スポーツの力で人々を輝かせたい

コミュニティ福祉学部 松尾 哲矢教授、コミュニティ福祉学部4年次 大岩 桜子さん

2022/09/30

立教を選ぶ理由

OVERVIEW

「スポーツの力で人々を輝かせたい」という思いを胸に立教大学に進学し、現在はパラスポーツに関する研究を行っている大岩桜子さん。学部4年生であると同時に、同大学の「大学院特別進学生制度」を利用して大学院博士課程前期課程でも学びを深めています。その指導教授である松尾先生と、スポーツが持つ可能性とキリスト教に基づく人間教育について、語り合っていただきました。

コミュニティ福祉学部
大学院コミュニティ福祉学研究科 教授 博士(教育学)
松尾 哲矢 (写真右)


コミュニティ福祉学部スポーツウエルネス学科4年次
大岩 桜子 (写真左)

※文中敬称略

「生きがい」まで含めた総合的な健康をスポーツを通して実現するために

大岩 松尾先生との出会いは大学1年次、少人数のゼミナール「基礎演習」をご指導いただいたことが始まりでしたね。

松尾 入学当初から元気と積極性にあふれていた大岩さんの姿は、今でも印象に残っていますよ。高校時代の取り組みを尋ねたところ、「パラスポーツ応援プロジェクト」の話をしてくれて、そのプレゼン動画があるというのでゼミのみんなで見ましたね。そこでは、大岩さんを含む数名の高校生が、「私たちはこう考えます!」とものすごい熱量で発表をしていて、驚かされるのと同時に、この素晴らしい原石をいかに磨こうかと考えました。

大岩 「パラスポーツ応援プロジェクト」は私が高校生のときに発足した、女子聖学院中学校・高等学校と聖学院中学校・高等学校の合同プロジェクトです。私は幼い頃から水泳やテニスをやっていてスポーツが大好きなので、最初はパラスポーツへの関心というよりも、とにかくスポーツに関わりたい一心で参加を決めました。それが高2のとき、プロジェクトの一環で立教大学を訪れて、パラリンピック水泳競技の強化指定選手にインタビューを行ったことをきっかけに、パラスポーツに一気にのめり込んだんです。

松尾 えっ、高校時代に立教に来ていたんですか。

大岩 はい。池袋キャンパスのポール・ラッシュ・アスレティックセンターのプールが、パラ水泳の強化拠点施設に指定されていましたよね。そこで初めてパラアスリートを生で見て、スポーツってこんなに力強いものなんだ、こんなに美しいものなんだ、と心が震えました。それぞれの選手が自分だけの特徴、強みを活かした泳ぎをしている姿は圧倒的で、障がい者とか健常者とか関係なく、スポーツの素晴らしさがストレートに自分の中に入ってきたんです。この経験によって、スポーツそのものから、「スポーツを通して実現できること」へと視野が広がって、スポーツウエルネス学科に進学しました。

松尾 スポーツを専門とする学部・学科が多くある中で、「ウエルネス」を重視している点が立教の特徴です。ウエルネスとは、「生き方としての健康観」だと私は捉えています。単に疾病のない状態が健康なのではなく、人が生きる歓びを感じたり、そのことによって人生が豊かになったり、そういう生きがいまで含めた総合的な健康です。そして、すべての人が生きがいを感じられる社会をスポーツを通していかに実現していくかを考えるのがスポーツウエルネス学科の学び。大岩さんのような人を大いに歓迎します。

大岩 2023年4月には、「スポーツウエルネス学部」として新たにスタートしますね。

松尾 社会には今、さまざまな課題が山積していますよね。少子高齢化が加速する中での子どもたちの体力低下、健康寿命を延ばすことの重要性、それから環境問題に対しては、自然体験をはじめとする環境教育を充実させていくことが必要不可欠でしょう。このような課題の解決に、運動やスポーツの力は大いに活用できますし、実際にそうした社会的要請も非常に多くなっています。それに応えるためにも、新学部では「すべての人の生きる歓びのために」を理念とし、教学内容をさらに発展・充実させていきます。

障がいを特別視せず、その人の強みとして活かせるような支援を

大岩 私は「パラスポーツ応援プロジェクト」での経験から、今の社会には、障がいのある方がスポーツを気軽に行える場が少ないという問題意識を持ちました。それを解決するために、「障がい者スポーツにおけるアクセシビリティ」に関する研究をしたいと考えています。このアクセシビリティには、施設の利用のしやすさや交通機関のバリアフリー化といったハード面だけでなく、経済的なことや指導者の問題などソフト面も含んでいて、ハードとソフトの両面からアクセシビリティを整理し、必要な支援を明確にしていければと思っているのですが、これがなかなか難しくて。

松尾 どういうところに難しさを感じていますか。

大岩 課題の大きな一つは指導者不足です。たとえば水泳の指導者が、今日からパラ水泳も指導できるかというとそうはいきません。障がいに関する基本的な知識が必要ですし、何より、私が出会ったパラ水泳の指導者の方は、障がいというものを特別視していませんでした。障がいをその選手の個性と捉え、強みとして活かせるよう指導されていたんです。障がいというフィルター無しに、一選手として相手に寄り添う。知識だけでなく、そうした姿勢もパラスポーツの指導には不可欠だと思いますが、そのような指導者はまだまだ少ないというのが現状です。

松尾 これから変えていくんです。現に、大岩さん自身はその姿勢を体得し始めているじゃないですか。先日、授業で車いすバスケットボールをしましたよね。あのときの視覚障がいのあるチームメイトに対する支援の仕方には感心しました。「ボール投げるよ!今!取って!」って、最初は大丈夫かなと思って見ていたのですが、ワイワイ楽しそうでしたね。まさに障がいを特別視せず、その人を活かす支援でした。

大岩 彼女はゴールボール日本代表の強化指定選手で、「顔にボールが当たっても全然平気」というタフな人ですから、ボールを受け取れる位置を確認したあとは、彼女ならできると思って臨みました。

松尾 さらに大岩さんは、非常勤の公務員として、豊島区のスポーツ推進委員を務めたり、日本スポーツ協会で活動したり、学外でも経験を積んでいますね。社会で役割を持ってそれをまっとうすることで、知識も視野もますます広がると思いますよ。

「隣人を自分のように愛しなさい」女子聖で学び、今に活きる聖書の教え

大岩 私には高校時代にもう一つ、スポーツの力を実感した経験があります。運動会です。女子聖学院の運動会は中高合同で開催され、会場設営、審判、ルール策定をはじめ、運営は生徒が主導します。3色対抗で、私は高2・3と2年連続で紅組の主将を務めたのですが、チームの中には運動が苦手な人もいて、その人たちにも主体的に関わってもらうために、一人ひとりの得意を活かすことを心がけたんです。たとえば、絵が得意な人には横断幕の制作をお願いするとか。そうしたら、体育なんか絶対にイヤだと言っていた人が一生懸命に取り組んでくれて、その姿が本当にイキイキしていて、チーム全体に楽しさと信頼があふれて…これがスポーツ本来の姿なんだと心の底から感じました。

松尾 スポーツの最も大切な価値は、お互いが尊敬し合い、そこにいるみんなが楽しめるように心を配り、支援することですが、高校時代にすでにそういう体験があったんですね。大岩さんのその原動力はどこからきているのですか。

大岩 女子聖学院で出会ったキリスト教の教え、とくに、「隣人を自分のように愛しなさい」という聖書の言葉が私の中心にあります。朝の礼拝でこれを聞いたとき、初めは理解が及ばなかったのですが、聖書を学んでいくうちに、隣人を愛するというのは相手に真剣に向き合い、その人の個性を活かしながら共に生きることではないかと考えるようになりました。自分だけが満ち足りるのではなく、自分以外の誰かのために働きかけることが真の歓びではないかと。それを実践できた運動会は、私にとって宝物のような経験です。

松尾 女子聖学院と立教には、キリスト教に基づく人間教育という共通点があります。本学は、「普遍的なる真理を探究し、私たちの世界、社会、隣人のために」という教育理念を掲げていますが、これはつまり、真理を探究して人に仕えるということ。女子聖学院の建学の精神である、「神を仰ぎ人に仕う」と共通しています。その精神を大岩さんは中高の礼拝で学び、運動会で自分のものにし、現在はスポーツに対する取り組みにおいて発揮しているのですね。

大岩 私の人生の目標は、「スポーツの力で人々を輝かせること」です。その具体的なあり方の一つとして「障がい者スポーツを通した共生社会の実現」を掲げていますが、その先には、国籍も年齢も性別も、あらゆる枠を超えてすべての人がスポーツに参加しやすい社会づくり、誰もが居場所や生きがいを持って活躍できるコミュニティづくりというビジョンがあります。この実現のために、広い視点でスポーツ振興に関わっていくつもりです。

松尾 それにはさまざまな道があると思います。組織に入って政策の立案・決定を行うことも一つの方法でしょうし、ひとりの人と向き合いながら実現していくのかもしれない。自分が一番チャレンジしてみたいと思う方向に進んでください。楽しみにしています。

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