2022/05/25 (WED)

【資料紹介】「鶴見良行文庫追加分」について

共生社会研究センター リサーチ・アシスタント
立教大学文学研究科研修生 安藤直之

「鶴見良行文庫追加分」とは

 現在、私が担当しているのは「S09a_鶴見良行文庫追加分」という資料群です。
 本資料群は、鶴見良行氏の妻千代子氏が亡くなられた後、藤林泰氏を通じて、2017年3月に共生社会研究センターへと寄贈されたものです。なお、センターではすでに『鶴見良行文庫』を所存・公開しており、本資料群はその追加分です(段ボール6箱)。したがって、本資料群は鶴見良行氏に関する雑誌及び書籍といった刊行物や写真が含まれているもののあくまでも追加分であり、鶴見良行文庫の閲覧を希望される方は「鶴見良行文庫デジタルアーカイブ」 も是非ご確認ください。

 資料整理の主な手順としては、1.資料全体の概観、2.整理計画の作成、3.実際の資料の整理・保存、となります。こう書いてしまうと簡単に聞こえてしまいますが、実情はなかなか難しいです。資料の中には、個人情報保護の観点から公開できないものが紛れていたり、どこで撮影されたのかわからない写真が1枚だけひょっこり出てきたりして頭を悩ませます。作業開始から2年が経ち、ようやくほとんどの資料を整理することができました。
 本資料群の全体を概観し、資料の形態や性質から以下のシリーズに分類しました。

  ①鶴見良行調査資料Ⅰ[ノート・メモ]
  ②鶴見良行調査資料Ⅱ[写真・テープ]
  ③鶴見良行著作刊行物[書籍・雑誌]
  ④鶴見良行蔵書[冊子・書簡類]※書簡類は閲覧制限あり
  ⑤その他[鶴見千代子に関するもの・鶴見良行死後に収集されたもの]


『ナマコの眼』を辿る

ファイル番号S09a_10119「『ナマコの眼』原稿」

 資料の中で今回取り上げたいのが自筆資料です。自筆資料と言うと主に文学研究において重視されています。もちろん歴史学研究においても日記資料など重視されますが、そうした資料が活字となっている場合、自筆かどうかはあまり問題ではないようです。しかしながら、あえてここで自筆資料を取りあげてみたいと思います。
 たとえば、氏の代表作の一つでもある『ナマコの眼』(筑摩書房、1990年)について、自筆で書かれた原稿が残されています(「『ナマコの眼』原稿」ファイル番号S09a_10119)。写真ではわかりづらいかもしれませんが、用紙の上にもう一枚用紙が貼られ、書き直されています。熟考に熟考を重ねられた跡。読みやすく丁寧に記された文字。鶴見氏の著作の過程をこうして窺えるのは自筆資料ならではだと思います。

ファイル番号S09a_10289「ナマコの眼」

 こうした自筆原稿に関連して、もう一つ紹介したい資料は、著作に用いられた写真です。赤いファイルの中には前掲した『ナマコの眼』で用いられた写真が収納されており、数字は著作において実際に掲載されているページを示しています(「ナマコの眼」ファイル番号S09a_10289)。鶴見氏の見ていた世界が(レンズ越しに)写されている。その場所々々での温度や湿度といった空気感が伝わってくるような、耳をすませば異国の言葉が聞こえてくるような感じがする。ですので、写真を見るたびについ手が止まってしまい、作業が中々進みません。これら写真のいくつかは前述した「鶴見良行文庫デジタルアーカイブ」でも確認することができます。

 原稿にせよ、写真にせよ、内容についてここで詳しく説明することはできません。ぜひご自分の目でご確認ください!
 少しでも興味を持たれた方はセンターまでお気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ

立教大学共生社会研究センター

電話: 03-3985-4457
FAX: 03-3985-4458
Eメール: kyousei@rikkyo.ac.jp

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