2005年度立教大学アメリカ研究所・ラテンアメリカ研究所共催公開シンポジウム

 立教大学アメリカ研究所は2004年度に引き続き、ラテンアメリカ研究所と共催でシンポジウムを開催します。今年度は「ボーダーに消える女たち~米国・メキシコ国境にひとがる暗い影~」と題し、Lourdes Portillo監督によるドキュメンタリー映画『Senorita Extraviada/Missing Young Woman』が提起するさまざまな問題を検証します。第一部では映画の一部上映と井上正子氏による解説、そして第二部では齋藤修三氏と伊高浩昭氏によるコメントとディスカッションを行います。

 米国と国境を接するメキシコの町フアレスでは、90年代中頃から次々と若い女性が誘拐され殺害される事件が相次ぎ、その数は数百件に及びました。その裏にあるのは麻薬取引か、腐敗した警察か、それとも米国資本による工場「マキラドーラ」の存在か‥。サンダンス映画祭で審査員特別賞を受賞したドキュメンタリー映画が描き出す米墨国境の町を舞台に、ジェンダー・エスニシティ・グローバリゼーション等のテーマを議論します。

  

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ボーダーに消える女たち~米国・メキシコ国境にひろがる暗い影~

日時: 2006年1月7日(土)16:30-19:00
場所: 立教大学池袋キャンパス12号館地下第1・2会議室
講師:

齋藤修三(青山学院女子短期大学助教授)

伊高浩昭(ジャーナリスト、ラテンアメリカ講座講師)

井上正子(立教大学大学院文学研究科比較文明学専攻博士課程前期課程修了)

司会: 小林憲二(立教大学教授・アメリカ研究所所長)

協賛:

立教大学ジェンダーフォーラム
予約不要・入場無料

報告

   

 第1部では、ロールデス・ポルティージョ監督によるドキュメンタリー映画『Seorita Extraviada/Missing Young Woman』の一部を上映し、井上正子氏が映画の紹介・解説をした。この映画は米墨国境の街フアレスで起きている女性連続殺人事件について、関係者へのインタビューを中心に構成されたドキュメンタリーとなっている。インタビュー相手は犠牲者の家族や検察官、人権活動家、さらに実際の被害者などで、事件の背景としてドラッグやマキラドーラ、腐敗したメキシコ警察の関与が示唆されている。井上氏は、メキシコ全土から貧しい女性がフアレスに引き寄せられる要因として、若い女性を必要とするマキラドーラの制度を挙げ、国際分業などの資本主義システムとの関連を示した。また「裏切り者」や「情婦」とされるマリンチェの伝説に重なるメキシコ人男性の女性憎悪についても言及した。

 第2部では、コメンテイターとして斉藤修三氏と伊高浩昭氏を招き、司会に当研究所所長の小林憲二氏が入り、この映画が提起するさまざまな問題をめぐるシンポジウムを行なった。斉藤氏による講演では、まず始めにフアレス郊外で生活する人々のビデオが一部上映された。その後の講演では、事件を合衆国に住むメキシコ系の人たちがどのように受け止め、応答しているかをテーマとして議論が展開された。斉藤氏は、事件に対する2003年の抗議デモに参加しており、その際の写真を紹介し、さらにリラ・ダウンズによるこの事件を扱った歌や、ジーナ・バルデスの何篇かの詩を取り上げた。また境域(ボーダーランズ)では、北から南を見る視線、そして南から北を見る視線が可能であり、二項対立ではなく、二項の間を絶えず視点が往還するような双方向的複眼思考こそが「橋」になりうると指摘した。

 続いて講演を行なった伊高氏は、共同通信の記者としてメキシコに滞在し、米墨国境を何度も取材した経験をもとにこの映画の背景について議論を展開した。まずフェミニシディオやマキラドーラといったこの映画を読み解くキーワードの解説を行ない、そしてなぜフアレスという街で連続殺人が起こるかについて、それはメキシコ最大級の麻薬カルテルがあるからだと分析した。またフェミニシディオが起こる原因として、いくつかの可能性を挙げ、それらが麻薬犯罪とつながっていることはまったく疑いのない事実と論じた。その麻薬犯罪が野放しになる背景としては、メキシコがNAFTA加入のために麻薬マネーを必要としたことに言及し、他にも3700あると言われるマキラドーラについて、これは投資源として必要とされたことが挙げられた。

 二氏の講演後は、質疑応答が行なわれ、この事件へのメディアの関与やアメリカ合衆国の反応、さらにNGOの活動などについて意見が交わされた。今回のシンポジウムは、立教大学ラテンアメリカ講座の受講生を中心に、学内外から多くの参加者を得て、会場は熱気に包まれた。この場を借りて、講演者および参加者の方々に感謝の意を表したい。

奥村理央

立教大学アメリカ研究所

 


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