2023/09/01 (FRI)プレスリリース

オンライン生成不安定原子核の電子散乱に初めて成功
-SCRIT法を人工生成した不安定核に適応-

キーワード:研究活動

OBJECTIVE.

理化学研究所(理研)仁科加速器科学研究センター実験装置開発部の大西哲哉部長、京都大学化学研究所の若杉昌徳教授、立教大学理学部物理学科の栗田和好教授、東北大学電子光理学研究センターの須田利美教授らの共同研究グループは、不安定原子核(不安定核)の静止標的を用いた「スクリット法(SCRIT法)[1]」による高エネルギー電子散乱実験[2]に初めて成功し、不安定核の陽子分布[3]が直接決定できることを実証しました。

本研究成果は、理研仁科加速器科学研究センターにおける重要なプロジェクトの一つで、新しい原子核モデルの構築につながるものと期待できます。

不安定核の陽子分布は、構成する陽子の波動関数[4]が重ね合わさったものであり、不安定核の特異な内部構造を反映する重要な物理量です。この分布を直接観測できる電子散乱実験が長い間待ち望まれてきました。従来の電子散乱の手法では、1020個もの不安定核を使った静止標的が必要だったことから、共同研究グループはSCRIT法を開発し、2017年に微少量(107~108個)の原子核による電子散乱実験が可能なことを実証しました。

今回、共同研究グループは不安定核をほぼ100%パルスビームに変換する技術を開発し、SCRIT法により不安定核静止標的を実現し、不安定核の電子散乱実験を成功させました。本実験では、電子ビームをウラン標的に照射して生成した約107個の不安定核セシウム-137(137Cs:陽子数55、中性子数82)を電子蓄積リングSR2[5]内のSCRIT装置[1]に入射しました。入射不安定核はSCRIT法により浮遊静止標的として働き、約200~300mAの周回電子ビームを使って電子散乱事象を起こしました。

本研究は、科学雑誌『Physical Review Letters』オンライン版(8月30日付)に掲載されました。

今回の実験手法のイメージ図

背景

有限の時間で崩壊する原子核(不安定核)は陽子と中性子からなる量子多体系であると同時に、天然に存在する安定な原子核(安定核)とは異なるエキゾチックな特徴(ハロー[6]、スキン[6]、新しい魔法数[6]など)を持っています。近年、加速器技術の進歩によりさまざまな不安定核が作り出され、精力的に研究が進められています。特に、不安定核の大きさや形は波動関数を直接反映する基本的で重要な物理量です。これまで、それらの物理量の直接測定が試みられてきましたが、核力[7]を利用していたため、モデル依存性や不定性が大きいといった問題がありました。

電子散乱は、電子が物質の内部や近くを通過するときに変調を受けて跳ね返ってくる事象です。変調された電子を精密に分析することで、物質の内部構造を詳細に調べることができます。原子核研究分野では、高エネルギー電子散乱は、よく理解されている電磁相互作用のみによって引き起こされる事象であることから、原子核の内部構造、特に陽子の状態を知るための直接的で精度の高い手法です。加えて、高い信頼性を持つため、他の実験や原子核理論の基礎となる情報を与えてくれます。

この測定原理自体は半世紀以上前に確立し、安定核に対して精力的に実験が行われた結果、原子核の基本的モデルが構築されました。その功績により、ロバート・ホフスタッター博士が1961年にノーベル物理学賞を受賞しています。しかし、不安定核に対する電子散乱実験は長い間行われてきませんでした。それは、測定に必要な不安定核を使った静止標的を作り出すことが困難だったからです。

この状況を解決するために、共同研究グループは2008年に「スクリット法(SCRIT:Self-Confining RI Ion Target)」という、電子散乱実験に革命をもたらす手法を開発しました(図1)。SCRIT法による非常に効率の良い標的作製技術によって、微少量標的での電子散乱実験が可能になります。共同研究グループは、2009年から約6年をかけて、理研仁科加速器科学研究センター内にSCRIT電子散乱施設を建設し、2017年には、微少量(約108個)の安定核を用いたSCRIT法による電子散乱実験に成功しました注1)。その後、不安定核の電子散乱実験に向けた開発を進めました。

図1 SCRIT法イメージ図

まず、電子ビームが標的(ウラン)に衝突し、不安定核が生成される。生成された不安定核は電子が周回している電子蓄積リングに輸送・入射され、周回電子の負電荷と自身の正電荷の間に働く電気的な力(トラップ力)により、浮遊標的として保持される。不安定核で散乱された電子が外に飛び出す。

注1) 2017年6月28日プレスリリース「原子核を見る新型電子顕微鏡の完成」

研究手法と成果

共同研究グループはSCRIT電子散乱施設において、不安定核セシウム-137(137Cs:陽子数55、中性子数82)を用いて、世界で初めてのオンライン生成[8]した不安定核静止標的による電子散乱実験を行いました(図2)。

SCRIT電子散乱施設は、電子加速器150MeVマイクロトロンRTM[9]、電子蓄積リングSR2、不安定核生成分離装置ERIS[10]で構成されています。SR2の直線部に、SCRIT装置が挿入されています。SR2にはエネルギー150~300メガ電子ボルト(MeV、1MeVは100万電子ボルト)、電流200~300mAの電子ビームが蓄積されており、毎秒約1018個の電子がSCRIT装置を通過します。

一方、RTMから出力される電子ビームはERIS内の炭化ウラン標的に照射されます。ウラン(92U)の破砕片である不安定核がイオンビームとして取り出され、不安定核はクーラーバンチャーFRAC[11]内で測定に十分な量まで蓄積された後に、パルスビームとしてSCRIT装置まで導かれます。SCRIT装置内では、イオンが電子ビーム軸上に3次元的にトラップされ、浮遊標的となります。標的に衝突して散乱された電子は、電子蓄積リングを飛び出し、分析磁石[12]とその前後に設置されたドリフトチェンバー検出器[13]を用いて、散乱方向とエネルギー、運動量が分析されます。その分析結果から、標的原子核の内部情報を導き出します。このように、SCRIT電子散乱施設は微量な不安定核を試料としたいわゆる“巨大な電子顕微鏡”となっています。

図2 SCRIT電子散乱施設

赤い線で示された電子加速器RTMからの電子ビームは、電子蓄積リングSR2まで導かれて蓄積されると同時に、イオン源のウラン標的に照射されて不安定核を生成する。生成された不安定核は青い線に沿って、途中クーラーバンチャーFRACでパルスビームに変換されて輸送され、SCRIT装置に入射される。周回している電子ビームがSCRIT装置内でトラップされた不安定核と衝突し、散乱された電子が分析磁石とドリフトチェンバー検出器で分析される。
本測定では、30g相当のウラン(炭化ウラン標的に含まれているウラン)に約20Wの電子ビームを照射し、不安定核を生成しました。生成された不安定核は2,000℃近くに熱せられた標的から取り出され、イオン源からイオンビームとして供給されます。ERISで選別された目的の137Csイオンビーム(毎秒約107個で供給される)を今回開発したERISとFRACの協同蓄積技術[14]注2)により、ロスすることなく、冷却された質の高いパルスビームに変換しました。その結果、137Csイオンを4秒間蓄積し、約4×107個のエネルギーのそろった137Csパルスビームとして供給できました。図3に生成に用いた炭化ウラン標的と観測した137Csパルスビームを示します。

図3 炭化ウラン標的とオシロスコープで観測した137Csパルスビーム

(左) 実験で使用した炭化ウラン標的。直径18mm、厚さ0.8mmの炭化ウラン標的を43枚重ねて用いている。標的左側にあるのは、電子ビームをγ線に効率よく変換するためのタンタルコンバーターで、標的右側にあるのはスペース調整のためのグラファイトである。
(右) オシロスコープで観測した137Csパルスビーム波形。毎秒107個生成される137Csイオンを4秒間FRACで蓄積し、300マイクロ秒(μs、1μsは100万分の1秒)幅のパルスとして取り出し、電荷を測定したもの。積分すると、4×107個の137Csイオンに相当する電荷量になる。

本実験では、衝突の過程でエネルギーを失わず、運動量だけが変化する弾性散乱事象を測定しました。弾性散乱事象を見ることで、原子核の形状(陽子密度分布)を調べることができます。150MeV、約250mAの周回電子ビームを用い、SCRIT法による標的約107個を使って実験しました。散乱電子の軌道を再構成することで、散乱地点を同定し、散乱角とエネルギーを求めました。

図4左は得られた散乱地点の分布を示したもので、電子ビームの周囲にトラップした原子核から散乱してきたことが分かります。実験では、真空中に漂う残留ガス[15]からの影響があります。その影響を取り除くために、残留ガスのみの場合も測定しました。図4左において青で塗られた領域が残留ガスからの寄与を示し、その影響を差し引いて137Csイオンのみの弾性散乱事象の角度分布を示したのが、図4右になります。ここで、残留ガスからの寄与も同時にプロットすると角度分布に明確な違いがあることが分かります。これが、得られた事象が137Csイオンからの散乱電子であることの証拠です。

図4 散乱位置分布と角度分布

(左) 分析磁石と検出器で求めた散乱電子の軌跡から導出した、電子の散乱地点の分布。電子ビーム軸(高さ位置0mm)に沿って分布していることが分かる。赤色のヒストグラムはセシウム(137Cs)イオンを入れた場合、青色のヒストグラムは、セシウムイオンを入射していない場合の分布。
(右) 弾性散乱イベントの角度分布。赤点のプロットは、セシウムイオンからの弾性散乱イベント、青色は残留ガスからのイベントをプロットしたもの。赤と青の傾きが明確に異なることが分かる。
今回の測定では、従来の電子散乱実験で用いられている標的数(約1020個)よりも、12~13桁近くも少ない微少量(約107個)の不安定核の生成を行いながら、それを静止標的として用い、不安定核による電子散乱を初めて成功させました。これはSCRIT法による不安定核静止標的の実証であるとともに、電子散乱による不安定核研究の幕開けともいえるでしょう。

注2)T. Ohnishi et al., RIKEN Accel. Prog. Rep. 53, 110 (2020)

今後の期待

本研究では、生成した不安定核を直接、電子散乱の静止標的として用いる手法を実証しました。これにより、電子散乱を用いた不安定核研究が活発になることが予想されます。実際にいくつかの外国の研究施設も今回の手法に興味を持ち、将来に向けて検討し始めています。

今後は、電子加速器のビームパワーを増強し、不安定核の生成能力を現在の100倍に高めていきます。これにより、さまざまな不安定核の陽子分布を測定し、新しい原子核モデルの構築につなげていく予定です。

また、不安定核の静止標的を実現したことで、不安定核研究に新たな研究手法を提示できました。これにより、電子散乱以外の、これまで実現が困難だった実験が可能になると期待できます。

論文情報

  • <タイトル>
    First observation of electron scattering from online-produced radioactive target
  • <著者名>
    Kyo Tsukada, Yasushi Abe, Akitomo Enokizono, Taiga Goke, Masahiro Hara, Yuki Honda, Toshitada Hori, Shinichi Ichikawa, Yuki Ito, Kazuyoshi Kurita, Clement Legris, Yoshiki Maehara, Tetsuya Ohnishi, Ryo Ogawara, Toshimi Suda, Tadaaki Tamae, Masanori Wakasugi, Masamitsu Watanabe, Hikari Wauke
  • <雑誌>
    Physical Review Letters
  • <DOI>
    10.1103/PhysRevLett.131.092502

補足説明

[1] スクリット法(SCRIT法)、SCRIT装置
SCRIT(Self-Confining RI Ion Target)法は、電子ビームを用いた新しい標的作製手法であり、SCRIT装置は、SCRIT法を用いた標的トラップ装置である。細く絞られた高エネルギー電子ビームは負の電荷の流れである一方、標的となるイオンは正の電荷を持っている。従って、電子ビームのそばに標的イオンを近づければ、イオンが電子ビーム流の中に引き込まれる。引き込まれた標的イオンは逃げることができずに、電子ビームの通り道に集中して浮遊した状態となる。この浮遊イオンがそのまま電子散乱の標的として働くので、自動的に電子散乱事象が起きる。電子ビームはできるだけ大きな電流の方が良いので、電子蓄積リングを使用する。ただし、トラップされたイオンが電子ビームの飛行方向に拡散しないよう、ビーム方向に静電バリア電圧を掛けておく。SCRIT装置とは、このバリア電圧を形成するために、電子蓄積リング内に設置した電極システムのことを指す。

[2] 高エネルギー電子散乱実験
物質の性質を調べるには、物質に対して刺激を与え、その応答を観察するのが一般的である。その一つとして、電子ビームをプローブとして物質に衝突させ、散乱した電子を観測する手法を、電子散乱と呼ぶ。対象とする物質の大きさに応じて、電子ビームのエネルギーを最適化する必要があり、原子核のような極微小な物体を観測する際は、100メガ電子ボルト(MeV)以上のエネルギーが使われる。このような高いエネルギーの電子ビームを使う散乱実験を、高エネルギー電子散乱実験と呼ぶ。

[3] 不安定核の陽子分布
原子核は陽子と中性子から構成されており、個々の粒子の波動関数の重ね合わせとして、原子核の密度分布が得られる。平均的な陽子および中性子の密度分布は、中心部から表面にかけて一定であり(原子核密度の飽和性)、表面付近で急激に小さくなっている。不安定核ではこのような飽和性が一部崩れており、大きく外側に染み出していたり、中央部の密度が従来の原子核と異なっているなどの理論的予測がなされている。そこで、密度分布を精密に調べることが重要である。電子散乱は、電荷を持つ陽子の密度分布を詳細に調べることができ、不安定核研究では、長年待望されてきた実験である。

[4] 波動関数
量子力学において、ある状態の確率を示すもの。ここでは、粒子がある位置に存在する確率を示す。原子核を構成する粒子の波動関数を重ね合わせることで、原子核内部における全粒子の分布を示したものとなり、原子核の形を反映するものになる。

[5] 電子蓄積リングSR2
電子蓄積リングは、リング状の真空チューブの中を電子ビームが高速で周回するもので、加速器としても、トラップ装置としても働く装置である。電子蓄積リングでは、1秒間に1,000万周回するため、少数の電子が蓄積しても大電流が得やすく、維持するエネルギーは小さくて済むという利点がある。SR2はSCRIT-equipped RIKEN Storage Ring の略。

[6] ハロー、スキン、新しい魔法数
不安定核が持つエキゾチックな性質の代表例。ハロー、スキンは、中性子ハロー、中性子スキンが代表的なものである。中性子ハローは、少数(1~2個)の中性子が原子核自身よりも大きく広がって分布している状態をいう。中性子スキンは、原子核内全体としての中性子分布と陽子分布の大きさの違いを表し、エキゾチックな不安定核においては、原子核表面付近に中性子だけの領域が染み出ている状態を表す。魔法数とは、原子核の構造において、安定な状態になる陽子や中性子の特別な数のこと。安定核では、2、8、20、28、50、82、126が知られている。不安定核、特に中性子が多量にある中性子過剰核では、安定核での魔法数が消失し、新しい魔法数が出現する。例えば、8、20、28が消失し、新しい魔法数16、34が出現することが分かっている。
2019年10月18日プレスリリース「新魔法数34の新たな証拠」
https://www.riken.jp/press/2019/20191018_2/index.html 参照。

[7] 核力
原子核を構成する複数の陽子と中性子をごく小さい領域内で結び付けている力で、原子核の構造形成に支配的な役割を果たす。

[8] オンライン生成
加速器を利用した実験において、ビームを標的に衝突させ、研究対象とする原子核、特に短い寿命を持つ原子核を、その場でリアルタイムで新しく生成すること。生成した原子核は、生成装置から測定装置に導かれ、各種の実験に用いられる。

[9] 電子加速器150MeVマイクロトロンRTM
SCRIT電子散乱施設において、蓄積リングへの入射や不安定核の生成に使用される電子ビームを供給する加速器。電子銃から供給される60keVの電子ビームを、磁石の中で周回させながら加速していく。特徴として、加速管を通る電子の軌道が加速されても変わらないことがある。1周当たり6MeV加速し、25周で150MeVに到達し、取り出される。RTMはRacetrack Microtronの略。

[10] 不安定核生成分離装置ERIS
不安定核を生成する標的部とイオン源が一体になった装置。大強度のビームを標的に照射し、標的から不安定核を生成し、イオンビームとして質量を分析して供給する、低エネルギーのRIビーム供給する装置をISOL(Isotope separator for On-line)と呼ぶ。標的は約2,000℃近くまで熱せられ、生成された不安定核を標的から速やかに取り出せる。その後、目的とする元素に適したイオン化方式を使ったイオン源でイオンビームを供給する。このとき、イオンビームのエネルギーは数~数十keVである。ERISはElectron-beam-driven RI separator for SCRITの略。

[11] クーラーバンチャーFRAC
高周波を印加した四重極電極によって、イオンの広がりを抑えて、装置内に蓄積することができる装置。入射時は連続ビームだったものを、取り出し時に幅の短いパルスビームとして取り出すことができる。そのために、内部のポテンシャルは出口に向かって低くなっている。装置内はバッファガス(約10-3Pa)で満たされており、短時間で蓄積しているイオンのエネルギーがそろうようにしている。FRACはFringing-RF-field-activated DC-pulse Converterの略。

[12] 分析磁石
標的から散乱した電子を分析する電磁石。SCRIT装置の直近に設置されており、SCRIT装置から飛び出した散乱電子を磁場の力で曲げて、その曲がり方によって電子の運動量(エネルギー)を分析する。本研究の弾性散乱では、散乱電子のエネルギーが元のビームのエネルギーと同じであることを確認することが非常に重要で、そのために不可欠な分析器である。磁場の分布はあらかじめよく調べてあるので、後述のドリフトチェンバー検出器のデータから散乱電子の飛跡を再現できる。

[13] ドリフトチェンバー検出器
高エネルギー荷電粒子の飛跡を観測するために一般的に用いられるタイプの検出器。希ガスと有機化合物の混合ガスなどを充満させた容器の中に、多数のワイヤーが張られており、ワイヤー間に一定の電位差をつけておく。荷電粒子がガス中を通過した際にガスとの衝突で発生させた電子が、その電圧でガス中を移動(ドリフト)する際に電圧により加速され、それらがさらにガスに衝突してより多くの電子を生み出すという雪だるま式増幅作用によって、生成されたその電荷がワイヤーに吸収されて信号となる。その事象が起きた場所を記録することにより、荷電粒子の飛跡が再構成される。

[14] ERISとFRACの協同蓄積技術
不安定核生成分離装置ERISにもイオン蓄積機構を取り付け、ERISとクーラーバンチャーFRACのそれぞれのイオン蓄積を同期させることにより、イオンをロスすることなく、パルスビームへと変換することを可能にした技術。FRAC内に入射されたイオンが冷却されている間(約数十ミリ秒)、ERIS内でイオンが蓄積される。冷却されたイオンはFRACから逃げ出さなくなるため、FRAC内イオンを保持しつつ、ERISで蓄積されたイオンを新たに注ぎ足すことができる。一連の動作を同期させて繰り返し行うことで、イオンを失うことなくFRAC内に大量に蓄積し、パルスビームとして一度に取り出すことが可能になる。

[15] 残留ガス
真空中には、排気しきれない、酸素や水素などの微少量の中性ガスが漂っている。これらのガスは、チェンバー内容物の表面や材料内部から染み出てくる。SCRIT装置の動作真空度は10-8Pa程度であり、3×106/cm3の中性ガスが漂っていると推定される。これは、イオンがトラップする領域を考えたとき、電子散乱の標的の厚さとして約108/cm2程度に相当する。

共同研究グループ

  • 理化学研究所 仁科加速器科学研究センター 実験装置開発部
     部長 大西哲哉(オオニシ・テツヤ)
     専任研究員 渡邊正満(ワタナベ・マサミツ)
     協力研究員 阿部康志(アベ・ヤスシ)
     研究嘱託(研究当時) 市川進一(イチカワ・シンイチ)
     研究嘱託 原 雅弘(ハラ・マサヒロ)
     研究嘱託 堀 利匡(ホリ・トシタダ)
  • 京都大学 化学研究所
     教授 若杉昌徳(ワカスギ・マサノリ)
     准教授 塚田 暁(ツカダ・キョウ)
     助教 小川原亮(オガワラ・リョウ)
     大学院生 前原義樹(マエハラ・ヨシキ)
     大学院生 伊東佑起(イトウ・ユウキ)
  • 立教大学 理学部 物理学科
     教授 栗田和好(クリタ・カズヨシ)
     助教 飯村 俊(イイムラ・シュン)
     研究員 榎園昭智(エノキゾノ・アキトモ)
  • 東北大学 電子光理学研究センター
     教授 須田利美(スダ・トシミ)
     助教 本多佑記(ホンダ・ユウキ)
     嘱託 玉江忠明(タマエ・タダアキ)
     大学院生 和宇慶ひかり(ワウケ・ヒカリ)
     大学院生 郷家大雅(ゴウケ・タイガ)
     大学院生 クレモン レグリス(Clement Legris)

研究支援

本研究は日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業(22224004、24340057、17H04835、20H00147、22224004)、および文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業(立教大学:S1411024)、京都大学化学研究所国際共同利用共同研究(2019-10、2020-6、2021-6、2022-3)の助成を受けて行われました。

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