OBに聞くリベラルアーツ×AI
 ~リベラルアーツ的思考をもち
データやAIを“ツール”として使える人へ~

株式会社フライウィール 代表取締役CEO(2000年 経済学部経済学科卒業) 横山 直人 さん

2020/05/20

立教を選ぶ理由

OVERVIEW

立教大学卒業後、ニューヨーク大学大学院に進学し、NTTドコモに入社。Google、Facebookに転職して、データをフル活用して社会変革を促していくビジネスを目の当たりにし、2018年に起業した横山直人さん。実務に携わる立場から、AIとリベラルアーツの関連性、立教大学および大学院「人工知能科学研究科」に期待することを伺いました。

AI人材不足を緩和するには、「人材の裾野を広げる」ことが大切

2020年5月現在、コロナウィルス感染の影響により、今までの生活習慣や経済活動を再構築することが余儀なくされ、企業や組織が何をなすべきかを模索する状態が今なお続いています。

データやAIの役割は、ますます大きくなっています。政府は対応策を検討する際に、過去の類似ケースや他国の動向を分析していますが、恐らく、そこによい回答はなく、思い切った新しい価値観で意思決定をすることが重要なのだと思います。データはそのエネルギーとなるのです。

企業は在庫予測や物流の最適化に取り組むことで、より高いレベルでの商品の供給を実現する必要があります。データとAIを活用し、より生産性・効率性が高い「仕組みづくり」の構築が求められる時代になったのです。

ビジネス界におけるAIを巡る昨今の大きな変化は、「より多くの企業がデータやAIを使ったビジネスに着手しやすい状況になってきた」ことです。以前は設備投資に高いコストがかかりましたが、現在はクラウドビジネスの発展などにより、コストをある程度抑えられるようになりました。加えて法整備も進むなど、さまざまな条件が整い、現実的に使える状況になってきたわけです。必ずしも大手企業だけでなく、たとえば農家で野菜の選別にAIが使われるなど、社会の至る所で活用される時代がすでに到来しつつあります。

しかしながら、各々のデータが分断されていることで、デジタルトランスフォーメーションと言われる構造改革は、部分最適が主流になっており、データの持つ可能性は十分に発揮されていません。あらゆるデータをつなぎ、設計することで、真の産業の構造改革を社会全体で実現できるよう、変化を促す必要があると考えています。

それらに必要なのはなんと言っても人材です。専門的な技術者だけでなく、データやAIをツールとして使いこなし、ビジネスに活用できる人を育て、「裾野を広げていく」ことが急務だと言えるでしょう。

立教大学が2020年4月に開設した大学院「人工知能科学研究科」では、エンジニアだけでなく、データやAIを使った新たな製品やサービス、プロジェクトなどを企画する人も育成していくと聞きました。今後は学部でもAIを学べる環境を整えていくと伺っていますが、「リベラルアーツ的思考を生かし、データやAIをツールとして使いこなせる人」を輩出することは、まさにAI人材の裾野を広げることに他ならず、社会のニーズと合致していると感じます。素晴らしい試みだと思いますし、母校がこうした取り組みに着手することは、卒業生として大変嬉しく思います。

プラットフォーマーにはできない「最後の1マイル」を担いたい

一方、私自身も企業のデータ・AI活用を促進するため、2018年に株式会社フライウィールを立ち上げました。きっかけは、GoogleやFacebookで働いていたときに抱えていた歯がゆさにありました。グローバルプラットフォーマーにできるのは、汎用的なシステムやツールを提供するところまで。取引先の課題を解決するためのカスタマイズや最適化は担いきれない部分があり、実際に動ける人や会社も少なかったのです。当時Microsoftにいた友人も同じ悩みを抱いており、「ならば自分たちでやろう」と起業を決意しました。

会社名のフライウィールは、「はずみ車」という意味で、データやAIを人々のはずみ車、エネルギーにするという思いを込めました。データやAIは、効率化や自動化、ひいては企業の生産性向上を実現する根本的なエネルギーになるという確信をもっています。企業に潜在するデータを活用して事業価値を最大化するために、事業戦略の策定から実装、事業拡大のためのコンサルティングまでを一貫して担い、「最後の1マイルまで企業に寄り添う」ことを心がけています。

私たちは企業の立場からデータ・AI活用の裾野を広げることに取り組んでいますが、産業界、学術界、国や政府が一つの方向を向けば、さらに普及が加速していくでしょう。今回の立教大学の取り組みは、その一つの糸口になるのではないかと思います。

多様性からイノベーションは生まれる

さらに今後、人工知能科学研究科、そしてゆくゆくは大学全体の中で、文系理系問わず、多様な立場からAIに関して議論がなされていくと思います。同じ領域の人だけが集まっても、なかなか新しい発想は生まれにくいものです。AIを軸に、企画したい人、分析したい人、エンジニアを目指す人など、異なる志向や専門性をもつ人が集うことで、今までにないイノベーションが生まれるのではないでしょうか。

立教大学卒業後に進学したニューヨーク大学大学院では、コンピューター・アートを専攻したのですが、ビジネスの企画立案を担う人、エンジニア、ダンサーなどさまざまな得意分野を持つ人でチームを組み、一つの課題に取り組みました。もちろん苦労も数えきれないほどありましたが、「いろいろな国から、いろいろなバックグラウンドをもつ人が集うことで生まれる良さがある」と身を持って実感しました。それをAIという軸で行うことに、大きな可能性があると感じます。また、社会に出て、実際にビジネスとして携わる前に、倫理や哲学的な問題も含めて議論し尽くすことにも意義があると思います。


「自分ができること」と「時代のニーズ」をマッチさせる


かくいう私も、大学時代に特段やりたいことがあったわけではありません。ただ、新しいものが好きで、当時普及し始めたインターネットに興味を抱き、大学院へ進んで現在に至ります。「自分ができること」と「時代において必要とされていること」がマッチすると、人生は豊かになります。もちろん「何をおいてもやりたいことがある」という人は突き進めば良いと思いますが、どんな仕事でもやってみると、やりがいは意外と後からついてくるものです。もし将来の方向性に迷っている人は、「時代のニーズ」という要素にもアンテナを張ってみてはどうでしょうか。

また、これからAIを学んでみたいと思っている人、人工知能科学研究科に進みたい人は、「身のまわりの社会の課題をAIでどう改善できるか」を日頃から考えてみることをお勧めします。たとえば、どうすれば渋滞を緩和できるか。お店で物を買うとき、大学で学ぶとき……など、題材は限りなくあります。課題解決のトレーニングをすることで、自分の興味がどこにあるかがわかりますし、能動的に考えるプロセスや思考回路が身についていくはずです。リベラルアーツとAIの両方を学び、社会のこれからを担うみなさんの活躍に期待しています。

プロフィール

profile

横山 直人 さん

株式会社フライウィール 代表取締役CEO
2000年 立教大学経済学部経済学科卒業

2002年、ニューヨーク大学大学院修士課程修了(インタラクティブ・テレコミュニケーション・プログラム)。2002年、NTTドコモ入社。2009年、Google Japan入社。2014年、Facebook Japan入社、執行役員。2018年2月より、株式会社フライウィール代表取締役CEO。

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