公開講演会「「民族」を超えて——旧ユーゴスラヴィア地域と共通の文化空間」(Beyond Ethnocentrism: Rethinking Common Cultures and Spaces in the Former Yugoslav Region)
INFORMATION
かつてユーゴスラヴィアを構成した地域には、現在、複数の国家が並ぶ。
1990年代、連邦解体とともに多くの民族が独自の道を歩み、クロアチアやボスニア・ヘルツェゴヴィナなどでは紛争が生じた。それから30年あまり、後継諸国では、民族ごとに分かれた体制が維持される一方、そうした境界を横断したり、迂回したりするような動きも見られる。
では、現地において、また外部のまなざしにおいて、民族中心的な考え方が強調されてきた旧ユーゴスラヴィア地域では、民族を超えうる関係がどのように現れ、いかなる共通の文化や空間が形成されてきたのか。
本国際シンポジウムでは、現地の研究者を招き、社会学、文化研究、歴史学の異なる学問領域の3報告と2つのコメントを提示しながら、この地域における民族を超えた文化を再考する機会とする。
講師
報告者
リュブリャナ大学(スロヴェニア)社会科学部教授・文化宗教研究センター長
Mitja Velikonja(ミチャ・ヴェリコーニャ) 氏
専門は社会学、カルチュラル・スタディーズ。中東欧やバルカンの政治イデオロギー、サブカルチャー、ポスト社会主義のノスタルジアなど幅広い関心をもち、近刊のPost-Yugoslavia(2014)(共編著)、Post-Socialist Political Graffiti in the Balkans and Central Europe(2020)、Ukrainian Vignettes: Essays on a Culture at War(2025)など、著書・論文多数。
サラエヴォ大学(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)美術アカデミー准教授
Jasmina Gavrankapetanović-Redžić(ヤスミナ・ガヴランカペタノヴィチ=レジッチ) 氏
専門は美術・芸術、文化研究。芸術のみならず、記憶、アイデンティティ、戦争や戦時暴力など、芸術文化と社会の関係を扱う。近刊の論文に、“In the Shadow of Genocide: Mothers of Srebrenica and New Social Power”(2023)、“Enjoy Sarajevo: Coca-Cola, Material Culture and the Siege of Sarajevo”(2022)など。
愛知学院大学文学部准教授
門間 卓也(もんま たくや) 氏
専門は歴史学。ユーゴスラヴィアとクロアチアの近現代史を中心に、ファシズムとナショナリズムの問題に関心を向ける。近刊の論文に、「王朝原理と「ファシズム」の交差—ユーゴスラヴィア王国における「セルビア人問題」の一局面」(2024年『東欧史研究』46)、「東欧から「グローバル・ファシズム」を再考する—戦間期ウスタシャ運動の政治暴力とプロパガンダ」(2023年『東欧史研究』45)。共編著に『グレーゾーンと帝国:歴史修正主義を乗り越える生の営み』(2023年勉誠出版)など。
コメンテーター
成城大学法学部教授
福田 宏(ふくだ ひろし) 氏
専門は国際関係論、中央ヨーロッパ諸国の政治。近刊の著書・論文に、「東欧のロック音楽と民主主義」『冷戦と脱植民地化Ⅱ:二〇世紀後半岩波講座 世界歴史23』(2023年岩波書店)、共編著に『「みえない関係性」をみせる』「グローバル関係学」第5巻(2020年岩波書店)など。
神田外語大学グローバル・リベラルアーツ学部准教授
鈴木 健太(すずき けんた) 氏
専門は歴史学、ユーゴスラヴィア現代史。主な著書に、『ユーゴスラヴィア解体とナショナリズム——セルビアの政治と社会(1987-1992年)』(2022年刀水書房)、『アイラブユーゴ——ユーゴスラヴィア・ノスタルジー』(共著、全3巻社会評論社)など。