カリキュラム・担当教員司書課程

カリキュラムの特徴

図書館法施行規則に定められる司書資格取得に必要な最低単位数は24単位です。一方で、本学は図書館司書コースで32単位を求めています。また、学校図書館司書教諭講習規程に定められる学校図書館司書教諭資格取得に必要な最低単位数は10単位ですが、本学は学校図書館司書教諭コースで16単位を求めています。日本の大学に置かれる司書課程の中で、本学は最も多くの単位を求めているグループに入ります。これは、カリキュラムの充実を意味するでしょう。

カリキュラムの構成と望ましい履修の流れ

大学の学修は一般に、概論→各論→演習の流れで学んでいく原則になっています。各科目に付けられているナンバリングにも注目してください。立教大学の科目ナンバリングで言うと、概論科目は1000番台になっています。各論科目は2000番台、演習科目は3000番台、総まとめにあたる「図書館実習」と「図書館総合演習」は4000番台です。講座科目のナンバリングについては『学校社会教育講座2022年度履修要項』p.17-18で説明しています。
しかしながら、司書資格・司書教諭資格は、大学卒であることが条件ですので、学部学生は、次に述べる望ましい履修の流れを頭に入れながらも、所属する学部の時間割と合わせて、大学卒業と司書課程修了の両方が実現するよう、履修を計画してください。その際、本学は、司書課程の全必修科目の履修が必ず、4年間のうちに終わるということを、全学部の時間割と調整して保証することはしていない点に注意してください。もし、時間割作成についての悩みが生じた場合は、早めに学校・社会教育講座事務室か司書課程主任のところに相談にいらしてください。
また、本ウェブページで案内している内容は、変更されることがあります。在学生は、その年度の履修要項に書かれていることと掲示板で告知されていることが決定事項ですので、注意してください。

図書館司書コース

図書館司書コースの望ましい履修モデルは以下のとおりです。
必修科目(14科目28単位)
※ 「情報サービス演習」、「情報検索演習」、「メタデータ演習」、「情報アーキテクチャ演習」の4科目は少人数指導のために2クラスずつ開講。毎年6月に履修希望届を出し、履修許可者を決定する手続きがある。また、「図書館実習」も前年度の秋に登録希望の申し出を行なうこととなっている。
履修可能な選択科目(6科目から2科目4単位を選択履修)
任意科目(さらに学習を深めるために自由に選択、履修することができる)
※ ◎付き科目は、「図書館実習」を登録する前年度までに履修し単位を修得しておくことが求められる「先修科目」である。〇付き科目は、実習に行く年の春学期までに、実習先の希望館種に合わせて、履修していることを求める「準先修科目」である。ただし、「児童サービス論」は公共図書館での実習を希望する者のみ、「学校経営と学校図書館」は学校図書館での実習を希望する者のみにとって、準専修科目となる。

【NEW】ルーブリック(学習達成度指標)

各科目の学習の目標や達成度の指標を一覧できます。

学校図書館司書教諭コース

学校図書館司書教諭コースの望ましい履修モデルは以下のとおりです。
同コースでは独自に設置される(図書館司書コースとの共通科目ではない)科目のうち、「学校経営と学校図書館」が概論にあたる科目です。総まとめにあたるのが「学習指導と学校図書館」です。この2科目の履修順序はなるべく反対にしないようにしてください。

必修科目(8科目16単位)

任意科目(さらに学習を深めるために自由に選択、履修することができる)
※ ◎付き科目は、「図書館実習」を登録する前年度までに履修し単位を修得しておくことが求められる「先修科目」である。

講座科目のナンバリングについては『学校社会教育講座2020年度履修要項』p.19-20で説明しています。

【NEW】ルーブリック(学習達成度指標)

各科目の学習の目標や達成度の指標を一覧できます。

図書館実習(国内/国際)

立教大学の司書課程の図書館実習は、歴史的に、必修科目となっています。約2週間の現場実習と、事前2回と事後1回の指導で構成されています。 文部科学省が定める司書資格取得に必要な科目群と本学の図書館司書コースの設置科目群のおそらく最も大きな違いは、「図書館実習」が選択科目であるか必修科目であるかです。本学では、伝統的に、「図書館実習」を修めなければ、司書課程修了者として認めず、修了証を発行することもしていません。しかし、「図書館実習」は、図書館法施行規則の定めでは必修ではありませんので、実習に行かなくとも、同文部科学省令に定められるとおりの科目・単位を修めれば、国の定める司書資格の保持者ではあり、履歴書にも「司書資格取得」の旨を記載することができます。このあたりのことは、司書課程の履修を進める中で、よく理解していただきたいですし、最終的に、実習に行くか行かないかは学生一人ひとりが決断することになります。ただし、「図書館実習」は、本学では、国内の各種図書館だけでなく、国外(香港など)での主として英語による実習もできることになっているなど、大変充実していますので、よく考えて決断してください。 本学では、図書館司書コースだけでなく、学校図書館司書教諭コースの履修生も、図書館実習に行くことができます。このようなカリキュラムは国内では大変めずらしく、本学の司書課程がいかに「図書館実習」を重視しているかをここからも理解できるでしょう。 図書館実習に行くには、前年度までに、定められた先修科目を履修し単位を修得しておくことが必要です。先修科目の定めについては、カリキュラムのページをご覧ください。

担当教員(2024年度)

専任教員

中村 百合子教授(Yuriko NAKAMURA, Professor)
担当科目:「図書館概論」「学校経営と学校図書館」「図書館情報資源特論」「図書館総合演習」「図書館実習」
中村 百合子

博士論文執筆のころ。米イリノイ州のアメリカ図書館協会文書館 (American Library Association Archives)にて

司書課程主任の中村百合子です。私はアメリカ合衆国と日本の学校図書館、簡単に言いますと小中高の学校に置かれる図書館(室)の歴史を、両国の比較という視点をもちながら、検討しています。
私の授業では、大きな教室でも小さな教室でも、そこにいるみなの知的“探究”の場となるよう、心がけています。また、本学司書課程のカリキュラムのベースにある図書館情報学は学(science)でありますが、そのルーツにあるライブラリアンシップ(librarianship)の実践・思想を私は大切に思っていますので、その両方をみなさんに伝えたいと願っています。情報共有(information sharing)の実現という、図書館情報専門職の使命について深く考え、その実現に貢献することのできるようになってほしいと思い、日々、学生さんたちと向き合っています。
私は、立教大学大学院文学研究科教育学専攻でも教えています。学校図書館について、大学院で研究したいという方との出会いも楽しみにしています。

図書館司書コース兼任講師(五十音順)

青栁 啓子(Keiko AOYAGI)/甲州市立勝沼図書館
担当科目:「児童サービス論」
青栁 啓子

八ヶ岳小さな絵本美術館にて

私は、山梨県甲州市立勝沼図書館で司書をしています。図書館では年間を通じて、イベント、おはなし会、学校連携事業等、様々な児童サービスを行っており、そこで日々子どもたちと接している経験を基にこの講義をすすめます。
私は特に読書教育としてのアニマシオンに興味を持っていて、図書館や小学校で実践しています。スペインで生まれた読書へのアニマシオンは、上から知識を教えられるのではなく、グループ活動を通じて一人一人が主体的に学ぶ考えが土台になっている優れた読書教育メソッドです。この考え方をもとに、授業では受講生が自ら学ぶ姿勢を尊重して、グループワークを多く取り入れます。
誰でも無料で使える公共図書館は、どの人の人生をも豊かにしてくれる素晴らしい装置です。将来の文化の担い手になる子どもたちに、読書の魅力を伝えること、生涯にわたって図書館利用者になるよう働きかけることは、未来の社会をよりよくすることにつながるはずです。これからの理想的な児童サービスについて、いっしょに考えましょう。
安藤 幸央(Yukio ANDOH)/株式会社エクサ
担当科目:「情報アーキテクチャ演習」
安藤 幸央

2018年、東京国際フォーラム前にて

私は、UX(User Experience/使う人の体験の設計)を専門としており、演習では情報設計(IA: Information Architecture)を中心とした大量の情報を整理する手法を皆さんが会得することを目標としています。
ある調査によると、ひとりの人間が処理できる情報量は変わっていないのに、世の中に出回っている情報は10年前と比べて410倍になっているとも言われます。整理された情報は、人の記憶、判断に重要な影響を及ぼします。
「情報設計」は、図書館や書籍だけの世界にとどまらず、スマートフォンアプリの企画、ショッピングモールの店舗配置、大規模Webサイトの設計、取り扱い説明書や事典などの内容、駅の案内といった多岐にわたった専門的な分野で活用が期待されます。
本演習では皆さんが、知識と実践力、手法を会得し、様々な事象に役立てられるよう尽力したいと考えております。
市古 みどり(Midori ICHIKO)
担当科目:「図書館情報資源特論」
市古 みどり

「TEMPUS FUGIT」と刻まれた慶應義塾図書館旧館大時計前にて

慶應義塾大学の図書館で長い間働いてきました。図書館への思いの深まりは医学図書館での経験によるもので、今でもこの13年間に感謝しています。図書館は、インターネット前・後で大きく変わりました。まさにその変化の中で医学情報の提供に取り組んでいたため、さまざまなことを考える機会に恵まれました。
情報を集め、整理し、提供する、この図書館の役割を果たすためには、基本的な知識・技術をしっかり身につけることが大切だと思います。一方、図書館の機能はというと、その時々の環境や、財政状況、さまざまな利用者のニーズによって変化するため、基本的な知識・技術に+αが必要ではないかと感じています。授業では、その大学図書館の+αを皆さんと検討したいと考えています。
蛇足ですが、私の好きなものは、水泳、ゴルフ、太極拳、犬、お寿司(ヒカリモノ)、醤油ラーメン、コーヒー、ビールです。
小黒 浩司(Koji OGURO)/作新学院大学
担当科目:「図書・図書館史」
小黒 浩司

メーザーライブラリー記念館(立教大学図書館旧本館・1919年落成)前にて

わたくしは主に図書館の歴史を探求しています。図書館の歴史といっても、じつに様々な切り口があり、いまは図書館の統制・検閲の歴史や、図書館で使われてきたモノと図書館を利用した、あるいは図書館で奮闘してきたヒトの歴史を中心に研究中です。
立教大学司書課程では「図書・図書館史」という科目を担当しています。図書などのメディアと図書館の歴史に関心を持ち、これからの図書館のことを考えるための基礎となれば嬉しく思います。
片山 信子(Nobuko KATAYAMA)
担当科目:「図書館実習」
片山 信子
図書館実習を担当する片山信子です。35年間余り務めた国立国会図書館を昨年退職しました。若手・中堅時代は国会議員のための調査サービスに従事し、管理職になってからは主に来館利用者サービスや電子図書館サービスそして館のデジタルシフトのためのマネジメントに従事しました。

学生時代、私が就職先として国会図書館を選んだのは、人が知りたい情報や文献を探すのをサポートすることは素敵だ、と思ったからです。しかし、当時、情報通信技術が情報メディアとコンテンツをこんなに変貌させるとは全く想像できませんでした。

誰もが簡単に探せる情報で十分なのか。客観的で信頼性の高い情報や面白い文献はどうすれば探せるのか。そのためには国会図書館は情報基盤と提供手段をどう整えればよいのか。色んな仕事をしつつも、このことをいつも念頭に置いていたように思います。

そして、いま感じているのは、著者、出版社、書店、情報メディアを大切にしたいということです。私たちの豊かな出版文化をこれからも享受する上で、図書館と図書館員そして私たちは何ができるでしょうか。期せずして、NHK大河は、今年が紫式部、来年が蔦谷重三郎(江戸時代の版元)です。皆さんと色んなことを考え、議論することを楽しみにしております。
金 甫榮(Boyoung KIM)/公益財団法人渋沢栄一記念財団
担当科目:「アーカイブズ概論」
金甫榮

2019年秋、オーストリアにて

私は、アーカイブズ学を専門とし、アーキビストとして仕事をしながら電子記録の長期保存と利用に関して研究しています。アーカイブズ学は、人類の活動記録をどのように後世へ継承するかを探求する学問ですが、古文書のような古い歴史資料について学ぶことを想像する方が多いのではないでしょうか。しかし、諸外国においてアーカイブズ学を専門としているアーキビストは、図書館情報学の大学院課程で養成されることが多い情報専門職です。また、アーカイブズに関連する分野は、歴史だけではなく社会や科学、情報、経営、法律、教育など幅広く、そこには学際的な研究と学びのテーマが沢山存在しています。特に、図書館また博物館とは密接に関連している分野ですので、司書課程のみなさんには、ぜひ学んでいただきたいと思います。
棚橋 佳子(Yoshiko TANAHASHI)/東京農業大学
担当科目:「図書館制度・経営論」
棚橋 佳子

2016年、トムソン・ロイター社にて

私は、図書館サービスの実務(学校図書館、企業の専門図書館、大学図書館、海外の専門図書館等)を10年以上経験した後、情報の提供側として、科学技術情報を扱う外資系のデータベース製作&情報分析の会社に勤務し、営業と経営に携わり、学術情報や特許などの知的財産情報、創薬のためのライフサイエンス情報を扱ってきました。そこで、多くの大学図書館や企業の専門図書館・情報センターを通して、情報を必要とするエンドユーザに情報を提供してきました。そうした経験を交えながら、“情報獲得“”情報共有“が必要とされる場において、司書職として学ぶプロフェッショナルな視点がいかに重要かを皆さんにお伝えしたいと思います。
「図書館制度・経営論」の授業では、図書館の活動を事業とみなして、図書館のエコシステム、知識経営のエコシステムの仕組みと課題について、制度・経営論の観点から理解を深めていきます。情報獲得や情報共有実現が社会の発展にいかに寄与するか、現代の“図書館”をどのように導いていくと良いのか、いっしょに考えていきたいと思っています。
鴇田 拓哉(Takuya TOKITA)/共立女子大学
担当科目:「メタデータ演習」
皆さんが図書館で資料を探す際に、探したい資料がすでに決まっているときもあれば、特に決まっておらず、どのような資料があるのかさえわからないといったときもあると思います。このようないろいろなケースに対応するために、探している資料が決まっている場合は探している資料を、探したい資料が決まっていない場合は利用者にとって役に立つ(と思われる)資料を提示する仕組みが、私が関心を持っている「情報資源組織」という領域です。
残念なことに、情報資源組織にかかわる作業の様子を図書館に行っても見ることができないので、どのようなものかイメージできないと思います。しかし、皆さんは日常生活の中で、情報資源組織にかかわる作業の成果物に出会っていますし、知らないうちに利用しています。
では、情報資源にかかわる作業の成果物とは何でしょうか。また、上で述べた資料を提示する仕組みとはどのようなものなのでしょうか。皆さんにとってとても不思議な(?)存在である情報資源組織について、身近な例をあげながら説明していきたいと考えています。立教のキャンパスで皆さんにお会いして、この話の続きができることをとても楽しみにしています。
中島 玲子(Reiko NAKAJIMA)
担当科目:「図書館情報技術論」
「図書館情報技術論」は、図書館における情報技術の理論や実践に関する科目です。高度情報社会と言われる現在、もはや図書館は「図書の館」ではなくなっています。印刷メディアも電子メディアも含め、図書館の内外の資料を時間に空間を越えてアクセスできる情報拠点です。

本講義では、図書館や情報機関における情報の収集、整理、保存、検索、提供などのプロセスに関わる技術的な側面や問題に焦点を当てます。具体的には、データベースの構築や管理、情報検索システムの開発、デジタルアーカイブの構築と維持、ネットワーク技術の活用、情報セキュリティなどが含まれます。私は文学部出身ですが、ずっとコンピュータと関わる仕事をしてきました。受講生の皆さんには、知っているようで知らないコンピュータの基礎から、情報活用、情報社会の安全な歩き方も、分かりやすくお伝えできればと思っています。。
中村 佳史(Yoshifumi NAKAMURA)/株式会社HUMIコンサルティング
担当科目:「図書館サービス概論」
中村 佳史
「図書館サービス概論」を担当します中村佳史です。
「概論」ですので、図書館サービス全般について取上げます。図書館サービスは、資料や情報の提供、連携・協力、課題解決支援、障害者・高齢者・多文化サービス等の各種のサービス、著作権、接遇・コミュニケーションと多岐にわたります。それらを概観しつつも、それらのサービスがどのように提供されているか、どのように実現されているか、具体的な事例を提示しますので、そこから実践的な意識をもって学び、またこれからの「図書館サービス」のあり方を一緒に考える時間にしていきたいと思います。
私は、ミュージアムでの情報サービスや展示システムの構築、地域アーカイブを利活用した場の運営や企画を主な仕事にしています。図書館外から見た図書館、あるいは日常の生活のなかでこそ活かしたい司書の専門性という視点でも、皆さんに問題提起していきます。
図書館司書という職業は狭き門です。かりに司書という職業に就かなくとも、立教大学の司書課程で学んだ学生諸君が「国際的な視野をもつ情報スペシャリスト」として社会に羽ばたける基礎体力を身に付けるお手伝いができればと思っています。
中村 由香(Yuka NAKAMURA)/生協総合研究所
担当科目:「生涯学習概論(学・司)」
私は、社会教育や生涯学習と呼ばれる分野の研究をしています。この中でも特に、人が健やかな日常生活をおくるために欠かせない「社会的ネットワーク」に関心を持っています。私たちは他者—例えば、家族、友人、同僚、近所の人など—と社会関係を取り結び、他者とさまざまなサポートを授受しつつ、日常生活を送っています。しかし、あらゆる人が自分の望み通りのネットワークを築けるわけではありません。例えば、ネットワークを築けず孤立している人がいます。さらには、家族介護の負担が重すぎるなど、ネットワークのあることがかえって負担になって苦しむ人もいます。私は、社会的ネットワークの広さ、通時的変化などに着目しつつ、私たちが自分の望む形で社会的ネットワークを築くためにはどのような条件整備が必要なのか、社会教育や生涯学習がどのような役割を果たせるのかをテーマに、日々、研究を進めています。
この授業では、学校以外に多様な学習の場があり、学齢期のみならず壮年期、中年期、高齢期にいたるまで幅広い年齢層の人々がそこで学んでいることを取り上げます。また、それら学習の場がネットワークを築くための契機となっていることについてもお伝えします。この授業を通じて、受講生の皆さんとともに、より良い社会のあり方や教育のあり方について考えていけることを、とても楽しみにしています。
長谷川 優子(Yuuko HASEGAWA)
担当科目:「図書館情報資源概論」
長谷川 優子
「図書館情報資源概論」担当の長谷川優子です。私は学校司書としての着任から県立図書館副館長としての退職までの37年間、高校、医学図書館、県立図書館と多様な館種と立場で図書館に携わりました。

ビジネス支援では起業家とマーケティングデータベースで開業予定地を評価する。医師の治療方針検討に基礎資料のリストアップをする。探究学習では問いがみつからない高校生向けに新書の「点検読書」を行う。各館の様相は一見異なるようでも、ライフサイクル上の折々のニーズに応える司書の役割は一貫します。

利用者に学び、共に新しい視座から情報資源を発見し、利用者自身の大切な自己決定と自己肯定感に資する緊張と喜び。こんなに日々新鮮で面白い仕事はない。この司書の仕事の醍醐味を支える基盤は「情報資源」の深い理解に他なりません。実践知を織り交ぜながら、将来の後輩となる皆さんと共に、次世代の図書館へ投げかけられた大きな問い「司書の専門性とは何か」の解を求め続けたいと思います。
松山 巌(Iwao MATSUYAMA)/玉川大学
担当科目:「情報資源組織論」
松山 巌

玉川大学の旧図書館の前で

図書館の本棚に並んでいる本を見ると、背中にラベルが貼ってあり、そこに書かれた記号の順に並んでいます。この記号はどういう意味なのでしょうか。また、図書館の蔵書をパソコンで検索すると、それぞれの本についての情報(書誌情報)が出てきますが、これはどういうルールで作られているのでしょうか。こういったことが私の研究分野です。「情報資源の組織化」といいます。
また、韓国の図書館にも関心を持っています。日本のすぐ隣の国ですので、似通っているところも多くありますし、一方でいろいろと異なるところもあります。韓国の図書館を見ることで、日本の図書館にとっても、さまざまに学ぶ点があると考えています。
授業では、「なぜ?」という疑問を大切にしています。実際の図書館現場では、組織化は「一定のルールに従った作業」という形ですすめられますが、ルールの丸暗記ではなく、「このルールはなぜそういうふうに決められたのか」と考えてほしい。それによって、組織化というものへの理解が深まるとともに、〈ルールに書かれていない事態〉に対応する〈自分で判断する力〉も育つと考えるからです。
司書資格取得を目指す人の中には「本が好きなので」という人が多いのですが、ふだん書店や図書館に出かけたときに、文学作品(や図書館情報学)以外の本棚には行かない、というではなく、ぜひ、幅広い分野に目を向けてほしいですね。よく授業で言うのですが、「広く浅く、所々深く」。浅くていいのです。その上で、「これについては任せて」といえるような得意分野は何かしら持っていた方がいいでしょう。
趣味は、カラオケ、地図読みなど。好きなものは、辞典・事典、新聞の号外、計算尺、スコア(総譜)、クリスマスの音楽など。
山嵜 雅子(Masako YAMAZAKI)
担当科目:「生涯学習概論1」
私は、日本の近現代史にみられる人びとの自発的な教育・学習運動の実態解明を通して、自立した社会的主体(市民)がいかに形成されるかという問題を追究しています。そのなかでいつも痛感するのが、人びとの社会的形成に図書館が果たしてきた役割の大きさです。図書館は、情報を提供することによって、人びとの学びと成長を支える場です。司書は、その図書館で人びとの主体的な学習を支援する立場にあります。私が担当する「生涯学習概論」では、司書として図書館という社会教育施設の学習支援者になる可能性をもつ皆さんに、学習の意義と学習を可能にするための仕組みや方法について理解を深め、学習者の思いや実践に寄り添おうとする姿勢を養っていただきたいと思っています。またみなさん自身も、自分の人生のなかでさまざまな学習を重ね経験している生涯学習の当事者であることに気づいていただけたらと思います。ふだんあまり意識しないかもしれませんが、生涯学習や社会教育が身近なものであることを知っていただけたら幸いです。
山田 翔平(Shohei YAMADA )/東洋大学
担当科目:「情報サービス演習」
私は,「私たちはどのような知識環境に身を置き,どのような本と出会いうるか」という素朴な問いを土台としつつ,現在は大学図書館蔵書について研究しています。

今,「本」を話題に挙げましたが,大学図書館も含め図書館で利用可能な情報資源は本に限りません。多様な情報資源があります。私たちが日常的に活用する情報資源としてネットワーク情報資源がありますが,図書館もネットワーク情報資源を提供しており,その代表的なものとして各種のデータベースがあります。

「情報サービス演習」では,多様なデータベースから目的に合ったものを選択して,適切に検索するための知識とスキルを学びます。また,情報検索を可能にするものとして,生成AIも見逃すことができません。生成AIの進歩,普及はめまぐるしいスピードで進んでいますが,授業ではこのような最新の情報検索技術も視野に入れ,その長所と短所についても共に検討していきたいと思います。これからの社会を生き抜く上で有用な情報検索スキルを教授できるよう努めて参りますのでよろしくお願いします。
吉田 倫子(Michiko YOSHIDA)
担当科目:「情報サービス論」

西日暮里ブックアパートメントにて

私は元横浜市立図書館司書で、調査部門などで26年働いたあと、島根県・海士町の島前高校で非常勤の学校司書になりました。戻ってきて公共図書館の指定管理者を受ける中小企業に勤め、最後の年は図書館長となり2023年3月に退職しました。つまり、私の特徴その1は、公共図書館と学校図書館、正規・非正規・指定管理者と様々な立場を経験・実感していることです。

特徴その2は、開拓者であったことです。1994年にヤングアダルトサービス研究会を立ち上げ、横浜時代は公共図書館では初期の医療健康情報サービスや法情報サービスを立ち上げ、また、日本で初めてのレファレンスマンガ『夜明けの図書館』に司書として関わり、完結まで10年伴走を続けました(Library of the Year2021ライブラリアンシップ賞を受賞、マンガとしては初)。
 
どんなことも体験し、頭で知るより心で知りたいし、自ら始めなければ始まらないと、自分で動いてきました。そんな開拓者としての第一歩は、実は立教大学時代に始まりました。私は、社会学部社会学科の卒業生なのです。まさか自分が母校で講師をすることになるとは…数奇なご縁を感じつつ、精一杯努めます。

教室で皆さんとお会いできるのを楽しみにしています。

学校図書館司書教諭コース兼任講師(五十音順)

青山 比呂乃(Hirono AOYAMA)/東京ウエストインターナショナルスクール
担当科目:「学習指導と学校図書館」
青山 比呂乃

2018年春

私は、医学系の大学図書館で文献入手援助などを中心に司書として働いた後、インターナショナルスクールと共同利用している中高の学校図書館の司書教諭として、同僚の英語圏出身のlibrarianと共に図書館を運営し、様々な各教科の教員と共に幼小中高の生徒に授業をしてきました。
司書教諭は、アメリカではteacher librarianと呼ばれ、先生でもあるが、あくまで司書という専門家という存在です。教員集団の中の一員として、情報リテラシーの専門家=司書として、学校の繰り広げる教育活動・生徒の学習活動をどのようにサポート・指導していくのか、司書教諭は何をしたらよいのか、試行錯誤してきました。
その中で見えてきた司書教諭の働きについてお伝えし、学校における図書館・司書のあり方への理解を深めること、学校での働きのために必要な訓練をすることを第1に授業を進めたいと思います。具体的には、図書館資料を使ったリサーチ・スキル教育の演習(生徒としてレポートやプレゼン作成をしてみる、相互評価や資料評価を行う)を織り交ぜつつ、学校図書館のあるべき姿を一緒に考えていきましょう。
中山 美由紀(Miyuki NAKAYAMA)
担当科目:「読書と豊かな人間性」
中山 美由紀

群馬県立図書館での学校図書館研修会講演会時

小中高校図書館の実践経験から、学校教育における学校図書館の役割とあるべき姿を伝えていきたいと思っています。文部科学省の受託事業として「先生のための授業に役立つ学校図書館活用データベース」というWEBサイトの企画運営にも参画し、活き活きする学校図書館の姿を発信するとともにサイト閲覧者の実践投稿も呼びかける参加型のサービスを展開しました。 授業では、「読む」ことの意味を「識字」や「読み書き困難」の観点からとらえ直し、現状把握、21世紀の日本の教育に求められている新たな「読み」の教育について学校図書館ですべきことや、学校を超えての地域・社会との連携について学び、考えてもらっています。読み聞かせや本の紹介などの実演をしたり、これまでの経験やその日の題材をもとに対話したり、語り合う時間を大切に思ってすすめています。

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