OBJECTIVE.
理学部特定課題研究員の田中啓太氏らによる研究チームは、ニューカレドニアに生息するカッコウで、ひなの体色に多型があるという特異な現象を世界で初めて発見しました。この研究に関する論文が、雑誌『Current Biology』に2015年12月21日に掲載されました。
論文概要
カッコウなどの托卵(たくらん)鳥は、他の鳥の巣に卵を産んでひなを育てさせますが、それにより托卵相手の鳥(宿主)が子孫を残す機会を奪ってしまいます。そのため托卵鳥による寄生は、宿主が托卵鳥の卵やひなを自身のひなと見分け、巣から捨てるといった、宿主による防衛行動の進化を引き起こします。一方、托卵鳥も宿主の防御をかいくぐるため、托卵鳥の卵やひなが宿主の卵・ひなにそっくりになるように進化します。このような托卵鳥によるだまし(“擬態”)とそれを見破る宿主との攻防は、“軍拡競争”型の共進化の好例として知られています。
托卵鳥の宿主の中には、同じ種であっても見た目が大きく異なる卵を産むものがいます。このような卵における多型は、托卵鳥に対する防衛戦略として進化したことがさまざまな研究により確かめられています。今回、田中氏らが発見したひなにおける多型も、卵と同様に対托卵防衛戦略として進化したと考えられます。しかし、卵とひなでは遺伝子の発現様式が異なっています。田中氏らはこの遺伝子発現様式の違いがさらなる軍拡競争を誘発する可能性を示唆しました。
托卵鳥の宿主の中には、同じ種であっても見た目が大きく異なる卵を産むものがいます。このような卵における多型は、托卵鳥に対する防衛戦略として進化したことがさまざまな研究により確かめられています。今回、田中氏らが発見したひなにおける多型も、卵と同様に対托卵防衛戦略として進化したと考えられます。しかし、卵とひなでは遺伝子の発現様式が異なっています。田中氏らはこの遺伝子発現様式の違いがさらなる軍拡競争を誘発する可能性を示唆しました。
論文情報
タイトル | Nestling polymorphism in a cuckoo-host system |
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著者 | Sato, N.J., Tanaka, K.D., Okahisa, Y., Yamamichi, M., Kuehn, R., Gula, R., Ueda, K., and Theuerkauf, J. |
誌名 | Current Biology 25, R1164–R1165 |