治的基盤であるイリノイ州とアリゾナ州から出た過去の政治家を紹介し、その中にはリンカーンやグラント将軍などがいることに言及した。

  続いて「変化(change)」をキーワードに、アメリカの人種状況の変容と今回のオバマ人気には関連があることを示し、このキーワードが「何からの」変化なのかという問いに対しては、それは「レーガン時代の終焉」であるというSean Wilentz氏の議論を紹介した。つまり内政においては大規模な減税と規制緩和の推進、外交においては軍事力を背景にした強い外交、そして非常に保守的な文化的・社会的価値観をもつレーガン政権のアジェンダをブッシュ政権は引き継ぎその完成化を図ったのだが、現在はそれらがすべて行き詰まりの様相を呈していると議論を展開した。ただアメリカ大統領の最大の遺産ともいえる最高裁判事の問題があり、ブッシュは連邦最高裁に非常に保守的な判事を2人送り込んでおり、レーガン時代に入った判事とともに彼らが2009年以降も共和党保守派のアジェンダに沿った判決を下すだろうとの見解を示した。

 

講師紹介

◆中山俊宏(津田塾大学准教授)

青山学院大学大学院国際政治経済学研究科国際政治学専攻博士課程修了。専門はアメリカの政治・外交。
ワシントンポスト紙極東総局記者、日本政府国連代表部専門調査員、日本国際問題研究所主任研究員、ブルッキングス研究所客員研究等を経て、津田塾大学国際関係学科准教授、博士(国際政治学)。
著作に『アメリカ外交の諸潮流――リベラルから保守まで』(共著、日本国際問題研究所、2007年)、『アメリカ政治外交のアナトミー』(共著、国際書院、2006年)、『米国民主党――2008年政権奪回への課題』(共著、日本国際問題研究所、2005年)、『帝国アメリカのイメージ――国際社会との広がるギャップ』(共著、早稲田大学出版部、2004年)など多数。

◆西村陽一(朝日新聞編集局長補佐兼ネットディレクター)

1981年東京大学卒業。東大新聞研究所研究生。同年朝日新聞社入社。1986年より政治部員。1992年より1年間、ロシア留学。1993年より1997年までモスクワ支局員。1998年より2001年までアメリカ総局員(ワシントン)。2001年より2002年まで外報部次長など。2002年より2005年までアメリカ総局長。同年12月より政治部長(のち政治エディターに改名)。2007年12月より編集局長補佐兼ネットディレクター。
著書に『プロメテウスの墓場』。以下共著で『湾岸危機と日本』『現代ロシアを知る55章』『岐路に立つ世界』『イラク戦争』『アメリカ・ブッシュ政権と揺れる中東』など。「フォーサイト」「世界」「論座」などに論文。

◆佐々木卓也(立教大学法学部教授)

1981年一橋大学法学部卒業。オハイオ大学大学院留学(1985‐87年)。1988年、一橋大学大学院法学研究科博士課程単位修得。関東学院大学法学部専任講師、同助教授、立教大学法学部助教授、イェール大学客員教授(1997-99年)などを経て、現在立教大学法学部教授(アメリカ外交史専攻)、博士(法学)。
著作に『アイゼンハワー政権の封じ込め政策――ソ連の脅威、ミサイル・ギャップ論争と東西交流』(有斐閣、2008年)、『封じ込めの形成と変容――ケナン、アチソン、ニッツェとトルーマン政権の冷戦戦略』(三嶺書房、1993年)、『戦後アメリカ外交史』(編著、有斐閣アルマ、2002年)、『日米関係資料集 1945-97』(共編、東京大学出版会、1999年)など。

 

 


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