2020/05/02 (SAT)

「アーキビストとCOVID-19に関するアンケート」結果報告(4)

自由意見とまとめ

いよいよ最終回です。長々しい文章をここまで読んでくださった方、そしてアンケートにご協力くださった方に心から御礼申し上げます。また、ご協力くださった方で、Googleが作ってくれたスプレッドシートをご覧になりたい方とは共有できればと思います。お気軽にkyousei@rikkyo.ac.jpまでご連絡ください。

Q7. その他、なにかお考えのこと、気になっていること、よいアイディアなどがあればなんでも教えてください!

この質問は、スタートしてから数日後に追加したため、初期に回答してくださった方にはご記入いただけませんでした。中にはとてもたくさん書いてくださった方もいらしたので、回答1件ごとではなく、内容で「・」を打ちました。
いろいろなアイディアが示されています。ぜひご参考になさってください。


【公文書館】(5)

  • 公文書館は「不急」ではあっても「不要」ではない。また、地方公文書館の場合、図書館、博物館のような混雑の現出は通常あり得ない。ただ、感染症対応の難しさを考えると、講座・講演会の延期、企画展の延期、閲覧の事前予約制などの対策は検討せざるをえない。この結果、(何が公文書の行政評価に成るか?)活動成果、実績をどのように把握するかは課題のひとつとなる。デジタルアーカイブが進んでいる館は、その部分の活性化で利用者対応の維持なり変則的対応ができるかもしれない。
  • 休館中は資料整理や組織の記録管理の課題確認などの時間に振替えて、内部的活動の進捗を図る良い機会でもある。対外的活動ではなく対内的活動に軸足を移すといったことは積極的に考えられてよい。
  • 最も懸念することは、経済状況の悪化。次年度以降、自治体歳入の悪化は必至。住民の経済生活維持、感染症対策等に財政が偏重すること(これ自体は当然の事態)が予想され、予算や人員の削減が館事業に影響を与えることは間違いない。このあたりのことも視野に入れておく必要がある。
  • コロナ禍対応の記録保存として、つぎのようなことが挙げられる。①庁内イントラで回覧されている関係文書の逐次保存②新たに新型コロナ対策の文書フォルダを設けて、保存期間3年以上とし収納を指示、保存期間満了後に収集可能とする。③施設休業の様子等の撮影などがある。
  • これまで閲覧テーブルや職員の事務机、作業テーブルの定期的な拭き掃除(除菌)が行われていなかったことから、通常勤務が再開したのちに、毎日の日常業務として組み込むよう提案したいと考えています。
  • 立場からすると、在宅勤務用の作業を用意することが難しかった。主に物理的な資料(紙文書)を取り扱う公文書館であるため、山盛りの仕事が蓄積されているのは事実であるが、在宅勤務用の仕事は比較的に優先度の低い作業であるため、在宅勤務中の成果物が今後の文書館運営・利用者便宜に役に立つかどうかすぐに把握しにくい。在宅勤務をさせるしかないから、無理やりなんとか仕事を作っている面もあるが、なるべく将来的に「使える」もの、作業者(特に、大学院生等)にも役に立つ仕事ができればと考えている。この体制が長く続くのであれば、さらにどのような仕事を付与しなかえればならないか、悩むところでもある。
  • 大学全体から見ると、毎年行われている(法律で決まっている)保存期間満了予定の法人文書移送・廃棄作業ができないのではと。技術的に1年、2年見送らせることも可能ではあるが、その後の文書館体制にも影響が出るだろうし、社会的には情報公開・公文書館文書閲覧体制にも何らかの影響が出るのでは、と思われる。
  • Q5などは、いろいろなご指摘を受けて備えたものですが、これで大丈夫なのか、不安いっぱいです。一番求めているのが他館の情報、取組ですので、アンケート共有いただけるのは本当にありがたく、感謝しています。皆さまのお知恵を拝借できればと思っています。どうぞよろしくお願い申し上げます。
  • Youtube、Zoom等の活用を検討中。しかし、講座やトークイベント、ボランティア等で集まることができなくなった代替策は、なかなか見いだせないでいる。よいアイディアや試行錯誤の事例を情報交換したい。


【学校・大学など】(6)

  • 資料の閲覧希望が止まっていますが、研究が止まっているのか気になるところです。
  • 来館せずに対応できる資料が少ないので、利用者が不自由をされているのではないかと心配しております。"
  • 国立公文書館等指定を受けている館のため、特定歴史公文書等へのアクセスは国民の権利でもある。今後はどのような事態の場合にどの程度サービス停止が認められるのか、といった議論が必要になると感じた。
  • 機関で働く人(正規、非正規)の雇用の今後についてが気になります。
  • 今回、緊急事態宣言後、一番に取り組んだのは、アルバイト雇用者の生活を守っていくことでした。そのため大学にお願いし、テレワークでも可としていただきました。そのため提出する書類、出勤管理など多岐にわたることになりました。しかし、こうした目に見えないことが、資料整理には大事なことではないかと考えています。
  • コロナについては福島の事故の時の放射能と同じように、個人ごとに反応が違います。かかりやすい人、ちょっとでも怖いという人、疫学的根拠のない対応には疑問を持っている人、などなど。しかし、どのようにしたら開館できるか考えるべきと思っています。
  • アーカイブズ関係者間のウェブ交流会(ネット飲み会もありかも)とか、日本のアーキビストはこんな人たち!みたいな感じで動画公開ラリーみたいなのができると面白いかもとか思ったりします😊(^∇^)


【企業など民間団体】(4)

  • 「不要不急」という言葉はパワーワードだなと感じています。
  • 人の命を守るための外出以外のことは控えるべき今、機関としてのアーカイブズ(そしてすべての資料保存機関)に行くことは(研究者などのニーズは重々承知していますが)急がなくてもよいかもしれません。しかし、この経験をこの先の社会にいかに活かしていくかを考えていく際にアーカイフズは必要な機関です。
    感染がある程度落ち着いた後にでも、機関としてのアーカイブズ(とすべての資料保存機関)の必要性を皆で発信できるとよいなと思います。
  • 今の状況の中、デジタル技術を用いて資料の情報などを発信をされている方々は本当にすごいと思います。そのことに敬意を払いつつ、感染がある程度落ち着いて来館利用が再開できた頃ぐらいに、アーカイブズ資料に直接ふれる意義も示していけるとよいなと思います。紙の質感や資料の構造などから気づくことも沢山あるのがアーカイブズ資料なので。
    完全在宅となり、職場に残されているデータ化されていない書類たちが気になって仕方ないです。あと他社さんのアーカイブ業務が気になっています。
  • 欧州ではコロナ禍の発生初期から、美術館・博物館を閉館し、ウェブ上での資料公開を充実させていたと聞いております。現物資料を直に閲覧することの意義はもちろん存じておりますが、今回のような外出できない状況でのアクセスビリティの向上は、常に意識しておく必要があると改めて感じさせられました。
  • 良いアイデアを教えてください!


【フリーランス等】(3)

  • アーカイブズ、アーキビストがもっとSNSで情報発信することがあってもいいのでは、と思う。
  • 最近アルコール消毒に手荒れを感じるようになりました。
  • 図書館が放置、時間消毒と言っているのがいい考えと思いました。
  • お互いに情報交換できる場をあればいいな、と思います。
  • 遠隔利用=希望の資料をPDF等で提供していただければとってもありがたい、というのが利用者としてのお願いです。その際はレファレンスの充実も。(エル・ライブラリーの図書DVDの郵送貸出、韓国の民主化運動記念館や米国のクリーブランド大学図書館スペシャルコレクションの事例)
  • このままだと真っ先に予算を削られそうですから、アーカイブズがいかに必要かつ重要(エッセンシャル)であるか、をアピールしていきましょう!"
  • 全世界で同じ課題に向き合っているという一体感があり、それぞれが工夫をしていることを学びとることができている。


【その他】(2)

  • 当館には県外からの来館者も多くいらっしゃいますので、開館の判断は非常に難しいと感じています。
  • 在宅勤務の進展によって、中長期的には意思決定のあり方が変わりそう。
  • Slackのようなデジタルツールで組織の決め事を行うとき、これが議事録代わりになると思いましたが、そうした記録の保存が、サイトを運営する企業の都合(急な倒産や基本使用料の値上げなど)に左右されないか気がかりでした。
  • 電子化/デジタル化対応の必要性を再認識。
  • こうした時勢なので、新規企画を進められない→過去の資料やコンテンツを再利用→過去コンテンツへのネットアクセス数がむしろ以前より大幅に伸びている、と聞きました。

まとめ(のようなもの)

たいへん拙いアンケートの拙い報告をここまで読んでいただき、ほんとうにありがとうございます。
中途半端な試みでしたが、今後本格的にどなたかが調査されるときに、失敗例としてでも参考になればとてもうれしく思います。

今回のアンケートで、回答の評価を難しくしてしまったのが、回答者の立ち位置が「一アーキビストとして」と「機関として」の2つに分かれてしまったことです。その点をもっと明確にしてアンケートを作ればよかったと反省しております。とはいえ、機関としてフォーマルに回答するにはやはりそれなりの手続きが必要ですから、機関を対象とした悉皆調査を、全史料協のような団体に期待したいところです。

東日本大震災直後と同様、この間、saveMLAKが活発に活動しています。COVID-19対応のページも日々充実してきているようですが、残念なことにアーカイブズからの情報はまだ一つもありません。参加経験のある方から、ぜひ多くのアーキビストに参加を呼びかけていただければと思います。

みなさまからいただいたご回答を読んで、いちばんこたえたのは、やはり「不要不急」ということばにまつわる点でした。私の職場は研究機関内部の収集アーカイブズですから、確かに、開いていなければ人命にかかわるわけではありません。そういう意味では、回答者のお一人が書いてくださったように、「不急」ではある。でももし、「9月提出の論文の仕上げに入っていてセンター資料を使いたい」という人がいたら?と考えてしまいます。そう思うと、もっと早くいろいろと準備しておけばよかったと、後悔の念にかられます。

この現状を、「アーカイブズへのアクセスは人々にとって(全ての人々ではないとしても)不要でも不急でもない」ということを訴えるチャンスに変えることができたらいいのですが。回答にもありましたが、それができないと、予算も雇用も守れるのか?と思わざるを得ません。ICAも6月の国際アーカイブズ週間に向けていろいろな取り組みをしていくようですし、日本からもそうした動きに参加したり、小さいことでもとりあえずやってみたりして、その経験を共有し、議論し、何か効果的なやり方を探していきたいものです。

このつたないアンケートが、そのための踏み台になることを願っております。
ご協力、ほんとうにありがとうございました。

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