2002年度立教大学アメリカ研究所主催 公開シンポジウム

マイノリティと文化創造

 立教大学アメリカ研究所は、2001年9月11日以降、アメリカにおいて市民的自由の抑圧という社会状況におかれたエスニック・グループに焦点を当て、歴史的にいかに彼らがその抑圧の中で自分たちの文化を創造してきたかを検討するシンポジウムを開催した。このシンポジウムでは、それぞれ対象とするマイノリティが異なる4人の講演者ーー19世紀から20世紀に至る黒人女性史を、主に映像文化を切り口に研究されている岩本裕子氏、戦時中の西海岸やハワイにおける日系アメリカ人の強制収容問題などを研究されている島田法子氏、スペイン文学や現代ラテン・アメリカ文学について研究されている野谷文昭氏、ネイティヴ・アメリカン、ことにラコタ・スー族の文化変容について、フィールドワークを基盤に研究されている阿部珠理氏ーーを迎え、共通の「文化創造」というテーマについて様々な角度から議論が行われた。

  

日時: 2002年11月16日(土)14:00-17:00
場所: 立教大学池袋キャンパス8号館8303教室
講演者: 岩本 裕子(浦和大学教授)
島田 法子(日本女子大学教授)
野谷 文昭(立教大学教授)
阿部 珠理(アメリカ研究所所長・立教大学教授)
司会: 三浦 雅弘(立教大学教授)

 

報告

 岩本裕子氏は、「アフリカン・アメリカンを手がかりに」という副題を設け、アフリカ系アメリカ人の文化創造というテーマについて、黒人音楽を切り口に講演を行った。岩本氏は、黒人霊歌からゴスペル、ブルース、ジャズ、そしてソウルからヒップホップやラップへとつながる黒人音楽の歴史を、最新映画やミュージカル、ヴィデオ映像を用いて検討した。その中で、アメリカ黒人にとって音楽とは「魂の歌」であり、「心の叫び」であることを確認し、その歴史や事実を踏まえて、黒人音楽を楽しむ必要性を提起した。

 「日本人移民とハワイ仏教」と題された島田法子氏による講演では、仏教を日本人の移民文化、日系アメリカ人の仏教信仰の諸相における文化創造について議論がなされた。島田氏は、19世紀から20世紀初頭にかけてハワイへ移住した日本人のコミュニティにおいて、日本人アイデンティティの基盤としての仏教が移植され、さらに仏教がハワイという新たな環境に適応するプロセスで徐々に変容し、ハワイ的仏教が誕生したことを指摘した。この過程の中で、マイノリティ文化の柔軟性が明らかにされた。

 野谷文昭氏は、ヒスパニック系、主にチカーノ(メキシコ系アメリカ人)の文化創造をテーマに講演を行った。野谷氏は、チカーノの文学作品を例に出し、そこから読み解ける彼らのアイデンティティについて、チカーノ運動(モビミエント)の展開にも触れながら、明らかにした。また、チカーノ文学をキャノンという縛りから逃れている、未来へつながる文学と位置づけ、彼らの「ハイブリディティ」という可能性を指摘した。

 阿部珠理氏は、「アメリカ・インディアン・アイデンティティと文化創造」について講演を行った。阿部氏は、部族民としてのアイデンティティを重要視していたアメリカ先住民が、異文化との接触を通して汎インディアン意識に目覚め、軍事的、政治的のみならず、精神的なつながりを核として汎インディアン意識が強化されたことを論じた。さらに、その精神性や神聖性が世俗化していく過程を指摘し、部族の垣根を越えた「汎インディアン文化」が創造されたことを具体的に検討した。

 シンポジウム後は、学内外の学生を中心に、教員、研究者など多数の参加者と講演者との間で活発な質疑応答が行われた。この場で、講演者および参加者の方々に感謝の意を伝えたい。

奥村理央

アメリカ研究所

『立教アメリカン・スタディーズ』第25号(5-6頁)より転載

参加者の声

 黒人問題に大変興味があり、黒人の歴史について勉強しています。黒人のことを勉強する上で、マイノリティについて考える機会が増えたので、今回のシンポジウムに参加しました。一口にマイノリティと言っても文化的、社会的背景の異なる人たちがたくさんいて、もっと勉強してみたいと思いました。また、マイノリティについて知ることで、ヒスパニックやネイティヴ・アメリカン、アフリカン・アメリカンに対する見方も変わると思う。

立教大学法学部

 難しいお話が続いたのですが、その中でも一番親しみが持て、分かりやすかったのが、黒人音楽の話です。私は特にラップやヒップホップが好きというわけではないのですが、やはりラップやヒップホップなどのノリのいい音楽を聞くのは楽しいと思うし、日本人の間にもそれらの音楽が広まってきていることも、違和感なく受け止めていました。しかし、アフリカン・アメリカンにとって音楽とは「魂の歌」であり、彼らがマイノリティであったからこそ、彼らの「心の叫び」がつまった歌は世界に広まったのではないかと思いました。その黒人史を知らないままに黒人音楽を歌う日本人の歌にはまだ「魂」はこもっていないような気がしました。私も黒人史をよく知り、改めて黒人音楽を聞いてみたいと思いました。

立教大学文学部心理学科1年

 私は、アメリカにおけるマイノリティがどのようなものがあり、どのような現状にあるのか知識のないまま、マイノリティと文化創造というタイトルに惹かれて、シンポジウムに参加してみることにしました。今回のシンポジウムでは、どのようなマイノリティがアメリカにいるのか、そしてマイノリティという立場から、各々のスタンスから生まれてくる多様である(対立から寛容な方向へ向かう)人間の感情の動きを知ることができた気がします。

学習院大学

 今日初めてヒスパニック、日系、ネイティヴ・アメリカンの歴史や文化などを知りました。アメリカ史を勉強しても西洋の民族からの視点で学ぶ事しか知らなかったけど、アメリカは多民族国家であるのだから、いろいろな民族の視点から見ると、アメリカをより深く理解できると思いました。今日はとても身になるお話を聞けて、大変よかったです。

青山学院女子短期大学

 一言でマイノリティといっても、何をマジョリティにするかでかわってくるという意識が芽生えた。諸先生方のお話を聞いて、今まで知らなかった世界に触れられました。とても貴重なお話ありがとうございました。

青山学院女子短期大学

 今回、諸先生のお話を聞いて、音楽、宗教など、身近な「文化」を通しても、アメリカのマイノリティを知ることに繋がることに気づき、また、驚いた。ネイティヴの文化的変遷のお話は、更に興味を覚えた。

早稲田大学

アンケートへのご協力、ありがとうございました。


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