2019/11/25 (MON)

第32回「辻荘一・三浦アンナ記念学術奨励金」受賞者決定

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OBJECTIVE.

第32回「辻荘一・三浦アンナ記念学術奨励金」の受賞者が以下の通り決定しました。

【受賞者氏名】
木村 佐千子(きむら さちこ)氏(獨協大学外国語学部ドイツ語学科教授)

【受賞対象業績】
J.S.バッハの教会声楽作品研究

「辻荘一・三浦アンナ記念学術奨励金」は、故辻荘一名誉教授(音楽史)および故三浦アンナ先生(美術史)のキリスト教芸術研究上の功績を記念し、キリスト教音楽またはキリスト教芸術領域の研究者を奨励するため、1988年に設置されました。

「音楽史」部門および「美術史」部門の研究者に対し1年ごとに交互に授与されますが、本年度は「音楽史」部門が対象となります。

【授与式】
2020年1月25日(土)11時から
立教学院諸聖徒礼拝堂(池袋キャンパスチャペル)

【レセプション】
同日12時15分から
チャペル会館1階会議室
選考理由
【選考理由】
木村佐千子氏は、ドイツ盛期バロックを代表する作曲家、ヨハン・ゼバスティアン・バッハの教会声楽作品を主要研究対象とし、緻密な資料調査と楽曲分析を通じて、創作の特色と変遷を明らかにするとともに、キリスト教音楽が孕む二面性、すなわち典礼上の用途と作曲上の制約/工夫の間の緊張関係を独自の切り口で論じてきた。木村氏の卓抜な着眼と研究能力は、1992年に東京芸術大学に提出された卒業論文「メンデルスゾーンによる《マタイ受難曲》再演」に萌芽が認められる。本人によるドイツ語抄訳は、国際的に権威ある研究誌『バッハ年鑑』(1998年)に掲載され、この分野における必見の書として引用され続けている。1995年からドイツ・ボーフム大学に留学し、1999年に同大学に提出した博士論文「バッハのコラールテクスト・カンタータ研究」により学位を取得し、包括的な研究の素地を固められた。その後の研究においても木村氏は一貫して新しい体系的な見方を提起しており、2011年には博士論文に改訂を加えたドイツ語単著を出版し、着実な研究者の道を歩んでいる。

バッハが礼拝のために作曲したカンタータ作品のうち、ルター派の会衆歌を取り入れたコラール・カンタータは、従来の研究においても特に重視されてきた。木村氏は、そのなかでコラール詩の全節を原文通り歌詞として用いたコラールテクスト・カンタータに焦点をあて、上掲単著において全10作品の成立時期を実証的に再検討した上で、作曲法の変遷を歌詞と音楽の分析から明らかにしている。時代ごとの趣味の影響を受ける自由詩に比べてコラール詩は評価が一定であること、また、有節の韻律詩であるコラール詩を歌詞として、自由詩を前提とした音楽形式であるアリアやレチタティーヴォを含むカンタータを作曲するのは制約が大きいことを木村氏は指摘し、バッハが作曲上の制約を克服すべく1作ごとに新たな解決法を探り続けたのは、様々な機会に永く演奏されうる教会音楽を目指して構想したためと結論づける。この視点のもと、木村氏は、10作品中の多くの歌詞が普遍的な賛美の内容を持つ点にも注目し、コラールテクスト・カンタータを、様々な機会の礼拝で演奏されうるラテン語ミサ曲と並ぶ、ひとつの重要な作品群と位置づけた。

木村氏は、二部構成によるバッハのカンタータについての研究も行なっており、現在に伝わるバッハの教会カンタータの1割余にあたる24作品をひとつの作品群と捉え、多角的に分析している(2014年)。また、宗教改革500年に寄せてルターと音楽に関する論文を発表し(2018年)、現在は、ルターのコラールを用いたバッハの声楽作品およびオルガン作品の体系的な研究に従事している。元来は一都市の毎週の礼拝に供するものだったバッハの音楽が、後世の受容を通じ、ルター派教会音楽の頂点として古典化されていくプロセスには、複合的な要因が絡んでいる。時空を越える普遍性や記念碑的な作品性を志向する後世の音楽観も視野に収めつつ、作曲にあたって「ただ神にのみ栄光 Soli Deo Gloria」を帰したバッハとルター派の伝統を丹念に論じ、解釈する木村氏の研究は、キリスト教芸術研究に大きく寄与するものである。

以上の理由により、木村佐千子氏を第32回「辻荘一・三浦アンナ記念学術奨励金」の受賞者に決定した。

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