第56回現代のラテンアメリカ「コスタリカを味わう:周縁化されてきた人びと—先住民族、アフロディセンディエンテス、移民—がつむぐ食の現在」
INFORMATION
「コスタリカ」と聞くと、多くの人が、軍隊を持たない平和国家、環境先進国、民主主義の優等生、人権を尊重する国といったポジティブなイメージを思い浮かべる。しかし、こうした評価はこの国の一側面を切り取ったものにすぎない。「食」もまた、人と人とをつなぐ“おいしい”側面が強調されがちである。しかし、その背後には、しばしば見えにくい歴史や権力関係が潜んでいる。本講演では、食に注目することで、コスタリカの明るいイメージの裏側にある側面、すなわち同国社会に根づく抑圧の構造に目を向ける。具体的には、歴史的に周縁化されてきた先住民族、アフロディセンディエンテス(アフリカ系コスタリカ人)、そして移民の食の経験を手がかりに、これらの構造を検討するとともに、近年に見られる変化の兆しについても紹介する。こうした視点からコスタリカを語り直すことを通じて、同国への理解を深めるとともに、世界的に展開されている「脱植民地化」の議論にも寄与することを試みたい。
講師
南山大学外国語学部スペイン・ラテンアメリカ学科講師
額田 有美(ぬかだ ゆみ) 氏
博士(人間科学)。国立民族学博物館外来研究員(PD)、大阪大学人間科学研究科助教を経て、2023年より現職。専門は人類学、ラテンアメリカ地域研究、先住民学。主たる調査地はコスタリカ。最近は「知識の脱植民地化」という視点から、食、先住民ツーリズム、デジタルテクノロジーの利用等について研究。主な著書に『先住民とデジタル化する世界』(共著、2025年、春風社)、『アクティブラーニング 多文化の共生社会を創る: ラテンアメリカの問題から探る』(編著、2025年、晃洋書房)など。論文に『法廷において文化と向き合う: コスタリカにおける「裁判所」の民族誌』(単著、2019年、大阪大学COデザインセンター)など。