2007年度立教大学アメリカ研究所主催公開シンポジウム

 立教大学アメリカ研究所は、2007年12月に北米先住民の研究者を招き、米国やカナダにおける先住民の経済開発と文化再生に関するシンポジウムを開催しました。シンポジストとして、アメリカ先住民居留地の開発や現代的多様性に関する著作をもつ青柳清孝氏(『ネイティブ・アメリカンの世界』著者)やカナダのネツリック・イヌイット生業活動、特に伝統的な文化と現在の文化の比較研究をされているスチュアート ヘンリ氏(『民族幻想論-あいまいな民族つくられた人種』『採集狩猟民の現在-生業文化の変容と再生』著者)、さらにカナダ西岸先住民のサーニッチの研究を進める渥美一弥氏にクワクワカワクゥを対象として研究をされている立川陽仁氏が登壇いたしました。四者による講演後、フロアとともにディスカッションを行いました。

2007/12/1

北米先住民における経済開発と文化再生

日時: 2007年12月1日(土)13:00-16:00
場所: 立教大学池袋キャンパス8号館2階8202教室
講師:

青柳清孝(国際基督教大学名誉教授)

スチュアート ヘンリ(放送大学教授)

渥美一弥(自治医科大学准教授)

立川陽仁(三重大学准教授)

司会: 阿部珠理(立教大学社会学部教授・アメリカ研究所所長)

対象:

学生・教職員・一般・研究者
予約不要・入場無料

報告

 青柳清孝氏は、プエブロ・ラグーナやカリフォルニア・インディアンのギャンブル(Gaming)の問題について講演を行った。青柳氏はアメリカ先住民が運営する現代カジノの出発点として、州と部族政府の間に協定書が結ばれたことを挙げ、近年のカリフォルニア州では環境問題などいくつかの重要事項について周辺住民の安全を確保する地方政府の立場が重視され始めた点で大きく協定書の内容が変化してきていることに言及した。さらにランチェリア(rancheria lands)に居住する「新興の」(Restored)部族が運営に有利な都市近隣地域にカジノを設ける動きを指摘し、カジノが保留地外に進出する傾向を論じた。最後にカジノと文化再生の繋がりとして、カジノであげた収益で部族文化の理解と普及に貢献しているフォックスウッド・カジノの例を報告した。だがカジノが部族文化に対してもつ負の影響や、運営が不調な部族の存在にも目を向け、カジノの経済効果だけを鵜呑みにすることには大きな問題があると主張した。

 スチュアート ヘンリ氏は、「民族文化としての狩猟採集活動」と題し、イヌイトの生業活動について視覚資料を効果的に用いて講演を行った。はじめに生業活動について、獲得、処理、消費、廃棄、そして資源および集団との社会関係という面から概説し、さらにイヌイトの略史について「先史」という概念への批判的考察を含めて紹介した。そしてアラスカでの油田開発や石油輸送パイプライン、さらに水力発電事業といった多国籍企業による資源開発が陸・海生物へ悪影響を及ぼしていることを指摘し、動物保護運動などが狩猟・漁撈に制約を加えていることや、カリブー猟の一時的禁止に見られる伝統的知識と科学的知識の葛藤の存在についても言及した。また自然の資源を縦横に活用していた「伝統」時代に対し、現代に生きる彼らが生業活動を行う理由として、補足的食料獲得の手段やレクリエーションという理由の他、(アザラシ猟は時間的忍耐や豊富な知識をもつイヌイトにしか出来ないといった)民族的アイデンティティの再生・維持という機能があることを確認した。

 渥美一弥氏は、「サーニッチの教育自治と『文化』復興―資源としての先住民のイメージと民族誌的『情報』」という題目で講演を行った。はじめにサーニッチが居住するブリティッシュ・コロンビア州における同化教育の歴史や、サーニッチによる教育自治の歴史について概説した。そしてサーニッチが運営する学校の状況を、現地で撮影した写真を用い、サーニッチ語(センチョッセン)や「伝統文化」の授業を中心に紹介した。また博物館における展示方法から「スピリチュアル」な存在というイメージが先住民に付与されていることを明らかにし、そのようなイメージにサーニッチ自身が応答していく関係を読み解いた。さらに経済的に自立していくサーニッチの芸術家の例を挙げ、長老たちの民族誌的「情報」(神話や地名に対する知識)が、より若い世代にとって「文化」の創造の源泉であり経済的資源ともなりうるという認識を示した。

 立川陽仁氏は資本主義化の「犠牲者」と「成功者」という両義的なイメージをもつクワクワカワクゥが、いかに経済開発に対処してきたかについて発表を行った。まず立川氏はクワクワカワクゥが経済開発を進めた前提として、彼らは条約を締結していくなかで政治的自治権の獲得を目指しており、交渉のテーブル上経済的に自立している必要性があることを読み解いた。そして彼らがサケ漁業を通じて資本主義経済へ参加し、個人レベルで経済的自立を果たしたが、1990年代にサケ漁業が衰退し、代わりに新たな基幹産業としてサケ養殖業がバンクーバー島へ導入された歴史を概説した。そして今では世界第4位の生産量となった養殖業が多数の雇用を生み出し、地域経済に多大な貢献をしている一方で、水質汚染や野生種への影響といった環境被害を引き起こす懸念があることも明らかにした。このサケ養殖業がもつ二面性は、クワクワカワクゥが経済的利益を主張する擁護派と近隣の養殖場からの環境被害などを懸念する反対派に二分されていることにも表れており、生物学的な環境アセスメントを実施してもこの対立を解消するには至らないことを指摘した。

(文責:奥村理央)

 


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