公開シンポジウム「マルク・ブロックを受けとめる：21世紀日本の研究と教育」
INFORMATION
ナチの銃弾に斃れたユダヤ系フランス人歴史家マルク・ブロック（1886-1944）が、人類文化に多大な功績を残した人物として、2026年６月16日にパリのパンテオンに埋葬されることが決定された。20世紀の歴史学を牽引した『アナール』を1929年に創刊し、封建社会論、農村史、心性史、比較史などに不朽の業績を残したブロックは、戦後日本の歴史学の展開においても極めて大きな足跡を残した。今回のシンポジウムは、21世紀の日本において、そのブロックとその生きた時代をどのように理解し、その著作をどのように読み解き、そしてその成果をどのように中等・高等教育に活かすのかを検討する。
第１部では、歴史家ブロックの生涯・時代・業績について、21世紀の学問世界の中でどのように位置付けるべきかを考察する。第２部では、ブロックの成果とそれを踏まえた『西洋中世文化事典』（丸善出版、2024）を、歴史総合が始まり近現代史の比重が増える中、歴史教育に実際に携わる実践者がどのように活用するのかを検討する。各部の最後に、フロアも交え、討論を行う。
講師
東京大学大学院人文社会系研究科准教授
菊地 重仁（きくち しげと） 氏
PhD（ミュンヘン大学）。専門は西洋初期中世史。日本学士院賞受賞。主著に、Herrschaft, Delegation und Kommunikation in der Karolingerzeit. Untersuchungen zu den Missi dominici (751-888) (Monumenta Germaniae Historica Hilfsmittel 31) (Wiesbaden: Harrassowitz, 2021)。共著に、三浦徹編『750 年：普遍世界の鼎立（歴史の転換期３）』（山川出版社、2020）他多数。
東京大学大学院人文社会系研究科教授
長井 伸仁（ながい のぶひと） 氏
PhD（パリ第１大学）。専門はフランス近現代史。主著に、『近代パリの社会と政治：都市の日常を探る』（勁草書房、2022）；Les conseillers municipaux de Paris sous la Troisieme Republique, 1871-1914 (Paris: Publications de la Sorbonne, 2002)他多数。
大阪公立大学大学院文学研究科准教授
向井 伸哉（むかい しんや） 氏
PhD（トゥルーズ大学）。専門は西洋中世史。« Les conflits du droit de pêche entre Sérignan et Vendres : État, marché, guerre et changement climatique sur le littoral languedocien à la fin du Moyen Âge », Études héraultaises 57 (2021) : 201-209 ; « Le gouvernement du village languedocien au bas Moyen Âge : le cas de Sérignan (Hérault) au XIVe siècle », Cahiers de recherches médiévales et humanistes 41(2021) : 427-462 他多数。
本学文学部史学科教授
佐藤 雄基
武蔵大学人文学部教授
平野 千果子（ひらの ちかこ） 氏
博士（上智大学）。専門はフランス植民地史。『人種主義の歴史』（岩波新書、2022）；『フランス植民地主義と歴史認識』（岩波書店、2014）他多数。
本学文学部史学科教授
小澤 実
岐阜県立岐阜高等学校教諭
井上 智也（いのうえ ともや） 氏
修士（京都府立大学）。専門は西洋中近世史。共著に『西洋中世文化事典』（丸善出版、2024）；論文に「「ヨーロッパ中世社会の特徴」を、いかに史資料で/に語らせるか? : 新科目「世界史探究」に向けての試案」『世界史教育研究』５（2018）: 129-134 他。
新潟大学教育学部准教授
小林 繁子（こばやし しげこ） 氏
専門は西洋中近世史。主著に、『近世ドイツの魔女裁判—民衆世界と支配権力』（ミネルヴァ書房、2015）。共著に、甚野尚志・踊共二編著『キリスト教から読み解くヨーロッパ史』（ミネルヴァ書房、2025）他多数。
詳細情報
名称
内容
16:30 主旨説明：菊地 氏
第１部：「今またマルク・ブロックを振り返る」
司会・運営：菊地 氏
16:35 導入：長井 氏
「ブロックのパンテオン葬を考える」
16:45 報告１：向井 氏
「マルク・ブロックと農民」
17:10 報告２：佐藤
「日本中世史と『封建社会』」
17:35 報告３：平野 氏
「ブロックの生きた時代—植民地史研究の視角から」
18:00 ディスカッション
第２部「専門知と教育：教育現場における『西洋中世文化事典』の使い方」
司会・運営：小澤
18:30 導入：小澤
「ブロック・教育・『西洋中世文化事典』」
18:40 報告１：井上 氏
「「市民性教育」と西洋中世学の接続に向けて—新課程歴史科目の実践からの展望」
19:05 報告２：小林 氏
「「歴史家の作業場」と社会科教員養成をつなぐ—史料活用への試み」
19:30 ディスカッション：全員
19:50 総括：小澤