公開講演会「生きるために歌う、生きることを歌う:ラテンアメリカの新しい歌とピノチェト軍政下のチリにおける抵抗の歌」
INFORMATION
ラテンアメリカにおいて生きることの中にある政治性をローカルな伝統に根ざした歌という形で共有していくことで社会を変えていこう、問いなおしていこうという運動としての「新しい歌」運動は、キューバ革命(1959年)の影響を受け、1960年代後半以降チリやアルゼンチンからラテンアメリカ各地へと広がっていった。こうした社会変革の動きは、1973年のピノチェト将軍によるチリの軍事クーデター以降、各地で米国の支援を受けた各国右派軍部の同盟によって弾圧されてきた。同時に、人びとはその弾圧下でもさまざまな形で歌やその他の手段による抵抗と連帯をつづけていた。チリの外ではほとんど知られてこなかったこのような活動について、背景から当時の歌の実演まで含めて、水口良樹氏を聞き手として、話者に大阪大学名誉教授で実際に現場を見てきた千葉泉氏という形で対話を通して、当時の状況を話しながら演奏を聴くコンサートを開催する。千葉氏との演奏は、氏の長年の音楽的同志であるきしもとタロー氏と熊澤洋子氏が担当する。
講師
大阪大学人間科学研究科名誉教授、ラテンアメリカ音楽演奏家・作曲家
千葉 泉 氏
ラテンアメリカの民衆文化、「自分らしさ」の活用、音楽的コミュニケーション等を研究テーマとする。ウクレレによる自己表現や「語り合い」など、学生の主体性に基づいた授業を行い、2017年には、学生アンケートで「阪大でいっちゃんおもろい教授」に選ばれた。
一方、演奏家として、ラテンアメリカ各地の歌謡をギターの弾き語りで紹介するかたわら、「自分らしさ」や「多様性の尊重」をテーマにしたオリジナル曲を、演奏会やコンポジウムなどの場で発表している。
主な著書に『“研究者失格”のわたしが阪大でいっちゃんおもろい教授になるまで—弱さと向き合い、自分らしく学問する』(明石書店、2020年)、オリジナル曲を収録したCDに『地球家族—千葉泉』(エルセラーン化粧品、2025年)がある。
獨協大学非常勤講師、人類学、ペルー音楽研究
水口 良樹 氏
ラテンアメリカ探訪および井戸端人類学F2キッチン世話人としてアカデミズムと社会をつなげ一緒に考えていける場所づくりを模索。またラテン音楽Webマガジン「eLPop」メンバーとして、主にペルー音楽をWeb媒体で紹介したりイベント、DJ活動を行う。ペルーのアフロ・クリオージャ音楽バンド、ペーニャ・ハラナ主宰。
編著に『日本から考えるラテンアメリカとフェミニズム』(中南米マガジン,2025、共編は洲崎圭子および柳原恵)、共著に『中南米の音楽:歌・踊り・祝宴を生きる人々』(石橋純:編、東京堂出版、2010)、分担執筆『ラテンアメリカ文化事典』(丸善出版、2021)、翻訳『クマナナ:アフロ・ペルーの詩と歌』(ニコメデス・サンタ・クルス著、ビンズレコード、2012)などがある。
辺境音楽演奏家、大阪大学非常勤講師
きしもと タロー 氏
幼い頃に竹で笛を製作したことから世界各地の音楽文化に親しむようになり、南米山岳地域の伝承音楽からケルト文化圏、アジア諸地域など広範囲の音楽に触れながら演奏と作曲活動を続けてきた。近年はルーマニア・トランシルヴァニア音楽と南コーカサス・アルメニア音楽に傾倒し、Blulと呼ばれる斜め型の笛や羊飼いの笛Kaval、Kobozと呼ばれる琵琶型の弦楽器やヴィオラの一種Brácsaの演奏に取り組んでいる。
ヴァイオリン演奏家
熊澤 洋子 氏
幼い頃からクラシック音楽を学び、学生時代にルーマニアのロマ(ジプシー)たちの音楽に出会う。その後、東欧やバルカン諸地域の音楽を独学で学びながら演奏活動を始め、ソロ・アルバムを発表しながら同時にダンサーとのコラボレーションを各地で催すようになる。近年は特にルーマニアのトランシルヴァニアの伝統音楽に傾倒し、現地の名手たちの薫陶を受けながら研鑽を積み、その一方で各地のフォークダンサーたちのための演奏を続けている。
詳細情報
名称
内容
14:10〜15:40 第一部 ラテンアメリカの「新しい歌」運動:コンサート&レクチャー
15:50〜17:10 第二部 軍政下のチリで歌い継がれた「新しい歌」たち:コンサート&レクチャー