OBJECTIVE.
今回、東京学芸大学のFerjani Ali准教授、BioMeca, ENS de LyonのPascale Milani博士並びにGaël Runel氏、立教大学の堀口吾朗教授、ENS de Lyon のOlivier Hamant教授、熊本大学の澤進一郎教授および東京大学の塚谷裕一教授らの研究グループは、茎が器官として一体となった構造を維持する仕組みについて研究しました。そして、組織張力の理論から、重要なのは表皮組織であると考え、この問題に取り組んだ結果、丈夫な表皮が茎の内圧を受け止めるタガであることを明確に示すことに成功しました。今回の研究成果は、国際誌DEVELOPMENT誌(オンライン版)に2月26日午後12:00(グリニッジ標準時)付で掲載されました。また掲載号中の注目すべき論文として「Research Highlight」で紹介されているほか、掲載号の表紙を飾りました。
発表者
浅岡 真理子(元東京学芸大学 研究員 現ENS de Lyon海外学振特別研究員)
大江 真央(元東京学芸大学 修士課程2年 現企業勤務)
郡司 玄(東京学芸大学 研究員)
Milani Pascale(BioMeca, ENS de Lyon)
Runel Gaël(BioMeca, ENS de Lyon)
堀口 吾朗(立教大学理学部生命理学科 教授)
Hamant Olivier(Université de Lyon, ENS de Lyon / 熊本大学 IROAST)
澤 進一郎(熊本大学大学院先端科学研究部 教授 / 熊本大学 IROAST)
塚谷 裕一(東京大学大学院理学系研究科 生物科学専攻 教授)
研究の背景

図1 (上)clv3 det3二重変異体の茎に生じた亀裂。播種後1ヶ月間の植物体の写真。白い矢尻は亀裂を示す。スケール:5mm。(下)亀裂が発生した後のclv3 det3二重変異体の茎の横断切片の顕微鏡画像。スケール:500µm。
研究の成果

図2 木造建築物への応用の一例。合成柱は東大寺など300年も前から既に利用されている手法ですが、今回の知見により強さや厚さの違う捌木(さばき)を層状にして、より太く丈夫な柱を作ることが考えられます。このことは、地震大国である我が国のあらゆる建築物における耐震補強技術の幅を広げる可能性を秘めています。
- (注1)植物自身が作り出し、低濃度で自身の生理活性・情報伝達を調節する機能を有する物質で、植物に普遍的に存在し、その化学的本体と生理作用とが明らかにされているもの。
- (注2)植物ホルモンの一種で、ステロイド骨格をもつ化合物の一群。植物体全身の伸長成長、細胞分裂と増殖、種子の発芽などを促進する。
- (注3)植物ホルモンの一種で、一般的には生長を阻害し、花芽形成も抑制する。また、果実の「色づき」「軟化」といった成熟にも関与している。
- (注4)茎頂分裂組織の中心には未分化な状態に維持された幹細胞が存在し、この幹細胞の一部が分化することで器官原基が順次形成されていくことから、地上部の組織は全てこの茎頂の幹細胞に由来するということになる。
発表雑誌
論文タイトル
Stem integrity in Arabidopsis thaliana requires a load-bearing epidermis「シロイヌナズナの茎の整合性の維持を表皮が担う」