公開講演会「働く少女たちの10年:バングラデシュから考える児童労働と未来」
INFORMATION
バングラデシュでは、他人の家庭に住み込み、長時間にわたり家事労働に従事する少女たちが多数存在しています。彼女たちは学校で学んだり、友達と遊んだりする機会を奪われ、子ども期に本来保障されるべき基本的な権利が、見えにくい形で侵害されています。こうした状況は、児童労働研究で指摘される「構造的貧困」や「ジェンダー不平等」と深く結びついており、個々の事情にとどまらず、社会や制度のあり方が複雑に影響した結果と考えられます。
認定NPO法人シャプラニール=市民による海外協力の会は、このような少女たちを対象に支援センターを設け、基礎教育や職業技能の研修を行ってきました。さらに、雇用主家庭への訪問や地域での啓発活動を通じて、周囲の人々の意識や行動の変化を促してきました。また、ILO第138号条約(最低年齢条約)、第182号条約(最悪の形態の児童労働撤廃条約)、国連子どもの権利条約(CRC)といった国際規範を踏まえ、「家事使用人保護および福祉政策2015」の制度化と実施を行政に働きかけてきました。
今回の講演会では、支援センターを利用していた少女たちがその後どのような道を歩んでいるのかに焦点を当てます。センターを卒業し、自立した生活を送る女性たちの声を紹介しながら、家事使用人として働く少女たちの現状を見つめ直し、児童労働撤廃や人権保障の国際的な流れと結びつけつつ、これからの展望を皆さまと共に考えていきます。
また、会場ではバングラデシュの伝統刺しゅう「ノクシカタ」の展示も同時開催いたします。同国の暮らしや文化を映し出す手仕事に触れながら、少女たちが直面している社会課題とその背景をより身近に感じていただければ幸いです。
講師
認定NPO法人シャプラニール=市民による海外協力の会バングラデシュ事務所前所長
内山 智子(うちやま ともこ) 氏
大学卒業後、民間企業勤務を経て2001年にシャプラニール入職。広報・ファンドレイジングを担当後、バングラデシュ駐在。その後、国内外の子どもの権利・防災関連事業に従事し、2018年より同会バングラデシュ事務所長を務める。現地パートナーと共に事業立案・実施・モニタリングを行い、少女たちの権利擁護と自立支援に尽力。