公開講演会「史料を探究する—「探究」時代の日本史・世界史教育を求めて」
INFORMATION
新課程の「歴史総合」「日本史探究」「世界史探究」においては、史資料を用いた学習がこれまで以上に重視されており、具体的な探究活動を伴う形での深化が求められている。しかし、教育現場において「史料を読む」という行為がいかなるものであるべきかについて、必ずしも統一的な見解が得られているわけではない。
そこには、歴史研究の作法に則り、史料批判や研究史を厳密に踏まえた読み方を追求すべきだという立場がある。一方で、過度な厳密さは生徒の自由な発想を阻害する「正答主義」に陥る懸念があり、学びの場においては一定の自由な解釈が認められるべきだという立場もあろう。
本シンポジウムは、歴史を考えるとき「史料を扱う」ことの本質を多角的に検討することを目的とする。我々は、歴史研究の成果をどのように教育現場で活用し、そこにいかなる可能性を見出すことができるのか。一つの資料から「複眼的視点」を引き出すための仕掛けは、研究成果という土台をいかに踏まえることで生まれてくるのか。こうした問いを念頭に、これまでの歴史教育と歴史学が積み重ねてきた協働の歩みを振り返りつつ、世界史・日本史双方の枠組みを越えて議論を深めたい。
当日は、研究と教育を架橋する新たな提言と実践を行ってきた大学教員・高校教員による個別報告に加え、高校生や教職志望の大学生を交えたラウンドテーブルを開催する。現場の教員、研究者、そして次代を担う学生が一堂に会し、これからの歴史教育のあり方を共に考える場としたい。本企画は、2023年3月以来、毎年春に開催している歴史教育と歴史研究をつなぐシンポジウムの4回目となる。
講師
本学文学部史学科日本史学専修教授
佐藤 雄基(さとう ゆうき)
博士(文学)(東京大学)。日本中世史・近代史学史。主な著作に『日本中世初期の文書と訴訟』(山川出版社、2012年)、『御成敗式目』(中央公論新社、2023年)など。
都留文科大学教養学部国際教育学科准教授
前島 礼子(まえじま れいこ) 氏
修士(史学)(中央大学)。アッシリア学・歴史学。主な著作に“The Establishment of the Babylon Society and the “Transplantation” of Sumerology to Japan in the Early Years of the Twentieth Century: The Influence of Panbabylonism and the “Sumerian Problem” on Asia”(Fink, S. and H. Neumann (eds.), Towards a History of Assyriology: Workshop Organized at the 64th Rencontre Assyriologique Internationale, Innsbruck 2018, 2025)、「強制移住:古代オリエントと現代中東をつなぐ「記憶」」(『東洋大学人文科学総合研究所公開セミナー講演録』vol.8、2025年)、“Assyrian Supervising System in Babylonia during Esarhaddon's Reign: Assyrian Scribe Mar-Issar and Babylonian Local Astrologists”(J. Fischer, R. Feldbacher(eds.), Marginalized Groups in Antiquity, 2021)、「原田敬吾の「日本人=バビロン起源説」とバビロン学会」(小澤実編『近代日本の偽史言説』、2017年)など。
大月市立大月短期大学准教授
松岡 昌和(まつおか まさかず) 氏
博士(学術)(一橋大学)。東南アジア史・文化研究。主な著作に"Japan’s memory of war and imperialism in kayō eiga: Shochiku' s Under the Stars of Singapore and Asianism"(East Asian Journal of Popular Culture, 9(1), 2023)、「日本のシンガポール占領(1942~1945)と「桃太郎」」(泉水英計編『近代国家と植民地性:アジア太平洋地域の歴史的展開』御茶の水書房、2022年)、「シンガポールにおける戦後復興の記憶:歴史教科書と戦跡施設の展示に見る「戦争が遺したもの」」(『マレーシア研究』7、2019年)など。
共立女子大学国際学部教授
西山 暁義(にしやま あきよし) 氏
文学博士(東京大学)。ドイツ近代史。主な著作に木村靖二・千葉敏之・西山暁義編『ドイツ史研究入門』(山川出版社、2014年)、「外国史教育における複眼的史料集の可能性:ドイツの歴史教育と近現代史の例から考える」(『共立女子大学・共立女子短期大学総合文化研究所紀要』26、2019年)、「世界史のなかで変動する地域と生活世界」(小川幸司編『岩波講座 世界歴史01 世界史とは何か』岩波書店、2021年)、「兵士の表象—第一次世界大戦の戦争展示を中心に」(佐々木真・原田敬一・松本彰編『戦争を展示する—戦争博物館の過去・現在・未来』大月書店、2025年)など。
新潟大学教育支援機構非常勤講師
竹田 和夫(たけだ かずお) 氏
博士(文学)(新潟大学)。日本文化史・歴史通史教育。主な著作に単著『五山と中世の社会』同成社 2007年、編著『古代・中世の境界意識と文化交流』勉誠出版 2011年、編著『歴史のなかの金・銀・銅』勉誠出版 2013年など。
長野県伊那弥生ケ丘高等学校教諭
小川 幸司(おがわ こうじ) 氏
文学士(東京大学)。世界史教育。主な著作に『世界史との対話:70時間の歴史批評』上中下(地歴社、2011-2012年)、『世界史とは何か:「歴史実践」のために』(岩波書店、2023年)、『岩波講座世界歴史第1巻世界史とは何か』(責任編集)(岩波書店、2021年)など。
詳細情報
名称
内容
(以下タイトルは仮題)
13:00~13:10 趣旨説明/佐藤雄基
13:10~13:40 中東古代史史料と現代的な諸課題:キュロス・シリンダーをめぐる「人類最古の人権宣言」言説を例に/前島礼子氏
13:40~14:10 「御成敗式目」をどのように扱うのか:日本史前近代史における法制史料/佐藤雄基
14:10~14:40 記憶の史料としての映像:映画に見るシンガポールの日本占領/松岡昌和氏
14:40~14:50 休憩
14:50~15:20 世界史教育における『複眼的史料提示』の試み:ドイツ近現代史の事例から/西山暁義氏
15:20~15:50 歴史学・歴史教育協働の史資料への向き合い方:戦後の動向/竹田和夫氏
15:50~16:00 コメント 本日の各報告を受けて/小川幸司氏
16:00~16:20 休憩
16:20~16:40 学生によるラウンドテーブル
16:40~17:30 総合討論
対象者
申し込み
主催
共催
お問い合わせ
文学部史学科日本史学専修教授
佐藤 雄基
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