シンポジウム「香港の過去・現在・未来」
INFORMATION
世界が注目した香港返還から20年が経過した。その間、香港自身と、香港を取り巻く中国やアジアの環境には大きな変化が生じた。約束された「一国二制度」の「五十年不変」は20年を経過し、香港では30年後やその先についても議論されるようになっている。香港は返還以来の20年をどのように歩み、30年後に向けてこれからどこに向かうのか。返還前には、香港の将来をめぐる活発な議論が日本でも行われた。現在、香港が日本社会の関心の中心となることは多くないが、地道な香港研究はさまざまな分野で展開されてきた。『香港を知るための60章』(明石書店)に結実したさまざまな分野の香港研究の成果と、香港と深い関係を持つ周辺地域からの視点を通じて、香港の特徴、可能性を考える。香港は世界とつながり、中国と向き合い、自らのアイデンティティを模索している。日本とも密接な関係を持つ隣人としての香港を見つめ直すことで、日本やアジアの将来についても展望する。
登壇者
12/2 基調講演 「かつての予想を超えた未来像:返還20周年の香港社会」使用言語:英語
香港教育大学教授・香港研究学院長
呂 大楽 氏
【略歴】
香港大学卒業、香港大学大学院・オックスフォード大学大学院で修士号、オックスフォード大学大学院で博士号取得。香港中文大学教授、香港大学教授を経て現職。香港を代表する社会学者。専門は階級分析、都市社会学、経済社会学、香港研究。
12/2 報告・セッション① 香港を観察視する:周辺から見た香港
慶應義塾大学文学部教授
岩間 一弘 氏
「日本から見た香港の中国料理」
【略歴】
慶應義塾大学卒業後、東京大学大学院総合文化研究科で博士学位を取得。千葉商科大学教授などを経て2015年より現職。専門は、近現代東アジア交流史、食文化史、中国都市史。著書に『上海大衆の誕生と変貌—近代新中間層の消費・動員・イベント』(2012年)、『上海近代のホワイトカラー—揺れる新中間層の形成』(2011年)、共著に『上海—都市生活の現代史』(2012年)など。
城西国際大学准教授
塩出 浩和 氏
「マカオ・珠海から見た香港」
【略歴】
慶應義塾大学大学院法学研究科政治学専攻卒業。Cerntre for the Progress of Peoples(在香港)research fellow(1985-89)、国際大学アジア発展研究所研究員(1990-1996)、東洋英和女学院大学非常勤講師(1996-2000)、城西国際大学留学生別科専任講師(2000-2010)、同准教授(2010-)(中央大学経済学部非常勤講師(2004-)、同大学院総合政策研究科非常勤講師(2010-))
法政大学法学部教授
福田 円 氏
「台湾から見た香港」
【略歴】
国際基督教大学教養学部卒、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了、同後期博士課程単位取得退学。この間、台湾政治大学国際事務学院東亜研究所博士課程へ留学。博士(政策・メディア)。国士舘大学21世紀アジア学部専任講師、同准教授、法政大学法学部准教授を経て、2017年より現職。主要業績として、『中国外交と台湾ー「一つの中国」原則の起源』(慶應義塾出版会義塾大学出版会、2013年)、『日中関係史1972-2012Ⅰ政治』(共著、東京大学出版会、2012年)、『戦後アジア・ヨーロッパ関係史ー冷戦・脱植民地化・地域主義』(共著、慶應義塾大学出版会、2015年)などがある。
本学文学部兼任講師・アジア地域研究所特任研究員
松岡 昌和
「シンガポールから見た香港」
【略歴】
本学文学部史学科卒業後、一橋大学大学院言語社会研究科で博士(学術)取得。日本学術振興会特別研究員を経て、現在一橋大学大学院言語社会研究科特別研究員、秀明大学非常勤講師、本学兼任講師、高等学校講師。専門は第二次世界大戦期日本占領下東南アジアにおけるメディア政策・文化政策。共著に『日本語教育と日本研究における双方向性アプローチの実践と可能性』(2014年)、Japanese Language and Soft Power in Asia(2017年)など。2017年7月より本学アジア地域研究所特任研究員。
駒澤大学法学部教授
三船 恵美 氏
「中国から見た香港」
【略歴】
早稲田大第一文学部卒、米ボストン大大学院修了。日本学術振興会特別研究員、中部大国際関係学部助教授、駒澤大法学部准教授などを経て現職。専門は現代中国の外交・国際関係論。主著に、『米中露パワーシフトと日本』(勁草書房、2017年)、『中国外交戦略:その根底にあるもの』(講談社選書メチエ、2016年)、『基礎から学ぶ国際関係論』(泉文堂、2010年)、主な編著書に『膨張する中国の対外関係』(勁草書房、2010年)など、共著に『中国外交史』(東京大学出版会、2017年)、『現代日印関係入門』(東京大学出版会、2017年)などがある。
12/3 報告・セッション② 返還後の香港:これまでの20年、これからの30年
本学法学部教授・アジア地域研究所長
倉田 徹
「政治」
東京外国語大学総合国際学研究院教授
澤田 ゆかり 氏
「社会」
【略歴】
1984年大阪外国語大学中国語学科卒業。1986年、東京外国語大学大学院地域研究科卒、修士号取得。同年、特殊法人アジア経済研究所に入所。1989年〜91年、香港大学アジア研究センター客員研究員。1996年、神奈川大学外国語学部専任講師。1999年より東京外国語大学外国語学部助教授を経て、現職。主要著書として『高まる生活リスク—社会保障と医療(中国的問題叢書10)』(岩波書店、2010年、飯島渉氏との共著)。編著『植民地香港の構造変化』アジア経済研究所、1997年。『ポスト改革期の中国社会保障はどうなるのか』(ミネルヴァ書房、2016年、沈潔氏との共編)ほか。
日本大学経済学部教授
曽根 康雄 氏
「経済」
【略歴】
東京外国語大学卒、同大学院地域研究研究科修了。北九州市立大学大学院社会システム研究科で博士(学術)学位を取得。野村総合研究所、同香港現地法人、野村アセットマネジメント等で中国・アジアの経済調査を担当。2007年より日本大学経済学部准教授、2012年より現職。【主要著書・論文】『香港と中国——融合する華人経済圏』(共著、日本能率協会、1994年)、『江沢民の中国経済——安定成長への挑戦』(日本経済新聞社、1996年)、『呉敬璉、中国経済改革への道』(監訳、NTT出版、2015年)、共著『香港を知るための60章』(明石書店、2016年、第17・18・19章執筆)。
香港大学華正中国教育研究センター Honorary Research Associate
中井 智香子 氏
「教育」
中井智香子(なかい ちかこ)氏
【略歴】
日本女子大学卒業。2000年筑波大学大学院地域研究研究科(修士)修了。2014年広島大学大学院総合科学研究科で博士学位(学術)を取得。2011年4月から香港大学華正中国教育研究センターVisiting Fellow、2017年8月から同センターHonorary Research Associate。共著『台頭する中国をめぐるナショナリズムとアイデンティティ』国際書院、2017年がある。
大東文化大学国際関係学部准教授
廣江 倫子 氏
「司法」
【略歴】
大阪大学卒業後、一橋大学大学院法学研究科で博士学位を取得。一橋大学助手、一橋大学講師などを経て、2006年度から大東文化大学専任教員。著書『香港基本法の研究ー「一国両制」における解釈権と裁判管轄を中心にー』(2005年)、論文「香港終審法院による香港基本法解釈要請—コンゴ民主共和国対 FGHemisphere 社事件—」(2015年)など多数。2006年2月から3月にかけて中国社会科学院法学研究所に訪問学者として、2012年4月から2013年3月にかけてオックスフォード大学セントアントニーズカレッジにシニア・アソシエート・メンバーとして滞在。
12/3 報告・セッション③ 香港とは何か:周縁性と独自性
お茶の水女子大学大学院修了
岸 佳央理 氏
「水上居民」
【略歴】
お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科で博士学位を取得。2011~2017年、公益財団法人東洋文庫勤務。2015年1~12月、香港中文大学歴史系に留学。「香港の『都市化」と水上居民—1961年センサスを中心に」(『人間文化創成科学論叢』第14巻、2012年)、「1960年代における水上居民の『陸上引き上げ政策』—大埔元洲仔を事例に」(『お茶の水史学』第56巻、2013年)など。
東京外国語大学総合国際学研究院准教授・アジア地域研究所特任研究員
倉田 明子 氏
「返還と”香港史”」
【略歴】
東京大学教養学部卒業後、東京大学大学院総合文化研究科で博士学位を取得。2015年より東京外国語大学に勤務。著書『中国近代開港場とキリスト教』(2014年)、共著『越境する近代東アジアの民衆宗教』(2010年)、『香港を知るための60章』(2016年)など。香港中文大学(2003~2005年)および香港大学(2005~2006年)にリサーチアシスタントとして滞在。
金沢大学人間社会研究域法学系准教授
古泉 達矢 氏
「アヘン」
【略歴】
宇都宮大学を卒業後、東京大学総合文化研究科で博士号を取得。東京大学大学院に在学中、香港大学亜洲研究中心の訪問学者として香港に滞在。宇都宮大学非常勤講師を経て、2013年10月から現職。著書に『アヘンと香港』(東京大学出版会、2016年)、共著にKazuhiko Kondo, ed., History in British History: Proceedings of the Seventh Anglo-Japanese Conference of Historians, held at Trinity Hall, University of Cambridge, 11-14 September 2012(Tokyo: Evis Systems, 2015)がある。
神奈川大学教授
村井 寛志 氏
「香港人のアイデンティティ」
【略歴】
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得満期退学、2005年から神奈川大学勤務。2012年4月~2013年3月、訪問学者として香港大学人文社会研究所に滞在。論文に「カタストロフィーを越えて立つ武術家の表象—天安門事件後の徐克と映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズ—」(『破壊のあとの都市空間』青弓社)、共著『香港を知るための60章』(明石書店、第13章執筆)。
東京大学大学院総合文化研究科准教授
吉川 雅之 氏
「言語と文字」
【略歴】
1989年京都大学文学部卒業。1999年京都大学大学院文学研究科で博士学位を取得。東京大学専任講師を経て、2002年から現職。専門は言語学(中国語学)。著書に『香港粤語』シリーズ(2001年~)、共著に『香港を知るための60章』(2016年)など。2017年1月から3月まで客員研究員として台湾大学文学部に滞在。
詳細情報
名称
内容
「遺棄 |When We Cannot Breathe」
解説・トーク 張 彧暋氏(チョウ・イクマン)(香港中文大学講師)
張 彧暋(チョウイクマン)氏(香港中文大学講師)
【略歴】1977年生まれ。香港中文大学社会学研究科卒。博士(社会学)。専門は歴史・文化社会学、ナショナリズム論、日本研究(鉄道史、サブカルチャー論、近代日本ナショナリズム)。著書『鉄道への夢が日本人を作った—資本主義・民主主義・ナショナリズム』(山岡由美訳、朝日選書)、『香港:中国と向き合う自由都市』(倉田徹と共著、岩波新書)。
映画
遺棄 | When We Cannot Breathe
父親が自殺し、1人残された息子。フラッシュバックで描かれる父親の生前の行動から、社会に「遺棄」された人々の姿が浮かび上がる。香港テレビ局(RTHK)に所属する映像ディレクター、マック・ジーハン(麥志恆)が撮った、胸を締めつけるようなヒューマンドラマの傑作。この映画から雨傘運動の遠因でもあり、未だに解決の糸口が見つからない、さまざまな不平等、社会問題が見えてくる。
2013年/50分/カラー/広東語
監督▶マック・ジーハン Mak Chi Hang
対象者
申し込み
- 事前申し込み 要
- 参加費 無料
メールの件名に「12/2,3 シンポジウム参加申込」と明記の上、「名前・所属・連絡先(メールアドレスなど)」をajiken@rikkyo.ac.jpまでお送りください。